艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり 作:稲村 リィンFC会員・No.931506
お待たせ致しました。
…実は最初期のプロットでの没案にてアンドロメダが通信に割り込むという物がありました。大本のネタは2199でのバラン星観艦式でのデスラー総統による「なにか言い残すことはないかね?ゼーーーーリック君?」辺りのシーンだったのですが、それをやってみたかったというものでした。
「«先生…、先生…っ!»」
「泣くんじゃ無いよ…、若いの…」
画面の向こうで泣きじゃくる
通信に割り込みながら、格好をつける様にして登場したものの、彼女自身アンドロメダの姿を見たことで、安堵の気持ちから泣いて喜びたかったが、それを寸での所で堪えた。
「(…窶れたねぇ)」
それがアンドロメダを
最後にその姿を見たのは、アポロノームが自身を庇って
それに、ヒト前でここまで感情を露わにすることも無かったハズだ。
私やヤマトと一緒な時はそれなりに感情豊かであったが、他の誰かがいる時は微笑みを浮かべながらもどこか泰然とした雰囲気を纏い、感情の起伏が殆ど無かったはずだ。
「(やっぱり、無理してたんだね…)」
何があっても動揺を見せないように、何が起きても冷静に構えている姿を見せることで皆の不安を振り払い安心させるために、“泰然自若”と言う名の“仮面”をヒト前では常に着けていたのだろうけど、本当は自身の感情を無理に押し殺して着けていた“仮面”を固定していた“心の糸”が、アポロノームの死が引き金となって心が壊れたことで“心の糸”も切れてしまい、着けていた“仮面”が落ちた結果、今まで押し殺してきた感情が溢れ出し、外へと出やすくなったのだろう。
とはいえその切っ掛けが心の壊れであるという事に、
「«お姉さん、大丈夫ですか!?»」
「«姉貴!»」
思考の海に浸っていると、画面に新たな2人が映り込む。
1人は
「元気そうだねぇ、アポロノーム」
この言葉にアポロノームは肩を跳ねさせ、勢いよく画面へと振り向くと、そこに映っているものに信じられないとばかりに、思わず震えながら指を指してしまう。
「«きっ、きき、キリシマの姐御っ!?ど、どうしてここに!?»」
「ハッハッハッ!相変わらずあんたは騒がしいねぇ」
笑いながら相手の反応を楽しむ"
こちらを気にしてはいるが、それでもその意識はアンドロメダへと向けられており、泣き続ける彼女を必死に宥めていた。
良い娘じゃないか。
それが彼女、駆逐棲姫に対する
彼女のことを「掛け替えのない大好きなお姉ちゃん」と屈託のない笑顔で語り、そう言われた駆逐棲姫が嬉しそうにはにかんだ所を見たときは、
まさか既にここまでお互いが心を寄せ、懐いているとは思いもしていなかった。
そしてアンドロメダの心の内側に秘めていた“ある思い”の可能性に思い至る。
ああ、本当はもっと誰かに甘えたかったんだねぇ…、若いの…。
いつも気丈に振る舞っていた心の反動が、今のアンドロメダから溢れ出しているんだ。
途中まで盗み見していることに、多少の申し訳無さがあるとはいえ、それが知れたことは大きな収穫だった。
時は少し遡る。
「間違い無いのかい?
鎮守府の廊下を車椅子で突き進みながら、後ろから付き従っている者に問い掛ける
「うん。
かつて自身の護衛隊が付き従っていた艦隊の、いわば親しい知人とも言えるヒトに繋がる情報なだけに、気分が高揚していた。
「よしっ!念の為にと張らせていた甲斐があったね」
この2人は姉妹の中で最も電子作戦能力が強力であり、こういったことにはうってつけだった。
「師匠の読みが当たりましたね。流石は師匠です」
つい先ほどまで作戦室で如何にマリアナまで行くかの作戦を共に煮詰めていた土方の副艦、霧島が感嘆の言葉を漏らす。
高速戦艦艦娘の霧島は、艦隊の頭脳を自称する艦娘であるが、
当の
「
アポロノームと合流したことで、もしかしたらこの世界にまだ他にも誰かいるかもしれないと、防衛軍の周波数帯で何かしらの呼び掛けを行なうのではないか?と考えていた。
それがいきなりの機密通信である。
これには傍受に成功した
だがこれで防衛軍との関わりがある“誰か”がこの世界に来ていることが確実であり、その“誰か”とアンドロメダがコンタクトを取っていることでもある。
何故ならば
この時点で長姉
「後は、“あれ”がどれ程のものかという問題か…」
彼女にはある1つの不安要素があった。
それは“記憶障害”である。
原理は今もって不明だが、
初めは
6番艦
他にも3番艦
そして残りの6人も、つまり顕現した
だがそれは
自身と
自身は良くも悪くもいわば天寿を全うしたようなものだった。
しかし彼女達は全員が戦没という、いわば非業の最期を遂げたものであった。
それが関係しているのではないか?
もしこの仮説が正しければ、アンドロメダもその最期が戦没であった以上、何らかの記憶障害を持って顕現している可能性があったし、その症状はヒトそれぞれのため予測が難しかった。
もしかしたら記憶がすっぽり抜け落ち、自身を深海棲艦、或いはその亜種と思い込んでしまっている可能性すらあるかもしれない。
想定される1番の最悪な事態は、
それを懸念して、こちらから通信を試みる事を躊躇った。
恐らく艤装のデータベースに記録があるだろうが、もし万が一、そのデータベースが破損してしまっていたとしたら、どうすることも出来なくなる。
下手をすると誰だか分からない者からの通信として警戒され、本来ならば望まぬ衝突に発展しないとも限らない。
だからこそ通信を行なわなかった。出来なかった。
「…まぁ、それもこれでどうにかなるか」
そう言いながら到着したのは『関係者以外立ち入り禁止』との注意書きが貼られ、『待機室』とのプレートが掲げられた一室である。
その扉には『会議中』とのプレートが下げられており、その前には日本軍正式採用自動小銃であるAK-74Mのバリエーション、AK-100シリーズの5.56ミリNATO弾使用であるAK-108を装備した斉藤が歩哨として立っていた。
「ご苦労さん」
労いと挨拶も兼ねてそう声を掛けると、斉藤は軽く手を振りながら応える。
「おう。みんな集まってるぜ」
そう言うと扉をノックして中に居る者達に
因みにだが、この部屋の隣は土方の居る執務室である。
ここは土方直属の精鋭部隊が控える部屋であり、その部隊は外洋防衛における切り札とされている
元々は足に障害を抱えている
まぁ、本当は
彼女達全員は常に拳銃用ホルスターを身に着けており、表向きは精鋭としての証であるとされているが、これも万が一の
閑話休題。
斉藤に促されて待機室へと入ると、そこには今集まれる
また既に土方も秘書艦の金剛を伴ってその様子を見守っていたが、
「出来たっ!」
そのタイミングで解析が完了した
そして部屋に集う全員に見えるように画面を展開すると、少しノイズが走った後に画像が安定し、聞き慣れた、あの懐かしい声も聞こえて来た。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか…」
そう呟きながらも、
得られた
懐かしき
そしてその傍らに自分達もよく知る
しかしそれらよりも、この通信の切っ掛けの1つが深海棲艦による仲介があったことを示す内容や、アメリカ国内での何らかの活動を匂わせる内容があったことで、謎多き深海棲艦による人類領域への静かなる進出の実態と、思わぬ一面が知れたことによる衝撃の方が大きかった。
更に
しかもお姉ちゃんと呼ばれた当の駆逐棲姫も、そのことにとても嬉しそうにしていた。
それを見ただけでもアンドロメダが深海棲艦に心を寄せていることが窺えるが、直後の駆逐棲姫の脚を奪った者達を絶対に許さないという言葉と、画面越しにもひしひしと伝わって来た怒りの感情に、背筋が凍る思いがして震え上がった。
そしてその後に語られた、
更に彼女達深海棲艦がこの戦争を始めたその“理由”、“深刻な飢餓”が原因であったことも、この時に初めて知ることができた。
「…我々は、本当に深海棲艦というものを、知らなさ過ぎた」
険しい顔つきで、絞り出すかのような掠れた声で土方がそう呟いた。
それは今この場にいる全員が共通した気持ちでもあったが、土方としてはかつてのガミラス戦役を思い出さずにはいられなかった。
あの時は『ヤマト』の活躍があるまで、ガミラスという名の異星人の実態を掴むことが出来なかった。
そして今回、そのヤマトの子供であるというアンドロメダの活躍によって、間接的ではあるが深海棲艦の実態を、ほんの一部だけかもしれないが知ることが出来た。
そのことに、ある種の運命と言うか宿命の様な物を感じずにはいられなかった。
ふと、
「割り込み、出来るかい?」
「可能ですけど…、
「…うん。
「
怪訝な表情をした
そのやり取りを見ていた
ちゃんとした考えと確固たる勝算があるからこそ、彼女は動く。
「…いつでもいいよ」
準備が出来たと
タイミングを、動くのにベストな“機”を静かに窺っていた。
そして、
「«…何か私に手伝える事があれば、仰って下さい»」
苦しそうな表情を浮かべながら自国の醜態を語る
「…
静かに告げられたその言葉を
「よく言った若いの。流石はあの娘自慢のムスメっ娘だねぇ」
初めアンドロメダは目を見開き、頭の処理が追い付いていないのかキョトンとした可愛らしい反応を返して来た。
しかし画面に映るヒトが自分をとても可愛がってくれていた、もう二度と会うことのできないと思っていた掛け替えのない、大切な恩師そのヒトであると分かったのか、小さく微かな声で「『う…そ…?そんな…、まさか、なん…で…?》」と呟いたのと同時に、その瞳が潤み出した。
「«せん…、せい……?»」
震える声で恐る恐るそう尋ねる
「久しいね若いの?また私のことを先生と言ってくれて、嬉しいよ」
そこで一旦言葉を切り、ニヤリと口角を吊り上げてから続きの言葉を紡ぐ。
「“あの時”みたいに私のことを“おばさん”って言わないかヒヤヒヤしたよ?」
その茶化す様な物言いにアンドロメダは、嗚呼、間違い無い!との確信を得た。
それはかつて初めて出会った時の、自分と
そこまで思い至った段階でアンドロメダは、堰を切ったように泣き出した。
そして
時間軸は、冒頭へと戻る。
ヒト目も憚らず泣くアンドロメダだが、このタイミングで
「«す、すみません…。その、取り乱してしまいまして…»」
羞恥から耳まで真っ赤に染めたアンドロメダが、モジモジとしながらも謝罪の言葉を述べる。
それに対して
何故ならばヒトの姿となって顕現し、馴染みの、親しかった者達と再会した時は皆それぞれの反応を示すことが多々あったからである。
実際、今画面には映っていないが、そばに控えている
他の姉妹達も、皆泣いたり、喜んだりしたものであり、別段アンドロメダの反応は珍しいものではなかったのだ。
とは言え、アンドロメダとしたら恥ずかしいものは恥ずかしいのである。
そこへさらに
途中からとはいえ、彼女達の会話を盗み聞きしていたことを率直に告げて詫びた。
最初に登場した際の言葉から、そのことに気付くことも出来たかもしれないが、その時のアンドロメダの頭はそれどころでは無い程の状態となっていた為に、気付くことが出来なかった。
そのことに今更ながら気付いたアンドロメダは、私、変な事口走らなかったよね!?とワタワタしながら慌てふためいてしまう。
そんなアンドロメダの姿に、今まで面識のなかった
だからこそ、
流石にこれはマズいと判断した
「みな、落ち着かんか」
さほど大きな声ではないのだが、威厳と風格に満ちた声が響く。
今まで黙って見守っていた土方が、これ以上は混乱するだけだと判断し、前に出て窘めたのだ。
「すまないアンドロメダさん。騒がせてしまいました」
そう言いながら画面に映るアンドロメダへと頭を下げる土方であるが、当のアンドロメダはぽかんといった表情を浮かべたまま固まっていた。
「«土方さんまでいるのかよッ!?»」
堪らずといった感じで、アポロノームが思わず画面へと映り込んできたが、直後に「あ、やべっ!」といった顔になって慌てて威儀を正した。
見っともない立ち振る舞いに対して、土方から叱責を食らうのではないかと恐れたからである。
しかし土方としてはアポロノームの後ろで相変わらず目を見開いて固まったままのアンドロメダの方が気になっていた。
「«お姉さ~ん、大丈夫ですか~?»」
駆逐棲姫が呼び掛けるが返事が無く、手を顔の前で振っても何の反応も示さない。
何故なら─────
アンドロメダの、しこうかいろは、パンクしていたのだから。
「«お姉さ~~~~ん!!»」
駆逐棲姫の叫びが、虚しく木霊した。
遅くなりました。
前話の後書きに書きました通り、新人教育の影響で執筆に遅れが出てしまいました。
一応補足しますと、
補足解説(いずれまた詳しく纏めるかも?)
AK-108
ロシア製アサルトライフルであるAK-74Mの輸出モデルであるAK-100シリーズの5.56ミリNATO弾使用モデル。
特徴として3点バースト機能が付与されているのと、AEK-971で用いられたリコイルの軽減機構を有しており、発射レートはAKシリーズ標準の毎分600発よりも高い毎分850~900発(ピストンの往復部のストロークが軽減機構により標準的なAKよりも短いため)であるにも関わらず、他のAK-100シリーズと比較して射撃精度が高いとされている。
本銃が日本軍に採用された経緯は、先の大戦にて多発した最新鋭自動小銃である20式小銃がかつての“言うこと聞かん銃”を遥かに超える故障率を叩き出した為、採用が取り消されて急遽アメリカからM4A1やM16A4が供給されたり、それらの余波と風評被害、事情を知らない国民からの突き上げなどが重なり、製造元が大戦後に倒産してしまったことで日本における軍用銃の製造が出来なくなった事が影響している。
但しこれは当時軍拡を急ぐ政府が無理な大量生産を製造元に強要したことが原因であり、その影響で品質悪化を招き、粗製濫造の劣悪品が大量に出回ってしまったことが最大の原因である。
またアメリカも現政権による失策の影響で経済が停滞し、国内産業を衰退させてしまい、その影響が軍需産業や銃器産業にまで波及したことによって大戦によって消耗した自軍への供給で手一杯となってしまった為、兵器の対外輸出か停滞。更に深海棲艦との戦争勃発により対外輸出が事実上ストップすることとなる。
日本では大戦中に供給された装備品でなんとか遣り繰りしていたが、南方作戦の失敗などにより重装備を含めた数多の装備を失うこととなった。
続くAL/MI作戦における本土攻撃はなんとか撃退したものの、首都東京は壊滅。首都近辺に駐屯していた陸軍を中心に大損害が発生するも、最早日本には短期間で戦力を回復させるだけの余力は無く、太平洋が完全に寸断された事で同盟国アメリカも頼れなくなったし、今まで供与されていた装備のストックも底をついていた。
そこに目を付けた
再度の深海棲艦による本土攻撃を極度に恐れていた当時の日本政府はその打診に飛び付いた。(この事が
そして供与された装備品の中に
余談だが、一部の部隊(主に空挺)では状態の良い従来の小銃や、分隊支援火器MINIMI、米軍払い下げのM240軽機関銃を使用しているため、弾薬供給において旧陸軍並の混乱が生じている。
いつもの後書きコーナーにて色々と書きたいこと(西側で加速する違法薬物の相次ぐ事実上の合法化など)があったのですが、ある訃報からそちらを優先することと致しました。
先日お亡くなりになられました松本零士さんに、哀悼の意を表します。
それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。
アメリカ大統領選挙のイメージは?
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直接選挙
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間接選挙