艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 過去最短のタイトル!

 人間3人いれば派閥が出来ると言いますが、それは国や組織でも、多少の違いはあれど同じ事。

 日本って立地が戦略的にどえらい位置に存在してるんですよねぇ~…。それなのに暢気な日本人。自衛隊は実戦に対して糞の役にも立たない現行の自衛隊法によって戦う前から完全無力化が完了済み。憲法改正?寝言は寝て言いなさいのレベルです。法治国家では行動に対する法的根拠の方が重要なんですよ。

 一応本作では太平洋の要所であるハワイを深海棲艦が押さえ、更に北はアリューシャン、南は南太平洋一帯がほぼ聖域化しているため、太平洋の大半が深海棲艦の制海権と言える状態。
 新ロシア連邦(NRF)にとって日本は深海棲艦に対する縦深的な防衛ラインの外郭防波堤として懐柔したい。
 アメリカは日本が派手に動くことで太平洋の深海棲艦に二正面作戦状態を強要したい。ただし日本が新ロシア連邦(NRF)に靡かれるのは面白くない。だけど太平洋が分断された影響で新ロシア連邦(NRF)による援助が無ければ日本は戦えないというジレンマ。
 


第41話 GG

 

 

「待たせたね」

 

 

 暫くして、霧島(キリシマ)が秘書艦の金剛と共に戻って来た。

 

 

 霧島(キリシマ)が席を外していた間、アンドロメダ達は旧交を温めながらも新たな出会い、アンドロメダと春雨(ハルサメ)は互いに姉妹の事で盛り上がり、直ぐに打ち解けて仲良くなった。

 

 その際に山風(ヤマカゼ)とも対面したのだが、その際にアンドロメダのことをやり手のクラッカーであると勘違いしていた山風(ヤマカゼ)が、普段は見せない様な積極さでアンドロメダを質問攻めにしたりといった事態が発生し、その圧に圧倒されてタジタジとなったアンドロメダを見た駆逐棲姫が間に入ったり、妹の暴走に春雨(ハルサメ)が陳謝するといったトラブルが起きたりもしたが、それが切っ掛けとなって駆逐棲姫と言葉を交わすことが出来た。

 

 事前にアンドロメダとの仲睦まじい姿を見ていたとはいえ、本来ならば戦場でしか会うことが無い深海棲艦、それもその上位種とされている姫級の1人なだけあって、最初こそは緊張していたものの、直に言葉を交わしているとそのメンタルが自分達と何らか変わらないものであるということに、次第に思い至る様になった。

 

 

 そこからは早かった。

 

 

 春雨(ハルサメ)達は昨日の敵は今日の友(ガミラス)という前例もあり、駆逐棲姫は相手の本質を見抜くその目から、そしてアンドロメダが双方を信用し信頼しているという事実から、互いに信用出来る存在であると認め合ったことで、その心の距離間が急速に縮まることとなった。

 

 

 このタイミングで秘書艦金剛と副艦霧島からの説明を聞き終えたIowa(アイオワ)達も、和気藹々と語り合う輪の中へと紛れ込んだ。

 

 というか、元々賑やかなこと、楽しいことは心の保養であり栄養であると考えているIowa(アイオワ)にとって、和気藹々とした雰囲気は正に大好物であった。

 

 そして彼女の上手いところは、いつの間にかスルリとその輪の中に自然と溶け込み、気付けば仲良くなっているという技術(スキル)にあった。

 

 その技術(スキル)があったからこそ、彼女はこの短期間で派閥争いの激しい、魑魅魍魎だらけの政界で頭角を表わし、保守党内での大統領候補になれたとArizona(アリゾナ)は思っている。

 

 同時に、だからこそ極左リベラル政党から危険視されていると確信していた。

 

 彼女は極左リベラル政党内における保守寄りの議員だけでなく、中道寄りの議員すら徐々に、だが確実に切り崩し始めていた。

 

 恐ろしいのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。

 

 切っ掛けさえあれば、スルリと心の内側に入り込んでくる。

 

 それがIowa(アイオワ)という艦娘の持つ、最大の“武器”であり、()()()()()()()()()

 

 

 閑話休題。

 

 

 このタイミングで金剛が霧島(キリシマ)を迎えに行き、戻って来たことで仕切り直しとなった。

 

 …その際、海風(ウミカゼ)は僅かにだが眉を顰めた。

 

 彼女の鼻は妹の夕立(ユウダチ)に次いでその嗅覚が優れており、最愛の姉である春雨(ハルサメ)の優しい香りをいつも堪能しているのだが、その嗅覚が霧島(キリシマ)から煙草以外の匂いを感じたのだ。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()を───。

 

 

 

「さてと、お互い顔合わせも出来て、程良く緊張も(ほぐ)れた事だし、本題に入ろうかね?」

 

 

 海風(ウミカゼ)が訝しんでいる中、いけしゃあしゃあと、いつの間にやら霧島(キリシマ)が司会役としてちゃっかり仕切っているが、ツッコミは野暮というものだろう。

 

 まぁ、この辺りは航宙自衛隊や国連宇宙海軍にて艦隊旗艦を勤めることが多かった故に、ヒトを引っ張って行くことに慣れており、自然と纏め役が身に付いてしまっていたという一面もあるが。

 

 

「単刀直入に聞くよ?

 

 若いの、そっちでのあんたの扱いはどんな感じだい?」

 

 

 この霧島(キリシマ)からの問に、アンドロメダはその真意が掴めず首を僅かに傾げる。

 

 

「〈…皆さん、本当に良くして下さいます。

 

 駆逐棲姫さん(お姉ちゃん)は言わずもがな、ここの責任者であります、人類側の呼称で飛行場姫と呼ばれているお方からはとても親身で、アポロノームを含めて何かと気にかけてくださいます〉」

 

 

 ここでアンドロメダは反応を覗う為に一息入れ、泊地棲姫が気を利かせてそっと用意してくれていたレモン水に口を付ける。

 

 霧島(キリシマ)は何も言わず、視線で続きを促した。

 

 

「〈飛行場姫さんはお料理が得意なお方で、またコーヒー豆の収集がご趣味であらせられる様で、手ずから淹れて下さいましたコーヒーはとても美味しかったです〉」

 

 

 このアンドロメダが語った内容に、霧島(キリシマ)は「ほう、面白そうだ…」という顔となり、春雨(ハルサメ)達は直前まで駆逐棲姫と楽しく語らい合っていた事から、そして土方も泊地棲姫から子供達の面倒を見ていると聞いていたこともあり、大きく驚くことは特になかった。

 

 …いや、とはいえ流石に鼻歌まじりに豆をコーヒーミルで挽きながら、楽しそうにコーヒーを淹れている飛行場姫の姿を想像出来るかと問われたら、皆一様に首を横に振るだろうから、それに関しては少なくともインパクトがあったと言える。

 

 だがそこから始まった、アンドロメダがこの世界での出会いに関しての語りによって、知られざる深海棲艦の一面を更に垣間見ることとなる。

 

 

「〈私がこの世界で初めて出会いましたのが、戦艦棲姫さんでした〉」

 

 

 いきなりのビックネームの出現に、騒然となる。

 

 

 戦艦棲姫。

 

 

 現在確認されている深海棲艦の戦艦タイプの中でも最強格の存在であり、大規模な戦闘となると必ずと言っていいほどにその姿が確認されており、時には単体で、時には複数の個体が艦列を列べて(肩を並べて)人類や艦娘の前に立ちはだかり、その強力な火力と防御力を発揮して幾度となく苦しい戦いを強いてきた。

 

 近年になってより強力な固体、上位互換とも言える戦艦水鬼なども出現して来ているが、それでも艦娘の中には戦艦棲姫の方が遥かに手強いと言う者がいるほどに、その存在は戦場において常に恐れられ、恐怖の象徴として君臨している。

 

 春雨(ハルサメ)達自身、()()()()()()使()()()()()()()()特に苦戦することは無いだろうが、現在使用している()()()()()()によるリミッターが掛けられた状態ではそれなりに苦戦は免れ無いと分析している。

 

 だが、アンドロメダが語る戦艦棲姫との出会いは、そんな恐怖の象徴としてのイメージとは掛け離れたものだった。

 

 

 出会った当初に悪戯こそされはしたものの、その言動は誠実であり、更には“お人好し”の様な、アンドロメダを気遣い、その行く末を案じて心から心配するかのような一面がある様に思えた。

 

 なによりその時点で既にアンドロメダを勧誘していた事実に、動揺が走った。

 

 この時は断ったというものの、その後に様々な偶然が重なったとはいえ、結果的に現在アンドロメダは深海棲艦に身を寄せている事実がある以上、戦艦棲姫の誠実な言動がアンドロメダの心境に対して深海棲艦への悪い先入観を抱かせなかったことが、今のこの現状に大きく影響しているのではないかと思われる。

 

 

 そして続く駆逐棲姫、空母棲姫や南方棲戦姫との出会い。

 

 

 その全てに共通しているのは、アンドロメダ曰く、直に接している時の彼女達からは一切の敵意、害意が感じられず、寧ろかなり友好的であるという事である。

 

 まるで、そう、語弊を承知の上で敢えて言うならば、()()()()()()()()()()()()()()()()、或いは()()()()()()()()()()()()()()そんな親しみが感じられるのだ。

 

 

 無論、アンドロメダがかつていた世界において、彼女達に該当するようなモノは存在していない。

 

 

 お姉ちゃんと呼んで慕い、互いが心を寄せ合い懐いている駆逐棲姫にしても、実際に“姉”と呼べそうな存在となると、モックアップや事実上の零番艦とも言えるテストベッドの建造が計画されはしたが、結局ペーパープランの段階で立ち消えとなった為、存在しない。

 

 

 だが身内や友人の様な、という言葉以外に思い浮かぶものがなかった。

 

 

 それくらい深海棲艦はアンドロメダに対して親密で友好的なのだ。

 

 

 また今日までの交流から、深海棲艦のメンタルは自分達と然程変わらないのではないか?とアンドロメダは考えていた。

 

 

 このアンドロメダの考えに、春雨(ハルサメ)達は頷いた。

 

 先にも述べたことではあるが、今までは戦場という限定された状況でしか邂逅することが無かったが故に、そのことに思いが及ぶ事はなかったが、先の駆逐棲姫との談笑によって、ここにいる春雨(ハルサメ)姉妹達の間では彼女に対しての友好の気持ちが芽生えており、そこから深海棲艦のメンタルが自分達と変わらないという考えを持つまでに至っている。

 

 

 しかしそれに対して反発したのが、この世界にて長年深海棲艦との戦いを続けて来た秘書艦金剛だった。

 

 頭ではアンドロメダの言っていることは理解出来ても、心情的にそう簡単には受け入れ難いものがあるし、なによりも限られた極一部だけを見て、全てを見た気になっているのではないか?とアンドロメダに問い詰めた。

 

 

 この指摘にアンドロメダは痛いところを突かれたと、その形の良い眉根を僅かに寄せてしまう。

 

 

 彼女、金剛の指摘はこの戦争の当事者として至極真っ当なものであり、これは地球のガミラスに対する感情と似たものがある。

 

 地球総人口の7割がガミラスとの戦いで失われ、その怨嗟の感情は未だ地球人の中で根強く残っており燻り続けている。

 

 この戦争におけるこの世界の人類に対する深海棲艦による直接的、間接的被害は、ガミラスとの戦いと比較したらかなり少ないが、それでも被害が全く無いわけでは無く、また憎悪を()()()に煽る人類側の情報操作の実態がある以上、下手な反論は却って彼女の逆鱗に触れて暴発してしまう恐れがあった。

 

 

 それに対してIowa(アイオワ)がアメリカ国内にて身分を偽って居住する深海棲艦達が、特に騒ぎなどの問題行動を起こすことなく過ごしていることを告げた。

 

 

 今回アクア・マリン(戦艦新棲姫)コーラル・リーフ(南方戦艦新棲姫)の2人と会うまでに、彼女は自身の持つ権限や伝手などを使って彼女達の立ち上げた商社を事前に調べ上げていた。

 

 元々が不法移民である点と、商社で取り扱う物品の搬入ルートが密輸という点を除いて、これといった問題は見付けられなかったし、地元民との関係もすこぶる良好。

 

 また密輸された物品の中に薬物や銃火器といった違法な物品は今の所は確認されず、全て食糧やコーヒー豆、煙草等の嗜好品であり、たまにワインなどのアルコール飲料類があるが、それは密造酒ではなく正規の物であることが確認されている。…盗品の可能性はゼロではないが。

 

 それに彼女達からしたら、違法とされている薬物などの御禁制品を用意出来るルートが無いし、それならば今自分達で用意できる物で販路を開拓したほうが確実だった。

 

 

 そしてそれはアタリだった。

 

 

 民衆を管理統制したい現政権や自称エリート達は、食糧問題に託けて完全配給制を画策したものの、いざ始めてみると必要な量の確保がまったく出来ず、強引に推し進めていた代用食は軒並み失敗に終わったどころか、公金を大量に浪費し、健康や環境に甚大な被害を与え、逆に食糧不足を加速させていた。*1

 

 

 馬鹿共が目先のカネに目がくらんだ末の、人災が引き起こした慢性的な食糧不足から、*2全米で闇市のような食糧の闇市場が横行した。

 

 そこに彼女達は食い込む形で販路を拡大していった。

 

 

 しかし、少なくとも問題らしい問題は見付けられず、価格も比較的リーズナブルで良心的。

 

 寧ろ善良な部類にしか思えないほど真面目で勤勉だったし、調べれば調べるほどヒトと──善良なる人間と──の違いが分からなくなるほどに、彼女達は人畜無害にしか思えてならず、積み上げられた報告書の前でIowa(アイオワ)は、調査に携わった者達と共に従来の常識とされていた事──破壊と殺戮の限りを尽くす暴虐な侵略者──が覆るということに、頭を抱えて激しく苦悩することとなった。*3

 

 …ただ1人、Arizona(アリゾナ)だけは頭を抱えることは無かった。

 

 何故ならばArizona(アリゾナ)は以前から個人的に内密で調査を行なっていた為に、既にこのことは掴んでいた。*4

 

 そこから今回の一件を仕組んだ。

 

 一度彼女達深海棲艦の、今まで見えていなかった、知らなかった事を知ることで、今までの常識に疑問を持たせ、悩みを発生させて行動力豊かなIowa(アイオワ)に実際に自身の目で、耳で彼女達の事をよく知っておくべきだとの行動に出る様に促そうとArizona(アリゾナ)は考えたのだ。

 

 

 そしてそれは功を奏した。 

 

 

 Iowa(アイオワ)は従来の“深海棲艦=敵”という単純な図式に対して明確な疑問を抱き、今回の邂逅によって“深海棲艦への歩み寄りが出切るかもしれない”という可能性へと思い至った。

 

 無論、前途多難であることは百も承知である。

 

 

 彼女自身、今までの蟠りの一切を水に流したわけではない。

 

 だが信頼を築き上げるにことで大事なのは、“相手を信じてみよう”という気持ちであるとIowa(アイオワ)は考えている。

 

 ただし、だからといって誰もかも、何もかもを無条件に全て信じるというものでは無く、よく調べ、納得し、信じるに足りるかどうかを考えて判断してからという最低限の条件(ルール)は設けている。

 

 

 そして今までの調べた内容から、実際に会って言葉を交わしたその感触から、信じてみようという結論に達したのである。

 

 

 政治家として清濁併せ呑むとも言える姿勢を示した、かつてのIowa(僚友)の言葉に金剛は何も反論せずに、黙って耳を傾けていた。

 

 

 ここでアンドロメダが口を開いた。

 

 

 しかしその顔は、話すことに最後まで悩みに悩んだと言える表情だった。

 

 何故ならばこれから話すことはアンドロメダにとっては一種のトラウマとも言えるものだからである。

 

 

「〈この戦争の部外者で、なによりも深海棲艦に心を許し絆され、駆逐棲姫さん(お姉ちゃん)のことが好きで好きでたまらない、このまま大好きな駆逐棲姫さん(お姉ちゃん)とずっと一緒にいられるならば、もう()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と考えだしてしまっている者からの、この戦争の当事者であります貴女からしましたら到底許し難い者からの、聞くに耐えない戯言かもしれませんが──〉」

 

 

 不穏過ぎる言葉が混じった、やや自虐的な前置きを置いてから、静かに語り出した。

 

 

 恨みや憎しみに囚われていては、いつの間にか自分自身がその対象と変わらない存在と成り下がってしまい、自分すら見失って、身を滅ぼすことになりかねないと、悲しみを湛えた顔で語るアンドロメダ。

 

 それはまるで自身の悔恨の様にすら聞こえるものだった。

 

 横で聞いていた海風(ウミカゼ)には、それが何を意味しているのかを察することが出来た。

 

 

 ガトランティス戦役。

 

 

 多くの者が傷付き倒れ、心に大きな傷痕を残し、多くの大切な者が奪われた史上最悪と言っても過言ではない、忌むべき最悪の戦争。

 

 

 この戦いでアンドロメダが“壊れた”ことは、誰しもが知っており、海風(ウミカゼ)も含めてそれを悲しむ者も多くいたが、アンドロメダが語ろうとしていることはそのことでは無く、その後の事だった。

 

 

 自身の心の中には未だにその時の憎悪の炎が燻り続けており、切っ掛けがあれば再燃し爆発する可能性があった。

 

 そしてそれは実際に起きてしまった。

 

 

 この世界で初めて経験した戦闘である空母棲姫、南方棲戦姫の率いる艦隊と戦った際、予想外にして、有り得ない事態が発生した。

 

 

 南方棲戦姫にショックカノンが通用しなかった。

 

 

 その時のことは記録として映像が残っていた。*5

 

 

 アンドロメダの主砲から放たれた陽電子の鏃が、南方棲戦姫に着弾する直前に、彼女の周りに突如として現われた薄いベールのような物によって掻き消された。

 

 それを見た全員が等しく驚愕したが、アンドロメダと同じ世界から来た者にはその映像に既視感があった。

 

 

「〈分析の結果、“これ”がガトランティス(蛮族共)が使用していた防御フィールドと酷似していることが判明致しました〉」

 

 

 そしてさらに映像は続く。

 

 

 自身のショックカノンが通用しなかったことに驚愕していたアンドロメダの表情が、分析結果を知った途端、見る見る間に歪んでいった。

 

 

 それは、正に“鬼”としか言い表わすことが出来なくなるほどに、“怒り”と“憎しみ”に歪んだアンドロメダの顔だった。

 

 

 泣き虫とすら言える、控え目で温厚そうな佇まいの彼女が、ここまで憎しみと怒りを(あら)わにし、犬歯を剥き出しにして憎悪に塗れた顔をするとは到底想像出来無い程の、恐ろしい形相だった。

 

 

 それに誰しもが息を呑み、怯える者が出る程の、当の本人ですら目を逸らしたくなる衝動にかられてしまう程だった。

 

 

「〈この戦いで、私は暴走し、ただの破壊者となる寸前まで落ちぶれてしまっていました…〉」

 

 

 もう勘弁してくださいと言わんばかりに、映していた映像を切るアンドロメダ。

 

 

 何故深海棲艦がガトランティス(蛮族共)と酷似した技術を使用できるのかは不明であり、また使用した南方棲戦姫ですらこのことを知らなかったのはまず間違い無いとアンドロメダは見ている。

 

 もし知っていたのならばあの時、別の戦い方があったはずだし、彼女自身は好戦的ではあるものの、だからといって仲間が無闇に傷付くのを良しとしない優しい一面があることを、アンドロメダは彼女との交流で知ることが出来た。

 

 

 そしてより激しく後悔した。

 

 

 なによりも恐れた。恐怖した。

 

 

 自身の中に未だ宿る“怒り”の凄まじさに。

 

 

 知性のある存在である以上は、どうしても負の感情からは逃れられない。

 

 

 だが強すぎる“火”は全てを焼き滅ぼすと言う様に、強すぎる感情は自身をだけでなく、周りのすべてを巻き込んで焼き滅ぼしかねない。

 

 

 それを悟った時、アンドロメダの心に芽生えたのは、“絶望”と、“悲しみ”だった。

 

 

 強大な、この世界では隔絶した武力という“力”を持つ自身が、もし再び“怒り”に呑まれて破壊の限りを尽くした場合、かつてのイスカンダルの過ちの様に星すらも滅ぼしかねない。

 

 それはすなわち、自身がこの頃から大切な存在であると思い始めていた駆逐棲姫をこの手に掛けることにも直結する。

 

 

 だからこそ、あの時アンドロメダは駆逐棲姫の胸の中で泣いた。いや哭いた。

 

 

 自分自身が怖くなった。自身がバケモノにしか思えなくなっていた。

 

 

 そして急激な、途轍も無い“孤独感”に襲われた。

 

 

 この時はアポロノームもおらず、また自らの同胞である春雨(ハルサメ)達、そして恩師霧島(キリシマ)や土方がこの世界に居ることさえ判っていなかった。

 

 だからこそ寂しい気持ちがアンドロメダの心の内にはあった。

 

 しかし一緒に付いて来てくれた駆逐棲姫のお陰で、その寂しい気持ちがかなり和らいでいた。

 

 

 でも、もし彼女からバケモノと呼ばれて怖がられ、拒絶されてしまったら…?

 

 

 嫌…。嫌…!嫌!!嫌っ!!ひとりぼっちは嫌っ!!

 

 

 

「〈…今にして思えば、あれは揺れ戻しだったのかもしれません〉」

 

 

 頭に血が上っていたのが、冷めたことによる反動だったのではないか?と。

 

 拒絶されるかもしれないという恐怖から、あの時は頭がぐちゃぐちゃになっていた。

 

 

 だけど、駆逐棲姫は怖がる素振りを一切見せることなく、アンドロメダの頭をその胸に優しく抱き締めてくれた。

 

 

 そこから、アンドロメダは駆逐棲姫に対して心を完全に開き、最初は半ば冗談で“お姉ちゃん”と呼んだのを、本気で“姉”として慕う様になり、また“怒り”や“怨嗟”といった負の感情に呑まれることの恐ろしさを身に沁みて思い知った。

 

 

 

「〈10年に渡り戦い続けて来られた方に、私のような若輩の他所者がなにを偉そうなことをとは重々承知しております。

 

 ですが、“怒り”や“憎悪”に呑まれた果ては、貴女方が“敵”としてイメージしています深海棲艦の姿そのものとなってしまうのではないでしょうか?〉」

 

 

 思えばあの時、波動砲の暴発から消滅する可能性が高かったわけだが、もしかしたら別の選択肢、例えばこの後に使用して有効だった三式弾をこの時に選択し、南方棲戦姫を滅多撃ちにして殺害し、返す刀で空母棲姫も殺害。

 

 さらに周りの深海棲艦も“深海棲艦はガトランティス(蛮族共)と同じ存在”と決め付けて目に付く深海棲艦を皆殺しにし、各地にいる深海棲艦を破壊衝動の赴くままに殺して回っていた可能性があった。

 

 だがこれでは自身が忌み嫌う、独り善がりの思い込みから破壊の限りを尽くしていたガトランティス(蛮族共)とどう違うのか?

 

 一歩間違うと自身がガトランティス(蛮族共)と同じ存在に成り下がっていたのではないかと思うと、背筋が凍る思いがしてならなかった。

 

 

 だからこそ、アンドロメダは語る。

 

 

 感情に呑まれて、自分と同じ過ちを起こさないで欲しいと。

 

 

 理想論に過ぎ無い、問いへの答えになっていないと言われたら、その通りであるし、さらなる反発が来ることも覚悟したが、金剛は微笑みを浮かべると「出過ぎた真似をしました」との言葉を発すると、引き下がった。

 

 

 既に軍としては、真志妻大将の内々の方針により、深海棲艦との講和に向けて動き出す事が示されていたため、彼女、金剛としてはアンドロメダの心の内を知りたかった。

 

 だからこそ、少し厳し目の質問を投げ掛けたのであり、理路整然とした答えは元から特に期待していなかった。

 

 必要なのは、彼女が自身の言葉でどのように語るか?そこからその心を読み取るというのが、金剛の目的だった。

 

 

 そしてこれは霧島(キリシマ)からの頼みでもあった。

 

 席を外していた彼女を迎えに行き、戻っている最中に「内容は任せるから、ちょっと試してみないか?」と問われたのだ。

 

 何度か話はしていたが、実際にどんな娘かを自身で見極めてほしいとのことだ。

 

 その結果、多少重い話となったが、その心根が優しい娘であると知れた。

 

 ただ自虐的で控え目に過ぎる気がしなくもないが…。

 

 

 

 ここまでの一連の動きを見ていた霧島(キリシマ)は、内心で少し笑っていた。

 

 金剛からのアンドロメダへの問い掛けに、割り込む形でIowa(アイオワ)が入り込んで来たが、それはIowa(アイオワ)によるアンドロメダへの援護射撃も兼ねていたのではないかと見ていた。

 

 Iowa(アイオワ)と金剛の2人は気心の知れた親しい仲であるし、Iowa(アイオワ)は金剛の狙いを察したのだろう。

 

 だからこそ、言葉や態度にこそ出していないが、自分が先に話すことによって、その間に話す内容をじっくり考えられるだけの時間を稼いであげたのだろう。

 

 

 ふと、これはヤマト(あの娘)譲りの“縁”の力かねぇ…?との考えが頭を過ぎった。

 

 キーパーソンと成り得るヒトを呼び寄せ、その“縁”によって道を切り開く。

 

 それが受け継がれているのだろうか?と考えたが、まぁそれは後回しだと、気持ちを切り替えた。

 

 

 問題は、思っていた以上にアンドロメダが深海棲艦に心を寄せており、自身が深海棲艦でもいいやと考えるに至っているとは、流石の霧島(キリシマ)も想像していなかった。

 

 画面に映る姫達もそのことでとても喜んでおり、どストレートに好き好き大好きと言われた駆逐棲姫は、アンドロメダをギュッと抱き締めてずっと頬擦りを続けていた。

 

 最早アンドロメダが人類の側に立って、深海棲艦と戦うことは絶対にしないだろう。

 

 寧ろ、深海棲艦と並び立って人類の前に立ち塞がる可能性の方が高かった。

 

 

 

 だが、()()()()()()

 

 

 

 

「若いの、あんたは今後どうしたいかの考えはあるのかい?」

 

 

 試すかの様な目線でアンドロメダを直視する霧島(キリシマ)

 

 その目は普段の(おど)けたものとは違い、戦いに身を置く者ならではの鋭いものである。

 

 

「あんたがそこにいる姫さんと相思相愛なのはよぉ~く分かったよ。

 

 傍らにいる意思決定、方針決定を司るであろう姫さんも、あんたのことを受け入れているみたいだしね。

 

 でもね、アポロノームのことはどうなんだい?」

 

 

 スッと目線をアンドロメダの斜め後ろで佇むアポロノームに向けるが、アポロノームは何とも言えない複雑な顔をしながら霧島(キリシマ)から目を逸らした。

 

 アンドロメダも、アポロノームのことがあったからこそ、私は深海棲艦としてずっと彼女達と一緒に居ると決めましたとは言わなかったし、言えなかった。

 

 もしアポロノームが居なかったら、間違い無くそう言っていた可能性があった。

 

 でも、だからといってアポロノームを疎ましく思ったりはしていない。

 

 しかしどうしたら良いのかという妙案がアンドロメダの中には無かった。

 

 正直な所、アンドロメダは人類に対して以前よりも強く懐疑的となっており、当初の予定通り日本に向かうことに対して、表情などに出してこそいないが、悩みが出ていた。

 

 しかしアポロノームはそんなアンドロメダ()の悩みを見抜いており、また自分がアンドロメダ()の足枷になっているという気持ちがあった。

 

 駆逐棲姫も、2人の気持ちを察しており、内心では複雑な気分だった。

 

 

 だが霧島(キリシマ)は押し黙ってしまった2人を尻目に、話を続ける。

 

 

「私達はみな、沖田さんの頼みで集まったという、共通の理由がある。

 

 その大前提はアンドロメダの安否と安全の保証だ。

 

 安否は今回の事で達成された。

 

 

 問題は────」

 

 

 ここで霧島(キリシマ)は言葉を切った。

 

 何故ならば今まで言葉を発していなかった土方がここに来て「そこからは俺が話そう」と発言したからである。

 

 いいのかい?と目線で土方に問うが、「ここからは政治が絡んで来る以上、俺が話すべきだ」との答えが返ってきた以上は、引き下がらずにを得なかったが、その際に土方に小さく「()()()()()()()()()()()」と耳打ちした。

 

 それに内心で舌打ちするも、顔に出すこと無く画面の前に立ってアンドロメダ達、そして周りにいる()()である仲間達に現状を理解してもらうために、()()()()()霧島(キリシマ)が語る予定だったものを、語り出す。

 

 

「日本は、アメリカと新ロシア連邦とのGREAT GAME(グレート・ゲーム)の係争地になっている」

 

 

 

 人類の飽く無き“業”は、アンドロメダ達の行く末に暗い影を落としていた。

 

 

 

 

 

 

*1
一例として、食糧問題解決として各地で急増したとある飼育施設の周辺では、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()や、その事態が発生された場所では常に軍が出動しての大規模な焼却作戦が行なわれるといった異常事態が頻発した。

 なお、これらに関する報道の(たぐ)いは()()()()()ながらまともにされておらず、異常気象が原因としか報じられていない。但し、その原因は既に公然の秘密である。ただ下手に口外した場合、身の安全は保証されないが。

*2
追随した他の国でも同様な事態が起きていることだが、

*3
とはいえその常識とされていたものに、疑問を抱いていた艦娘は米軍内部だけでも少なからずいるが。

*4
そもそも彼女は深海棲艦に対しての蟠りが無く、元いた世界での事例や学術から、“知性を持つ生命体の集団である以上はその集団を維持するために何らかの活動を行なっている可能性がある”と見ていたし、なによりも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から、「さもありなん」という気持ちの方が強かった。

*5
記録者はアナライザーである。





 サブタイトルのGGとはGREAT(グレート) GAME(ゲーム)の略でした。まぁ、前書きの段階で殆どネタバレだったと思いますが。

 だけどまた前置きが長くなった為に、分割だよチクショーメー!!はぁ…。
 

 兎も角次回からは水面下で行なわれている、日本を巡った米露対立と日本の動き、アンドロメダ達への影響に関してのあれこれを予定!


 深海棲艦への亡命計画が今、語られる!!
 

解説


GREAT GAME(グレート・ゲーム)

 元は19世紀〜20世紀の間に起きた、アフガニスタンを中心とした中央アジアの覇権を巡って起きた大英帝国と帝政ロシアの戦略的対立。

 現代においても石油や天然ガスのパイプラインなどで複数の国家が入り乱れて(大国だけでなく、小国もこのゲームに参加している)の新グレート・ゲームとしてより複雑さを増している。


 まぁ、簡単に超ザックリと言えば、その地域における外国勢力等による影響力を巡った殴り合いです。

 


愚痴コーナー、改め私見コーナー

 私見ですが、地球統一政体が今後出来たとしても、人類が本質的に手を取り合うことは決して無いでしょう。いや寧ろ今まで以上の混沌化した地球“内戦”となるでしょう。根拠はグローバル化によってテロのハードルが一気に下がった事が挙げられます。そしてここに統一政体内での派閥抗争が結び付いたら?各種の利権も絡み付いたら?下手に戦争が出来なくなったことで戦争利権で儲けていたネオコンなどの投資家達は困る訳ですが、それを彼らは良しとするのか?纏まりの無い世論に明確な“敵”という名のファクターを与えることで世論を誘導したり、都合の悪い事案への目隠しとして何度も使って来た連中が、この手段を今後も使い続けないと言えるのか?

 私は断言致します。統一政体そのものが戦争を生み出す為だけの“工場”になると。


愚痴コーナーだ!

 このコーナーを止めるとは言ってなかったのでな!!

 冗談はさて置き、実は本編執筆中に、日本のとある無責任デマカセ逃亡ブロック与党議員のせいで、本文の一部を書き直す羽目になりました。
 あまりにもタイムリー過ぎて、乗っかかったっぽくなりすぎるのは個人的な流儀に反しましたので。

 しかし私はあの男が推し進める物はどう考えても外国利権による日本の公金搾取の影が見えますし、長期的視野で見ると日本の国益に反する、いえ損なうとしか思えません。

 デマカセばかり声高に叫び、問題が出て来ると押えつけにかかり、遂には逃げ出して責任問題など知らんと言い、エサをぶら下げてのカードもあまりにも強引過ぎて怪しいですし、カナダでのフリーダムコンボイに対するカナダ政府による中共張りの大弾圧で見られた個人資産の無差別差し押さえとも取れるやり口から、政府への権力集中の危険性を警戒して個人的にあのカードには猛反発しています。今は良くても、将来国民の生命と財産を縛る首枷に成り得る可能性を、私はフリーダムコンボイの悲劇から学びました。もし、何かの手違いで共産主義者が政権を盗ってしまったら?これほど楽な富の集中、搾取方法は無いでしょう。
 今回の本文を一部書き直す羽目となりました、絶賛炎上中の“アレ”も、私は反対です。生理的な理由ではなく、何故それ一択なのか?メリットばかり言っているがそれの信憑性は?正直ソーラーパネル利権と同じではないでしょうか?私は発電に関しましては戦略的観点からも石炭火力発電を推しています。日本の石炭火力発電は世界的にトップクラスの発電効率と環境対策が施されており、輸出の目玉にもなりますし、石炭ならば日本でも採掘可能であり、有事に際して海外からの輸入が止まるリスクのある石油よりも安全です。
 話が逸れましたが、何故国内の一次産業を無視した政策を推進するのか?デメリットなどの研究は?などなどと突き詰めなければならない事柄は山の様にある中で、何故推し進めるのか?またこれを推進する連中はハッキリ言ってパフォーマンスだけで実際は推し進めているものを主食にはしないでしょう。

 他に優先してやるべきものがある中で、変なことばかりに公金を、私達の血税を浪費するな!売国奴!!


 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。

アメリカ大統領選挙のイメージは?

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