艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 グレート・ゲーム


 今回前半はある意味でこの世界の歴史解説みたいな物になります。
 所々に「ん?」と思う人達の名前が出て来ますが、その辺は笑って下さい。
 今回、元ネタに『空母いぶき GREAT GAME』の内容も含みましたが、政治背景の元ネタの方は実際はもっと複雑で自分の能力では書き切れない、無理があると判断しましたので、かなり簡略化した内容となります。誰か文才を分けてくれー!!(切実)


 それにしても、なんだか艦これからの逸脱が半端ねぇことに、今更ながら悩みが出てきてます…。本編42話(外伝込みで55話)現在、出た名前出し艦娘が7人のみでしかも全員が戦艦艦娘(内1人が諸事情で深海棲艦化)…。対して深海棲艦が姫様達だけでも14人と倍…。

 言い訳をさせていただきますと、『アンドロメダ』って完全に“戦略級兵器”なんですよね。
 そんな“兵器”をいきなり日本が保有するとなったら、周辺国が五月蝿くなるのは必然ですし、そもそも艦娘という“兵器”自体が深海棲艦の存在に関係無く世界の軍事バランスを大きく揺さぶったでしょうから、そこにさらに揺さぶる要素になり得るアンドロメダが現れたら…。
 列強によるアンドロメダの奪い合いが始まって、外交軍事オンチの日本じゃ、もう碌でも無い事態と未来にしかなりませんわ…。パワープレイと言う名の一方的な虐殺を強要され、政治の玩具にされる未来というアンドロメダがブチ切れるBAD ENDな結末に。

 だったらもういっそのこと更に碌でも無い世界にして、敢えて深海棲艦を反比例にある程度マトモ枠にして逃げ場を作るしかねぇと開き直った結果が、今のこの有様である。

 後、外伝と本編の整合性が取れなくなりつつあるのが悩み…。


第42話 GREAT GAME

 

 

 それは日本という国の、立地の悪さから来た宿命としか言いようが無かった。

 

 

 日本は西にアジア最大の大陸国家中国が横たわっており、北にはユーラシア大陸最大の大国であるロシア連邦が鎮座し、東には太平洋を挟んではいるが大国アメリカが控えている。

 

 

 第2次世界大戦以降、米ソ両国のイデオロギー対立による冷戦構造において、日本はある種の“最前線”だった。

 

 ソビエト連邦が太平洋へと進出する上で、日本は正に障壁であり、アメリカにとってはソ連の外洋進出を抑え込むための防壁だった。

 

 

 日本という“戦略的要所”を巡る、米ソ両陣営による影響力工作という名の、水面下での激しい戦いを繰り広げ、当の日本は他人事の様にボンヤリとしているだけだった。

 

 

 そんな日本の“裏の所有者(飼い主)”を賭けた“戦い(ゲーム)”は、20世紀の終わりにソ連が崩壊したことにより冷戦構造は終結し、この“ゲーム”はアメリカの勝利に終わったかに思われた。

 

 

 だが、直後に勝ちに驕ったアメリカや西側諸国、そして何も知らない知ろうともしない能天気で世間知らずな日本の失策により、かつて“眠れる獅子”と恐れられていたアジアの大国、中国が遂にその鎌首をもたげた。

 

 

 人件費の安さから“世界の工場”として持て囃され、大量の海外資本が流入したことにより、かつての戦後日本を遥かに上回るスピードで経済の発展が進み、それは同時に数だけの軍隊だった軍備の急速な近代化と増強を齎した。

 

 

 ソ連崩壊後、自分達を脅かす国家も、軍事力もこの世界には最早存在しないと胡座をかいていたアメリカは、中央アジアや中東での、所謂“テロとの戦い”に邁進して国力をいたずらに浪費させ、軍備の近代化とその方向性が大きく迷走、そして致命的な停滞を齎した上、グローバル化による官民での海外依存度が急速に拡大したことによって国内の富や経済の空洞化が進み、国家としての自立性が脆弱化していった。

 

 中国はその隙を突いてさらなる国力の増強と軍備の近代化に並行して、様々な“工作”に取り組んだ。

 

 

 “分断”と“取り込み”である。

 

 

 目を付けた団体や個人にペーパーカンパニーを通じて資金を流し込み、勢力を拡大させて従来の価値観や常識を攻撃させ、西側世界の世論に分断と混乱を促した。

 

 企業や政治界隈の人間に中国国内での利権を約束し、中国にとって有益有利となるロビー活動を行なわさせ、尚且つ利益相反関係として切っても切れない間柄として取り込んだ。

 

 

 21世紀に入り、世界がより一層のグローバル化と、デジタルネットワーク社会へと移行して行く中で、人々は世界がより身近なものとなり、新たな情報ネットワークによる情報伝達の迅速化に、それら新たな可能性への期待に胸を膨らませた。

 

 そして中国も()()()()()に“ほくそ笑み”、自らの“工作”完遂への確信を強めて内心で高笑いを浮かべた。

 

 

 所謂、“超限戦”である。

 

 

 通常戦、外交戦、国家テロ戦、諜報戦、金融戦、ネットワーク戦、法律戦、心理戦、メディア戦。

 

 

 あらゆる分野において、あらゆる手段を用いて制約なく戦う“次世代の戦略構想”であり、後に“ハイブリッド戦争”として遅ればせながら各国でも研究が進むが、その頃には既に手遅れに近い状態だった。

 

 

 中国が長年に掛けて世界へと張り巡らせ、“侵蝕”させてきた“根”は各国に完全に根付いて深く食い込み、その中枢を内部から酸蝕させてしまっていた。

 

 

 一部では中国の急激な発展に伴う強大化、影響力の拡大に対して、脅威や危機感を覚えた者達による様々な“警鐘”を提唱する動きが見られたが、それらは「グローバル化社会を受け入れられない、時代錯誤の黄禍論を振りかざす、危険思想にかぶれた一部の過激な“()()()()”による、妄想の産物」という、所謂“陰謀論”を吹聴する“陰謀論者”の戯言であるとして叩かれ、メディアを中心に人々から殆ど相手にされなかった。

 

 この頃の世論は殆ど親中路線で固まっており、一部で中国の脅威をどんなに叩かれようとも諦めず、必死に訴え続けたことにより、少し気に掛ける者も出だしてはいたが、それでも全体としてみたらまだまだ少数派だった。

 

 

 その結果、西側世界の結束にも次第に亀裂が生じる様な兆候が見られ、特に当時の日本において発生した政権与党の交代によって発足した新政権である鳩田政権は、盤石と言われていた日米同盟に亀裂を刻む事態を発生させた。

 

 しかし、この当時のアメリカの政権与党であった極左リベラル政党と同党から選出されていた当時の大統領、Bar(バー) Soetoro(ソエトロ)は表向きには懸念を見せたものの、内心ではこれでアジアに展開していた兵力やその軍事予算を中東での“テロとの戦い”に回し、世間の注目をより中東に向けさせられるとほくそ笑んでいた。

 

 

 そしてこの2つの政権にはある共通点があった。

 

 

 それは()()()()()()()()()()()である。

 

 

 その拡大による甘い蜜を目論む両者は、“自国による中国に対する脅威の排除”という目に見える“成果”を示す為に、片や日米同盟への亀裂、片や太平洋軍の兵力削減などという、国家安全保障を蔑ろにする愚行を平然と行なった。

 

 さらにSoetoro(ソエトロ)は時の中国国家主席である李寛平(リー・カンペイ)との間で、ある“密約”を交わした。

 

 

 それは()()()()()()()()西太平洋は中国、グアム島のラインから東太平洋はアメリカの管轄とする“太平洋分割案”という秘密協定である。

 

 

 海洋進出を画策していた中国にとって、日本と台湾は是が非でも抑えておきたかった戦略的要衝でもあり、長年策定してきた“第一、第二列島線”という絶対国防圏構想の完成には必要不可欠な物であった。

 

 

 ただこの動きは流石の極左リベラル政党内部でも意見が割れたらしく、断片的ながらも情報が漏れ、軍部や保守党などが中心となって反発の声が上がったが、 Soetoro(ソエトロ)政権はその声を無視、或いは抑え付けて推し進めた。*1

 

 

 これにより日本は事実上、中国に売り飛ばされることとなり、日本を巡るグレート・ゲームは中国に軍配が上がる寸前だった。

 

 

 だがそれをひっくり返したのが、保守党から当初は泡沫候補扱いだった、中国とそれに与するグローバリスト達によるアメリカ社会への悪影響と現実的な脅威を声高に訴え、後にアメリカだけでなく、各国の保守派から“奇跡の大統領”として讃えられたDonald(ドナルド) Joker(ジョーカー)氏の大統領選出と、ロシア連邦の存在である。

 

 

 Joker(ジョーカー)大統領は前政権と違い、アメリカ社会と秩序、そして価値観の完全破壊によるアメリカの失墜と転覆という中国の狙いを正確に見抜いており、元々が泡沫候補だったことからも、中国にとっては殆どマークしていなかった想定外の人物だった為に、影響力工作の魔の手が及んでいなかった。

 

 更に想定外だったのが、そのリーダーシップと行動力が想像以上に高く、中東和平などによる同地の安定化の成功や、今までの工作や極左団体によるポリコレやキャンセルカルチャー、極左リベラル政党の出鱈目な政策でボロボロになっていたアメリカを着実に癒やし、国力の回復や対中国を念頭に置いたアジア太平洋への戦力再配置、日本との同盟修復などを矢継ぎ早に実行させていった。

 

 

 ここにアメリカと中国は振り出し状態となったが、それに加えて更に想定外だったのが、ソ連崩壊後の経済低迷が続いていたロシア連邦が、中国の影に隠れて兵器の輸出や資源外交などを駆使して経済の立て直しを図り、かつてのソ連ほどでは無いにせよ、ある程度の復活を果たしてしまったのだが、その際にロシア連邦は中国とかつてのソ連影響圏やアフリカ方面における兵器輸出利権、資源関連利権などで揉めており、潜在的対立状態が年々増大し、また極東方面において従来の国境問題の再燃だけでなく、なによりも日本が中国に取り込まれると、実効支配中である北方四島における国境問題で揉める可能性が出て来るとの懸念があり、最悪ロシア太平洋艦隊や当時極東にて秘密裏に建設中だった“とある海軍基地”の建設と稼働にも影響が出ると見ていた。

 

 

 その後4年間、米中は激しく鍔迫り合いを続け、さらに米露は互いを“敵の敵”として奇妙な間柄状態が続いた。

 

 なお、日本は相変わらず()()()()としていたが、アメリカ以上に中国の影響力工作が浸透してしまっていた影響で、国内情勢や国防政策は混迷していた。

 

 

 そしてアメリカは確実に中国を追い詰めて行った。

 

 

 しかし、またしても情勢は大きく変化する。

 

 

 パンデミックとアメリカでの事実上のクーデターとも称される政権交代である。

 

 

 その後の顛末はご存知の通り、アメリカの事実上の崩壊と火山活動の活発化による地球寒冷化による食糧問題とエネルギー問題、それらに端を発する第三次大戦勃発による世界の混迷である。

 

 補足するなら、中国による台湾併合は先の Soetoro(ソエトロ)政権との密約が密接に絡んでおり、またこの時の大統領George(ジョージ)・K・J・Gene(ジーン)は当時の副大統領であり、この密約の締結に最も強力に推進していた人物であったことと無関係では無いとされている。

 

 さらに選挙期間中、ペーパーカンパニーや中国との繋がりの強いアメリカ国内の企業、団体、個人などを通して中国から多額の資金が流れていた痕跡も確認されており、Joker(ジョーカー)政権を本気で潰そうと形振り構わず工作を仕掛けていたのと同時に、後の台湾併合に際しての政権の動きと反応の鈍さから、台湾の購入費も含まれていたとも揶揄されている。

 

 ただ後に中華連邦を吹き飛ばしたのは、流石にこの頃になると国内の政権支持派の間でも対中感情が悪化していただけでなく、政権内部でのある種の中国切りを主張する勢力が増えていたことが大きく影響していた。

 

 

 この時期の日本は、3ヶ国による三つ巴状態が発生していた。

 

 かつて日本を中国に売り渡す密約を交わしていた極左リベラル政党であるが、当時と違いロシア連邦が力を伸ばしてきたという情勢の変化から、密約を無かったことにしてアジアにおけるロシア連邦への牽制として日本を利用したかった為ではないかとされている。*2

 

 

 この三つ巴の戦いは結局、第三次大戦中には決着が付かず、そのまま深海棲艦との戦いへと突入。

 

 

 そして中国が核攻撃で国家として崩壊(物理的にリタイアした)ことにより、アメリカとロシア連邦の後継国新ロシア連邦(NRF)との直接対決となった。

 

 

 

───────

 

 

 

「当時は噂程度ではあったらしいが、ロシア連邦が極東の何処かに新しい戦略原潜の基地を建設しているとの情報があった」

 

 

 土方が自身のPCを操作し、ロシア連邦、そして新ロシア連邦(NRF)のアジアでの動向の推移をプロジェクターで映しながら説明をしていた。

 

 

「気象変動の影響で北極海に展開していた戦略原潜を太平洋方面へと回航させていることも確認されていたが、詳しい基地の所在までは長らく不明だった。

 

 判明したのは、第三次大戦中に生起した第二次日露戦役で日本が北方四島の戦いに敗れた直後になる」

 

 

 プロジェクターが日本とベーリング海などを含む北太平洋周辺の海域と、所々にチェックと一部クエスチョンマークが入れられた──おそらくはその辺りで(くだん)のロシア戦略原潜或いはそれらしき物を探知したポイントなのだろう──俯瞰図を映し出した。

 

 なるほど、ある程度の法則性がある様にも見えるが、カムチャツカ半島、千島列島、そしてオホーツク海周辺になると途端に探知が不明瞭になってその先が分からなくなっていた。

 

 聞けば、どうやらこの時期この海域は“潜水艦のシブヤスクランブル交差点”と呼ばれる程、日米露中韓その他の潜水艦の過密地帯であり、牽制やら潜水艦同士のニアミスなどの影響で追跡が困難だった様である。

 

 

「当時東欧戦線に釘付けになっていたハズの、しかも極東からも兵力を移動させていたハズのロシア連邦が、あまりにも早く北方四島に戦力を展開し、反撃に出たことから、北方四島のいずれかに新基地が建設されているのでは?という可能性もあったが、首都圏の自衛隊施設攻撃を実行したと思しきロシア原潜を追跡した潜水艦が、その所在を突き止めた。

 

 場所はオホーツク海沿岸、漁港都市マガダンの近郊だ」

 

 

 新ロシア連邦(NRF)極東連邦管区*3の一つであるマガダン州、その州都であるマガダン市街及びその周辺を写した衛星写真が映し出され、更に市街から数十キロ離れた海岸線がズームされた。

 

 一見すると何も無さそうだが、よく見ると監視塔らしき建物などがいくつか見受けられた。

 

 新基地は地下基地として造られていた。

 

 思えば同時期に中国は海南島に地下基地を建設し、そこから原潜部隊を展開していた。

 

 ロシアも地下基地を造らない道理がなかった。

 

 

 それらは兎も角として、北方四島はこの新基地防衛に欠かせない、戦略的重要なポイントであることが見て取れる。

 

 

 アメリカとしてはこの新基地を無力化する一環として、日本に北方四島を奪還させようと()()()()()のではないだろうか?

 

 

 だが結果は日本の惨敗。

 

 

 北方四島を完全に失っただけでなく、講話交渉によって北海道北部に展開し、ロシア方面を監視していた自衛隊施設の殆どを撤去せざるを得なくなったため、オホーツク海やその周辺におけるロシア軍の動向が掴みづらくなってしまった。

 

 

 おそらくこの状態を作り出すために、ロシアは日本とアメリカを罠に嵌めたのではないだろうか?

 

 極東軍から激戦区の東欧方面に兵力を動かしたとの情報を意図的に流し、日本を誘い込んだ。

 

 

 無論、憶測でしかない。

 

 

 だが北方四島への兵力移動、展開の迅速さから見てまず間違いないと思われる。

 

 

 それは実際は半分正解である。

 

 

 確かにアメリカは日本をせっついてはいた。

 

 新基地への牽制、或いは封じ込めと、当時報道とは違い、旧NATO諸国と東欧の連合軍がロシア軍相手に苦戦し、一進一退を繰り返していた東欧戦線の支援のため、後方である極東で騒乱を起こすことで、ロシアの注意を撹乱するつもりで日本政府に参戦を打診していた。

 

 この事をロシアも掴んでいたし、想定もしていた。

 

 ロシアは日本政府の政権与党が、パンデミックでのいざこざや相次ぐ目玉政策*4の全てにおける不祥事と失政、特にそれらのための度重なる増税による経済への打撃とその対策が悉く失敗し、急速に求心力を失い、支持率が驚異の一桁台に落ち込み、*5かなり焦っていることを掴んでおり、()()()危険な火遊び、賭けに出ると見ていた。

 

 そして彼らの読みでは、日本の政府と自衛隊が検討と準備を入念に行ない、尚且つアメリカ側による支援は中東でのサウジアラビア、イランなどのアラブの国々と戦争状態であり、また侵攻したカナダもまだ安定していなかったため、軍を派遣しての直接の支援は無いだろうが、武器弾薬などの物資の後方支援は行なうと見られ、その準備が整った段階で動き出すとの予想を立て、それらに対しての対策を講じていた。

 

 

 だが、当初は断わっていたにも関わらず、何を考えたのか時の首相川岸絃人(かわきしけんと)()()()()()な調整も検討もせず、いきなり戦端を開く決断をしてしまった。

 

 

 アメリカとロシアだけでなく世界も、そして一部の日本国民も軍事常識に反した無茶苦茶な日本政府のこの行動には驚愕した。

 

 それによって緒戦こそ奇襲的な勝利を収めたものの、代償として早々に兵站が破綻し、更に最悪なことに予測よりも早かった日本の侵攻の影響で避難が遅れていた現地住民への誤爆や、地上戦に誤って巻き込んでしまったりといった事態が頻発。*6

 

 

 その後の顛末はご存知の通りである。

 

 

 川岸首相がこの時何を考えていたのかは、()()()()()()()()()()()()()()()()したため、最早誰にも永遠に分からない。

 

 閣僚や一部の官吏、自衛隊などでも急病に事故、急な精神疾患による入院、自殺などでリタイアが相次いだ影響で戦中の情報には未だ不明確な物も多い。

 

 余談だが、日本のネット界隈では川岸首相のことを、国民の不利益になることは即断即決し、利益になることは検討する検討するとしか言わず、決断をどんどん先延ばしにすることから名前を捩って遣唐使ならぬ“検討氏”と陰口を叩かれていた。

 

 

 閑話休題。

 

 

 兎も角ロシアはこの戦いによりオホーツク海の聖域化を成し遂げた。

 

 

「同時期に発生した中国による台湾併合もあり、戦後東アジアはホットゾーンとして注目を集め、日本を巡る争いの過熱化が予想された」

 

 

 戦後の国家再編で新ロシア連邦(NRF)、中華連邦となった両国はさらなる聖域の拡大による国家安全保障の盤石化と戦略的アドバンテージの確保のため、アメリカはそれに対する楔を打ち込むために、戦略的価値が飛躍的に高まった日本への積極的アプローチに乗り出した。

 

 しかし、新ロシア連邦(NRF)は先の戦役、中華連邦はそのどさくさ紛れの台湾併合による影響もあり、両国に対する日本国民の感情からアメリカがかなり有利な状態だった。*7

 

 

 だが、それを引っ繰り返す事態が発生する。  

 

 

 深海棲艦の出現である。

 

 

 その後の事は既にご存知の通りである。

 

 

 中華連邦は滅亡、アメリカは太平洋を分断されたことも影響してアジアへの*8支援や援助が物理的に難しくなったために影響力を衰退させ、そして新ロシア連邦(NRF)がその穴埋めに出た事で徐々に、だが確実にその影響力を拡大させつつあった。

 

 とはいえ、これにより新ロシア連邦(NRF)がこの戦い(ゲーム)の勝利者となったかというと、そうとは言い切れなかった。

 

 

 10年以上経った今でも先の戦役による蟠りは燻り続けており、またその背景にはかつての冷戦時代のソビエト連邦、いやそれ以前から続く、日本人の深層心理に刷り込まれてしまっているとも言える大国ロシアへの恐怖と蔑視の感情が大いに影響していると思われる。

 

 更にマスメディアなどではそういった感情を煽る行為が未だ根強く残っているのも無関係では無いだろう。

 

 それにはアメリカによる工作もあるだろう。

 

 兎も角として水面下では未だに激しい丁々発止や鍔迫り合いが続いているのは確かである。

 

 それでも、オホーツク海を起点とした聖域は新ロシア連邦(NRF)による対日援助と交易ルート、サハリンプロジェクトのパイプライン敷設の関係から、現在北海道沿岸の海域と日本海にまで拡大しているのはほぼ確実であると見られている。

 

 これにアメリカは大いに危機感を抱いており、日本に対して深海棲艦に対する日本海防衛の(かなめ)である、『対馬防衛要塞基地』による新ロシア連邦(NRF)海軍の潜水艦の動きを監視する様にとの“要請”を出したのだが、日本政府は兎も角として真志妻大将を始めとした海軍は「今の海軍にそんな余力は無い」とし、更に真志妻は「蛇口を絞られて、その後どうなるか…。その覚悟はあるの?」との懸念を上層部や政府にぶつけて突っ撥ねている。

 

 事実日本海軍は深海棲艦との戦いで手一杯であったし、新ロシア連邦(NRF)からの物資がなければ立ち所に干上がるという事実は覆しようがなかった。

 

 これによりアメリカは更に焦燥状態に陥ることになる。

 

 

 

「…以上が、今のこの国、日本の現状だ」

 

 

 土方はそう言って、辺りに視線を巡らす。

 

 

 みな一様に難しい顔をしているが、その胸中も共通していた。

 

 “呆れ”である。

 

 

 深海棲艦という、一応の人類共通の敵がいるにも関わらず、人間達はお互いの足の引っ張り合いをやめていない。

 

 口では団結だ!人類の未来の為に手を取り合おう!などとのプロパガンダを垂れ流し続けて入るが、その裏ではこの体たらくである。

 

 …いや、みな薄々とは気付いてはいた。

 

 

 自身が(ふね)であった時から、人間達は身内同士ですら意見や立場の違いから対立を繰り返しては争っていたのを、ずっと見てきた。

 

 人間のどうしょうもない一面に、悲しい気持ちになったのは一度や二度の事ではない。

 

 

 そしてそのことは深海棲艦の姫達も共感する思いであった。

 

 

 近年、まだ微々たるものではあるが、自分達が生きるために人間達との交流、商売を開始したわけではあるが、それによって今まで朧気だった人間達の社会についての見識を深めることとなり、より豊かな生活といった文化的な感性などを育むことにも繋がった。

 

 しかし同時に、人間達が抱える“負の一面”も知ることとなった。

 

 宗教、イデオロギー、人種、経済、貧富、文化、習慣などなど。

 

 様々な違いや問題から来る対立や諍い。

 

 

 彼女達には、それらはあまりにも刺激が強過ぎた。

 

 

 理解出来ないわけでは無かった、容易に諍いがエスカレートするのも、まぁ分かる。

 

 だけど、あまりにも未来を考えない短絡的で自滅的な愚行としか言えない行動や有様には、言葉を失った。

 

 

 その一例が、薬物だった。

 

 

 薬物ほど未来を滅茶苦茶にする物は無いと断言する程に、彼女達は薬物を毛嫌いしていた。

 

 

 働き手がいなくなる。真面な商売が成り立たなくなるなど、何が良いのかさっぱり分からなかった。

 

 だからこそ、そういった考えがあったからこそ、戦艦新棲姫や南方戦艦新棲姫は自身の商社で薬物を商品として取り扱わなかったし、取り扱わせなかった。

 

 そのことは深海棲艦の同胞(はらから)達の中でも破ってはならない禁忌の一つとなっている程である。

 

 

 しかし人間達との交流が進むに連れて、彼らの良い面と悪い面の両方が知れることとなったのだが、段々と悩みも出てくるようになった。

 

 

 積極的な交流ではなく、ある程度の距離間を保ったままでの可能な限りの限定的な交流に(とど)めるべきではないだろうか?という意見が出て来ており、戦争中ということも相まってその意見はかなり優勢であり、そう語る泊地棲姫もそのことに賛同的な立場だった。

 

 無論、子供達のことを変わらず愛し、大好きであるし、人間の全てを否定するつもりは無いと付け加えた。

 

 

 それを聞いた霧島(キリシマ)は、内心でニヤリとした笑みを浮かべていた。

 

 

 

「«…もし、私が日本に向かったら、その、()()()()()になるでしょうか?»」

 

 

 ここで今まで静かに耳を傾けていたアンドロメダが言葉を発した。

 

 言葉を濁しているが、言わんとしていることは皆に十分に伝わっていた。

 

 

 万が一、アンドロメダが日本に居ると各国に知れ渡ってしまったら。

 

 現状でさえ、途轍も無い力を秘めた存在であると知られているのだ。

 

 

「«…各国から、貴女への招待状(Love Letter)が寄せられるでしょうね»」

 

 

 Iowa(アイオワ)が苦り切った顔でそう告げた。

 

 アンドロメダを気遣ってか、こちらも言葉を濁しているが詰まる所、アンドロメダを巡っての奪い合いが起きかねないことを、暗に告げていた。

 

 そのことに全員が渋面を作り、駆逐棲姫は怒気を露わにし、当のアンドロメダは悲しい面持ちで俯いてしまった。

 

 それをアポロノームが宥めに入るが、アンドロメダの気持ちは深く沈んでしまう。

 

 自分で考え、行動した結果、それが自身にとって悪い方向へと作用することになってしまったことに、アンドロメダは打ち拉がれてしまっていた。

 

 

 

 どうしてこうなってしまったのでしょう…?

 

 

 

 その言葉しか、今のアンドロメダの頭からは思い浮かばなかった。

 

 アンドロメダにはどうしたら良いのかが、分からなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
このことが後の選挙に大きな影響を及ぼした。

*2
実際は時のロシア大統領Илья (イリヤ) Владимировна(ウラジーミロヴナ) Путина(プーチナ)の父親であり、元大統領のВолодя(ヴォロージャ) Владимирович(ウラジーミロヴィチ) Путин(プーチン)氏によって、ロシア国内に侵出していた極左リベラル政党議員の一族に連なる者達の利権が脅かされ、大損失を被ったことに対する個人的な恨みから来る私的な報復が目的だったりする。特にGene(ジーン)大統領は一族だけでなく当の本人も相当ロシア利権に食い込んでいた為、その恨みは人一倍強かった様である。

 まあつまり、極左リベラル政党のロシア嫌いの根本的理由は、彼らの個人的な逆恨みの怨恨に根ざしている。

*3
行政府所在地はウラジオストク。

*4
人権、環境、食糧、エネルギー、国防分野

*5
なお、野党トップとの差は1%だった。

*6
当時それらはロシアによるプロパガンダ目的の偽旗作戦や誤情報とされていたが、後に戦闘に投入されていた自衛官とその関係者による告発、特に航空自衛官による、“誤爆を公表することによって士気の低下や国際世論の対日感情悪化への懸念”により、上からの指示で箝口令が敷かれていたとする複数の証言や、自分達の犯した事実が捻じ曲げられたり隠蔽されていることへの良心の呵責からの暴露や告発が相次いだことで、戦後に様々な大混乱が発生した。

 なお、その後政府がすったもんだの挙げ句、隠蔽の事実を認めた。

*7
因みにだが、この時の朝鮮半島は色々あって政府を称する集団が乱立する、所謂群雄割拠の半ば無政府状態であった。

*8
と言ってもマトモな国はもう日本しか残っていないが。





 八方塞がりなアンドロメダの明日はどっちだ…?

 まぁ、この問題は当初より考えていた事態ではありますが。


 それにしても今回は(今回も?)調べれば調べるほど袋小路に嵌まり込んで大変だった…。

 それはそうと人の名前を考えるのって、やっぱり大変だべ…。と再認識。まぁ、一番の苦労はスペルの方でしたが…。


私見コーナー

 個人的な見解ですが、現在起きている紛争にてロシアは言わずもがなでしょうが、アメリカを中心としたNATOも超限戦を積極的に行なっているフシがあると、私は見ています。また戦場となっている国は中国ともズブズブな関係がありましたから、超限戦に関する何らかのノウハウを人民解放軍から得ている危険性が高いと警鐘を鳴らしています。

 私はこの3年余、西側、特にアメリカを中心に政治の動きを見てきましたが、ハッキリ言わせていただきますと、“法の形骸化と()()解釈による為政者にとって都合のよい武器化”という実態(一例として、保守に対する弾圧や言論封殺。)から、「自身が成すことは全て正義であり、法もそれに合わせて解釈するべし」との“独善的な自己正当化バイアス”により超限戦において指摘されている───


 超限戦の本質は、以下の2点で、国際法に反した邪道の戦い方であり、自由民主主義や世界秩序に対する明らかな挑戦である。

 “目的のためには、手段を選ばず、制限を設けず、あらゆる可能な手段を採用して目的を達成する”

 “自由民主主義諸国が重視する基本的な価値観(生命の重視などの倫理、国際法、自由、基本的人権など)を無視し、あらゆる境界を超越する戦いを推奨する”


───という批判も“独善的自己正当化バイアス”の前では何の意味も成していないと見ています。


 私には疑問です。

 何故大量破壊兵器保有の“疑い”で始まり、結局は“嘘”だった挙げ句にイラクを、中東を滅茶苦茶にした第二次湾岸戦争、所謂イラク戦争は未だに“正義”の戦い扱いで、此度の紛争において切っ掛けとしているドンバスでのロシア系住民迫害やNATOの東方拡大による核配備への懸念、ネオナチ問題を頭ごなしに否定し、“悪”とするのか?ドンバスでのロシア系住民迫害は紛争が始まる前まで、国連でも取り上げられていた問題であったと記憶しておりますが、突然無かったことの様な扱いになっていたことに、始まった当時に驚いたものです。イラクで例えるならばクルド人迫害が無かったことになったみたいなものです。

 ロシアに対して思うところが無いわけではありませんが、それ以上に、この3年近くの西側首脳陣の所業から、西側に対して思うところが有り過ぎます。


 今の紛争が駄目だと主張するならば、イラク戦争も駄目だった、“イラク戦争はアメリカによる一方的な悪の侵略戦争”だったと“再評価”すべきであり、そうしなければ論理が根本的に破綻していると、私は主張致します。


 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。

アメリカ大統領選挙のイメージは?

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