艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 幽霊船と仕事中毒艦隊


 久々に主人公登場!


 すみません。研修やらなにやらでドタバタしてました。では本編を、その前に──


 皆様、アンケートにご協力ありがとうございました。

 アンケートの答え合わせですが、答えは───


 “間接選挙制度”です。


 詳細は文章が長くなり過ぎますので、掻い摘んでザックリと説明致しますと、アメリカ大統領選挙は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()選挙人票で争う制度です。

 ですので総得票数よりも、どれだけの選挙人票を獲得出来たかが勝負の分かれ目となります。

 先の2020年選挙における選挙人数の差は306対232で、この結果を左右する票差はアリゾナ、ウィスコンシン、ジョージアの三州での合計43000票差であり、この内21500票の投じた先が違っていたら、結果は引っ繰り返っていました。

 よく700万票差ガー!と奇声吐いてる馬鹿…、失礼、気炎吐いている人いますが、お勉強不足でお話になりません。

 また2016年選挙でも、得票数では民主党の栗金団が上回っていましたが、選挙人の差で共和党のトランプ大統領が勝利致しました。

 この事は2016年の報道で選挙人票について出ていましたが、2020年の際には全く報道無し。総得票数のみ強調。

 もうね、マスメディアは幼稚ですわ。変なバイアスや主観を放り込んで編集や切り取りをやらない中東のアルジャジーラを見習えとしか言えん。

 変な話ですが、切り取りとかしないからとテロリストからの信頼も篤く、犯行声明を録画した映像の放送をアルジャジーラに依頼して出しており、テロリストの犯行声明がアルジャジーラから出るのはこういった背景があったりします。



第52話 Ghost Ship and Workerholic Fleet

 

 

 日本で陰鬱とした議論が交わされているなか、ここサイパン島でも議論が交わされていた。

 

 推定4倍以上の物量差があるとされている、その片鱗をまざまざと日本軍に見せ付けた彼女達ではあるが、実際のところ彼女達も彼女達で、それなりに問題を抱えていた。

 

 

 大所帯故に色々と遣り繰りが大変なのだ。

 

 

 大部隊を維持するために必要となる補給物資、それを展開する各部隊へと滞り無く分配する輸送計画。

 

 用意された補給物資を計画通りに輸送するための輸送隊の編成や、襲撃に備えての護衛部隊の編成に両部隊の活動に必要な物資の準備やその手配。

 

 そして部隊の交代に伴うあれこれの差配に必要な物資の手配にと、やることは一見とても地味なのだが兎も角非常に沢山あるのだ。

 

 

 そもそも部隊を動かす差配だって一朝一夕にはいかない。

 

 

 組織運営に纏わる事務仕事という点に関しては、深海棲艦が人類に対して最も劣っている点であると言わざるを得ない。

 

 

 この十年でその辺りの事も急速に学習し、一部ではそれを活かして起業に成功している者もいるが、それでも人類発祥から現在に至るまでに蓄積された経験に追い付くには、十年そこらでどうにかなる様な代物ではなかった。

 

 

 飛行場姫としても、潜水新棲姫の提示した大規模な陽動作戦案は、かなり魅力的であると見ているが、それを実行に移すとなると現在の補給計画や部隊のルーティン計画、備蓄物資の遣り繰りなどを大幅に見直す必要があり、それに費やす時間は膨大なものとなる。

 

 

 人類ならばデジタル技術などを駆使したネットワークによる有機的かつ効率的な在庫管理システムや、数々の先進的なマニュアルがあるが、深海棲艦は人海戦術に頼っている。

 

 

 深海棲艦の中には、特に陸上型の姫の中にはこういった後方担当の事務業務が生まれつき得意とする、プロフェッショナルな個体もいるにはいるのだが、その絶対数があまりにも少ない為、その殆どは後方の、例えば食糧の一大生産地であるインドネシアといった、最も物資管理が大変で複雑な一大生産拠点や、少しでも滞ると担当海域全体に悪影響が出かねない重要な物資集積拠点に集中しており、マリアナなどの前線に配置されることは無かった。

 

 

 それでもプロフェッショナルといかなくとも、彼女達から学んで薫陶を受けた者や、それなりに得意とする者が請け負っており、今のところはなんとか上手く遣り繰り出来ている。

 

 しかし、一度構築された手法を変えたりすることに難色を示したり、想定外の事態に弱かったりと、その内情はやや硬直化しているとの問題もあった。

 

 それはなにも面倒だから、という理由ではない。

 

 万が一、滞りが生じてしまい、同胞(はらから)達に再び飢えの苦しみを味あわせてしまうのではないか?との恐怖があった。

 

 

 実際、とある不幸なトラブルから補給に乱れが生じて前線が混乱したことがあった。

 

 そのトラブル事態は偶発的な自然災害が原因であり、誰の責任でもなかったのだが、この時の担当責任者が自責の念に駆られてしまい、自裁する痛ましい事件が起きてしまった。

 

 その責任者は「災害が原因とはいえ、完全に予測出来ない類いのものではなく、私が気付いていれば回避出来た。私のミスだ。私のミスで同胞(はらから)に大きな迷惑をかけてしまった」と漏らしていたという。

 

 この時の災害とは時化によるものだった。運悪く輸送船団が時化に突っ込んでしまい、衝突事故などの混乱が発生したものだった。

 

 確かに雲の動きなどから、時化の兆候は予想出来たかもしれないし、時期的に海が時化やすい季節でもあった。

 

 所謂、予報が出来なくも無かったと言えなくもない。

 

 

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 この時はまだそこまで十分な予報のノウハウがあったとは言えない時期であり、個体それぞれの経験と勘に頼った、ややアバウトなものだった。

 

 

 これ以降、深海棲艦は本腰を入れて予報に力を入れる様になった。

 

 

 この様に、明確に誰かの責任という訳ではなく、敢えて誰の責任かと問われれば、今まで対策を講じてこなかった深海棲艦全体、いや、指導的立場にある上位種である姫達の責任であると言えるのだが、自裁した責任者はその事を理解しながらも、責任感が強過ぎた。

 

 

 そもそも深海棲艦は種族的な特色なのか、些か責任感が強い傾向にあり、ミスに対して自罰に出やすかった。

 

 この事で姫の中からも責任を感じて後追いで自裁する者が出掛けてしまい、大騒動にまで発展した。*1

 

 すったもんだの挙げ句、この時はどうにかなり、姫達は自分達も含めて軽々に自罰に走らない様にとの通達を出して戒めているが、それでも完全には無くならず、自裁してしまう者も少なからず出ていた。

 

 頭の痛い問題であるが、姫達は半ば諦めていた。

 

 その背景には、人間達の厚顔無恥な我が身可愛さの無責任ぶりを知ったことにより、こんな恥知らずの様になるよりかは潔く…。というどこのブシドー精神ですか?と言いたくなる様なハラキリ思考がこの頃芽生えていた事が影響していると思われる。

 

 だが、だからといって何かしらのミスが起きる度に、バッサバッサとハラキリを行なわれたら敵わないからと、諦めながらも啓蒙活動に取り組んでいる。

 

 

 兎も角として、今回の事は計画外の事案であり、また投入戦力の規模からも、輸送計画を一度大きく見直しを図る必要があるのだが、正直時間が足りない。

 

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 そこに来てまた直ぐ様に計画の見直しとなると、混乱が生じて仕舞いかねない。

 

 投入戦力の規模を縮小すべきか?との考えを飛行場姫は巡らせるが。

 

 

「でも日本の周辺海域の警戒網の層は分厚くて厳重だよ?生半可な戦力だと門前払いされちゃうよ」

 

 

 飛行場姫の考えを先読みした潜水新棲姫が指摘する。

 

 

 事実日本の警戒網は、前線の隣接する部隊間の連携による相互支援体制に加えて、その後方予備戦力の迅速な投入態勢などによって縦深防御の能力も高い。

 

 下手に戦力をケチると逆襲されて、こちらの損害が蓄積するリスクが高い。

 

 

 ジレンマであるが、戦力の逐次投入の愚かしさは飛行場姫としてもよく理解している為、ここは多少の無理や無茶を承知で動くしかないとの結論に達した。

 

 

 

「人手が足りないのが痛すぎるわ…」

 

 

 思わずといった雰囲気で呟いた飛行場姫の一言に、アンドロメダは首を傾げた。

 

 そしてそういえばと駆逐棲姫が疑問を口にした。

 

 

「昨日ラウンジに集まった時、何人か欠けてましたよね?」

 

 

 駆逐棲姫の記憶では、マリアナには複数の上位種の同胞(はらから)が常駐している筈なのだが、記憶にあった人数と一致していなかった事を思い出したのだ。

 

 無論、当直などの外せない事情があった者もいたのだろうが、それでも今の今まで顔を合わせていないのは不自然だ。

 

 

 この駆逐棲姫の問いに飛行場姫は「ああ…」と漏らすと、「まだあの件のことは伝えてなかったわね」と続けて、理由を話した。

 

 

「最近近くの海域で幽霊船が出るようになってね。その正体を確かめるための部隊を出したのよ」

 

 

「幽霊船?」

 

 

 思わぬ答えにキョトンとなりながらオウム返しに聞き返してしまうアンドロメダ。

 

 まさか怪奇現象の為に部隊を展開しているなどとは思いもしなかった。

 

 

 そんなアンドロメダに対して飛行場姫は苦笑しながら「幽霊船というのはあくまでも仮称よ」と返し、詳しい内容を話し出した。

 

 

「数日前から出没し出したのだけどね、目撃情報からどうも同胞(はらから)の潜水艦っぽいのだけど、同胞(はらから)が近付くと煙のように跡形もなく消えるのよ」

 

 

 これに対して駆逐棲姫は普通に水中へと潜っただけなんじゃないの?と問い掛けたら、パトロール中の同胞(はらから)が遭遇した際、消えた直後に急いでソナーで走査したが、近くで展開中の同胞(はらから)の潜水艦以外にはなんの反応も示さなかったとの報告が上がっていた。

 

 そして反応のあった同胞(はらから)の潜水艦とは幽霊船を目撃した方向とは別方向であったため、誤認の可能性は限りなく低かった。

 

 また付近の部隊に警戒を呼び掛け、網を張ったが捕捉は叶わず逃げられたという。

 

 

「無害なヤツならば良いのだけど、もし()()()に関わりのあるヤツだったら後々面倒なことになるかもしれないからね。念のため潜水艦と軽巡の娘が手勢を率いて調査に出たのよ」

 

 

 潜水艦ならば、水中で捕まえる事も出来るかもしれないからね。と付け加えられた。

 

 確かに、警戒網をスルリと潜り抜けるだけの技量を持った者が、もし補給線を荒らす行動に出たとしたら大変である。

 

 しかし何故同胞(はらから)であると言えるのか?艦娘の中には深海棲艦と酷似した容姿の者もいると聞く。

 

 それこそ今傍らに居る駆逐棲姫は同郷の春雨(ハルサメ)と顔がよく似ていた。

 

 もしかしたら同胞(はらから)の潜水艦と容姿が酷似した潜水艦の艦娘が、その事を利用して擬装による変装を施し、何かしらの隠密偵察を行なっていたのではないか?とアンドロメダは指摘した。

 

 

 これに対して飛行場姫は、念のため目撃された海域を中心点として、艦娘のおおよその航続距離から逆算した円内を捜索したところ、母艦らしき存在を確認出来なかったこと、また母艦となり得る船の活動報告が、母港としている軍港の沖合で動向を見張っている偵察部隊から来ていなかったことからも、艦娘の可能性が低いと見た理由であると説明した。

 

 しかしその答えにアンドロメダは、先日空母棲姫と南方棲戦姫に語ったことでもある、人類の潜水艦を母艦とした潜水艦艦娘の特殊部隊の存在を伝えた。

 

 もしかしたら戦力を釣り出しての各個撃破を目的とした囮ではないか?との推論を述べ、更にお節介なのを承知で、常に最悪の事態を予測して行動しなければ足元を掬われる原因と成り得るから、楽観すべきではないのでは?とも付け加えた。

 

 

 このことに飛行場姫は渋い顔となった。

 

 その反応を見て、アンドロメダは彼女達が本当にこの特殊部隊の存在を知らなかったのだと察した。

 

 

 飛行場姫も万が一の戦闘は想定していたが、もしもこの仮称“幽霊船”による騒動が、釣り出しを目的とし尚且つ殲滅も視野に入れての作戦だったとしたら、こちらの戦力は些か心許無い。

 

 

 しかし同時に、別の可能性にも思い至る。

 

 

 目撃が相次いだ海域周辺へと注目を集めさせて、他の所でなにかしらの行動を画策、それこそ輸送路の襲撃や戦力を抽出したことによって防衛戦力の低下した拠点への破壊工作といった攻撃行動などなど。

 

 

 考え出したら切りが無い。

 

 

 しかし問題は“それが一体どこの国軍の部隊なのか?”という疑問がある。

 

 

 太平洋で潜水艦を運用可能な国軍は日本とアメリカ、それに新ロシア連邦(NRF)の三ヶ国の海軍であるが、日本は泥沼の沖縄戦線に掛かりっきりでその戦力に余力が無い。アメリカは今までの政治の混迷と、この戦争でのハワイとアリューシャン列島の失陥、その後の日本のAL/MI作戦と呼応して発動したハワイ奪還作戦の失敗により、外洋海軍(世界の警察官)から地域海軍(自宅警備隊)へと変化(転職)して沿岸地域防衛の強化(引き籠り)を継続中。では新ロシア連邦(NRF)はというと、既存の水上、水中艦隊は兎も角、三ヶ国中最も艦娘戦力が少ないという事実と基本戦略方針がA2/AD、*2 接近阻止・領域拒否を主眼としているため、積極的な外洋作戦に出るとは考え難い。

 

 

 現状どこも積極的な動きに出るとは考え難かった。

 

 

 とはいえ、将来に向けての実験的要素を含んだ作戦ならば、可能性はゼロであるとは言い難い。

 

 

 答えを導き出すには、現状では情報が少なすぎる。

 

 

 だが今悩んでも仕方がないと、アンドロメダは更なる情報収集の強化と、その提供を申し出た。

 

 また人手が足りないのならば、私を使ってもらっても構わないとまで言い出した。

 

 

 これには流石に飛行場姫は難色を示した。

 

 

 いや、飛行場姫の本心としては、アンドロメダの申し出は非常に有り難いとの思いがあった。

 

 

 しかしアンドロメダは立場的にかなり微妙な立ち位置であり、強いて言うならば賓客クラスの“客人”なのだ。

 

 

 それに、である。

 

 

「…アンタの申し出は、アタシとしては有り難いけど、下手するとアンタと人間達との火種になるかもしれないのよ?」

 

 

 アンドロメダはその言動から、かなり深海棲艦寄り、いや殆ど贔屓とも言えるが、“どちらの陣営なのか?”という点では今のところは“まだ”第三勢力的であると飛行場姫達は認識していた。

 

 

 謂わば宙ぶらりん状態なのだが、それについてどうこう言うつもりはない。

 

 

 単独でもゲームチェンジャー足り得る“武力”を有する存在だが、彼女はこの戦争に関してなんの責任も無ければ、無理して介入する必要があるとは言えない。

 

 

 だがアンドロメダの申し出は事実上、人間達との明確な敵対関係化に繋がりかねない代物だった。

 

 

 こちらとしたらアンドロメダとは啀み合い、対立する間柄ではなく、健全な友好関係を維持し続けたいというのが、先の“円卓”の意思決定における総意であるが、さらに踏み込んだ一種の軍事同盟的な間柄までは望むつもりは無かった。

 

 流石にそれは望み過ぎで、厚かましい願いだとの思いがあったからだ。

 

 

 しかしこちらの思惑とは裏腹に、アンドロメダは思いの外に積極的だった。

 

 

「それに、その事でアンタの同郷の娘達とも砲火を交えるかもしれないのよ?」

 

 

 飛行場姫としてはこの事が一番の気掛かりだった。

 

 

 ただの同郷というだけでなく、互いに顔も知っている親しい間柄の者や、恩師に慕う者やその関係者までいるのだ。

 

 

 それに対して引き金を引くかもしれない。その覚悟はあるのか?と目で訴え掛け、尚且つ隣りにいる妹のアポロノームにも視線を向けた。

 

 しかしアポロノームは肩を竦めるだけだった。

 

 

「今更ですよ」

 

 

 それで良いのか?と飛行場姫が口に出しかけた瞬間、アンドロメダが先に口を開いたため、アポロノームに向けていた視線を戻したのだが、アンドロメダは問題はないと言わんばかりに微笑みを浮かべていた。

 

 

「私やアポロノームがここにいて、拘束されて行動の自由を奪われているわけでもなく、寧ろ自由を謳歌し、お姉ちゃんと一緒いて心を通わせているのを、あの娘達や先生は見たのですから、今更言い繕う気はありません」

 

 

 その答えに飛行場姫は些か納得がいかなかったが、直後にアンドロメダの微笑みがゾッとするような冷徹なモノへと変わり、背筋が寒くなる思いがした。

 

 

「それにパワーバランスの観点からも、人類側ばかりに私達の様な“規格外の()()()()”が集中するのは、よろしくありま(しぇ)ん。

 

 …お姉ちゃ(しゃ)ん、(いら)です(れふ)

 

 

 アンドロメダの怖い笑顔と、自分自身を“バケモノ”と言ったことが気に入らなかった駆逐棲姫が、頬を膨らませて涙目になりながらアンドロメダの頬を抓ったため、語尾が可怪しくなってなんか台無しになった感は否めないが、飛行場姫はアンドロメダの言わんとする事に理解を示しながらも、頭痛を覚えた様な錯覚に囚われた。

 

 確かに、駆逐艦クラス、しかも火砲などの装備を一般的な駆逐艦娘のそれと合わせたという、明らかに意図して本来の性能を落とした状態でも、こちらは手も足も出ない有り様だったと聞く。

 

 もしも本来の装備を身に着けていたとしたら、さらに一方的な、虐殺に等しい惨劇が生み出される可能性は、想像に難しくない。 

 

 そこに来てアメリカにも戦艦クラスの存在が、一人だけとはいえ確認された。

 

 

 正直に言って、この事実に内心で恐怖を覚えずにはいられなかった。

 

 

 いくら日米双方の彼女達が先の通信から融和に向けた動きを見せたとはいえ、現在における彼女達の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、その意思決定の最終決定権は()()()()()()()()()()()

 

 

 日本は海軍大将が、アメリカは次期大統領候補の有力議員がそのバックにいるとはいえ、それが今後どう動くかは分からない。

 

 そして日米だけでなくヨーロッパ、もしかしたら新ロシア連邦(NRF)にもいるかもしれない。

 

 

 そう考えるだけで恐怖に押し潰され、気が狂いそうになる。

 

 

 こちらにも抑止力足り得る“力”は、正直に言って是が非でも欲しい。

 

 でもだからといって、こちらの都合だけで本来ならばこの戦争と関係無かったハズの、親しい身内同士が相争う事になるのは、幾らなんでもそれは越えてはならない一線だとの思いが飛行場姫にはあった。

 

 

 アポロノームがなにも言わない事を見るに、アンドロメダ()と同じ考えなのだろうが───

 

 

「…もう少し自分達自身を大切にすることを覚えなさいよ」

 

 

 苦り切った顔でそう苦言を呈する事が精一杯だった。

 

 

 自分を押し殺す滅私の精神は、ある種の美徳であるとされる事もあるが、あまりにも行き過ぎるとそれは単なる自己満足の自己犠牲精神の発露に過ぎなくなる。

 

 

 その事を察した駆逐棲姫が、アンドロメダ姉妹(妹分2人)に説教を始めたのだが───

 

 

「みんながそれぞれ出来る事で、一生懸命に動こうとしているのに、私は何もしないというのは、流石に辛いです」

 

 

「なんでもいいから、なんか仕事をくれないか?」

 

 

 要約すると、働きたい。役に立ちたいのだ。

 

 

 生まれてからこの方、ある意味で働き詰めだった反動とも言える。

 

 周りが働いているのに自分達だけ働かないというのが、なんだか無性に納得いかないのだ。

 

 

 この事に本気で頭を抱えそうになる飛行場姫。

 

 

 もしこの場に土方と霧島(キリシマ)の2人がいたら、彼女の肩に手を置き、なんとも言えない疲れ切った表情を浮かべていただろう。

 

 

 何故ならば、この事は春雨(ハルサメ)姉妹達にも見られた現象なのだから。

 

 

 これは、なにもかも足りなかったガトランティス戦役の負の一面である。

 

 

 彼女達は動けるものが率先して動く事が当たり前だったあの戦役しか知らなかったのだ。

 

 事実上の生まれながらに社畜根性、いや仕事中毒(ワーカーホリック)が染み付いてしまっていた。

 

 

 いつでも、直ぐにでも第一線で戦える様にと訓練、訓練また訓練と、まさに訓練漬けの毎日だったのだが、訓練が無かったりドックに入渠中や補給中でも各艦の乗員達は勉強会や研究会を繰り返していた。

 

 そして長姉である春雨(ハルサメ)は、自身が元々テストベット艦であり、性能その他諸々が妹達よりも劣っているとの思いから、より厳しい訓練に明け暮れていた。

 

 

 春雨(ハルサメ)姉妹達は、自身の乗員達のこの頃の気質を色濃く受け継いでしまっていた。

 

 

 それ故に、休むという事を知らなかった。

 

 

 この事に土方と霧島(キリシマ)は当初頭を抱えてしまった。

 

 

「休みって、なんですか?」

 

 

 真剣な顔をしながら、或いは不思議そうな顔をしながら小首を傾げてそう尋ねられたら、誰だって頭を抱えたくなってしまうだろう。

 

 

 恐らくだが、同世代の(ふね)達も似たり寄ったりなのだろう。

 

 

 ただアンドロメダ姉妹達はその中でも最初期に就役しているのだが、こちらはこちらで旗艦クラスの戦艦であったが故に、その多忙さは群を抜いていた。

 

 

 まさしくあの戦争が生み出してしまった負の副産物と言えた。

 

 

 今でこそ春雨(ハルサメ)姉妹達は土方と霧島(キリシマ)、さらには複数の有志達によるたゆまぬ涙ぐましい努力によって、その中毒症状はかなり改善されていたが、それでも休暇をすっぽかす姿がたまに見られていた。

 

 

 今のアンドロメダとアポロノームは休みというものを知らなかった春雨(ハルサメ)達と近かった。

 

 いや、流石に彼女達ほど酷くはないのだが、それは飛行場姫達の預かり知らぬ事である。

 

 

 兎も角、なんだかんだ言いながらその根底は役に立ちたいというものに根ざしていた。

 

 

 アンドロメダとアポロノームの2人にしたら、万が一の最悪の事態に備えて相互確証破壊構想による抑止力効果を狙っていた。

 

 2人の本心からしたら、引き金を引く事態は極力避けたい。

 

 ならばどうするか?

 

 

 “引き金を引いたら最期。”“なにも遺らない。”あるのは“滅亡”という二文字のみ。”という状態を作り出す事によって、軽挙妄動に走らない様な状況を演出する。

 

 

 既にこちらの最大火力にして、連射可能な大量破壊兵器でもある『波動砲』の存在は深海棲艦は勿論知っているし、土方や霧島(キリシマ)のバックにいるであろう真志妻なる大将も、2人からの経由で既知と見ていいだろう。

 

 知っていて軽挙妄動に走られたら、どうにもならないが、そこはもう信じるしか無い。

 

 その圧倒的なまでの凶悪極まりない暴力の権化が、火力の化身が、自身の頭上に降り掛かり、ましてや大切に思っているであろう艦娘達が、なす術無く原子の塵へと変り果てる状況を想像出来たなら、可能性は高い。

 

 

 大昔の教えに、『戦わずして勝つ』というものがあるそうだが、アンドロメダは大規模な全面衝突が起きないこと、起こさせないことが現状における“勝利”だと判断していた。

 

 

 そしてその為にも、深海棲艦とのより一層の強い信頼関係を築き上げる事が必然であり、それをより明確にすべきであるとの結論を導き出した。

 

 

 

 その後もなんやかんやあった後に、飛行場姫は悩みに悩んだ末に最終的には根負けし、後方担当業務の事務アドバイザー、まぁお手伝いとしてなら良いか…?と判断した。

 

 

 飛行場姫は口にこそ出していないが、先のアンドロメダとの交戦によって、輸送計画に若干の遅れが生じていた。

 

 それも先に述べた輸送計画見直しの要因の一つでもあったのだ。

 

 

 しかしこれは完全に不可抗力の末に起きた、所謂“不幸な事故”の様なものであったが為、敢えて口にしなかった。

 

 

 とはいえ、人手不足はどうにもならない問題であるし、猫の手も借りたいほどだった。

 

 

 それと、今回とは別件ではあるが、近い内に別の輸送計画の発動も持ち上がっているのだ。

 

 それの処理もしなければならないのだが、手が回っていなかった。

 

 

 その計画とは、徐々にだが今なお増え続けるアリューシャン列島、ダッチハーバーへとやってくる脱北米人、主にアラスカ州民と旧カナダ国民、現カナダ準州民の逃亡者を移送する計画だった。

 

 

「ダッチハーバーも逃亡者で手狭になったからね。

 

 収まりきらないから、他の所で労働力として活用する話になったんだけど…」

 

 

「だ、大丈夫なんですか?」

 

 

 移民やら難民で混乱が広がるこの世界、アンドロメダからしたら不安要素しか感じなかった。

 

 

「一応の審査はしてるわよ。私達だって人間達の二の舞を演じるつもりはないし。

 

 それにダッチハーバー担当の娘、見た目とは裏腹にそこんとこかなり厳しいから」

 

 

 飛行場姫の説明にあった、ダッチハーバーの責任者と聞いて、ミトンの手袋をしたちっちゃな容姿の姫級の姿が思い浮かぶ。

 

 可愛らしい見た目から、書類などの審査をする姿が想像出来なかった。

 

 

「あの娘、人間がなんか問題を起こしたりしたら、犯人を徹底的に探し出して見つけ出し、問答無用でボートを用意して容赦なく島流ししてるから、なんだかんだ言って可愛がられているけど恐れられてもいるわ」

 

 

 ヒトは見た目に依らずとはよく言ったものだ。

 

 

 取り敢えず、細かい事は追々詰めていくとして、アンドロメダとアポロノームの2人はこの後にお手伝いとして事務の仕事を割り振られることとなったのだが、後に飛行場姫は語る。

 

 

「正直、舐めてた…」

 

 

 地球艦隊総軍の総旗艦を務めていたのは伊達ではなかった。

 

 

 後方担当業務からお手伝いではなく、直ぐ様本格的な仕事を任せたいとの嘆願が寄せられる程だった。

 

 

 太陽系に展開する全艦隊、時間断層工廠から次々と吐き出されてくる新造艦の部隊編成に訓練計画、補給や整備の段取りだけでなく、作戦計画に基づく打ち合わせなどなど。

 

 更には太陽系防衛に派遣された、ガミラス艦隊との遣り取りや擦り合わせなどの打ち合わせ。

 

 AIによる補助はあったとはいえ、だからといって全ての仕事が楽になる訳ではなく、また時間と共に幾何級数的に増大していたあの頃のデスマーチ(仕事)と比べたら、今の仕事はかなり楽な仕事の部類だった

 

 

「ちゃんと休んで下さい!」

 

 

 ただ張り切り過ぎて、一度働き出すと黙々と働き続け、時には寝食を忘れるものだから、駆逐棲姫の監視付きも懇願されてしまったが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 しかし、この日の話はアンドロメダとアポロノームを事務員として雇うというだけでは終わらなかった。

 

 

 最後に、飛行場姫と話をしたいと言っていたドクターが、この日最大の爆弾を炸裂させた。

 

 

 

 

「パンデミックの際に使用されたというこの薬物は、謳い文句通りの効果なんてありゃせんわい!」

 

 

 

「コイツはな!投与された生物の免疫機能を低下させるだけにとどまらず、染色体に深刻なダメージを与えてしまう危険な代物じゃ!」

 

 

 

「悪逆非道と蔑まされていた“あの”デスラー親衛隊すら、この薬物の使用を躊躇うどころか、使用を全面的に禁止し、製造技術や研究すら絶対に許さない様に仕向けた程の───」

 

 

 

 

 

 

「使い方次第では惑星規模での現住生物の殲滅が可能な───」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジェノサイドにしか使い道の無い劇薬じゃよ!!」

 

 

 

*1
自裁未遂の姫は(くだん)の個体の上司だった。

*2
anti-access/area denialの略。





総旗艦「お手伝いしたいの~!みんなの役に立ちたいの~!平和が一番なの~!お姉ちゃんに褒めてもらいたいの~!」

三女「姉貴、最後に本音が漏れてる」

姉「可愛い妹2人の頑張りはうんと褒めてあげますけど、メリハリを付けてちゃんと休んで下さい!!」


 取り敢えずアンドロメダとアポロノームは暫くは事務員として働きます!
 しかし優秀だけどワーカーホリックを発揮して周りの深海棲艦の娘達の目を白黒させて振り回しちゃってます。
 まぁこれは殆どネタなのであまり掘り下げませんが。


 ネタバレになりますが、新ロシア連邦(NRF)にも一人だけ流れ着いた者がいます。しかも政府内部に。一応、過去語りでチラッとだけ名前、出しました。


 『戦わずして勝つ』は孫氏の兵法の『百戦百勝は善の善なるものにあらざるなり。 戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり。』のことですが、アンドロメダの時代にまでちゃんと伝わっているか、もしくは違う解釈で伝わっていないかと気になる所はありますね。


 最後に漸く出せた。この世界最大の爆弾。詳細は次回ですが、薬学は調べても頭破裂するだけですので、矛盾、間違い、その他諸々のオンパレードになると思いますが、ご容赦下さい。ま、サラッと流す程度で終わらせるもりですが。
 …不謹慎ネタとして叩かれないかが心配。


 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。
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