艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 薬害

 本当は『Biological Chemical weapons』生物化学兵器にするつもりでしたが、ちょっと違う気が致しましたので『phytotoxicity』薬害と致しました。


 デ、デスマーチな一週間が(今のところ一応)終わった…。
 職場の出勤時間が変更となった直後に部長が入院で持ち仕事が倍増…。若いのが失態の連続でそのリカバリーで狂奔…。二転三転する上や他部署からの指示や要望に振り回され、頭を抱え頭痛薬を飲み続けた一週間が一応は終わった…。
 いや、まあ、正確には一週間ではなく4日間なんですけど、マトモなゆとりが無かった為に殆んど執筆する余裕が無く、書ける範囲でちまちまと可能な限りを続けていたら、少し文章の構成的に可怪しくなっているかもしれません…。


 とある独自設定マシマシの捏造話をぶち込みました。タイトルにするならば、『オルタリア殲滅の真実』ですかね。

 それではどうぞ。


第53話 Phytotoxicity

 

 

 その場の空気は今までになく重苦しい雰囲気に包まれていた。

 

 

 ドクターから語られた、破滅的な終末へと向かっているこの世界の事実。

 

 

 世界を混乱の坩堝へと落としたパンデミックが、嘘に次ぐ嘘で塗り固められたシロモノだった。

 

 

 そもそもこのパンデミックの原因とされるウイルスそのものの存在からして、殆ど虚構の塊だった。

 

 

 ヒトは生きていく中で、毎年、いや毎日どれだけの人数の人間が亡くなり、どの様な理由や原因で亡くなっているかの内訳など、気にもとめないだろう。

 

 

 ましてや()()()()()()()()()()()()()()での年間の死者数を正確に把握している民衆など、たかが知れている。

 

 

 しかし、メディアが騒ぎ出したら、どうだろうか?

 

 

 病気が原因で死亡するヒトの内、最も多い理由が例えばガンだとしたら、ガンにならない様にしようと気に留めるだろう。

 

 食中毒が流行していると騒げば、食中毒に気をつけようとなるだろう。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 そこに目を付けられた。

 

 

 小規模紛争や非対称戦争では、最早軍需産業による利益効率は悪化の一途であり、いくら抑えつけても核兵器開発に関連する技術の拡散は徐々に、だが確実に世界の後進国へと拡がりを続け、そう遠く無い未来にはテロリストの様な武装勢力ですら、自爆前提ではあるが核兵器を所持する可能性が濃厚となりつつあった。

 

 そもそも単なる地域紛争がグローバル化が進む世界では、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事により、先進国の民衆は紛争の介入に対して懐疑的になり、消極的となっていた。

 

 事実、テロリズムは世界に蔓延しつつあったし、その戦場は今や仮想空間であるサイバー空間にまで拡がっており、現代社会における重要インフラの一つにまで登り詰めた、デジタルネットワークに対する重大な脅威となりつつあり、経済への直接的間接的両方で影響を及ぼしていた。

 

 最早、世界に安全な場所は無くなりつつあった。

 

 皮肉なことに、世界はグローバル化によってグローバリストが嫌うロシアの「ロシアに“安全”という言葉は無い」を自ら体現したかのような状況となっていた。

 

 安全を脅かす“脅威”は、万人にとって最も身近な隣人となっていたのだ。

 

 戦争を利用した利益確保は、今でもそれなりの利益を生み出してはいたが、リスクヘッジの問題が増大するに伴い次第に先細りしつつあったし、民衆からの受けも悪くなりつつあった。

 

 

 戦争に変わる新たなビジネスによる利益確保を求める動きが、一部の投資家を中心として世界で出始めていた。

 

 

 そして“()()()()()()()”という悪魔の所業としか思えないビジネスが試みられることとなった。

 

 

 その災害に選ばれたのが“疫病”だった。

 

 

 医療コストは先進国を中心に年々増大傾向にあり、現状でも()()()()()から大きな利潤を得ていた。

 

 それを更に一歩進める腹積もりだった。

 

 

 

 仕組みは単純だった。

 

 

 

 季節性の感染症を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 メディアは連日連夜に渡って、この正体不明の疫病に関しての報道を繰り返し、恐怖を煽る。

 

 

 メディアもソーシャルメディアも、数ある企業の一つでしかなく、その収益は広告費から成り立っており、それを握られたら如何様にでもコントロール出来てしまう。

 

 「だって受け入れた方が楽に大金が手に入るのだから…。」

 

 

 そして“医は仁術なり”の時代ではなく、“医は算術なり”の時代となっていたこともあり、多くの医療関係者は“真実”に気付きながらも口を噤み、恐怖を煽る手助けをしてこの“茶番”に乗っかかった。

 

 「だってその方が楽に金儲けが出来るのだから…。」

 

 

 政府も国際機関も、この“茶番”に積極的に乗っかかり、自らの権限を肥大化する大義名分として急激な権力の一極集中化とその正当化を謀った。

 

 言うことを聞かない者がいたならば、札束をチラつかせてしまえば、大概はスピーカー付き操り人形に出来た。

 

 「だってそうしたらカネは入るし、今まで以上に権力を好き勝手に振るうことだって出来るのだから、いい事尽くめじゃないか。」

 

 

 三者+αは水面下でタッグを組んだ。

 

 

 そして民衆のパニックが最高潮に達したタイミングで、新型の感染予防用薬物の投与が始まるが、それが地獄の始まりだった。

 

 

 

 『持続可能な似非疫病利権スキームの構築。』

 

 

 

 疫病対策の新薬と称して、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を投与する事で、この後は感染症に罹患しやすくし、医療費を増大させて医療と製薬会社に巨大利権を作り出し、政府は増加した医療保険の補填を理由に増税するというスキームを構築。

 

 また医療産業から政治屋への政治資金や天下り先として、対価として政府は補助金の支給の増額といった、利権構造が出来上がった。

 

 投資家は医療産業に投資することで巨大な利潤を得て潤う。

 

 それらの利益の一部は主要なマスメディアやソーシャルメディアに専門家を自称する者達にも周り、発信する情報を意図的に絞って公開することで、情報に一つのベクトルが構築される。

 

 

 「政府や専門家の言うことは“正しい”」

 

 

 「反対する者、疑問を呈する者は善良なる民衆の“敵”だ」

 

 

 恐怖を煽り、そして明確な“敵”を提示することで民衆の分断を謀る。

 

 自分達は“味方”であり、“善意”の下に対策に全力で取り組んでいると“信じ込ませる”。

 

 

 民衆は疫病対策だと“信じ切って”、自らの健康な肉体を犠牲にする事を、“自らの意思”で“選択”させられた。

 

 

 そして定期的にパンデミックを()()することで、安定した莫大な利益が齎される。()()()()()()()

 

 

 

 新薬の投与開始直後から始まった、()()()()()()()()

 

 

 いや、原因は分かっていた。しかしそれを認めることは出来なかった。

 

 

 彼らは他人の失敗を(あげつら)う事は出来ても、自らの失敗を認めることは出来なかった。

 

 

 彼らはそういう“生き物”なのだ。

 

 

 原因は全て“疫病の変異”にあるとされた。

 

 

 

 それにどれだけ民衆が死のうが丁度いい間引きになるし、これからの“管理”の事を考えたら、寧ろ今から減ってくれた方が有り難い。などという開き直った感覚だった。

 

 彼らの感覚では今の人間の数は多過ぎてた。

 

 今回の利権スキームで、より安定して永続的な利益を得るには管理社会による強権体制が都合が良かったのだ。

 

 そのため人口は削減しなければならないとは考えていた。

 

 

 しかし予想以上に大量に、そして短期間の内に死者が積み上がるに連れて、なにか可怪しいとなった。

 

 

 しかもその割合は世界に先駆けて最も投与が早く始まった先進国に集中していた事が問題だった。

 

 経済だけでなく、社会システムや下手すると文明の維持すら困難に成りかねない勢いだったのだ。

 

 故にこの時期先進国の政府機関は、労働力確保を目的とした移民に対しては投与を推奨しないが、自国民には投与を推奨という名の事実上強要するといった矛盾だらけの指示を出していた。

 

 

 ここから後々にまで続く大混乱となるのだが、うち続く政情不安や自然災害、そして第三次大戦によって有耶無耶となってしまった。

 

 

 だがそれでこの問題そのものが有耶無耶の内に消え去った訳では無い。

 

 

 一度でも投与された者は当初の予定通り、免疫機能の低下による様々な疾病を発症するようになったのだが、同時に直ぐ様重症化して死亡するケースが頻発。

 

 更には遺伝子異常や染色体異常による疾病が爆発的に急増。

 

 同時に子供の出生率が急激に低下。

 

 また例え無事に出産出来たとしても、両親のどちらかに一度でも投与の経験があると、産まれてきた子供は高確率で身体に何らかな障害を有しており、特に免疫機能の異常は深刻だった。

 

 人口減少にさらなる拍車がかかる様になった。

 

 

 

 以上の事はこの世界でも調べたら知ることが可能な情報だったのだが、次からはアポロノームのメインフレーム内で見付かった、例のデスラー親衛隊に関係するであろう者から譲渡されたという情報から判明した事である。

 

 

 ガミラス民族はその民族的な特徴として、ガミラス本星以外の惑星環境下では長くは生存出来ないという、大きな問題を有していた。

 

 ならばガミラス本星の外に出ない。或いは多少面倒ではあるが、定期的に本星へと戻れば良いだけではないか?と思われるかもしれないが、そのガミラス本星は星としての寿命を迎えつつあり、そう遠くない未来でガミラス本星は滅びる運命にあったため、ガミラス民族を絶やさないためにもいずれ何処かの惑星へと移住しなければならなかったのだ。

 

 しかしそれには先に述べた民族的な特徴の問題が、大きな課題の壁となってそそり立っていた。

 

 

 それは本当にかなり難しい課題としか言えず、頭を悩ませた。

 

 

 最良なのはガミラス本星と瓜二つな環境を有する惑星を見つけ出すことだが、いくら宇宙広しと言えども、そう簡単に見つかる保証は無かった。

 

 事実、この当時の大小マゼラン銀河内にて既に発見されていた生物の生存が可能、或いは確認された惑星の悉くが、ガミラス本星の環境と同一ではなく、ガミラス民族の永続的な定住に適していなかった。

 

 

 このままだと移住先と成り得る新惑星が見付かる前に、ガミラス本星の寿命が先にくる可能性が有り得た。

 

 その為、ならばガミラス本星と瓜二つな環境でない惑星でも、ガミラス民族が永続的に居住が可能となるような方策を模索することも検討された。

 

 その一つが惑星そのものの環境をガミラス本星そっくりに作り変えてしまおうという、所謂ガミラスフォーミング技術の研究開発であったが、それとは別に、ガミラス民族そのものの体質をどうにかしてしまおうとの研究も始められた。

 

 

 ガミラスフォーミング技術の開発は技術的な課題から、難航することが初めから予想されたため、体質改変はガミラスフォーミング技術の開発遅延、或いは失敗を見越しての謂わば保険的な研究だった。

 

 

 しかし体質改変に関しては様々なアプローチが試されることとなったのだが、その性質上、人体実験ありきの研究であり、その管轄は当初より親衛隊預かりとなっていた。

 

 親衛隊ならば今までに捕縛した政治犯などの叛乱分子を実験材料の被検体として転用でき、その補充にも事欠かなかった。

 

 また彼らからしたら、そのままただ処分するよりも、帝国繁栄の礎として()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()としての価値を見出す形で、最期に帝国に奉仕させてやっているとの考えであった為に、人体実験への忌避感や罪悪感といったものは皆無だった。

 

 

 その過程で(くだん)の薬物が開発された。

 

 

 こちらは元々、()()()()()()()()()()()()()で開発された物だった。

 

 

 何故ならば先に述べたガミラス民族が、他の惑星で長くは生きられない最大の理由が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というものだった。

 

 その為、最低でも、例えばインスリン注射の様に定期的な投与による、免疫機能の維持が可能となるような薬品だったり、あわよくば遺伝子レベルでの体質改変を企図した手法を開発する方向性で進められた。

 

 

 それによって様々な試作品が開発されたわけなのだが、(くだん)の薬物はその中でも最悪の部類の失敗作だった。

 

 免疫機能の維持と体質改変の両方を狙った野心作だったのだが、あろうことか殆んど真逆の効能しか発揮しなかったのだ。

 

 その後の結果は例の薬物と同じ結果となるのだが、一応の経過観察を()()()()()で続けた結果、例えその後になんとか生活をおくれる状態となったとしても、寿命まで生き残れる確率は恐ろしいほど低確率であり、どの様に手を施しても本来の健全な体に戻ることはほぼ不可能という結果となった。

 

 

 何故親衛隊がわざわざ経過観察を行なったかと言うと、本来の目的としては失敗作でも、親衛隊本来の活動である、総統と帝国に叛旗を翻す反乱分子の弾圧において使い道がないかを模索する意図もあったが、同時に何らかのアクシデントで万が一、この薬品のデータが外部に流出し、叛乱分子による薬物テロが発生した際の対処方法を確立する目的もあった。

 

 しかし()()()()()()()()()()()終ぞ成功することは無く、一度でも体の中に入ってしまうと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことしか分からなかった。

 

 

 そして親衛隊が最も問題視したのが、被検体が出産した子供である。

 

 

 子供の場合、被検体の両親よりも個人差が大きい事が判明したのだが、問題は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という点にあり、また通常の検査等では見落とす可能性があった事だ。

 

 事実、この実験を知らない医療機関に被検体の子供の検査を依頼したところ、「()()()()」と回答するケースが殆どであったという。

 

 もしその子供が子をなすこととなった時、その子供にも同様な事態が発生する可能性が指摘された。

 

 その為、もし万が一、無差別テロとして利用された場合、民間の医療機関では発覚不能な、ある種の時限爆弾を内包した子供が社会に拡散する危険性が指摘された。

 

 

 それに対処する研究も進められていたが、ある程度進んだ段階で終了することとなる。

 

 

 何故ならばこの研究が行われていた場所というのが、()()惑星オルタリアなのだ。

 

 

 当初は親衛隊所管の収容所惑星で行われていた実験であったが、親衛隊を快く思っていない国防軍がこの実験の存在を嗅ぎつけたことで、実験施設を移転することとなった。

 

 その移転先が惑星オルタリアであった。

 

 

 実験施設に関する情報は無論、現地の責任者であるリベル・ドロッペ総督にも知らされていなかった。

 

 ただ親衛隊が管理する何かしらの施設が、この星に存在するという程度の情報は把握していたが、あまり深入りし過ぎると自身の立場や生命だけでなく、家族や親族の身にも何かしらの危害が及ぶ危険性があったために、深くは関わらないようにしていた。

 

 その後のオルタリア蜂起に際して、彼はこの施設の存在を思い出し、そこを経由して軌道上に展開しつつあった航宙親衛艦隊の旗艦である『ハイゼラード』級航宙戦艦『キルメナイム』へと乗り込み、そこで命を落とすこととなった。

 

 この時、ドロッペ総督は『キルメナイム』に乗艦していた親衛隊長官であるハイドム・ギムレーに対して、艦隊によるガミラス移民団の保護を要請したとされているが、これは半分事実である。

 

 蜂起の混乱の際に、彼はこの地で親衛隊が何をしていたのかを知ってしまった。

 

 蜂起の直接的要因は『ヤマト』問題であったが、それとは別に、親衛隊による非人道的人体実験が行なわれているとの噂が流れ、その人体実験に現地の住民であるオルタリア人が攫われて実験材料とされているとの噂が流布されていた。

 

 この噂がオルタリア民族主義派の決起を促し、その成功へと繋がった。

 

 

 この噂の真偽の程を確かめるべく、ドロッペ総督はギムレー長官に詰め寄った。

 

 

 ドロッペ総督は他民族の文化と風習を尊重しつつ、一定の距離感を保ちながらの節度ある融和政策こそが、帝国の未来に繁栄を齎すとの考えで、温和な人物であった。

 

 実際に彼の統治政策の手腕はそれなりに上手くいっており、中間層と呼ばれるガミラス支持派と民族主義派のどちらにも属さない多数の人々から、ある一定数の支持を得られていた。

 

 また民族主義派からは、「ヤツによって我々の支持がなかなか得られない」と疎まれつつも、その手腕に舌を巻いていた。

 

 それが一変したのが、この人体実験の噂だったのだ。

 

 この噂によってあれよあれよと言う内に、多くの中間層が民族主義派支持へと流れてしまった。

 

 

 ドロッペ総督にとって信じ難い話だった。

 

 

 出来れば民族主義派の過激派によるデマカセであると信じたかった。

 

 

 しかしギムレー長官は、淡々とした口調で事実であると告げた。

 

 

 この答えに初めは茫然とし、そして激昂したドロッペ総督は、ギムレー長官に掴み掛かったが、直後に傍で控えていた親衛隊員がドロッペ総督に対して無警告で発砲。

 

 

 それが致命傷となった。

 

 

 事切れる前に、ドロッペ総督は最期の力を振り絞って移民団の救助をギムレー長官に懇願して息を引き取った。

 

 

 だがこの時既に、生き残っていたガミラス移民団は手遅れな状態となっていた。

 

 

 施設の明確な所在は現地住民であるオルタリア人には掴めていなかったが、首都から脱出したドルッペ総督を追跡した結果、その場所が特定された。

 

 

 そして民族主義派の暴徒によって襲撃され、施設が占拠されてしまう。

 

 その際に廃棄し切れなかった試薬やら実験で使用されていた薬品が奪われ、目には目を歯には歯を、血の復讐と称した彼らの手に依ってして生き残っていたガミラス移民団に対して使用された。

 

 彼らは施設で囚われていた同胞達を見て、噂は真実だったと惑星全土へと喧伝し、これこそがガミラスの本性であると、ガミラスの差別的非人道性を惑星全土にいる同胞達に見せ付けることで、自分達の決起が如何に正当なものであったかを声高に主張した。

 

 

 厳密には囚われていた者達は過激な破壊活動等の容疑で検挙された民族主義派の過激派構成員であり、法的に拘束は正当なものだった。

 

 だかわらこそ、ギムレー長官は誤魔化すことなく事実であると答えたのである。

 

 それにオルタリアでの親衛隊の活動を知ってしまた以上は、遅かれ早かれ何かしらの理由を付けて“処刑”するつもりでいたため、冥土の土産として“全ての真実”を話す気でいた。

 

 結果として全てを語る前にドロッペ総督は処刑されてしまったが。

 

 

 兎も角として、今回の一連の騒動が切っ掛けとなってガミラス本星の危機が露見してしまい、それが燎原の火の如く知れ渡り、版図内だけでなく本星そのものでも未曾有の混乱を招く事を危惧していたギムレー長官は、直ちに証拠隠滅を兼ねてオルタリア殲滅を命令した。

 

 

 しかし情報漏洩を抑える事を最優先としたために、噂の出どころや、何故こうも瞬く間に惑星全土へと拡がりを見せ、多くの者が噂の内容を信じたのか?などに関しては永遠の謎となったと()()()()()

 

 

 そもそも準軍事組織でしか無く、基本的にその主力は本国であるガミラス本星に展開しているハズの親衛隊の航宙艦隊が、対応についての協議などの影響で後手に回っていたとはいえ、純然たる軍事組織たる国防軍から、惑星オルタリアが属するノルド大管区に派遣されている駐留軍の航宙艦隊の行動よりも先に艦隊を動員し、尚且つ大量の惑星間弾道弾を素早く用意出来たのは、万が一今回の様な事態が発生した際に備えて、事前に用意していたためであった。

 

 

 これがオルタリア蜂起に纏わる裏話である。

 

 

 

 余談だが、ガミラスフォーミング技術に関しては、地球とガミラスの戦争において使用された遊星爆弾という形で、日の目を見ることとなったのだが、そのあまりにも強引な手法と、本来の目的からこちらも後に国防軍の管轄ではなく、親衛隊の管轄となったわけなのだが、それはまた別の話。

 

 

 最後に、譲渡された資料の末尾に映像付きのメッセージが添付されていた。

 

 これはドクターもまだ手を付けていなかった。

 

 送り主がアンドロメダを指定していたということもあり、手を出さなかったのである。

 

 

 映像に映し出された者は、ガミラス人特有の青い肌をしながらも、()()()()()()()()()()()()の、やや細目が印象的で、デスラー親衛隊の所属であることを表わしている、灰色の将官服に身を包んだ少女だった

 

 

「«私は大ガミラス帝国デスラー親衛隊所属、航宙親衛艦隊旗艦を拝命しておりました、キルメナイムと申します»」

 

 

 そう自らの官姓名を名乗り、教本通りの整ったガミラス式敬礼*1を示した。

 

 

「«この映像をご覧になられているということは、無事に貴女の妹君が、私どもの提供致しました資料データをお渡ししたものと判断致します。

 

 貴女は我が総統、アベルト・デスラー閣下と、総統代行であらせられますデウスーラ様がお認めになられました地球(テロン)のヤマト殿の御息女であらせられます故に、私どもも最大限のご協力を致しますが、既にご覧になられました通り、事態は最悪であるとしか申し上げることが出来ません。

 

 私どもが今現在居りますこの高次元世界から観測出来る範囲で分析した結果、貴女がいらっしゃられますその惑星で使用された物は、私ども親衛隊が嘗て研究開発していた物とほぼ同一であるとの結論に達しました»」

 

 

 

 この事に最もショックを受けたのは、泊地棲姫だった。

 

 

 彼女はここサイパン島で起きた人間達による忌まわしきジェノサイド。それによって親を失い、身寄りの無くなった孤児達の母親代わりとして、仲間と協力して一生懸命に面倒を見て来た。

 

 最初は戦争に巻き込んでしまった事への罪悪感という一面もあった。

 

 種族の違いはあったが、彼女の真摯な態度と優しさに、そして何よりも島にいきなりやって来て大切な両親を殺し、恐怖に震えながら島内を逃げ回っている自分達生存者も皆殺しにしようと、島中を遊び半分に破壊しながら探し回っていた、憎んでも憎みきれないあの忌まわしき死神や悪魔の化身のような軍隊を、情け容赦無くこてんぱんにやっつけて皆殺しにしてくれた恩人(ヒーロー)とおなじ容姿をした彼女やその仲間達に、孤児達は安心感を覚え、彼女を自分達を愛して守ってくれるお母さんとして、そしてその仲間達を心から受け入れた。*2

 

 

 彼女にとって大切なたからものと言える子供達が、もしかしたら既に人間どもの自分勝手な悪意の毒牙に蝕まれてしまっているのではないかと思うと、気が気ではなかった。

 

 添付されていた資料の中には、免疫機能の低下が見られた場合は最早完全な無菌室でしか生きられず、それでも予断を許さないだろうとのとの事である。

 

 因みにだが、ここサイパン島にそんな高度な設備など有りはしない。

 

 いや、元々はあった。

 

 島に存在していた病院などの医療設備にはあったのだが、先の軍隊による破壊活動によって、本来ならば接収するハズの病院などの設備は、住民の避難所と成り得る設備として逃げ込んでいるかもしれないとして、真っ先に破壊されてしまっていた。

 

 だがもし破壊を免れて稼働出来たとしても、問題はそれを扱えるだけの専門の医師や技師が最早この島にはいないのだ。

 

 

 一応、町医者の様な医師はなんとか生き残っており、その医師からレクチャーを受けた同胞(はらから)達が助手として支えており、それで今まではなんとかなっていたし、医薬品の類いも外部の人間達との交流が可能となった事で、なんとか賄える様になっていた。

 

 …念のため付け加えておくが、一応ちゃんとした正規の医薬品である。

 

 彼女達と取り引きを行なっている人間達は、彼女達の正体をちゃんと認識しているし、もし彼女達の怒りを買う様な事態となった際に受ける自らのデメリットも充分に理解している。

 

 何よりも彼女達との交易はまさにカネになる金の卵なのだ。

 

 今のところはそんな金の卵を叩き割る様な馬鹿な勇者は出ていないし、この交易の裏にはその出始めからロシアン・マフィアが深く関わっており、更に彼らの後ろには新ロシア連邦(NRF)の影もチラついているとの噂もあるため、最悪一族郎党が最早生きていけなくなる恐れさえあるのだから、裏切るリスクは限りなく低かった。

 

 閑話休題。

 

 

 しかしどんなに頑張っても高度な医療知識など備わるわけではなく、簡単な治療行為が関の山だった。

 

 

 これは他の支配領域でも似たりよったりの有り様であるし、そもそも子供達を移送する手段が無かった。

 

 

 泊地棲姫は途方に暮れて今にも泣き出しそうになってしまった。

 

 

 

 それを察した訳では無いが、映像に映るキルメナイムはある一筋の光明と成り得る情報も齎した。

 

 

「«根本的な解決策には程遠いシロモノではありますが、私どもが開発、試作しておりました対処に纏わる全ての資料も同封しております。

 

 この映像が再生されると同時に、プロテクトは自動的に解除され、閲覧が可能となります。

 

 それをどの様に扱うかは、貴女の心の選択にお任せ致します。

 

 貴女の航海が実り大きいものであらんことを。

 

 ガーレ・デスラー!総統万歳!»」

 

 

 デスラー総統を讃える言葉と再びの敬礼とともに、映像は終了した。

 

 

 そして彼女、キルメナイムが語った通り、隠されていた新たなファイルが出現した。

 

 

 泊地棲姫はそれを見ると、縋る様な顔でアンドロメダを見詰めた。

 

 彼女の気持ちは痛いほど理解することが出来るが、しかしことはアンドロメダやこの場にいる者達だけではどうしようもないシロモノだった。

 

 状況次第では土方経由で人類側の協力も必要になるだろう。

 

 

 それだけことは重大だった。

 

 

 しかし、懸念もある。

 

 

 この情報は間違いなく火種に成りかねないし、下手をすると第四次世界大戦の引き金となる危険性すら孕んでいると、アンドロメダは見ていた。

 

 

 この一件、人類の大き過ぎる(カルマ)がその根底に深く関わり過ぎているのだ。

 

 

 

 ふとアンドロメダの頭に、ある考えが過るが、頭を振ってその考えを振り払った。

 

 いくらこの世界のニンゲンどもに対して少なからず嫌悪感を覚えているとはいえ、()()考えは絶対に間違っている。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()など、それこそ自身が嫌悪するニンゲンどもとおなじ下衆な存在へと成り下がってしまう。

 

 

 そんな事は絶対に嫌だ!!

 

 

 しかし、一度頭を過ぎってしまったこの考えが、アンドロメダを誘惑しようと、悪魔のような姿形をした自身の姿となって、甘く優しく語り掛けてくる。

 

 

 アナタの理想とするセカイを、アナタが好意を寄せているみんなや、大好きなお姉ちゃんとずっと一緒にいられるセカイを創造する、またとないチャンスなのですよ…。と…。

 

 

 この囁きに、アンドロメダは恐怖した。

 

 

 自身の心に、新たな“魔”が芽生えてしまっていることに。

 

 この誘惑に負けたら、またあの時の様になってしまう!!

 

 そう思うと、怖くて体が震えてしまいそうになった。

 

 

 だが、ここには誰よりもヒトの心の機微に敏感な者がいる。

 

 自身がこの世界に来て最も大切で、大好きな存在となったお姉ちゃんこと駆逐棲姫が、おなじく大好きなアンドロメダ(妹分)の心が激しく乱れていることを察して、本当ならば抱き締めてあげたいが、周りに目立たない様にと気遣って、そっと自然な動作でその手を握ってあげた。

 

 

 それだけでもアンドロメダの心は大きく落ち着きを取り戻すこととなり、感謝の気持ちを込めて駆逐棲姫に微笑みを向けた。

 

 

 そうだ。自らの意思では何も出来ず、頼りたくても頼ることが出来ず、ただただ祈ることしか出来なかったあの時とは違って、今は自らの考えで行動が出来、誰かに頼って困難を分かち合うことだって出来るのだ。

 

 

 ならば、あの時みたいになると恐れたり、怖がることはないんだ。と、自分に言い聞かせると、更に気持ちが軽くなった気がした。

 

 

 そして、最早このことは自分達だけでは手に負えないと判断したアンドロメダは、土方達にも相談を持ち掛けて頼る事とした。

 

 

 どうしようもない大き過ぎる困難に対して、1人や少数で抱え込んでしまうよりも、皆で知恵を絞るべきだ。

 

 でなければ先程の自分自身の様に、要らぬ誘惑の“魔”が芽生えてしまうのだ。

 

 ましてや上だけの一部の者だけが考えると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 

 

 上に立つ以上は、責任からは逃れられない。

 

 そこから逃げる事は許されないし、決して許してはならない。

 

 それを許してしまったからこそ、この世界がココまで混乱してしまった遠因であるとアンドロメダは睨んでいた。

 

 

 あんな無責任な下衆共とおなじ様になってたまるかっ!!

 

 

 アンドロメダは決意を新たに、通信システムを起動した。

 

 

 

*1
右肘を水平に張り、肘から先を上方に指まできれいに伸ばした形。

*2
余談だが、孤児達にとってお母さんを泊地棲姫であるとするならば、お父さんは、ややぶっきらぼうな態度を見せながらも、なんだかんだ言って自分達を可愛がってくれる飛行場姫であると見ている。





 多分、今回の話は内容的に2年前辺りだったら総スカン食らってたかも…?


 当初構想していたアンドロメダ闇堕ちルートの中には、この誘惑に負けたというものがありました。そして最後はエスコン0宜しくアポロノームと一騎打ちで行方不明になるルートでした。
 しかしアポロノームが勝利しても、人類の滅亡は止められず、誰も救われないというなんの救いもないものでしたが、流石に取り止めました。

 これは初めの段階から人類側にいたら、或いは戦艦棲姫と邂逅すること無く、駆逐棲姫とも出会わずに深海棲艦との接点もなく、日本へと直行していたら、などの分岐点によって起き得ていたルートです。

 またこのキルメナイムからの情報を開くタイミングも、大きな分岐点の1つでした。



補足説明


キルメナイム

 ハイゼラード級航宙戦艦の1隻。

 その構成員の多くがクローニングによるクローン兵で構成されていたデスラー親衛隊という事もあってか、その容姿は何処か作り物染みた物となっており、それは親衛艦隊を構成する全艦艇も当て嵌まっている。

 性格はガチガチの親衛隊的思考であり、デスラー総統に絶対の忠誠を誓い、総統に仇なす存在にはゴミを見るかの様な冷徹な目付きとなり、徹底的な排除を辞さないという冷酷さを隠そうともしない。

 ただし、総統が認めた存在に対しては一転した振る舞いへと変化する。

 因みに親衛隊長官であり、自身を専用乗艦とするハイドム・ギムレーのことをお兄様と呼ぶ。
 容姿は本編で語ったやや細目以外は、ギムレーにもし妹がいたら…?で補完してくださいお願い致します。


ロシアに“安全”という言葉は無い

 ロシア語において『安全』を表す言葉は『безопасность』なのですが、これは危険を表す『опасность』に否定語の『без』をくっつけて『危険ではない』としたものであり、安全という独立した言葉は無いそうです。



 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。

 追記。

 多分今話はちょこちょこ加筆したりすると思います。
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