艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり 作:稲村 リィンFC会員・No.931506
いつもよりも短い上にある意味で半分ネタ回でハッチャケ度増々で行きます。
「«ちょい待ちな。駿河湾って、あの駿河湾かい?»」
駿河湾とは、伊豆半島先端にある
その海底に今居るというのだ。
いくらなんでも水圧とかドエライ事になってるだろ。と
しかしアンドロメダはこの事に首を傾げて疑問を呈する。
時間断層工廠はその名の示す通り、その空間が時間断層という特異空間に覆われており、外界からほぼ隔離された空間なのだ。
いくら周囲が深海とはいえ、それこそ地球で最も深い海溝であるマリアナ海溝であろうとも、水圧程度ならば何も問題無いハズだ。
一応、波動防壁でも似たことは可能であるが、こちらは稼働限界時間と耐圧限界というリミットがあり、更にはエンジンへの負荷も無視出来ない為、オススメではないし、リスクが高過ぎて試したいとも思わないが。
そんな教え子の反応に、
「«おいおい若いの、もう忘れたのかい?さっきこのメガネっ娘は“空間を消滅させたエネルギーを利用した”って言ってただろ?
てぇことは、その特異空間とやらはもう存在しないと見たほうがいいんじゃないかい?»」
「…あっ」
思わずといった形で、間の抜けた声が出てしまうアンドロメダ。
所謂“先入観”というやつだ。
時間断層工廠=特異空間という思い込みがアンドロメダの頭の中にはあり、完全に聞き逃していた。
アポロノームも気付いてなかったのだろう。こちらも呆けた顔を見せていた。
「«あぁ~、矢張り気付きましたかぁ~…»」
工場長のその一言により、事実であることが確定となった。
「«仰られました通り~、時間が加速する要因でもありましたぁ、特異空間はこちらの世界へと跳ばされた際に完全に消滅しております~。
ですので常時波動防壁を展開して水圧対策としております~»」
とんでもない事をサラッと宣う工場長に、全員が唖然とする。
先にアンドロメダが述べていた通り、波動防壁には限界がある。
一部を除いたあらゆる攻撃を無力化する波動防壁であるが、最新鋭艦であったとしてもリミットという枷からは逃れることは出来無いし、波動防壁への負荷が掛かれば掛かるほど、そのリミットも短くなる。
そもそも波動防壁はエネルギー消費が非常に激しい装備であり、供給元である波動エンジンへの過負荷を防止する目的で、許容限界というリミットを設けてリミッターとしているのだ。
現状、高出力化や効率化による性能強化よって稼動可能時間の向上が計られてはいるが、安定性や安全性の両立という課題から、あまりに尖った強化は避けられており、また双発化などに代表されるエンジンの複数搭載は、現状の使用可能なエンジンサイズの問題から艦体サイズの大型化や肥大化を招く事になるのだが、そうなると造船ドックを始め各地の係留ドックなどの諸々のインフラ整備も改装ないし増築する必要性があり、最終的に必要となるコストが膨大な物となるために現実的ではないと判断され、小型高出力エンジンの開発が必須条件として棚上げとなった。
しかしガミラスから齎された複数隻の艦船を重力アンカーで接舷固定し、接舷した艦船同士の波動エンジンを同調させることによって得られる相乗効果を利用したトランスワープ技術とその派生応用──中央艦が攻撃と防御に集中し、接舷艦が航行に集中しながら余剰を攻撃と中央艦へのエネルギー補助を行なう。つまりアンドロメダが土星圏から地球圏へと撤退した時と、最終決戦使用である両舷にドレッドノート級を接舷していた時の状態──により、双発化のメリットが薄まった事で研究そのものは継続しているものの、事実上下火となったと聞いている。
閑話休題。
時間断層工廠となると、かなり大規模な建造物であり、元々その稼働に必要なエネルギーを賄うために、予備も含めて当時の地球が必要とする全エネルギー総量の数倍は余裕で生み出せる程の、複数の波動エンジンが設置されているとは聞いたことがあるが、かと言って設備全体をカバー可能な波動防壁を展開し、尚且つ長期に渡って持続させるにはいくらなんでも無理がある。
「«放棄までに持ち出せなかった波動エンジンがいっぱいありましたから~»」
彼女が言うには、放棄が決定しても実際に放棄されるまでにはそれなりのタイムラグがあり、それも工廠内ならば予定日時×10の時間後となるため、そのタイムラグを利用して工廠放棄後に起きるであろう物資不足を少しでも緩和すべく、ギリギリまで稼働が継続され各種の物資が作り続けられたのだが、その全てが運び切れたわけでは無く、かなりの量の物資が工廠内に取り残された。
その中には軍用のみならず民生用も含めた各種様々な波動エンジンの完成品が数百基単位で、更に組み立て途中などの未完成品も含めると一千を遥かに越える数量が残されており、それを利用したのだという。
また維持管理に必要となる資源に資材も、相当な備蓄がまだ残されており、どこから取り出したのやら、白い壺を指で
「«あ、あの、え~とぉ…»」
先ほどの自信に満ちた態度とは正反対な態度に、アンドロメダは更に首を傾げていると、
「«なに変なネタ仕込んでンだよ!?
ああ、アンドロメダサン、今のはコイツの戯れ言みたいなモンなんで…、っておいコラ!てめぇなにコソコソとしてやがる!?»」
なにやら工場長が壺をこっそりと隠そうとしていたのを
「«てかそれ よく見たらこの前見付けた難破船から引き揚げたホクソーとやらのツボじゃねぇか!?見当たらねぇなと思ったら、やっぱてめぇが盗んでたのか!?»」
「«盗んでたなんて人聞きの悪いこと言わないで下さい~!鑑賞用にこっそり持ち出してただけですよぉ!»」
「«それを盗んだっつーんだよ!食材買うための貴重な現金収入源なのに、なに横領してンだよ!誰がてめぇのメシ作ってやってると思ってンだ!?»」
「«OMCSがあるじゃないですかぁ~!»」
「«それがそのOMCSよりもアタイのメシが美味いと言ってせがンでくるヤツの言う事かーっ!?»」
またもやケンカを始めた2人に、今度は
ここで話について行けなかったアンドロメダへの説明として、先の工場長の言葉はとあるサブカルチャーを出本とした一種の比喩表現であり、ホクソーこと北宋の壺は
「«おカネなら本物以上のモノが幾らでも作れますし~、骨董品は物作りとしての美的センスを磨くのに丁度いい教材になりますからぁ~。
私だって物作りを嗜む以上は芸術家でもありたいですからねぇ~»」
またとんでもない爆弾発言が飛び出すが、頭が痛くなるのでスルーしたが、その後の「«てめぇはどっちかつーと“あるていすと”だろが»」という
一応、時間断層工廠の現在位置が分かり、物資もそれなりに備蓄していることも分かった。
それに付け加えての補足説明として、海底資源の採掘も行なっており、その為に各地を転々とすべく移動可能な様に改装したと述べ、駿河湾にいるのもたまたまとのこと。
そして資源採掘の傍らで難破船を見付けたらお宝探しと
「«いやぁ~、たまに結構年代物のアルコール飲料が見付かる時もありましてね。これが美味いし良い稼ぎになるンですわ»」
悪びれる様子もなく話す
聞けば、先にも述べていた通り、サルベージした骨董品を売って稼いでいるらしいし、どうも所謂海底ワインの様なヴィンテージワインの類いも売り出している様である。
完全に領海侵犯やら排他的経済水域を犯しまくっているし、多分売りに出す為に
となると間違いなく不法入国だし、そうなると正規のルート以外、それこそ非合法組織相手に販売している可能性が高い。
ただ売りに行く面子はどう考えても引き籠もりな工場長では無理だろうから、必然的に
それと念の為、護身用の銃火器として、下手に目立たないために
もうどうツッコミを入れるべきか考えるだけ面倒になって来た。
バレなきゃ罪にならないと言わんばかりに、色々とヤラカシまくっている2人に真面目に対応するのが馬鹿馬鹿しいとすら思う様になっていたが、そんなことよりもアンドロメダとしては、時間断層工廠の時の流れが十倍となる特性が失われていた事があまりにも痛いという思いの方が強かった。
それと同時に、あれだけ心底嫌っていたはずの時間断層工廠を、それが必要だから、他に方法が無いから、最も有効な手段だからと、渡りに船と言わんばかりに手の平返しで頼ろうとしていた身勝手な自身の浅ましさに、自己嫌悪から自嘲気味な気分となっていた。
だが、だからといって、意固地になって良い訳では無い。
嫌っているという考えは飽く迄も個人的な感情からくる私情に過ぎず、時には私情を押し殺す必要性をアンドロメダは理解していた。
私情ばかり優先していては、いずれどこかのタイミングで自らの足を引っ張る要因となるだろう。
しかし、その肝心要の時間断層工廠は、極論かもしれないが今や単なる工廠に過ぎ無い状態だった。
最早運命の悪戯、皮肉の極みと笑うしか無かった。
「«まぁそれでも~、この世界換算ですとぉ、数百年から下手すると千年くらいは先の未来科学と宇宙人の科学技術が融合した超高度科学文明による魔法の様な結晶とも言えなくもないですけどねぇ~»」
ケラケラと笑いながらそう話す工場長。
確かに彼女が言う通り、十倍速でなくとも工廠に使われている科学技術はどれをとってもこの世界の最先端技術の数々が、先ほど妥協の末、今後はこっそり持ち出さない、貯め込まない、引き揚げ後のクリーニング作業をちゃんと手伝うなどの幾つかの条件を守る代わりに、所持が許された、彼女が今柔らかい布で優しく磨いている北宋の壺と大差無いくらいの骨董品なのだ。
そもそも純粋な地球の科学技術だけで見ても、おなじ時期の自分達がいた世界の地球と比べても、最低十年以上は遅れている感じがあるとアンドロメダは分析していた。
その直接原因は間違いなくパンデミック騒動から続く人類の混乱に端を発する停滞もあるだろうが、それ以前に一種の現状維持バイアス的な流れが、既得権益層を中心に蔓延していた
まぁそれらの考察に関しては、今考えても仕方が無いから今はどうでもいいとして、工場長が言ったように超高度科学文明による魔法の結晶とは言い得て妙である。
賢人曰く、「高度に発達した文明は魔法と変わらない」との言葉が示すように、このアドバンテージは非常に大きい。
時間は掛かるかもしれないが、それでもこの世界の科学からしたら有り得ない速度と精度で結果が出せるのだから、それこそ魔法と言って差し支えないレベルの隔絶された技術的な開きがある。
今はそれに賭けるしかない。
ことのあらましを盗聴で理解していた工場長は、早速と言わんばかりにデーターの提供をアンドロメダに願い出た。
そして、彼女が持つ“力”の片鱗を見せ付けられることとなった。
工場長の周囲に投影式のディスプレイが展開されたかと思うと、デスラー親衛隊長官代行キルメナイムから提供された膨大なデーターを、瞬く間に読破してその全てを理解してしまったのだ。
いや、正確には読破したというよりも、インストールしたというのが近いが、それでも一瞬にしてその内容を咀嚼してしまったというのだ。
その際の彼女は、今までのどこか頼りなさそうなヘニャヘニャとした態度と風貌から打って変わった真剣な眼差しであり、近寄り難い雰囲気を醸し出していた。
更には、である。
アンドロメダ、アポロノーム2名の艤装の損傷具合に関する詳細なデーターの引き渡しも要求しただけでなく、ついでとばかりに
そして一瞬データーを確認中に眉を顰めたかと思うと、アポロノームに対してとあるデーターを送って来た。
その中には『修理兼改装プラン』と銘が打たれており、艤装の左半分が飛行甲板らしき平甲板で覆われた予想図も添付されていた。
一連の流れに、文字通り蚊帳の外に追いやられた状態の駆逐棲姫達深海棲艦の姫達は、目を白黒させながら状況を見守ることしか出来なかった。
「…私達にとったらミスリルの弾丸、いえ、パンドラの箱になるのかもしれないわね」
ふと呟かれた飛行場姫の言葉が、駆逐棲姫にはやけに印象強く聞こえた。
ミスリルの弾丸となるか、パンドラの箱となるかは、まだ誰にも分からない。
だが駆逐棲姫には、希望の光が瞬いた瞬間なのではないだろうか?との思いが強かった。
偽造紙幣の発行疑惑に領海侵犯、排他的経済水域内での資源無断採掘、非合法のサルベージ、不法入国とそれに関連して多分公文書偽造、非正規ルートでの骨董品などの密売、不法入国した国によっては無許可のアルコール飲料の販売に武器の不法所持などなどとやりたい放題極悪人の時間断層工廠組。
だけど先立つ物はいつどこの世界でも必要。
補足説明
やろうと思えば本来のサイズのアンドロメダ級他2202で時間断層工廠が造っていた各種の工業製品が製造可能で、ガトランティス戦役の時みたいな超物量の大艦隊を編成することは出来なくとも、エンケラドゥス守備隊や外周艦隊規模の艦隊を数個艦隊揃える程度の備蓄があります。
少ないかと思われるかもしれませんが、時間断層工廠そのものの稼働や維持管理にも資源がそれなりに必要となりますので、資源全部を製造に回すわけには行きません。
また製造に時間が掛かります。それと備蓄は有限ですから、いつかはコスモナイト90を始めとした地球外資源を求めて宇宙進出する必要があります。(まあ本編でそこまで行くかは分かりませんが。)
モルドラP-88
ガミラス国防軍正式採用拳銃。ガミラス版のコスモガン。旧作のT型拳銃と違い、普通の拳銃の様な外観をしている。なお、リメイク版においてT型拳銃は機械化兵、所謂ガミロイド兵が所持しています。
ワルサーP-99
ワルサーP38で有名なドイツのワルサー社が玩具メーカーであるウマレックス社の傘下に入ってからリリースされた、ストライカー式のダブルアクション拳銃。
口径、9×19mmパラベラム弾。
本当はこの一つ前の製品であるモルドラP-88と同じ番号のP−88にしたかったのですが、こちらは製品としてコケてて96年には製造が中止されていたため、希少価値とその高価さから逆に目立つと思い、急遽P-99に変更…。
修理兼改装プラン
2205での『ヒュウガ』、若しくは旧ソ連海軍の1143型航空巡洋艦『キエフ』級航空母艦みたいなシルエットをご想像下さい。
それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。