艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり 作:稲村 リィンFC会員・No.931506
旅は道連れ世は情け───
前回にて戦艦棲姫のお誘いを謝辞した我等が総旗艦。
今回はその理由と、なぜ日本に向かうのか、その理由を語ります。
そしていよいよ日本へと出発します。
…一名、キャラ崩壊が発生致しました。どうしてこうなった!?
朝陽に煌々と照らされるだけの何も無い太平洋の海を、歌を歌いながら北上するモノがいた。
アンドロメダだ。
朝陽がまだ顔を出さない早朝に、今まで停泊していた場所から動きだし、ついに日本を目指して出発したのだ。
だがその顔は疲れ気味であり、今歌っている『銀河航路』*1もやや音程がズレ、壊れたレコードの様にループ再生を続けている状態だった…。正直言って、不気味だ…。
そんなアンドロメダを見かねたアナライザーが少し休まれてはと提案してくるが、「大丈夫ですよ~」と生返事を返すのみだ。
そして徐に顔を座席の後ろ側、艤装のエンジンユニット部に向ける。
そこには頭にツノの様な意匠の突起が付いたベレー帽を被り、ノースリーブのセーラー服の様な衣装に身を包んだ小柄な深海棲艦がちょこんと腰掛け、非番の妖精達と一緒になって主計科の妖精から渡されたカロリーバー*2をリスの様にコリコリと美味しそうに頬張っていた。
アンドロメダが視線を向けているのに気付いたのかその深海棲艦、姫級ハイエンドモデルが1人である駆逐棲姫は食べるのを止めてアンドロメダに向けて微笑みを浮かべた。
それを見てぎこちなく笑って返すと、再び前を向くと大きな溜め息を吐いた。
「本当にどうしてこうなったの…?」
そんなアンドロメダの姿に、駆逐棲姫は不思議そうにこてんと小首を傾げる。
時は些か遡る──────
「丁重に御断り致します」
戦艦棲姫からのお誘いに、頭を下げて謝辞するアンドロメダ。
初対面であるにも関わらず、人類に対する不信感からアンドロメダの今後を心配しているという気持ちは良く分かる。
アンドロメダ自身、アナライザーが入手したこの世界の情報から、人類による目を覆いたくなる様な所業の数々を知り、正直あまり肩入れしたくないという気持ちが無いわけではなかった。
それでも人類側である日本に向かうのは、アンドロメダが抱える問題が密接に関わっている。
今のアンドロメダはその行動を支えるインフラが一切無い状態だ。
艤装の修理や整備が行えず、消耗した物資の補給も行えない。
いくら未来の戦闘艦と謂えど整備を行わなければいずれ壊れるし、物資は無くなる。OMCSが壊れたら飢えるし渇く。
そうなればお手上げ。艤装はただのガラクタに成り下がり、アンドロメダは腹を空かせた無力なただの女性となる。
それは避けなければならない。
なら別に深海棲艦側でも良いのでは?という疑問が出てくるだろう。
ここで問題となるのが艤装の差異だ。
艦娘の艤装は機械式、深海棲艦の艤装は生体式。
アンドロメダの艤装は明らかに機械式。
技術格差という問題はあるが、それでも艦娘を有する以上、人類側の方が基礎技術は十分あるだろうからまだハードルが低いと判断したのだ。
そして日本は混迷を極めるこの世界で、ある程度の国力を有し、艦娘の活動を支えるインフラが整っている国の中でもっともアンドロメダの現在地から近い位置にある国なのだ。
無論、何等かの見返りを要求されるだろう。
戦力(武力)の提供
技術提供
情報公開
etc. etc.
この世はギブアンドテイクが基本だとアンドロメダは認識している。
故に可能な代価の提供は吝かではない。代価が際限無く肥大化する懸念は充分にあるが、現状整備と補給が受けられる可能性が高いメリットの方が捨てがたい。
対して深海棲艦はどうか?生体艤装ということで技術的なノウハウに大きな疑問がある。
艤装を棄てるというなら話は別だが、艤装はアンドロメダの半身であり、自身の価値と安全を保障するための確固たる財産だ。
もしかしたら、アンドロメダの艤装を生体艤装化する技術があるのかもしれないが…。
今ある情報や状況を加味して考えた結果、日本を目指す方がメリットが有ると判断した。そして例の人物の存在がそれを後押ししていた。
戦艦棲姫がそれらを上回るメリットを提示出来るかも疑問である。
それに戦艦棲姫のお誘いが彼女の善意からの先走り、独断専行である可能性が高いとアンドロメダは睨んでいた。
その疑問と推測を、アンドロメダは率直に戦艦棲姫にぶつけた。
そしてそれはおおよそ当たりだった。
戦艦棲姫自身、損得勘定を抜きにした気持ち、感情が先走っているという自覚はある。
また自身が上位種とはいえ最高意思決定権があるわけで無く、提案したとしてもそれが
整備に関してもアンドロメダの様な艤装タイプは確証が無かった。
となるとアンドロメダが思ったように艤装を諦めるしかなくなるが、代価として衣食住を自身の命と引き換えにしてでも保証すると提示しても、もし自身がアンドロメダの立場だとしてそれを受け入れるかと問われたら、生殺与奪を相手に握られることになるから否だろうと俯きながら語った。
アンドロメダ自身、それを
もし自身が人類への恨み辛みで凝り固まった感情で一杯だったなら、損得勘定抜きに彼女等の軍門に喜んで下っただろう。
もしくは戦いを捨てるというなら、それもいいだろう。
だが世の中感情だけでの判断が許されるほど、そんな甘い代物ではない。
どんな時でも頭の片隅では冷静、いや冷徹でなければならないとアンドロメダは考えている。
弱さや甘えを見せたら、それは時としてつけ込まれる原因と成り得るのだ。
だからこそ、私情を殺してでも自身の生存の為に最も確率が高いと判断した方を選んだ。
それが今目の前にいる戦艦棲姫と敵対することになろうとも。
その決意と覚悟を語った瞬間から、両者の間で緊張感が
戦艦棲姫の生体艤装が即座に反応し、主人を庇う姿勢をとる。
周りにいた潜水艦達も戦闘態勢へと移行する。
アンドロメダも自身の砲塔を旋回させ照準を合わせながら弾庫から三式弾*3を揚弾し、薬室に装填した。
お互い一言も喋らず、一触即発の空気が高まる。
「ハイ。ソコマデデス」
そこへ突然第三者の声がして皆して驚くが、声の主に覚えのある戦艦棲姫が問う。
「貴女…、イツカライタノ?」
「ソコノオ姉サンガ
頭にツノの様な意匠の突起が付いたベレー帽をかぶった、戦艦棲姫と比べて小柄なセーラー服に酷似した服を着た少女───
確か駆逐棲姫というコードの娘だったかしら?資料と違ってちゃんとした脚があるけど、さっきの音からして、と考えていたら「ソレデ、何シニ来タノ?」と戦艦棲姫が駆逐棲姫に詰問するが、駆逐棲姫は呆れたとばかりに大きな溜め息を吐くと──
「二人共、今トッテモツライデスッテ顔ニ出テルノ気ヅイテル?」
そう返されて、戦艦棲姫はばつの悪そうな顔をして駆逐棲姫から目を逸らし、アンドロメダも「あ」と小さく漏らしながら自身の顔に手を当てた。
駆逐棲姫は腕を組みぷんすかという擬音が似合いそうな、いかにも私怒ってますという顔をしながら語りかける。
「オ互イ無理シスギデス。特ニオ姉サン、ソレダトイツカ心ガコワレマスヨ?」
そう言われてアンドロメダは思わず俯く。
言わんとしていることは分かる。だけど───
ぷに ぷにぷに
…駆逐棲姫に両頬をつままれた。
「へ?えっ!?ふえぇえぇぇぇッ!?」
まさかの事態にパニックになるアンドロメダ。それを見ていた戦艦棲姫が額を押さえる。
「エヘヘ。オ姉サンノ肌スベスベモチモチシテテ気持イイデス~」
ニコニコ顔の駆逐棲姫にされるがままのアンドロメダ。ぐいっと顔を引き寄せられて頬擦りまでされる始末…。
ぼんっ!という音と共にアンドロメダの顔が真っ赤に染まる。
もう思考とかどうにもならず、思わず戦艦棲姫に助けて下さいお願いします!との視線を送ってしまうが、「ゴメン無理」と言わんばかりに手を合わされた…。
アナライザーは右往左往するだけで、妖精達は遠くから恐る恐るこちらを伺うのみ…。(あ、誰か撮影してる)
潜水艦の方達も赤らめた顔を手で覆うふりをしながら指の隙間からしっかりと凝視していた。
誰か助けて~~~~~!?とアンドロメダは心の中で叫んだ…。
────────────
暫くして、アンドロメダは漸く解放された。
アナライザーが意を決して、決死の覚悟で駆逐棲姫に嗜好品をすすめたのが功を奏した。
今駆逐棲姫は異星人をも唸らせ虜にしたという伝説のスイーツ、『マゼランパフェ』に舌鼓を打っていた。…何故かアンドロメダの膝の上で。
その際、自身の脚に伝わる感触から駆逐棲姫の脚が腿から先は義足的なモノであるとわかった。しかも驚くほど軽い。これも生体艤装的なモノなのかしら?とアンドロメダが考えていると───
「ホントモウ、何カ色々トゴメンナサイ…」
本日二度目となる戦艦棲姫の謝罪に、アンドロメダも乾いた笑みしか出なかった。
お互い駆逐棲姫の乱入と自由奔放な振る舞いに毒気を完全に抜かれていた。
とは言え、確かにお互い本心では引き金を引きたく無かった気持ちがあっため、駆逐棲姫の奇行とすら謂える振る舞いに若干引きつつも、内心では感謝していた。
本人曰く「二人共心根ハヤサシイノニマジメデ立場ニフリマワサレテルノガ見テテツラカッタ」との事。
この評にアンドロメダは驚く。おそらく遠くから様子を見ていたのだろうが、それだけでここまでヒトとなりを断言出来るものなのかと。
アンドロメダの内心を察した戦艦棲姫が「コノ娘、
…その後に付け加えられた「コレデすきんしっぷヲ控エテクレレバトテモ良イ娘ナノニ…」と言う小言というか苦言は華麗に無視しながら。
とは言え、ヒトは見かけに依らずとはよく言ったものだとアンドロメダは感心しつつ、思わず駆逐棲姫の頭を優しく撫でていた。それに終始ご満悦な駆逐棲姫の姿に、戦艦棲姫は何とも言えない表情を浮かべていたのは言うまでもない。
その後、なんやかんやあってアンドロメダは早朝にこの海域から退去する事となった。
とは言え一応この辺は深海棲艦の支配領域でもあるため、監視が付くこととなったのだが、それに駆逐棲姫が立候補したのだ。
そして時を元に戻す─────
アンドロメダ自身、監視が付くことに異論は無かった。しかもそれが姫級なのだから一筋縄ではいかない。
実際、彼女の動きを見ているとその練度の高さが分かる。
しかもアンドロメダは補機での航行とはいえ、並の水上艦の巡航速度よりも速い。
にも拘らず、駆逐棲姫は平然と付いて来れているのだ。
これにはアンドロメダも舌を巻いた。
姫級の深海棲艦は自身が想定していたよりもスペックが高い。もしあのまま戦艦棲姫と撃ち合っていたらどうなっていたかと思うと、背筋が凍った。
そういう意味でも駆逐棲姫には感謝しかない。
とは言えである。アンドロメダが日本を目指す以上、一応は敵対している状態である。
それなのにやたら距離が近いのだ。
物理的な意味ではなく、こう、心的な意味で。
昨晩、戦艦棲姫は別れ際にこう忠告を残していった。
「気ヲツケナサイ。油断スレバクワレルワヨ」と。
最初は何の事かわからなかったが、今ならわかる。なぜなら隙有らば艤装に飛び乗ってスキンシップしようとしてくるのだから…。
仮眠時に添い寝をねだられたが、別に変なことはしてこなかった。はず。そう願いたい。と言うか何かあったならアナライザーや当直の妖精達が騒いだはず。
一応、今は
それに彼女によるスキンシップが嫌という気持ちは薄い。最初こそは吃驚したが、小動物的な奔放さに段々と可愛らしさを感じ出していた。
そう考えている自分に、何だかだんだん感化されているなぁと感じていた。
いざというとき、私は彼女や彼女達深海棲艦に引き金を引けるのかしら──と言う一抹の不安にかられる。
いや、それ以前に何とも言えないこの緊張感の無い──まるでピクニック──状態に、アンドロメダは変に気疲れを起こしていた。
悶々とした気持ちに、アンドロメダの表情が暗くなる。
「はあぁ「笑顔笑顔」ヒャアっ!?」
溜め息を吐いた瞬間、アンドロメダの気持ちが沈みつつあるのを察した駆逐棲姫がそっと近付いて耳元で囁くように告げた。
「ソンナ顔シテマスト、折角ノ美人ガ台無シデスヨ?」
美人と言う言葉に頬を赤らめながらも、誰のせいですかと言いたくなったが、口を出たのは別の言葉。
「貴女は本当に私の監視なんですか!?」と問うと「監視デスヨ~」と笑顔一杯で返され「デスカラオ姉サンノ気持チノ変化ガ手ニ取ルヨウニワカルンデス」と告げるとアンドロメダの頬を捏ね繰り回しだした。
頬を捏ね繰り回されながら、もうどうにでもなれとアンドロメダは
その後も駆逐棲姫に振り回されながら、日本へと向けた旅路は続く───「ワタシタチノトコロヘキタラ、オネエサンノコトヲオモウゾンブンイヤシテアゲマスヨ!」「テイチョウニオコトワリイタシマスッ!!」───本当に大丈夫なのだろうか…?
─────────
「振ラレタヨウネ」
「クゥチャン…。デモアノ娘、あんどろめだサンハイズレ私達ノ大切ナ
「…エエ。ソレトクゥチャンッテ呼ブナ。ソノ呼ビ方好キジャナイノ」
「アラ、ゴメンナサイ。デモ私ハ好キヨ?」
「頭二
「ソレハソウト、ホントニ追撃スルノ?」
「彼女ノ話ガ本当ナラ、ソレニ貴女が戦闘ヲサケタ判断カラ見テ、勝チ目ハ無イカモシレマセンガ、コノママ艦娘達ト合流サレテハ脅威ニナルノハ間違イアリマセン。ソウデショ?」
「否定ハシナイワ」
「まりあなヘノ増援部隊ノ準備モ丁度完了シマシタ。ソレニ最近暇ダト腕ヲブシテイル娘モイマシタカラツイデニ連レテイキマス」
「…アノ娘カ。大丈夫ナノカシラ?」
「がすヌキハ必要デス。デナケレバソノウチ勝手ニ突撃シテイキソウナノ…」
「ソレモソウネ…。デモ、無理ハ禁物ヨ?」
「心エテオリマス。ソレデハ」
さて珍道中の始まり始まり~(自棄)そしてアンドロメダの追撃を開始した深海棲艦!アンドロメダに危機が迫る!!風雲急を告げる西太平洋!!いよいよ戦いの火蓋が切って落とされるのか!!
…ちゃんと戦闘シーンが書けるか実はかなり不安。
ちょっとした裏話。
実は何故か途中でアンドロメダが駆逐棲姫に深海棲艦化させられて引き返す内容になって慌てて書き直したりしました…。と言うか駆逐棲姫がキャラ崩壊したのはその名残だったりします…。最後の勧誘台詞もその名残…。
駆逐棲姫好きの方々、本当に申し訳ない。
それと今後につきまして、皆様方にアンケートを実施しようかと思います。
内容は深海棲艦のセリフについて、今までみたいに原作同様片仮名表記にすべきかどうかデス。
片仮名表記ですと読み上げ機能での読み違いが多く発生したり、誤字に気付きにくい等の問題が増えて来ましたので、今後平仮名に変えようか迷っています。また皆様方が読みにくいかもと段々心配になってきたというのもあります。
ですので皆様方の御意見を知りたく、次の投稿までの間でアンケートを実施致します。
あ、アナライザーはそのままですので悪しからず。
それでは今回はこの辺りで失礼致します。
励みや参考になりますので、お気が向きましたら感想もよろしくお願い致します
アメリカ大統領選挙のイメージは?
-
直接選挙
-
間接選挙