艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり 作:稲村 リィンFC会員・No.931506
ルーチシェ ゴーリカヤ プラーヴダ, チェム スラートカヤ ローシ
訳、甘い嘘より苦い真実のほうが良い。
今回話のネタの一部にYouTubeにて投稿されております『核の傘というアメリカの嘘 混乱する国際政治と日本③ 伊藤貫』を参考にしております。
ところで、上記のこととも関連するのですが、セルゲイ・カラガノフ(
「同志マシツマ!同志ヒジカタ!久しぶりだな!!」
ヘリポートで出迎えた時は連絡将校の
厳格ながらも信頼、信用を寄せる相手には豪放磊落。
それがこの
それと同時に、敢えてあからさまなまでに態度で表わす事で、公的には自身、
そしてそれはこの“特別軍事作戦”の“主役”が日本であり、自分達
「ふ~~〜ん、“イワンの雌犬”にしては殊勝じゃない?少しはこっちも気遣って欲しいわね」
アメリカ海軍第7艦隊所属艦娘部隊旗艦艦娘、
高飛車で気の強い艦娘ではあるが、その目にはクッキリとクマが浮かび、疲れ気味な風体となっており、そのせいか普段以上に刺々しい物言いとなっていた。
「あ?同盟国に無理難題を吹っ掛けるだけの、惰弱で役立たずの上に恥知らずな
「ころちゃん言うなぁーーっ!!」
片眉を吊り上げながら煽る様に言い返す
そんな米露の罵り合いを横目に、もう一人の先客、金剛が淹れた紅茶を優雅な所作で嗜む、
椅子にゆったりと腰掛け寛いでいるその所作だけで、給仕役を買って出た金剛も含めて1枚の絵画のようであるが、横で繰り広げられる諍いに対して我関せずな態度を貫くあたり、流石は“あの”ブリカス…、もとい、大英帝国
まぁ、
だが───。
「アンタの所の!虎の子の水中艦隊が!急に慌ただしく動き出したから!こっちは上に下に大騒ぎで迷惑してんのよっ!!」
数日前───。
オホーツク海、深度450メートル。
アメリカ海軍、『バージニア』級攻撃型原子力潜水艦『アーカンソー』。
この艦はエンジンを停止し、物音を立てずジッと静かに水中で身を潜めていた。
「目標、更に接近します。
速力、深度、針路変わらず、です…」
「東へと向かっているのだな?
このコースは
『ヤーセン』級とは
ここオホーツク海を基点とした周辺海域一帯は
故に、艦長は定期パトロールの
「速力20ノットのパトロールは通常ありえません。
こいつは明らかにイレギュラーな動きかと」
艦長の予想に否定しながらも、この水中移動音源の正体を突き止めるべく、
「音紋解析が出ました…!
艦長、これは…、
「戦略原潜…、間違いないか?」
「はい。『ボレイ』級1番艦、『ユーリ・ドルゴルキー』、間違いありません…!」
『ボレイ』級原子力潜水艦。
水中排水量24,000トン。水中速力25ノット、全長170メートル。
SLBM発射筒16基。一発で大都市を消滅させる、射程距離10,000kmのR-30『ブラヴァー』核弾道ミサイルを少なくとも16基、その腹に内包する
「先の定時連絡で、オホーツク海から日本海へと向かう同型艦『クニャージ・オレグ』を『オクラホマ』が探知したとあったが…」
「コイツは太平洋へと抜けようとしていますね…。
しかも通常の戦略パトロール任務で使われるコースから逸脱しています」
副長の呟きと共に、『ユーリ・ドルゴルキー』の推進機が発する音、キャビテーションノイズが、僅かだが響いてくるのを感じた。
「目標、なお接近します!
巨人ゴリアテの心音の様なキャビテーションノイズです」
目標、『ユーリ・ドルゴルキー』がほぼ真上を通過するのを、隔壁によって直接は見えないが、艦長は音を頼りに視線を向けた。
「…まるで見つけてくださいと言わんばかりだな」
「艦長、追跡しますか?」
顔を顰めながら呟いた艦長に副長は即座にそう尋ねるが、艦長は少し考えた後、首を横に振った。
「…いや、動くな。ここはパトロールコースにも近く、付近に攻撃型潜水艦が待機しているかもしれん。
佐世保への報告を優先する…」
「
この一連のやり取りを、彼らの後ろから伺っていた『アーカンソー』配属の潜水艦艦娘は、内心でホッとしていた。
確かに自分はアメリカ海軍に所属する艦娘ではある。
だが
そしてこの考えは近年のアメリカ海軍艦娘ほぼ全員の共通した考えであり、
特に東太平洋担当の第3艦隊や大西洋担当の第2艦隊と言った本国艦隊は酷い有り様だと聞いているが、少なくとも西太平洋艦隊の第7艦隊残余はマトモな人間が多く、本国程の対立は今のところは起きていない。
これは近年第7艦隊の駐留する佐世保が事実上の政治的流刑地に近い扱いであり、今の政府に批判的な海軍軍人の多くが補給もままならない日本の佐世保へと
艦娘部隊指揮官
そんな彼から、彼女達潜水艦に乗り込む艦娘達に、もしも乗艦の指揮官が暴発した場合は力尽くでも阻止するようにと、頭を下げて頼まれた。
それが、彼と彼女達の共通認識だった。
「アンタら、まさか核戦争おっ始める気じゃないでしょうね?」
上官である
いや、恐らくアメリカ軍に所属する全ての艦娘が同じ思いだろう。
だからこそ、この
「まさか!!
“
“甘い嘘より苦い真実のほうが良い”だよ。
胡乱な目付きで詰問する
これに
彼女は暗に「いい加減、核の傘が“まやかし”に過ぎない事から目を背けるな」と言いたいのだ。
かつてフランス大統領、シャルル・ド・ゴールは語った。
「アメリカがパリの為にニューヨークやワシントンを犠牲にする覚悟があるとは思えない」
そうしてフランスは世界で4番目の核保有国となった。
第三次大戦以前、旧ロシア連邦は30分以内にアメリカ人1億人以上を殺害可能な核戦力を誇り、旧中華人民共和国ですら5,000万人から6,000万人を30分以内に殺害可能だった。
見ず知らずの誰かの為に、自らの命を危険に晒すほど、アメリカはお人好しの国ではない。
その事は当のアメリカ人が一番よく理解していた。
だが同盟国を“核の傘”という骨組みだけのスカスカな傘で欺き続けることが、アメリカにとってはそれなりの利益を齎し続けることに繋がったが為に、彼らは有りもしない“
同盟国が独自の核戦力を保有することによる自主防衛能力と手段を奪うことによって、ミサイル防衛システムや型落ち若しくはモンキーモデルの戦闘機や巡航ミサイルなどといった自国の兵器に弾薬、自軍への納入品の売れ残りや消耗し切れなかった物の在庫一掃も兼ねて、更にはそれらの関連機材やアップグレードキットなどを高額な値段で買わせ、軍需産業に対して持続可能な利潤構造を構築提供した。
例えそれらの中に、使い物にならないガラクタが大量に紛れ込んでいたとしても、自分達だけでは自主防衛がままならない同盟国は、そのガラクタの山を黙って買い続けるしか無い。
もしもロシアや中国が日本に対して核による恫喝を仕掛けて来た場合、アメリカは口では「見捨てない」とかなんとか言うだろうが、日本を容易に切り捨てて見捨てる判断をし、だがギリギリまで兵器を売り付けて儲けるつもりでいた。
彼らの価値基準は飽く迄もカネだった。
今だけ、カネだけ、自分だけ。
それが、超大国と呼ばれたアメリカの本質だった。
相手に嘘を付き続けて徹底的に騙し尽くしてでもカネ儲けを優先し、相手を自分達の利権構造に雁字搦めにして骨の髄までしゃぶりきる構造の中に組み込んでしまう。
ある意味で蟻地獄の様な構造だった。
だがその構造も、アメリカの凋落に引き摺られて軍需産業が衰退した為に、既にほぼ崩壊している。
ただ、アメリカが中華連邦を報復核攻撃で滅ぼしたという、表向きの事実から核の傘に関する議論が半ば忘れ去られていた。
だが
問題はその事に日本の上層部は気付かないのか、意図して無視しているのか、未だにアメリカの核の傘に縋る姿勢を崩していない。
だからこそ、日本はアメリカからの無理難題に、小間使いの様に唯々諾々と従い続けている。
それに対して
アメリカもアメリカだが、日本も日本だ。
お互いが不誠実過ぎるにもほどがある。
いい加減、甘い嘘による幻想の世界から抜け出し、苦い真実に満ちた現実の世界を直視しろ。
お節介であることは重々承知しているが、日本に居る間、ずっとヤキモキした気持ちでいた。
もしもあの時に、無二の親友となった
今みたいに体を壊して戦えなくなる。というのではなく、精神が摩耗して、もう一人の親友である
だが
だが自身はどうだ?
不満を内に溜めて、どうする事もできず悶々として鬱屈としている。
そんな自身の有り様に、引け目を感じた。
そして耐え切れなくなった。
親友であり、心の支えであった
艦娘として戦うには肉体が限界に近付いていたというのもあったが、彼女を見ていてなんとなくではあるが、進むべき道がうっすらと見えた気がした。
その時から太平洋艦隊司令
自分なりに出来ること、そしてやりたいことを成すために。そしてそのためにはそれなりの権限が必要だった。
その最低条件が、今の地位である。
この2人が今の日本に囚われているということが、腹立たしい。2人はもっと自由にあるべきだ。
無論、最低限の節度は必要であるが、2人に限ってその心配は無いだろう。であるならば、今の日本は2人にとって単なる“枷”でしかない。
枷を外すことが出来なくとも、緩めることは出来るハズだ。
だからこそ、第16潜水艦戦隊には敢えて移動が発見されても構わないと言い渡した。
変なことを企んでいる連中に、実際になにか変なことしでかしたら、どうなるか分かってるだろうな?と脅かすために。
そしてそれをマシツマや、万が一を懸念しながらも察したのだろう、サセボのガーフィールドが上手く利用した。何らかの介入を企ててそうな連中に対する脅し文句として。
お陰でこの作戦中、変な介入が入る危険性が大きく減った。
まぁ、空気を読まない日本政府は最後までゴネて、マシツマと揉めたらしいが、何とかなったようだから良しとしておこう。
それに、アメリカの動きから、これで核の傘が機能していない事を日本が理解してくれたら良いのだが…、難しいだろうな…。
「…荒療治にも程があるわね」
紅茶を啜りながら、半眼でそう漏らす
「現代の黒船デスネー」
紅茶ポット片手に肩を竦める金剛ではあるが、内心ではそれくらいの強引さが無ければこの国は微動だにしない事を知っていた。
「明治から百数十年───」
ここで真志妻が口を開いた。
「もうすぐ二百年になりますが、日本は少しも変わっていない。
海の外からの明確な圧力が無ければ、良くも悪くもこの国は大きな変革を起こすことが出来なかった」
確かに。と土方は思った。
この国が大きく動く時には、外圧による物が大いに絡んでいるし、思えば自身も関わっていた『ヤマト計画』、その前身となる『イズモ計画』だってガミラス、そしてイスカンダルという2つの大きな外圧によってそのあり方が大きく左右されていた。
ただこの世界の、今の日本は江戸幕府や極東管区の日本よりも鈍い気がしてならないが…。
「確かに今回
彼女達もまた、海から来ました」
「ある意味。私達も海から来たと言えなくは無いデスネ?」
その金剛の言葉に、真志妻は笑みを浮かべ頷いて返した。
「ここまで条件が揃ったのならば、少しずつでも変わらない訳にはいかないでしょう?」
「なら貴女も変わって、この国の元首になったら?」
微笑みながら真志妻に提案する
「…そう言って、
地の底から響くような、矢鱈掠れた声が執務室に響いた。
いつの間にか、1人の酒瓶を持った艦娘が、入り口に立っていた。
その姿を見た
「
そんな彼女に
恐らく食堂から誰かが彼女を追いかけて来ているのだろうが、
「なんで…?」
「なんで、あの時…」
「
そう叫ぶと
甘い嘘より苦い真実の方が良い。
しかし人は甘い嘘を求めてやみません。
前回の投稿が今年最後の投稿と言ったな?あれは嘘だ。
なんか筆がのりました。
日本政府やアメリカが変な気を起こさないようにするため、戦略原潜で黙らせました。
正直筆者はアメリカによる核の傘に否定的です。
今回名言こそはしていませんが、戦略原潜をあからさまに動かすことで、核ミサイルで狙っているぞと日本政府に対して圧力を暗に掛けました。
一応、予定では次の1話で欧州の情報関連は終わらせるつもりです。
兎も角欧米の介入が出来無い状態にしないと、話がもっとややこしくなって話が進まなくなる。そしたらまた苦情が来る事態になる。の悪循環になりそうですので、前回後書きで宣言した通り、ナレ死の方針です。
…念の為言っておきますが、面倒臭くなったら核ミサイルぶっ放す。という事は流石にしません。
補足説明
『
アメリカ海軍が運用している攻撃型原潜。
『
作中の『
『
885型原子力潜水艦。攻撃型潜水艦(SSN)と巡航ミサイル潜水艦(SSGN)の機能を兼ね備えており、ロシア語では多用途魚雷・有翼ロケット原潜(MPLATRK)と称される。
後継艦『ハスキー』級の開発、建造により9隻の建造で終了することが決定されていますが、執筆中に『ハスキー』級が就役する可能性が無いため、作中『ヤーセン』級改良型が建造されている設定とします。
『
955型戦略任務ミサイル潜水巡洋艦。
『
それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくおい願いいたします。
皆様、良いお年を。
セルゲイ・カラガノフという人物をご存知ですか?
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知っている。
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知らない。