艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 欧州情勢は複雑怪奇なり。


 新年明けましておめでとうございます。…で良いのだろうか?新年いきなり地震に飛行機…。

 ガチできな臭い世の中ですが、ボチボチと気の赴くままに進めて参ります。


 ちょっと出だしが想定の3倍の字数になりましたので、急遽独立することにしました。そのためマイナス0.5というヘンテコなナンバリングになりました。それと閑話8で出した設定を活用。


 それにしても、予想はしてましたがセルゲイ・カラガノフ教授は知られていないんですねぇ…。


第66−0.5話 The situation in Europe is complicated and mysterious.

 

 

 

Non muoverti Pola! ti sparo!(動くなポーラ!撃つぞ!)

 

 

 南部97式拳銃(コスモニューナンブ)、所謂コスモガンをホルスターから抜き放ちながら江風(カワカゼ)が執務室に突入。

 

 イタリア語による警告を発しながら、その銃口を躊躇すること無くPola(ポーラ)へと向けた。

 

 

 通常携行のPL-15、Пистолет(レベデフ) Лебедева(ピストル)ではなく、いきなりコスモガンを向けたのは、艦娘が相手だと拳銃弾など豆鉄砲にすらならず、制圧能力に欠けるため本来ならば取り押さえるなどの格闘術が推奨されており、そのための訓練を春雨(ハルサメ)姉妹達は元空間騎兵隊の斉藤から受け、特に江風(カワカゼ)は姉妹の中でも戦いの申し子とされる戦闘狂(バーサーカー)夕立(ユウダチ)よりも優秀だった。

 

 だが緊急を要する場合、出力調整次第で威力の増減が可能──それでもスタンガン程度だが──なコスモガンの使用が許可されていた。

 

 

 今回の場合、元イタリア艦娘現新ロシア連邦(NRF)客員艦娘のPola(ポーラ)がイギリス艦娘のWarspite(ウォースパイト)に飛び掛かり、瓶で殴打する寸前であった。

 

 

 Гангут(ガングート)の指示により食堂で待機していることとなっていたPola(ポーラ)を、土方を経由した真志妻の密命でそれとなく見張っていた江風(カワカゼ)であったが、浴びるように酒を呷り、当初から酔っ払ってはいたが、更に酔っ払ってほぼ泥酔状態となった彼女を見てすっかり油断してしまった。

 

 一瞬目を離した隙に、居なくなっていた。

 

 慌てて食堂を飛び出した直後に、執務室の警護に就いていた涼風(スズカゼ)から突然ふらりと現われたPola(ポーラ)に不意を突かれたと通信が入った。

 

 

 本来ならば二人一組(ツーマンセル)態勢で春雨(ハルサメ)姉妹が警護に就くのだが、この日は江風(カワカゼ)涼風(スズカゼ)、それに時雨(シグレ)夕立(ユウダチ)以外は全員出払っており、斉藤は警戒中の陸軍部隊との折衝に忙殺されていた。

 

 そして時雨(シグレ)夕立(ユウダチ)は交代要員であり、引き継いで自室に戻った後だった。

 

 そのため警備がいつもよりも手薄となってしまっていた。

 

 

 慌てて執務室へと駆け付けた江風(カワカゼ)の耳目に入って来たのが、頭を抑えて足元の覚束ない──恐らくは不意打ちによって脳震盪がおきているのだろう──涼風(スズカゼ)が、駆け付けた江風(カワカゼ)の姿を見たことでふらつきながらも執務室内を指差す姿と、Pola(ポーラ)()()()()()叫び声だ。

 

 マズイ!と思ってホルスターに手を掛けながら執務室へと駆け込み、目にしたのはPola(ポーラ)が今まさに、Warspite(ウォースパイト)へと掴み掛かる瞬間だった。

 

 

 この時、江風(カワカゼ)の頭には最悪の記憶がフラッシュバックした。

 

 姉妹艦『夕立(ユウダチ)』が自分達を包囲する敵艦隊を食い破ろうと吶喊した事で、敵艦との距離が近過ぎて碌な援護が出来ず、ズタボロにされて嬲り殺しにされるのを見ていることしか出来なかった、あの時を。

 

 

 Warspite(ウォースパイト)は何故か抵抗する素振りを見せず、このままだと一方的に殴り付けられる事になる。

 

 いくら艦娘といえども、艦娘の力と共に殴り付けられる瓶の破壊力は軽視できない。

 

 映画の乱闘シーンなどで簡単に木っ端微塵に破砕されるイメージがある瓶だが、それは映画用に割れやすく作られた演出用の小道具であり、本来瓶とは中に入れられた液体の保存及び輸送の際に痛まない、ちょっとやそこらでは漏洩しない様にするため頑丈に出来ている。

 

 人間同士でも頭部を殴打されたら、頭蓋骨陥没や頚椎損傷などの命に関わる負傷に直結する。艦娘の力ならば顔面が粉砕され、原型を留めず間違いなく即死することになる。

 

 艦娘同士ならばそこまでの事態にはならないだろうが、何度も殴打されたら不味い。

 

 いくら頑丈であってもその肉体構造は人間と酷似しており、脳などの中枢神経系へのダメージというリスクが危惧される。

 

 現に涼風(スズカゼ)は不意打ちもあったのだろうが、やや意識が朦朧としている。

 

 

 取り押さえようにも距離があり、間に合わない。

 

 

 故に、咄嗟の判断でコスモガンを選択し、躊躇無くPola(ポーラ)へと向けたのだ。

 

 

 

 

 …のだが。

 

 

 

「HEY!Stopするデース」

 

 

 Warspite(ウォースパイト)のそばに居た金剛が、いつの間にか手に持っていた愛用の煙管を振り抜き、Pola(ポーラ)を弾き飛ばして壁に叩き付けた。

 

 

 そして───

 

 

「ゔ…、オロロロ~~~っ!」

 

 

 

 壁にベチャッと叩き付けられ、床へとズレ落ちたPola(ポーラ)は、上体を起こしたところで盛大に吐瀉した。

 

 

 

「…あ~、江風(カワカゼ)さん、お呼びじゃなかったか?」

 

 

 ホルスターにコスモガンを仕舞い、頬を掻きながら江風(カワカゼ)は力無くそう呟いた。

 

 とは言え、騒ぎを聞き付けた艦娘達が集まりだした事で、それを追い返す事になったのだが、涼風(スズカゼ)の事も心配であり、多少申し訳ない気持ちになりながらも時雨(シグレ)夕立(ユウダチ)に応援を要請、涼風(スズカゼ)工廠(医務室)へと連れ出して貰った。

 

 そしてPola(ポーラ)であるが、Uhm…, per favore dammi un po' d'acqua….(あの…、お水をください…)と、酒焼けした声で金剛にお願いしていた。

 

 

 何だか締まらないが、仕切り直しである。

 

 

 

 余談だが、暫くして江風(カワカゼ)涼風(スズカゼ)には気の緩みによる職務怠慢であるとして、土方から工廠倉庫の清掃が命じられ、大人しくて怒ることが殆ど無い春雨(ハルサメ)の代わりに海風(ウミカゼ)が叱りつけたのだが、怒ってはいないけど無言で見詰めて来る春雨(ハルサメ)が逆に怖かったとのこと。

 

 

 また金剛の煙管であるが、金剛が明石に頼み込んで作ってもらった明石謹製の喧嘩煙管であり、本人曰く「こんなこともあろうかと…というやつデース!」と語っているという。

 

 





 当初は発砲するバージョン、Pola(ポーラ)がウォー様にゲロぶちまけるバージョンなども考えましたが、なんか違うと思っていた所、金剛さんを喫煙者にしていたのを思い出し、金剛さんに制圧してもらいました。が、殆どギャグだなこりゃ…。

 …新年一発目がこれでいいのだろうか?

 コスモガンが出力調整可能なのはPS2ゲームでの劇中設定を引っ張ってきました。
 


 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。


 セルゲイ・カラガノフ Серге́й (セルゲイ) Алекса́ндрович(アレクサンドロヴィチ) Карага́нов(カラガノフ)

 モスクワ高等経済大学、外交政策学部学長。プーチンの知恵袋と呼ばれる人物。

 この人が発表したとある論文が去年、話題となりました。

 詳しくはYouTube『伊藤貫の真剣な雑談第16回 プーチンの知恵袋、セルゲイ・カラガノフ』にて解説されておりますので、ご覧になることをお勧めしま致します。ただ問題は、この動画、1時間半とかなり長いのがネックですが…。
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