艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 暗躍するロシアの熊。

 裏では色々とやってます。てかそれが国家と言うもんでしょう?

 それはそうとタッカー・カールソン氏のロングインタビューはとてつもなく凄かった。

 “彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず”

 一方だけの発言、情報だけだと足元を掬われる。双方の主張、発言を聞いて、視点を変えるなどをした上で判断しなければ取り返しのつかない事態を自ら呼び込む事になる。

 そういう意味ではタッカー・カールソン氏は正に値千金の仕事をこなした。無論それはジャーナリストの本来あるべき姿であるのだが、それを認めたがらない愚か者のなんと多いことか…。

 


第68話 Russian bear working behind the scenes.

 

 

 

「…そう。分かりました」

 

 

 休憩所とプレートが掛けられたスペースから、イヤホンを耳に当てたWarspite(ウォースパイト)の声が流れてくる。

 

 

「ええ。姉さま達にもよろしくお伝え下さい。それと、貴女も無理はしてはいけませんよ“()()()”…?今回のこと、貴女が裏で動いていたのでしょう?」

 

 

 イヤホンの向こうから豪快な笑い声が聞こえ、それがこの問いに対する答えであることを雄弁に物語っていた。

 

 

 2つ3つほど話た後、Warspite(ウォースパイト)はイヤホンを耳から外して携帯タブレットを懐に仕舞うと、大きく息を吐きながら休憩スペースに備え付けられている安物の背もたれ付きベンチソファーに体を預けた。

 

 

「状況からGroße(グローセ)本人、彼女の腹心Moltke(モルトケ)が来ている可能性、2人との繋がりからトルコのYavuz(ヤウズ)も来る事は確実で、軍事同盟の観点から新ロシア連邦(NRF)から誰かが来ることまでは予想してましたが、まさか現役を退いたと聞いている“教授”と、今まで決して表舞台へと姿を現すことの無かったロシアの熊が現れていたなんて…」

 

 

 今の通信相手、今現在アドリア海に展開中の空母『Prince(プリンス) of(オブ) wales(ウェールズ)』に現女王にして自身の姉であるQueen(クイーン) Elizabeth(エリザベス)と共に乗艦する同僚、侍従艦兼“()()()Load(ロード)Nelson(ネルソン)から齎された情報を頭の中で整理する。

 

 因みに“外務卿”と言うのは正式な役職では無く、Q.Eを補佐する者達の中での得意分野を鑑みての、一種の役割分担を明確にするために、謂わば便宜的に作られた非公式な裏の役職であり、L.Nの“外務卿”以外には近衛艦隊旗艦のHood(フッド)が“海軍卿”と呼ばれている。*1

 

 今回の騒動を“決闘”という形で終息させるために、L.Nが“外務卿”として裏で動き回っていた。

 

 

 それは偏に、主君であり忠誠の対象たる女王陛下、Q.Eの御心である「深海棲艦との交渉」を叶える為に、その糸口を確実に掴み取ることが最大の目的であり、そしてその掴んだ糸口を敢えて完全に秘匿することは避け、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と目論んだものだった。

 

 

 その結果は、ある意味大成功だと言えた。

 

 いや、成功とは言えるものの、予想外の事態も発生していた。

 

 

 そもそも今回の問題は、何も Cavour(カブール)の、事実上の復讐劇である武装蜂起の問題だけで済む話では無かった。

 

 彼女の誘いに同調した勢力の一つ、ドイツ艦娘は少し前からある意味でヨーロッパの火薬庫とも言える状態になっていた。

 

 そのキーパーソンとなるのが、先に上げたGroße(グローセ)Moltke(モルトケ)、そしてYavuz(ヤウズ)の3人の艦娘達である。

 

 

 Yavuz(ヤウズ)こと、Yavuz(ヤウズ) Sultan(スルタン) Selim(セリム)

 

 トルコ共和国海軍艦娘艦隊旗艦代行艦娘であり、彼女は元々Kaiserliche(カイザーリッヒ) Marine(マリーネ)、所謂帝政ドイツ海軍時代に『Moltke(モルトケ)』級巡洋戦艦の2番艦『Goeben(ゲーベン)』として建造された(ふね)で、地中海戦隊の旗艦として『Magdeburg(マクデブルク)』級軽巡洋艦『Breslau(ブレスラウ)』と共に地中海で活動していたのだが、第一次大戦の開戦によりイギリス艦隊の追跡を受けて『Breslau(ブレスラウ)』と共にオスマントルコへと逃亡、少々複雑な事情も相俟って2隻共々オスマントルコへと譲渡されたという、なんとも複雑な経緯を持った(ふね)だった。

 

 

 そしてこの『Goeben(ゲーベン)』は唯一の姉妹艦『Moltke(モルトケ)』と共に艦娘として再びこの世に生を受け、ドイツ連邦共和国海軍艦娘部隊の精鋭部隊『Hochseeflotte (ホーホゼーフロッテ)』、大洋艦隊に所属するようになり、旗艦艦娘の腹心と称されるまでとなった。

 

 

 Hochseeflotte (ホーホゼーフロッテ)とは元々、帝政ドイツが当時世界第1位の海軍戦力である大英帝国海軍(ロイヤルネイビー)に対抗して作り上げ、世界第2位を誇る規模にまで登り詰めた証でもある一大主力艦隊の事である。

 

 その艨艟達が艦娘として蘇ったとして、まぁ国内向けの政治的プロパガンダとしての狙いと、我が物顔でドイツ周辺海域を跳梁跋扈するイギリスへの当て付けという意図も多分にはあっただろうが、ドイツ連邦共和国政府と軍部はとある艦娘の登場を持って、大々的に大洋艦隊の復活を内外に喧伝した。

 

 その艦娘と言うのが、『Kaiser(カイザー)』級弩級戦艦の2番艦に大洋艦隊旗艦としての司令部設備を有して建造された、Friedrich(フリードリヒ) der(デア) Große(グローセ)である。

 

 

 大戦当時の艦隊司令、そして英国海軍主力艦隊大艦隊(Grand Fleet)との一大艦隊決戦ジェットランド沖海戦、或いはユトランド沖海戦と呼ばれる大海戦で実際に『Große(グローセ)』に乗艦して指揮を取ったReinhard(ラインハルト) Scheer(シェア)海軍大将の“鉄仮面”と渾名されるほどの謹厳な態度が影響しているのか、彼女もまた仲間の艦娘から“鉄仮面”と呼ばれる程の謹厳でお固い艦娘として有名だった。

 

 その“鉄仮面”の腹心と称され、本人からも篤い信頼を寄せられていた。

 

 姉のMoltke(モルトケ)はその名前の由来ともなったHelmuth(ヘルムート) Karl(カール) Bernhard(ベルンハルト) Graf(グラーフ) von(フォン) Moltke(モルトケ)、通称大モルトケに因んで“我が参謀総長”と、妹のGoeben(ゲーベン)も普仏戦争で活躍したAugust(アウグスト) Karl(カール) von(フォン) Goeben(ゲーベン)に因んで“我が将軍”とGroße(グローセ)から呼ばれる程に、2人は信頼を寄せられていた。

 

 Goeben(ゲーベン)はその信頼に応える様に、全ドイツ艦娘の中で最も激しく最前線で戦う獰猛な艦娘として名を馳せた。

 

 彼女の改良型であるSeydlitz(ザイドリッツ)などといった後継達や、一次大戦戦後の後輩世代に当たるScharnhorst(シャルンホルスト)Bismarck(ビスマルク)と比べたら明らかに劣っているにも関わらず、彼女達を上回る戦果を挙げ続けていた。

 

 

 そんな彼女がある日突然、所属国ドイツを出奔してトルコ共和国へと亡命して来た。

 

 

 この事に当時新ロシア連邦(NRF)と急接近し、軍事同盟を結んでいたトルコに対して、ドイツ、ひいてはEUによる間接的な影響力工作を目的とした偽装亡命なのではないのか?との疑惑が当初よりあった。

 

 

 第一次大戦当時、当初は中立の立場だったオスマントルコ帝国が帝政ドイツ側である軍事同盟陣営、所謂“同盟国”として参戦した経緯が、元となった(ふね)である『Goeben(ゲーベン)』の譲渡が大きく関係していた。

 

 

 当時のオスマントルコの海軍力は国内の政治的、経済的な混乱の影響によって周辺国と比較して大きく劣っており、更には小競り合いでも連戦連敗を重ねており、この強力なドイツ巡洋戦艦が譲渡された意味は国内的に大きかった。

 

 特にこの前日に、トルコ国民の寄付で出来た資金によって英国に発注、建造された新鋭の大型戦艦2隻が、外交上の問題を理由として2隻共英国に接収された事で、トルコ国民の間では「英国は自分達トルコ国民の寄付によって購入が叶った新鋭戦艦2隻を掠め取った盗っ人」として対英感情が急速に悪化の一途を辿っていた事も、無視出来ない理由の一つだった。

 

 

 トルコ共和国と新ロシア連邦(NRF)との関係は、政府や軍部の間に於いてそれなりに良好な関係を築いていたが、深海棲艦を想定した防衛戦略協定の策定ではマトモな戦力と成り得る艦娘が双方共に不足しており、特にトルコは最高戦力が旧式の前弩級戦艦がほんの僅かと、前弩級戦艦以前の装甲艦と呼ばれる沿岸防衛用の旧式も旧式な艦のみで、しかも国内の経済的事情からその配備数も雀の涙程度という、とても悲惨な有り様であり、マトモな防衛計画を立てれない状態だった。

 

 そのため、自国に比べて“まだ”マシな新ロシア連邦(NRF)に弩級戦艦艦娘などの有力な艦娘をなんとか融通出来ないか?と泣き付いたのだが、泣き付かれた当の新ロシア連邦(NRF)としても、トルコよりかは一応()()()()()“まだ”マシという程度であり、それも広大な国土に占める長大な沿岸の防衛を鑑みると、現有艦娘兵力では計算上、1人の艦娘がカバーしなければならない範囲面積は下手するとトルコよりも悲惨であり、通常戦力も用いてなんとか穴埋めはしているものの超過勤務を強いている様な状態であったため、無い袖は振れないとして色良い返事が出来ずにいた。

 

 

 また両国の歴史的背景からトルコ国民の新ロシア連邦(NRF)に対する感情は必ずしも良いものとは言い難かったし、一応の軍事同盟を結んでいながらも安全保障に寄与してくれない事に対して不審感を募らせていた。

 

 

 新ロシア連邦(NRF)はこれに危機感を覚え、深海棲艦の空母機動部隊による空爆に対する早期警戒網及び迎撃網を構築する為に、以前から両国間で合意していた戦術防空システムを元にした各種防空システムと、沿岸部への接近阻害を目的とした自走榴弾砲や多連装ロケット砲を中核とする長距離沿岸砲をトルコへと大量輸出する計画を前倒しし、*2更には万が一に備え「同盟国(兄弟国)シリアを深海棲艦の脅威から守る。」という名目で拡充工事が進められていた、タルトゥース補給処とフメイミム空軍基地の工事を急がせ、配備予定戦力の前倒し配備が進められ、戦略防空システムS-500 Прометей(プロメテーイ)だけでなく弾道ミサイルをミッドコース・フェーズで迎撃可能な地対空ミサイルシステム、S-550の最新改良型を展開するなどの、緊張感が高まる事態が発生した。*3

 

 

 

 だが当のトルコとしても、政府も軍も上に下にと右往左往していた。

 

 

 当初哨戒艦が彼女を発見した際、彼女の腕には所属国を示す腕章が無く、地中海水域ではかなり珍しいドロップ艦であると思って保護して基地へと連れて帰って色々と話をしてみたら、びっくり仰天。ドイツの()()“イノシシ艦娘”Goeben(ゲーベン)だと言うではないか!*4

 

 

 ヨーロッパでは独自の取り決めとして、ドロップ艦か既にどこかの国軍に属しているかを識別する目的で、艦娘は腕に所属国を示す国旗をモチーフとした腕章を身に着ける事が義務付けられていた。

 

 因みに地中海水域におけるドロップ艦は、何故かは分かっていないが大西洋側に集中しており、地中海奥深くになると基本的にドロップ艦はまず見付かっていなかった。

 

 

 本来の所属国、ドイツからも脱走があったとする報せが無かったことも、混乱をより助長させた。

 

 だがその後に「巡洋戦艦艦娘Goeben(ゲーベン)が作戦行動中に敵潜水艦からの雷撃を受けて戦死した。」とする情報が伝わって来た事で、何よりも彼女による証言から、察することとなった。

 

 

 結論から言えば、彼女がトルコへとやって来た理由は、まぁその、端的に言えば家出である。

 

 

 愛する姉であるMoltke(モルトケ)と大喧嘩をやらかしてそのまま飛び出してしまい、どうすることも出来なくなって宛もなく彷徨っている内に、トルコ領海までやって来てしまった。

 

 Moltke(モルトケ)達も追い掛けようとしたが、Moltke(モルトケ)が愛する妹と喧嘩をしてしまった事、何よりも妹が腕章を引き千切って自分へと投げ付けられた事によるショックから放心状態となって初動が遅れ、見失ってしまった。

 

 報告を受けたGroße(グローセ)も、信頼を寄せていたGoeben(ゲーベン)が脱走したことに衝撃を受けて暫し立ち尽くしたが、Moltke(モルトケ)からの報告で納得もしていた。

 

 

共産主義者(コミー)共に頭を下げるのは、もう沢山だっ!!」

 

 

 彼女は第一次大戦当時の時代による影響もあるのか、大のアカ嫌い、ガチガチの反共主義者であり、極左政策を邁進するEUと、それに追随するドイツに心底嫌気が差していたことは、Große(グローセ)も薄々とは感じていたが、前日の戦闘で圧倒的不利な戦力差にも関わらず、上級司令部による杜撰な作戦と不明瞭で要領を得ない命令が原因で艦隊は撤退のタイミングを逃して戦闘に突入。

 

 全滅を悟ったGoeben(ゲーベン)は退路を確保すべく、僚艦の軽巡洋艦艦娘と共に決死の突撃を敢行し、艦隊は甚大な被害が出たもののGoeben(ゲーベン)達の、そしてGoeben(ゲーベン)達の意図に気づいたMoltke(モルトケ)や他の巡洋戦艦艦娘達もGoeben(ゲーベン)達に続いて突撃を敢行したお陰で退路が出来、なんとか離脱に成功して全滅は免れた。

 

 だがその際に、今生でも再び僚艦となってくれて、いつも付き従ってくれていた、この決死の突撃にも文句一つ言うこと無く笑って付いてきてくれた、最愛のパートナーとまで言っていた軽巡洋艦艦娘Breslau(ブレスラウ)が戦死。

 

 明らかに上級司令部の無為無策が原因であるにも関わらず、「敗走の責任はBreslau(ブレスラウ)にある」として、“死人に口なし”と言わんばかりに全ての責任をBreslau(ブレスラウ)に押し付けて無理矢理幕引きとした事で、我慢の限界を迎えていた様だった。

 

 

 その事でなんだかんだ言いながらも仲の良かった姉と大喧嘩をするほどまで、彼女が思い詰めていた事に気が付かなかった自身の無神経さと不甲斐なさに、(ハラワタ)が煮えくり返るほどの怒りを覚えた。

 

 

 引き千切られた腕章を手に、Große(グローセ)はこの事を知る全員に緘口令を敷き、Goeben(ゲーベン)が作戦行動中に敵潜水艦からの雷撃を受けて戦死したと司令部へと報告した。

 

 

 

 紆余曲折を経て、最終的にGoeben(ゲーベン)はドロップ艦扱いとしてトルコが引き取る形で落ち着いたが、その際に裏ではドイツとトルコの間で艦娘間でのホットラインに似たチャンネルが繋がれるというオマケが付いた。

 

 これには新ロシア連邦(NRF)も深く関わっているとされ、事実地中海常設作戦部隊から連絡要員という形でトルコへと艦娘の小部隊が派遣されたが、そのほぼ全員が連邦参謀本部情報総局、所謂GRUに所属している可能性の高いメンバーが占めていた。

 

 

 兎も角として、Goeben(ゲーベン)は色々と複雑なものを抱えながら、トルコ海軍艦娘Yavuz(ヤウズ)として再出発することとなった。

 

 

 だが今回の問題はその抱えている複雑なものな起因しているものだった。

 

 

 地中海常設作戦部隊の上位部隊、黒海艦隊から旗艦級でもある主力艦のИмператрица(インペラトリッツァ) Мария(マリーヤ)級戦艦の誰かが来るかもと予想していたら、予想の斜め上の人物が遥々モスクワからやって来ていた。

 

 

 その人物とは、Илья (イリヤ) Владимировна(ウラジーミロヴナ) Путина(プーチナ)、モスクワ国立研究大学高等経済学部、外交政策学部学長。

 

 

 彼女こそ、ロシア連邦最後の大統領にして初代新ロシア連邦(NRF)大統領。後任のКуту́зов(クトゥーゾフ)氏に大統領職を交代した直後の一時期に国防相代理を務めていたが、それも今の国防相に交代した今では政界から退いて「ロシアの未来は今後の教育次第」と言って、将来新ロシア連邦(NRF)を引っ張って行けるだけの人材を育成すべく、ロシアに於いて最も権威のある大学であるモスクワ国立研究大学高等経済学部にて自ら教鞭を取る道を選んだПутина(プーチナ)教授がやって来ていたのだ。

 

 

 最初彼女が来ていた事に気付いたのは、Q.Eの護衛として付き従っているイギリス特殊部隊、SASの隊員から多数のGRUスペツナズらしき者達が紛れ込んでいる事が報告されたのが切っ掛けだった。

 

 そこから新ロシア連邦(NRF)からかなりの重要人物がやって来たのだと察したのだが、その人数が異様なまでに多い事から「まさか政府か軍の上位者か…?」と思っていたら、それは半分正解であったが、答えはより斜め上の存在だったのである。

 

 

 彼女は現役時代に西側から蛇蝎の如く嫌われており、相当な恨みを買っている影響で現役を退いた今でも、西側を中心とした各方面や勢力からの暗殺対象として狙われている者の上位リストに入っているとされ、*5彼女には常にGRUスペツナズによる厳重な護衛が付いている。とは聞いていたが、かなり堂々と“決闘”という題目のこの茶番劇、もといお祭り騒ぎを、付き添いの艦娘らしき者と仲の良い母娘の様にして楽しんでいる姿が確認されたと聞かされ、Q.Eと序でとばかりに聞いていたCavour(カブール)はその豪胆さに度肝を抜かされたらしい。

 

 

 だが、彼女、Путина(プーチナ)の存在そのものが一種のカモフラージュであったことが直ぐに判明した。

 

 付き添いの艦娘、『Бородино́(ボロジノ)』級前弩級戦艦の艦娘であり、黒海艦隊に所属するСлава(スラヴァ)と酷似した少女だった。

 

 しかし決闘後に治療の為に『P.o.W』艦内の医務室にてQ.Eと Cavour(カブール)が、艦娘の治療で使われる修復材を染み込ませた包帯でぐるぐる巻きの志々雄様状態、…もとい、ミイラ状態でベッドに横たわるという、些かシュールな姿で休んでいる時に、見舞いと称したПутина(プーチナ)教授の訪問によって、その少女の正体が明かされた。

 

 

 今までSIS(MI6)ですらその正体を掴むことが出来なかった、多くの謎に包まれていた人物、新ロシア連邦(NRF)国防相、Мирослава(ミロスラヴァ) Иванова(イヴァノヴァ)

 

 

 その事実に驚愕し、ベッドの上で衝撃のあまり2人して仲良く固まってしまった。

 

 

 まぁその辺りに関しては、然程重要なことでは無いので割愛するとして、本題はここからだ。

 

 簡単に言えば彼女からお誘い、勧誘の類いではあるが、その前に一つの情報が開示された。

 

 

 とはいえそれは目新しい情報という訳ではなく、イギリスとしては既知である新ロシア連邦(NRF)によるヨーロッパ各国、特にドイツ艦娘への工作活動に関しての事であった。

 

 

 Yavuz(ヤウズ)ことGoeben(ゲーベン)の一件、それ以前のPola(ポーラ)の件も含めてヨーロッパにおける艦娘との軋轢は次第に修復不能となりつつあると判断した新ロシア連邦(NRF)は、これを機にヨーロッパ各国に所属する艦娘に対して不満を煽る工作を開始する決断を下した。

 

 特にドイツはイタリアに次いで世界第5位の艦娘戦力──数の上では新ロシア連邦(NRF)だが主力艦の総数ではドイツに軍配が挙がる──を有しているが、その主力艦は上位4ヶ国と違って第一次大戦型の、しかも戦後改修が施されていない旧式艦が数の上での主力を占めており、性能の劣勢を数で補うべく相当無理をした建造が行なわれていた。

 

 その皺寄せは随所に出て来ており、特に給与の悪さは有名で艦娘達からは「給与の悪さ“だけ”は世界一ィーーッ!」と自虐的な皮肉が語られるほどの有り様だった。

 

 

 これを受けて新ロシア連邦(NRF)はドイツでの分断工作に密かに乗り出していた。

 

 だがそれは何も武装蜂起などの武力による叛乱を促すというものでは無く、Goeben(ゲーベン)の様に離反、亡命を促す事を狙ったものだった。

 

 

 当時のイギリスはこの工作活動の実態をある程度把握はしていたが、これによってドイツで艦娘との間で目に見えるいざこざが起きて、ドイツの力が低下してくれた方が相対的に自分達との差が開くから何かと都合が良いとの思惑によって、静観する判断をしていた。

 

 

 しかしそれが完全に裏目に出た。

 

 

 このままだと全ドイツ艦娘が深海棲艦の軍門に下り、復讐心に燃える深海棲艦化したCavour(カブール)と彼女に同調するイタリア艦娘と共に、地中海中のヨーロッパ沿岸部で無差別に暴れ回る可能性が現実として有り得た。

 

 ヨーロッパでマトモに戦えるのはイギリスとフランスだけとなるのだが、そのフランスも国内事業の混乱による皺寄せで国軍の活動は停滞気味、どころかフランス艦娘の中にも Cavour(カブール)と同じ被害者が出ていた事実が発覚し、フランス艦娘もフランスから離反して Cavour(カブール)達に付く可能性が濃厚ときた。

 

 そうなると伊独仏プラス深海棲艦の連合軍に対してイギリスは単独で戦う羽目になってしまい、最終的にイギリスは無視出来ない大損害どころか壊滅的な大敗北すら有り得た。

 

 

 だからこそイギリスは焦った。

 

 

 Q.Eは今まで政府と軍部が静観という名の放ったらかしにしていた案件の“ツケ”の精算を自分がしなければならなく成った事に憂鬱な気持ちとなりながらも、即断即決で即応可能な最大戦力を動かして自ら指揮を執る決断をした。

 

 

 新ロシア連邦(NRF)としても、まさかこの様な事態になるとは思いもよらず、憂慮こそ示しはしたものの、その軍事面に於ける基本戦略は膨大な陸上火力の投射による支援が期待できる守勢においてこそ最大効果を発揮する戦略であり、自らの領域外での戦闘となると、あまり期待は出来なかった。

 

 そしてクレムリンは最悪の事態に備えてトルコと隣接し、黒海艦隊の属する南部軍管区と、新ロシア連邦(NRF)海軍最強戦力を有する北方艦隊が属する北部軍管区、そしてヨーロッパと最も近くバルト海艦隊を有し、首都モスクワをその管区内に含む西部軍管区に対して()()()()()()の発令を密かに命じていたことが、Мирослава(ミロスラヴァ)国防相の口から語られた。

 

 

 “第2戦備態勢”

 

 

 この言葉に Cavour(カブール)は多少顔を顰めた程度だったが、Q.Eは背筋が凍える思いがした。

 

 新ロシア連邦(NRF)国内で慌ただしい動きが見られるとの情報は得ていたが、それは今回の事態に対しての動きであると予想していたものの、“第2戦備態勢”は予想外だった。

 

 “第2戦備態勢”とは所謂『DEFCON2』、()()()()()()()()()()()()最高度に準じる防衛準備状態を示す。

 

 

 2020年6月2日、時のロシア大統領は核戦略に関する指針として『核抑止力の国家政策指針』に署名した。核兵器の使用は大統領が決定することを定め、ロシアの核戦力は「本質的には防衛的なもの」としつつ「使用の権利を保持する」と規定。 核兵器を使用する具体的な条件として以下の4つを挙げた。

 

 ①、ロシアやその同盟国への弾道ミサイル発射に関する信頼性の高い情報を入手した場合。

 

 ②、ロシアやその同盟国への核兵器を含む大量破壊兵器が使用された場合。

 

 ③、死活的に重要な政府や軍事施設に対して、敵が核報復能力を阻害する工作を行った場合。

 

 ④、通常兵器の攻撃によりロシアが侵略され国家存立が危機的になった場合。

 

 この①〜④のほかに、「核抑止力が必要になり得る軍事的危険」の対象に、宇宙空間やロシア周辺へのミサイル防衛システムや弾道ミサイル、極超音速ミサイル、核兵器及びその運搬手段の配備を挙げていた。

 

 

 この指針は今の新ロシア連邦(NRF)にも受け継がれている。

 

 

 そして新ロシア連邦(NRF)は深海棲艦を国家存立の危機に繋がる脅威とは見なしておらず、何より深海棲艦は()()()()()()()()()()()

 

 

 つまり彼らの核ミサイルの標的は深海棲艦ではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()と、言外に語っているのだ。

 

 その標的は、まず間違い無くベルギーの首都ブリュッセル。

 

 ここにはEU主要機関の本部が多く置かれており、EUの首都とされている場所である。

 

 また、旧NATOの本部も置かれていたが、NATO解散後にそのまま横滑りする形でEU統合軍の本部としてそのまま機能しているのだが、アメリカの置き土産の運用管理をしているのもここEU統合軍本部である。

 

 

 EUを牛耳るEU委員会は今回の事態に対して多少の混乱は見られるも、その反応はイギリスと比べると幾分にも鈍い。

 

 制度そのものに疲労と限界が来ているのもあるだろうが、その視線が新ロシア連邦(NRF)に向けられていたからというのもあるのだろう。

 

 

 今回の一件だが、見方によっては「新ロシア連邦(NRF)が裏で糸を引いている」と主張出来なくもないのだ。

 

 

 全ては新ロシア連邦(NRF)の工作活動によって出来ていた艦娘の所属国に対する反発心に、偶々 Cavour(カブール)が上手く乗っかかったという、完全に偶然の産物なのだが、タイミング的に少しばかり出来すぎてしまっていた。

 

 

 そこから「新ロシア連邦(NRF)がこの一件の黒幕であり、深海棲艦を利用した事実上のヨーロッパに対する新ロシア連邦(NRF)による侵略行為である」とEU委員会が断じて、報復措置として核攻撃に打って出ないとも言い切れなかった。

 

 具体的な証拠、証言が無くとも、証拠があると言い張り切り抜きなどの捏造した証言から問題を大きくしたり、戦争を引き起こす前科が──大概アメリカが主犯だが、──西側には何度もあるため、杞憂で済む話では無かった。

 

 

 とはいえ、新ロシア連邦(NRF)を核攻撃したとしても、その後に自分達まで報復核攻撃で吹き飛ばされたら元も子もないし、それだけの度胸があるとは言い難い権力と利権にしがみつくのが関の山のヘタレ集団でもあるから、なんとも言えないが、既存の秩序や文化風習その他諸々を目茶苦茶にして来たという前科もある、と言うかそれ以外にも心当たりがあり過ぎて、所謂破壊主義的危険思想の傾向にある以上は、もしもということもある。

 

 ある意味で Cavour(カブール)もその心の内に宿る復讐心から、ヨーロッパに対して破壊主義的な一面が垣間見えてしまっているが、まだギリギリの所で踏みとどまっている。

 

 

 Q.Eは思考を巡らせる。

 

 

 自身は Cavour(カブール)による艦娘離反とその後の艦娘と深海棲艦による大攻勢の可能性で頭がいっぱいになっていたが、事態は予想外な程に深刻だった。

 

 

 一歩間違うと核戦争の危機であったとなると、今後の行動にも影響が出て来る。

 

 このまま時間を掛けて和解の道へと持って行く考えでいたが、事はそう簡単に行きそうにない。

 

 

 そしてここからが、Мирослава(ミロスラヴァ)からの提案、いや、それは提案という名の謀略への誘いだった。

 

 

 曰く、「いても邪魔なだけのEUに全ての罪を被せ、一緒になってみんなでぶっ潰そう!」というものだった。

 

 

 その“罪”というのが、 Cavour(カブール)に関する一件である。

 

 

  Cavour(カブール)が深海棲艦となってしまった研究施設であるが、 Cavour(カブール)は「脱走した際に破壊してそのまま海へと逃れた」という証言から場所が沿岸近くの地区であると予想し、 Cavour(カブール)が公的に死亡したとされる日時以降の沿岸地区での火災や事故といった報道、或いは報道されていない情報などから場所の特定に乗り出した所、とある製薬企業の所有する建物が老朽化と電気系統の故障が原因で出火し、全焼して焼け落ちたとのローカル報道を見つけ出す事に成功した。

 

 そしてその製薬企業というのが、時間が足りなかった為に詳細までは掴めなかったものの、軽く調べただけでもEU委員会の重役やEU統合軍幹部とも繋がりがあり、多額の献金や物品のやり取りがなされている実態が明らかとなった。

 

 全く無関係であるとは言い切れないが、これを持ってEU委員会が Cavour(カブール)他多数の艦娘に対しての非道な実験を指示していたとの証拠とはならず、今も全力を上げて調査を続けているが、中々尻尾が掴めない状態である。

 

 

「だが、そんな事は最早どうでもいい。目には目を、歯には歯を。やられたらやり返す。倍返しでね!」

 

 

 目を爛々と輝かせ、握りこぶしを作りながらМирослава(ミロスラヴァ)はそう語る。

 

 今まで散々ぱら言い掛かりをつけて好き放題やりたい放題の嫌がらせを掛けて来ていたのだから、たまにはそのまんま返しでやり返してやろう。

 

 意地の悪い笑みを湛えながら、証拠なんて幾らでも捏造してやる!と意気込むが、直後にПутина(プーチナ)教授からツッコミの手刀が頭へと振り下ろされ、「貴女はそうやってすぐ熱くなるから気をつけなさいって、いつも言ってるでしょう?」と怒られた。

 

 

 取り敢えず証拠云々の話は一旦横に置いておくとして、提案というのは次の様なものだった。

 

 

 『P.o.W』の艦上からQ.Eと Cavour(カブール)の2人による共同会見で、イギリスと深海棲艦による電撃和平と、今回の事件の根底にあるものを世界にバラしてしまおう。

 

 

 無論、大きな混乱が起きることが予想される。だがこのままだとEUとEUに追随するだけの各国がまた何かしでかさないとも限らず、いずれにせよ遅かれ早かれ混乱が起きるのは必至であるとし、それならば先に深海棲艦の問題を解決させよう。という趣旨だった。

 

 

  Cavour(カブール)はこの提案に乗り気だった。

 

 Q.Eとの会談と決闘で一応武装蜂起は取り止めたものの、だからといってその心の中の復讐心が完全に吹っ切れた訳では無い。

 

 本心から言えば仕返しがしたかったのだが、()()()()であるQ.Eだからこそ、また彼女も自分と似た悩みや苦労を抱えている事もあって、全てをぶっ壊しても良いんじゃないか?と思う程の破壊衝動に似た衝動に突き動かされた復讐が何だか馬鹿馬鹿しくなった。

 

 しかし、仕返しをする明確な相手がいる以上は、一種のケジメとして成し遂げたいと思ったのだ。

 

 

 だがQ.Eは難色を示した。

 

 

 どれほどの混乱が起きるかの予想がつかず、一応の国の指導者としての立場柄、そうおいそれと頷く訳にはいかなかった。

 

 イギリス国内にまで混乱が波及したら、それを抑えるのが正直かなり面倒なのだ。

 

 とはいえ彼女だってれっきとした艦娘だ。 Cavour(カブール)達が受けた仕打ちに対して相当腹を立てている。

 

 かつてジブラルタルへと転戦する際に、序でにイタリアを表敬訪問することとなったのだが、その時に世話になったのが Cavour(カブール)とデュゴミエ提督であり、良くしてもらった恩義もある。

 

 それに、自分自身だって怒りにまかせてクーデターやらかしている前科があるのだ。

 

 

 故に、本心としては Cavour(カブール)の望みを叶えてあげたいという気持ちもある。

 

 が、同時になりたくてなった訳でない今の立場の、この目が回るほどのあまりにもクソ忙しい現状がさらに忙しくなるのは嫌だ!と心が悲鳴を上げている。

 

 これには流石に新ロシア連邦(NRF)組2人から同情され、 Cavour(カブール)からは「お互い色々と苦労してんだな…」と何処か遠くを見る哀愁漂うなんとも複雑な顔をされた。

 

 

 だがL.Nからは「遅かれ早かれ忙しくなるんだから、現実逃避しないで素直に諦めたほうが楽だぞ?」と突き放された。

 

 

 Q.Eは泣きたくなった。

 

 確かにそう遠くない内に、EUは経済の行き詰まりから空中分解する確率が高いとの分析結果が出ていた。

 

 

 どっちに転んでももうどうにもならないならば、もう開き直るしかない。だから、こちらが被る被害を最小限度に抑えるべく、混乱を引き犯す謀略に誘うというのならば、それなりの見返りを寄越せ!取り引きだ!じゃなきゃヤダ!!と駄々をこねて強請った。

 

 

 

 最終的に取り引き交渉は、まぁある程度は纏まった。

 

 

 

 ここまでが、Warspite(ウォースパイト)がL.Nから伝えられた事の、おおよその概略と既に知っていたことを繋ぎ合わせたものである。

 

 取り引きの内容に関しては、新ロシア連邦(NRF)側との守秘義務的問題があるため、精査した後に追って連絡するとのことだった。

 

 

 紅茶が飲みたい…。

 

 

 そう思って休憩スペースに置かれている紅茶セットを使って、手ずから紅茶を淹れる。

 

 用意されている茶葉は、いかにも安物で香りもイマイチだが、この際そんな事は気にしない。今はただ喉を潤したかった。

 

 

 そうこうしていると、L.Nからメールが届いた。その内容を見て、盛大に紅茶を吹き出した。

 

 

『伝え忘れていた。

 

 取り引きの一環で貴様の留学が決まったぞ。教授も歓迎すると快諾してくれた。

 

 日本での仕事が全て片付いたら、そのままモスクワへと向かってもらうそうだ。

 

 

 追伸。陛下から言伝だ。

 

 「大変でしょうけど、これからもっと大変になりますから、しっかり勉強してわたくしを助けてくださいまし」

 

 だそうだ』

 

 

 Q.Eは何が何でもWarspite(ウォースパイト)を“内務卿”に据える為に、形振り構わなくなった様である。

 

 

 後年、“宰相”とも呼ばれる様になった“内務卿”、Warspite(ウォースパイト)の苦労の絶えない毎日が始まった日である。

 

 

*1
なお、Q.Eが一番欲しがっているのは内政を任せられる“内務卿”であるが、これが中々これと言った適任がおらず、ならばとWarspite(ウォースパイト)に「日本から帰って来たらお願い…」と出立前に無言で切実に涙目で訴え掛けたものの、Warspite(ウォースパイト)はサッと目を反らした。

*2
これら沿岸砲部隊が後の『ダーダネルス防衛戦』で活躍することとなった。

*3
新ロシア連邦(NRF)とEU、旧NATO構成国であるヨーロッパ諸国との軍事バランスは新ロシア連邦(NRF)へと傾いており、有事に際して通常戦力で挽回する事を諦めたEUとヨーロッパ諸国が劣勢を挽回するために、アメリカがNATO脱退に際しての交換条件としてEUに引き渡したとされる、核弾頭を搭載した弾道ミサイルを使用する可能性を新ロシア連邦(NRF)は強く警戒しており、またかつての冷戦時にトルコにはアメリカ軍のジュピター型MRBMが配備されていたという前例もあったため、全くの杞憂であるとは言い切れなかった。

*4
彼女はその激しい戦いぶりから獰猛で猪突猛進な艦娘であると周辺国から見られており、そう揶揄されていた。

*5
イギリスも狙っていた勢力の一つだったが、Q.Eはそのことに対して「みっともない」「はしたない」「恥の上塗り」「愚か者の所業」などと冷笑して即刻止めさせた。





ウォー様「拒否権は無いの!?」

陛下「我が国は独裁国家ZOY!」


 ウォー様は取り引きの犠牲になったのだ。

 まぁ経験や知識の無いことは、どこかで学ばなければ身に付きませんからねぇ。ちゃんとした教育こそが、国の未来を支える礎になる。


 国防相閣下は色々あった反動でお疲れモードのちょっとハイになってます。

 一応ドイツ艦娘三人衆他、お祭り騒ぎ、もとい“決闘”見物に来ていた艦娘や軍人達も、この“密約”に参加することとなり、取り敢えずこれでヨーロッパは混乱状態と致しますので、その隙に乗じて太平洋でも動き出します。

 タッカー・カールソン氏のロングインタビューから、また以前のアンケートで出しましたセルゲイ・カラガノフ教授から、前大統領を教授にしました。
 てか、ホントにあの大統領スゲェよ…。まだインタビュー全ては見終わってないけど、終始圧倒されました。


補足解説

ドイツ艦娘3人衆

 Goeben(ゲーベン)ことYavuz(ヤウズ)、姉のMoltke(モルトケ)、上司のFriedrich(フリードリヒ) der(デア) Große(グローセ)

 念の為言っておきますが、このGroße(グローセ)はラスボス感半端ない、物事を音楽と例えるあの方ではありません。

 前話でイギリスの大艦隊(Grand Fleet)出したからには、対となるHochseeflotte (ホーホゼーフロッテ)を出さないと失礼になると思いましたので。

 ただ、ユトランド沖海戦時の大艦隊(Grand Fleet)の旗艦は『Q.E』ではなく前級の『Iron(アイアン) Duke(デューク)』なんですけどね。『Q.E』はユトランド沖海戦後に旗艦となりましたから。


大型戦艦2隻

 弩級戦艦『Reshadiye(レシャディエ)』と超弩級戦艦『Sultan Osman I(スルタン・オスマン1世)』のこと。

 オスマントルコが親独傾向にあったことと、同盟関係にあった帝政ロシアがこの強力な新鋭戦艦2隻に危機感を抱き、「トルコへと引き渡さないで」とイギリス政府に申し入れたことなどにより、前者は『Erin(エリン)』後者は『Agincourt(エジンコート)』としてイギリス海軍に編入すると、時の海軍卿ウィンストン・チャーチルの指示で接収された。

 この2隻はYavuz(ヤウズ)がトルコ所属となって暫くした後に漸く建造に成功し、艦隊へと配備された後はどちらかがトルコ艦隊の旗艦を務めているが、今は戦傷の入渠と改装が被った為にYavuz(ヤウズ)が一時的に旗艦業務を引き継いでいる。


装甲艦

 所謂甲鉄艦の様な艦であり、日本であれば旧ストーンウォール号、(あずま)艦や中央砲郭艦の初代扶桑に相当する。

 作中の装甲艦とは基本的に中央砲郭艦になります。砲塔艦までの過渡期な軍艦で、大口径砲を艦中央部に集め、その周辺を装甲で防御していた。


戦術防空システム

 旧ソ連から連綿と続く、ロシアの野戦型多層式防空システムの事。
 その要点は射程の異なる各種対空ミサイル及び自走式高射機関砲による縦深的な防空コンプレックスを形成することで、西側の航空戦力による味方地上戦力への航空攻撃を撃退することを主眼に置いている。

 第四次中東戦争ではソ連軍に範を受けたエジプト軍が、このソ連式防空システムによって世界有数の空軍戦力を誇ったイスラエル空軍をほぼ壊滅状態となるまで叩き潰して追い込む大戦果を挙げて、イスラエルの鼻っ柱を叩き折ったことが有名である。

 しかし深海棲艦との戦いではその対空ミサイル群はキルレシオ、費用対効率の面からあまり有効では無いと判断され、第三次大戦の当時猛威を振るった徘徊型兵器、所謂自爆型ドローンに対する対応策としてある程度有効であると再評価された高射機関砲の大量配備と、旧式化して退役予定だった古い自走榴弾砲や大戦中に鹵獲した自走砲を改装した急造高射砲による面制圧型の弾幕射撃に重点が置かれている。

 なお、国内の兵器産業は国軍の再建と同時並行で行われている装備更新で手一杯であるため、急造高射砲と一部の高射機関砲は主に併合した東欧の兵器産業に製造を委託している。


戦略防空システム

 弾道ミサイルの迎撃などの本土防空を主眼に置いた防空システム。
 現在それまでの主力だったS-300PMから発展改良された新型のS-400 Триумф(トリウームフ)(大勝利)へと切り替え中である。

S-500 Прометей(プロメテーイ)(プロメテウス)

 ロシアの戦略防空システム。現在主力となっている先述のS-400 Триумф(トリウームフ)の発展型であり、同機と互いを補完する形で運用される。

 極超音速機および極超音速巡航ミサイルと、早期警戒管制機および電子戦機に対する迎撃と防空を目的としている。
 アメリカのTHAADミサイルに匹敵する能力と、低軌道の衛星も撃墜する能力がある。


S-550

 2021年11月9日、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は「プーチン大統領が防空システムS-350、S-500、S-550を軍に供給するための重要性を説いた」と語り、そこで初めてその存在が世間に知られることとなった防空システム。

 大陸間弾道ミサイルをミッドコースで迎撃可能とされている。

 類似した既存のサイロ発射式対弾道弾迎撃ミサイルであるA-135やその後継として開発中のA-235と違い、地上移動式である。


ミッドコース・フェーズ

 弾道ミサイルの迎撃は下記の通りの3つに分けられます。

 ①.上昇段階。ロケットに点火して大気圏外に到達するまでの過程のブースト・フェーズ

 ②.中間段階。大気圏外を周回して目標付近まで接近する過程のミッドコース・フェーズ

 ③.終末段階。大気圏外を飛行する高度が下がり目標に向けて降下を始め着弾するまでの過程のターミナル・フェーズ

 以上、この3つであり、最も迎撃の技術的な難易度が低く容易なのが①の上昇段階、ブースト・フェーズであるが、弾道ミサイルの射点に限りなく近付いておく必要性(最悪敵地のど真ん中で張り込む必要がある)から、現実的では無い。

 そのため弾道ミサイルの迎撃は主に②の中間段階、ミッドコース・フェーズか、③の終末段階、ターミナル・フェイズで実行されることが多く、日米では洋上に展開するイージス艦や、地上配備のイージス・アショアから発射されるスタンダードミサイルSM-3及びGBI、Ground Based Interceptorミサイル(地上配備型迎撃ミサイル)がミッドコース・フェーズでの迎撃を担当。Terminal High Altitude Area Defense missile(終末高高度防衛ミサイル)、通称THAADミサイルはその名が示す通り、ターミナル・フェーズの上層を、パトリオットPAC-3が下層を担当している。


Jupiter(ジュピター)型MRBM

 アメリカが冷戦時に開発した準中距離弾道ミサイル(medium-range ballistic missile,)の一つ。

 射程の問題からトルコとイタリアに配備され、キューバ危機に際しての交換条件として、既に旧式で時の大統領ケネディもキューバ危機以前から撤去の命令を出していたこともあり、撤去された。(なお、このキューバ危機以前のケネディの撤去命令を当初管轄である空軍は無視しており、後に発覚した際にケネディが激怒したとされているが、結果としてキューバからのミサイル撤去の交換条件という交渉材料になったというのは些か皮肉ではある。)


Императрица(インペラトリッツァ) Мария(マリーヤ)級戦艦

 先述のオスマントルコ海軍新鋭戦艦2隻に対抗して建造されたГангут(ガングート)級の黒海艦隊バージョン。


軍管区

 ロシア連邦軍は2010年以降、今までの6個軍管区+1──


『モスクワ軍管区(Московский военный округ;МВО)』

『レニングラード軍管区(Ленинградский военный округ;ЛенВО)』

『沿ヴォルガ・ウラル軍管区(Приволжско-уральский военный округ;ПруВО)』

『北カフカーズ軍管区(Северо-кавказский военный округ;СКВО)』

『シベリア軍管区(Сибирский военный округ;СибВО)』

『極東軍管区(Дальневосточный военный округ;ДВО)』

『カリーニングラード特別地区』


──を以下の4個軍管区に統合。


『西部軍管区(Западный военный округ;ЗВО
旧レニングラード軍管区およびモスクワ軍管区)』

『南部軍管区(Южный военный округ;ЮВО
旧北カフカス軍管区)』

『中央軍管区(Центральный военный округ;ЮВО
沿ヴォルガ=ウラル軍管区と旧シベリア軍管区西部)』

『東部軍管区(Восточный военный округ;ВВО
旧シベリア軍管区東部と極東軍管区)』


 2021年新たに北極圏防衛の強化のため、西部軍管区に隷属していた海軍の北方艦隊が新たに北方艦隊自体が独立した軍管区に昇格し、コミ共和国、アルハンゲリスク州、ムルマンスク州、ネネツ自治管区も管轄しているた。


『北部軍管区(Арктические войска и Северный военный округ 北極及び北方軍管区。
Объединённое стратегическое командование «Северный флот»統合戦略軍『北方艦隊』とされる場合もある。
旧レニングラード軍管区)』

Wikipediaより一部抜粋





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