艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 サイパン島、チャモロ語(現地語): Sa’ipan


 冒頭は霧島(キリシマ)付の戦艦ル級視点となります。

 イロハ級深海棲艦が上位種である姫様方に対する敬称とかどうするかまったく考えてなかった…。〇〇棲姫とか〇〇水鬼とかって人類が付けたコードだし、固有名詞が無いという設定を最初の方で出したしなぁ…。

 ので即興で適当に敬称っぽいもの付けました。

 サイパン島の立ち位置も解説。…てかサイパン島でコーヒー栽培されてたんだ。しかもその始まりが日本人によるもの。よし使おう。

 後半、また人類ディスり、てか日本ディスります。


第73話 Island of Saipan

 

 

 

 最近この地に4人の“客人”が来た。

 

 

 大陸に近い我らの領域ならば、賢明にも我らと共存共栄の道を選んだごく少数の話の分かる人間達が交易の為に訪れるらしいが、この地は大陸から離れており、誰かが訪れるとなるとそれは同胞(はらから)しか有り得なかった。

 

 かつて我らと人類との間で母なる大洋の支配領域が目まぐるしく動いていた時期は別として、今では人類の軍は自らの領域である陸地から大きく出る様な事が無くなり、この広大な母なる大洋の多くが我らの領域となって静寂な海となった。

 

 

 我ら同胞(はらから)を育みし偉大な母なる大洋は静謐でなくてはならない。

 

 

 我らの庇護下にある人間の子供達が、統治を司る上位種であり、この地の護衛艦隊を総括する泊地棲姫様(所司代様)を母と慕って懐き、その温もりに心安らぎ、そのお方も子供達を愛して慈しむ姿を見るが、我らにとって大洋とはまさにこの母と子の関係に等しい。海に居る時に感じる安心感とは、子供達が言う母の腕の中で感じる温もりと同じなのだろう。

 

 

 …話が逸れた。我らと人類との領域を隔てる境界線近くの拠点と違い、我らと敵対する人類とそれに与する艦娘共の軍勢から襲撃されることも無い、また食糧の一大生産地や交易地などの重要拠点ならではの喧騒さが無い、本当に静けさが売りとも言えるこの地は、本来ならば我らの支配領域を移動するための中継地であると共に、戦いや長距離移動で疲れた同胞(はらから)達のための休養の場にもなっていた。

 

 

 戦いは言わずもがなだが、大洋を渡るのであれば、ちゃんとした知識と技術、それに事前の準備が重要となってくる。

 

 それは自在に大洋を渡れる我らとて同様で、ちゃんとした知識と技術が無ければ無為に海の上を彷徨うことになり、そしてそれは餓えと渇きを引き起こし、我らから理性を失わせ、ただ本能のみで生きるケモノ同然の存在に変貌させてしまう。

 

 人間であればそのまま飢餓で果てる。

 

 故に、大洋に出るという行為は死と隣り合わせとなるリスクを孕んでいる。

 

 

 母とは優しさだけでなく、時には試練を与えたもう厳しさも兼ね備えている。それもまた愛だと思う。…泊地棲姫様(所司代様)は少しばかり子供達に甘い様だが、子供達が今までに受けていた仕打ちからしたら、それもまた致し方ないのだろう。愛は一つとは限らない。

 

 その愛の一つである試練を乗り越えた同胞(はらから)にとって、この地は次の試練に向かうために英気を養う場でなくてはならない。そう私は考えているし、この地に居る他の同胞(はらから)達もみな似た考えを持っていた。

 

 故に、この地の静謐を保つためにそれなりの戦力が整えられており、皆様普段は穏やかなお方達だが実際は歴戦の古強者な上位種の方々がこの地の守護として集められ、その筆頭といしてこの地を統べる責任総代の地位にいるのが、私が古くからお仕えさせていただいているあの飛行場姫様(守護代様)だ。

 

 一見すると緩やかそうであるが、実際の所その警戒網はかなり厳重だったのだ。

 

 

 

 だが、最初の客人は、その警戒網を容易く突破してきた。

 

 

 …いや、その言い回しだと些か語弊があるな。最初のお1人は事故による墜落が原因だったのだから。

 

 

 とは言え、“青天の霹靂”とはまさにこのことだと思える程、あの時は空から落ちて来た謎の存在に文字通り上に下に関係無くパニックに陥った。

 

 

 この数日前より南の海域で正体不明の謎の艦娘らしき存在と戦艦棲姫様と駆逐棲姫様(上位種のお二方)が接触し、驚く事に話し合いの末にその海域より駆逐棲姫様(お二方のお1人)による監視のもとに速やかに退去するとの取り決めが成され、北に向かったとする話を、島内巡視という名目の散歩のお供をさせていただいていた時に、飛行場姫様(守護代様)よりお聞きしたのだが、色々と異例ずくめで話題性はあるもののそれは遠い南方で起きた出来事であり、この地の近くに来るのはまだ暫く先のことと話をしていた矢先に今回の事態が起きた。

 

 

 結果を言えば墜落による混乱の最中(さなか)でまさかの話題の張本人までもが空を飛んでやって来て突然登場し、その際にこのお2人が姉妹である事が発覚したりと、目まぐるしいまでにあれよあれよと言う間に上位種の方々の主導で会談が行なわれ、お2人を客人として迎え入れるなどの決定が決まったかとおもえば、お2人を客人としてだけでなく駆逐棲姫様(上位種のお方)の妹という扱いで、正式な同胞(はらから)として受け入れる決定が最高意思決定の場である“円卓”にて採択されたのだという。

 

 少なくともお2人の内の姉である()()()()()はその事に大層喜んでおり、我らと共に歩む事を受け入れているとのことで、この度新たな上位種として、お2人の経歴などの情報とともに布告が出された。

 

 

 その決定に、正直に言えば内心ではホッとしていた。

 

 

 異世界からの異邦人、いや“漂流者”と呼んだほうが適切か?それも単独だけでも圧倒的な武力を有している、噂ではその気になれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を司っていると言われても不思議では無い、武力の化身の様な存在。

 

 最初こそは異世界からという事に半信半疑だったが、お2人の艤装を実際に目にすれば疑う余地が無くなるし、また実際に戦った同胞(はらから)達からの情報を聞けば、疑いから今度はその事実に対しての恐怖へと変わった。

 

 

 その隔絶された、一度(ひとたび)敵対すれば絶対に敵わない“武力の格差”。

 

 

 それがどの様な形であれ同胞(はらから)となってくれた事は、少なくともその武力が我らへと向くことが無くなったことを意味するのだが、その圧倒的な力を持つが故に、上位種の方々は別にしても自分達下位種なんか、塵芥の様な存在にしか見えていないのではないか?機嫌を損ねる真似をしたら消されるのではないかと恐怖に震えていた。

 

 

 …だが、実際はどこまでも物腰が柔らかく、かなり温厚で温和な人柄だった。常に謙虚で誰に対しても礼儀正しく、いつも温かい微笑みを浮かべている優しいお方だった。しかし些か謙虚さが過ぎてこちらが恐縮してしまうことも度々で、逆に困惑してしまった。

 

 

 妹である()()()()()は、見た目の勝ち気さ通りと言って良いのか、姉と比べると些か粗雑ではあるものの、なんだかんだ言って気さくで面倒見が良い人柄で、こちらの方が付き合い易いと言えた。

 

 

 控えめで大人しい性格のアンドロメダ(副輜重長)様と、勝ち気だが人付き合いの上手いアポロノーム(副長助勤)様という性格の違いはあれども、お2人は兎に角仕事熱心で、しかも自らの知識を惜しみなく我らに与えて下された。その恩恵は誠に計り知れない物だった。

 

 特にお2人を預かる事となった輜重組の局長である装甲空母姫(輜重長)様はお2人の働きによる献身に感謝の意を示しており、自らのNo.2である副長の役職をアンドロメダ(副輜重長)様に与え、その補佐役として輜重組副輜重長並という新たな役職をアポロノーム(副輜重長助勤)様に与えてお2人の立場を明文化により保証する事で感謝の形とした。

 

 

 結果、少なくとも今はこのお2人の受け入れに異を唱える者は居ない。…アンドロメダ(副輜重長)様の謙虚さだけはホントどうにかして欲しいのだが、「私は皆さんと違って新参者ですから」と言って譲ろうとしてくれない。悪いお方ではないのだが、これには少しばかり困っている。

 

 威厳と風格、は、まぁ上位種の方々の中には見た目が幼い潜水新棲姫様(お方)もいらっしゃるので正直それほど重要ではないのだが、その、実力や能力がピカイチなのにそれすら卑下している様な感じで、なんだか調子が狂ってやりづらい。

 

 

 

「まぁそう言ってやりなさんな。あの娘はあの娘なりにあんたらとの()()()をまだ掴みきれていないんだろうよ」

 

 

 

 そう語るのは今隣を歩いている、つい先日UX-02(宇宙人)の“客人”と共に到着したばかりの“客人”だ。

 

 

 だがこの“客人”は単なる客ではない。我らと敵対している人類側の国家、日本から使者としてやって来たヒトだ。

 

 

()()()殿()、それはどういう意味で?」

 

 

 このヒトもこのヒトで不思議というか変わったおヒトだ。

 

 

 敵国日本から使者という名目でやって来たヒトではあるのだが、なんとお2人と同じ世界から流れて来た同郷であり、かなり親しい大切なヒトの様で、特にアンドロメダ(副輜重長)様とは師と教え子の関係にある間柄だという。

 

 また一切物怖じせず柳の様にスルリと受け流すその態度は、個としての武力の優劣の差に依るものでは無く、相当な修羅場をくぐって来たが故の経験という名の重ねられた年輪の数を物語っていた。

 

 そしてその想像を絶する過酷な生涯を経て培われたであろうその見識と知識の深さは、我らのそれを遥かに凌駕しており、語られる話の数々は色々と学びとなる事柄が多く、毎夜消灯前に昔語りには多くの同胞(はらから)達が拝聴すべく詰め掛けるほどだった。

 

 

 そのため、最初は使者としてやって来たことから“特使殿”と呼んでいたのだが、今では敬意を評して“語り部殿”と呼ぶ様になっていた。

 

 一時はアンドロメダ(副輜重長)様に倣って“先生”と呼ぶことも考えられたが、それはこのお2人の特別な関係を尊重して憚られた。

 

 

就役する(生まれる)前から航宙艦隊総軍(宇宙海軍実動部隊)を束ねる為の元帥とも言える艦隊総旗艦となる事を定められた弊害だねぇ。

 

 みんな自身を雲の上の、仰ぎ見るべき存在として扱って、そうあるべしと望まれた。

 

 本人もそれを受け入れていた、というよりもその立場故にそうせざるを得なかった。

 

 今みたいな上と下の距離が近い半分アットホームな職場は、あの娘には未知な場所なのさ」

 

 

 

 霧島(キリシマ)の所感として、地球軍の軍隊としてのガチガチな縦社会と比べると、深海棲艦はその辺りがかなり緩く感じられた。確かに下位種(イロハ級一般深海棲艦)達は上位種(姫級)達を敬い従順であるが、そこまでキッチリカッチリした上下関係と言うわけではなく、例えるならば町工場的なアットホームな雰囲気が強い様に感じていた。

 

 アンドロメダ自身、内心ではそういったアットホームな雰囲気さに憧れていたと思う(ふし)があり、嘗て総旗艦時代に戦隊規模の部隊への挨拶巡りは欠かさず、出来る限りの交流を図っていたみたいなのだが、企業の重役が突然現場に()()()と現れた様なもので、一部を除いて逆に萎縮させてしまうこともしばしばあった様である。…本人はそれに全く気付いていなかったみたいだが。

 

 

 

「…生まれながらの支配者であったがために、下々の事がわからないと?」

 

 

「う~ん、それはちょっと違うかねぇ…。有り体に言えば社会経験が未熟な“お嬢様”ってとこかねぇ?まぁ時間と共にマシになるさね」

 

 

 そう説明されてもイマイチよく分からなかったが、時間が解決するというのであれば、その時まで気長に待つのが一番だろう。

 

 

 

 

「それにしても、ほんっと長閑な所だねぇ…」

 

 

 

 周りの風景を見渡しながら霧島(キリシマ)は感慨深く漏らした。

 

 

 日本を離れて早一週間。

 

 

 上陸直後に陽動作戦で負傷し回収したUX-02(ベオ)の事で()()()()()()したり、その夜にアンドロメダとアポロノームには内緒で集まってもらった姫達に対して、「アンドロメダとアポロノームの2人が大変お世話になっておりますが、ご迷惑を掛けていませんでしたか?」と本人達が居る通信では聞けなかった事を尋ねたり、「まだまだ未熟で世間知らずな2人ですが、これからも2人の事をよろしくお願いします」と頭を下げたりした。

 

 

 その姿は我が子を心配する保護者のそれだった。

 

 

 2人はヤマト(親友)の子であるが、霧島(キリシマ)にとっては孫娘同然であり、なんだかんだ言いながらも2人の事が可愛くて仕方ないのだ。

 

 

 その気持ちは島で戦災孤児達を戦争に巻き込んでしまった事への罪の意識から母親代わりとして面倒を見ている内に、子供達から愛されている事を自覚し、自身も子供達を愛しているという親心が芽生えていたことに気付いた泊地棲姫にとって、共感できる感情であった。

 

 それに島で共に暮す他の深海棲艦達も泊地棲姫ほどではないにせよ、孤児達の事を気に掛けていた。

 

 故に霧島(キリシマ)の気持ちが親心の発露であり、些か斜に構えた態度と皮肉げな笑みを浮かべ、三白眼で草臥れた容姿という見た目で怖さと怪しさが際立つものの、その心根は見た目とは裏腹に面倒見が良い優しい人柄なのだと察して頬笑ましい気持ちとなり、2人に多くの感謝の気持ちはあれど迷惑と思ったことはないこと、打算とか関係無く大切な家族同然な同胞(はらから)の一員としてみなに受け入れられていることを告げた。

 

 

 この時に姫の1人から望めば貴女や貴女の仲間達もこちら側へと来ない?という勧誘めいた問い掛けがあり、霧島(キリシマ)はほんの僅かに眉を顰めたが、長年の経験と勘からそれは全くの下心が無い、彼女達なりの善意からの勧誘だったのだろう。

 

 とは言え流石に即答は避けた。これでも今のところ()()()宮仕えの立場のだから。しかし、将来の事は分からない。情勢の変化による自らと土方達の保身を鑑みたら、()()()の選択肢は多いに越したことはない。

 

 故に即答こそ避けたものの、否定に繋がる言葉は一切発しなかった。

 

 少なくとも、こういった事実上の亡命の受け入れを実際に提案し、周りの姫級達も異を唱える素振りを見せなかった事から、アンドロメダ達が彼女達からの信頼を勝ち取る事が出来ている証左だと認識した。

 

 

 

 …だが、その情勢の変化が思いのほか早く、しかもユーラシアの反対側から飛び火の様にしてやって来る事になるとは、海千山千の霧島(キリシマ)を以てしても予想する事が出来なかった。

 

 その影響もさることながら、作戦参加予定の護衛艦のサボタージュ(座礁事故)も相俟って向こう、日本はかなりドタバタしているし、日本を出る前に練られた計画の幾つかを急遽変更するどころか、下手するとかなりアドリブに頼らなければならなくなるかもとまで言ってきた。

 

 

 しかしドタバタ続きな日本とは違い、こちらは至って長閑だ。

 

 

 陸上型を含む複数の姫級、それに率いられた数多な深海棲艦が跋扈する一大拠点の島であるのだが、まるで都会の喧騒から離れて田舎にでも来たのかと錯覚する様な、のんびりとした緩い空気感の様なものを感じていた。

 

 

 そもそもサイパン島を含むマリアナ諸島は、深海棲艦による太平洋各方面の侵攻を支える為の重要な支援拠点であると目されていたのだが、どちらかといえば移動のための“中継地”や“ハブステーション”としての役割を重視している様に思える。

 

 

 事実、マリアナ諸島、特にサイパン島自体が南太平洋の深海棲艦支配領域、北太平洋のハワイ・アリューシャン、深海棲艦の生命線である食糧の一大生産拠点のインドネシアや対日戦の最前線拠点であるフィリピンが存在する東南アジアを繋ぐ中継拠点であり、サービスエリアの様な扱いであるのと、最前線拠点のフィリピンに展開する深海棲艦達とローテーションを組む上での簡易的な保養地の様な場所だと、先にこの地にやって来ていたアンドロメダから聞かされた。

 

 

 太平洋に点在する他の深海棲艦の拠点の島々と比較しても、前線から程よく離れ、一応の食糧生産能力があるにはあるが、ある程度の自給自足が可能という程度であり、本格的な食糧生産拠点と比べると家庭菜園レベルの慎ましい規模のため、生産拠点ならではの喧騒さからは程遠い。

 

 人類側から深海棲艦の完全なる支配領域、本拠地のある聖域だと認識されている南太平洋だが、確かに一時は南太平洋一帯と人類側の莫迦な大規模人災で滅ぼされたオセアニアの旧国家群とその地でまだなんとか細々と暮らしていた生き残りの人間達と共存する形で、深海棲艦は本気で自分達の陸に於ける文字通り“安住の地”にする事も考えていたが、この地は嘗て人類が行なった無差別核攻撃による辛く苦しい記憶を呼び起こす悲惨な爪痕が随所に残っている事もあって、当時を知る数多の深海棲艦はこの地に寄り付かなくなったのと、太平洋方面での活動の中心地が東南アジアへと移動したことで徐々にだが過疎化が進んでいる。

 

 現在の所、南太平洋は太平洋諸島に於けるメラネシア・ミクロネシア・ポリネシアと呼ばれるオセアニアの諸島群に第一線から退いた深海棲艦達が慎ましやかに暮らしているとのこと。

 

 また消耗著しい部隊の再編成の為の拠点にもなっている。因みにアンドロメダがボコボコにした部隊は、再編されたばかりの部隊であった。それを知ってアンドロメダ(あの娘)は目茶苦茶ヘコんだそうだ。傷付いて後方へ下がらなければならなくなった者達を再び前線へと送り出すには、それなりの労苦が要る。その労苦を自らの勝手な都合だけで()()にしてしまったと、心根が優し過ぎて気にし過ぎるアンドロメダ(あの娘)は酷く猛烈に落ち込んだ。

 

 

 …それについては、一旦置くとしよう。

 

 

 このサイパン島は、これといった特色も無い島だが、寧ろそれがこの地の重要性を高めていた。

 

 再編の為の後方。そこに集まるのは何も外傷による負傷者だけでは無い。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それは艦娘だって変わらない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 心に傷を負った者達に、気を使いながら休む、いや、過ごすというのは、かなり神経を擦り減らすこともある。

 

 そんな環境でマトモに休む事など出来る訳が無い。

 

 だからこそ静かにのんびりとした心安らぐひとときを過ごせる為だけの場所が別に必要なのだ。なんなら島の子供達と無邪気に遊ぶこともあった。深海棲艦にとって人間の子供達は一種のアニマルセラピーに近い効果があるのだろう。

 

 そのためこの地にいる深海棲艦は例えるならば飛行場姫を代表責任者としたサービスエリアの従業員的な娯楽と休息を提供する者達と、休憩目的で立ち寄った利用客的な者達に大別され、大半の深海棲艦は後者に分類され、次の移動までのんびりと過ごしている。

 

 そしてアンドロメダ達は前者であり、扱い上は飛行場姫の配下として島内の物資集積管理といった事務仕事を任せられていた。

 

 

 霧島(キリシマ)から見ても、深海棲艦達は温和で働き者。ただ艦娘以上に似た顔をした者達だらけな上に固有名詞が無いのが不便である。

 

 飛行場姫の計らいで直属の戦艦ル級の1人を世話役として付けてくれたが、他のル級と見分けが付けづらくて難儀している。

 

 アンドロメダ(あの娘)はそんな事を感じさせないが、それは戦時中の主力戦艦『ドレッドノート』級に、各艦隊に使い勝手の良い手頃な汎用艦として多数配備され、主力艦隊にも少なからず配備された『メチェーリ』級護衛艦とその拡大発展型である艦隊直掩護衛駆逐艦『春雨』型といった新世代の戦闘艦群は、戦時体制による大増産によって、短期間の内に嘗ての国連宇宙海軍が保有していた全艦艇を遥かに上回る規模を生み出していたのだが、戦時体制以前に作ら(生ま)れた連中に比べるとガミラスのデスラー親衛隊のクローン兵並に見分け辛い無個性(顔付き)だったのを、アンドロメダ(あの娘)はその一隻一隻(一人一人)を、()()()()()()()()()()()()()()()()という。

 

 

 本人に自覚はなさそうだが、それは得難い特技であると同時に、()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 ところで、この地に来て始めて知ったのだが、ここサイパン島のタポチョ山には嘗ての日本統治時代に日本の実業家が日本人にコーヒーを飲んでもらいたいとのことで栽培を始めたコーヒーの木があり、日本にも輸出されていたとされるマリアナスコーヒーなるコーヒーブランドがあったのだ。

 

 その後に色々とあって殆ど忘れ去られ、再発見されて栽培が再開されたものの、その後再び忘れ去られていたのを、コーヒー好きの飛行場姫がたまたま住民から「昔こんな事があった」という話の中で聞き出し、もしかしたらと職権濫用に近い形で訓練名目で部隊を動かして探し出し、再発見されると再び職権濫用でその土地を自らの直轄地にしてコーヒー栽培再開に向けて動き出した。

 

 

 で、飛行場姫が経営するそのコーヒープランテーションに今まで行って来て、軽く見学させてもらった。

 

 とは言えまだ軌道には乗っておらず、飛行場姫も納得出来るだけの品質に達していないとのことだが、将来的には輸出も視野に入れているらしいのだが、それよりも興味を引いたのが、そこで働いているのが深海棲艦だけでなくこの島の住民も参加している事だ。

 

 

 仕事の邪魔をしたら悪いとして、プランテーションの外側から眺めるにとどめたが、元が旧式とはいえれっきとした宇宙戦艦。ガミラスには無力だったがそれでも当時の地球最強にして地球の顔たる一等宇宙軍艦なのだ。目には自信があるしアクティブ(電子装備)頼みでパッシブ(光学索敵)を軽く見る戦後世代の艦(最近の若いモン)の目にはまだまだ負けんと自負していた。

 

 

 その自慢の目がプランテーションで活き活きと働く住民の姿をしかと捉えた。

 

 

 無理矢理働かせられている強制労働などでは無いのは一目見ただけでよく分かった。付き添いのル級が言うには、働いている者達の中には泊地棲姫が一番最初に育てた子供達、当時年長だった今では立派になった若者達が育ててくれた恩返しにと大人達や深海棲艦達に混じって積極的に手伝い働いているのだという。

 

 目を凝らせば遠目からでも分かるほど、一際よく働いている者達がいた。おそらくその者達がル級の言う若者達なのだろう。…宮仕え先の日本では見られなくなりつつある光景だ。実に羨ましい限りの光景だ。

 

 いやはや、先に東南アジアのインドネシアに於いて深海棲艦と嘗てのインドネシア国民が手を取り合い農作物などの食糧生産を大規模に行なっている事は知っていたが、それは双方の死活問題を回避するため利害関係が一致した事によるある種の例外的な事例で、他の所は分からないとの疑念も出ていたが、これを見たらある程度の人類との共存が出来るかもしれないとの可能性が見えて来る。

 

 

 それを深海棲艦達が望むかは分からないが、希望を持つことは大切だ。未来の可能性が見えただけでも満足だ。…その未来に日本が()()()()()残っているかは未知数だが。

 

 

 …しかしその希望を見届けた目だが、良過ぎるのも時には考えものと思うこともある。

 

 

 

 この地の統治の中心地、嘗てのサイパン国際空港をこの地の実質支配者である飛行場姫が己の艤装として丸ごと取り込んだ、この地に駐留する深海棲艦達の根拠地へと戻って来た。

 

 取り込んだと言い表わしたが、別にそれによって飛行場施設が禍々しい姿へと変貌したとかという訳ではなく、見た目の外見は深海棲艦らしい所は一切なく、ただよく見れば分かるが、建物や設備の隅々まで痛みらしきものが見受けられず不自然なまでに小綺麗というくらいだ。おそらく中の配管や電気系統の配線なんかもだろう。

 

 これは艤装として取り込んだことによって施設や設備にも深海棲艦特有の自己修復能力が発揮された副産物みたいなもので、飛行場姫が死亡したり艤装化を解除しない限りは痛みや劣化はダメージ扱いとして自動的に修復されるためらしい。保守点検や維持管理に携わる業者界隈の人間が聞いたら血涙を流しそうな話だ。でも正直ちょっと羨ましい。やっぱり利用者としたら常に万全な状態が維持されているのは嬉しいし有り難いのだ。

 

 因みに敷地内の浄水施設によって安心安全な飲料水が、しかも飛行場姫自身がその価値を理解していないというか無頓着なのか、無料(タダ)でいつでも確実に得られるという、住民達にとって計り知れない恩恵が得られていたりする。更にはなんと電力まで無料(タダ)で安定供給という、外の一般常識からしたら有り得ない事がここでは普通なのだ。まぁ惜しむらくは飛行場施設の外までは自己修復能力は影響が及ばないため範囲外のライフライン維持には四苦八苦しており、そのこともあって島の人口分布は基本的に飛行場施設周辺に集中している。

 

 飛行場姫としては島の居住エリアの隅々にまで生活インフラを提供出来ない自身の力の限界に忸怩たる思いがあるそうだ。…あんたもあんたで優しすぎだろとは口が裂けても言えないが、同時により強力な姫級ならば、或いは複数の姫級が集まればもっと広範囲、下手すると島一つ丸々艤装化出来る可能性を示唆しており、恐ろしさも感じた。

 

 やろうと思えば本土侵攻に際して上陸と同時に艤装化によって沿岸沿い周辺のありとあらゆる生活インフラ、防衛の要所である軍施設の設備を乗っ取ってしまう防御不能な、橋頭堡どころか一夜城を越える敵拠点がいきなり出現するなどいう、やられた側にとって悪夢を通り越した最悪な事態が起きてしまうのだ。そして次々と陸上型の姫級を上陸させて艤装化の影響圏を拡げたら、理屈上は大陸における人類の生活圏を全て飲み込み、生活インフラを掌握して生殺与奪の権を握る事もできなくは無い。それが可能となるだけの人数が居ればだが。少なくとも日本にとっては致命的だ。現有戦力で日本の沿岸全てをカバーすることは困難であり、小グループで密かに上陸されて潜伏されたら…。

 

 そうなったら小松島だって危ない。特に徳島は本土太平洋側防衛の要衝であり、小松島鎮守府が四国最大の海軍基地として拡張された影響で、商売を目的とする県民だけでなく隣県からの人の出入りもある。

 

 それらによって逼迫した小松島市周辺の電力問題をどうにかすべく春雨達の波動エンジンを非番時に利用した(色々とヤラカシまくった)せいで、小松島市を中心に徳島の電力事情そのものが安定化し、余計に徳島に人が集まる事態を呼び込んでしまい、余所者が紛れ込みやすくなってしまっていた。

 

 つまり、深海棲艦にそのつもりがあれば、テロリストの真似事が出来る下地を、善意の末に自分達で作ってしまったのだ。ガチでやっちまったー!である。喩え深海棲艦にその発想がなくとも、アンドロメダ(あの娘)が善意で入れ知恵しないとも限らなかった。なにせ上手くやれば無血で事が運ぶのだから。生真面目なアンドロメダ(あの娘)がこういった搦め手をどこまで良しとするかが、なんとも言い難かったが。

 

 

 しかし人質として交渉するも良し。懐柔して分断するも良し。と、選択肢に困らない。

 

 寧ろその分断の方が人質よりも遥かに厄介だ。

 

 

 この島の住民は、みんな“笑顔”だ。すれ違った際もにこやかに挨拶してくれるし、暮らしぶりは豊かとは言えないが、老いも若きも、兎に角みんな“明るい”のだ。豊かでなくとも心に余裕があるのだ。日本とはまったく正反対だ。

 

 …いや、日本の一般の暮らしも豊かとは決して言えないが、まぁガミラス戦役最後の頃の地下都市生活よりかはマシではあるが、兎に角生きるのに必死で心に余裕が無い。

 

 長引く情勢不安などによる先行きの不安、物価の高騰、経済の低迷、意味不明な税金や出費だけは増えてゆく。貧困も増えてゆく。明日は我が身が貧困層入り。そういった社会風刺を皮肉った題材の狂歌が当たり前の様に歌われるほど、社会は疲弊していた。

 

 そこに水も電気も無料(タダ)とする支配者が出現してしまったら?しかもクソ高いだけで還付(リターン)が雀の涙以下な役に立たない税金を払わなくて良いなら?言い忘れていたが、島では、と言うか深海棲艦の支配領域では税が存在しない。何故ならば深海棲艦には納税という概念が存在しない。精々労働の人手を求めるくらいであるが、それだって先に述べたように強制労働染みた重労働を強いている訳では無い。

 

 最初こそは半信半疑だろうけど、まぁ飛び付くだろうねぇ。そしてあっさりと自分達の支配者として受け入れちゃう。なんなら神様として崇めちゃう莫迦まで出てくるかもしれない。大衆とは移ろうものだ。

 

 

 対抗する方法など、無い。

 

 

 電力はなんとかなる。人間サイズの、しかも中学生か高校生くらいの背格好をした少女の様な存在が背負える位まで小さくなっているとは言え、腐っても波動エンジンである。夢の永久機関は伊達ではない。科学を舐めんじゃねぇ。そのルーツが異星人の高度に発達した科学文明由来であろうとも、科学は科学である。だが、水だけはどうする事も出来なかった。

 

 

 いや、出来なかった訳では無い。その為に越えなければならないハードルに問題があった。

 

 

 一度鎮守府の食糧事情改善のために、嘗ていた世界での地球科学技術と叡智の結晶とも言える、OMCSを政府などの上層部に対して秘密裏に、本気で作ろうとした。てか出来そうになった。モノ作りが大好きで得意な工廠妖精さん達が、胸を張って「できますだ!」と太鼓判を押した。本当(マジ)かっ!?と一同驚愕しながらも喜んだが、次の瞬間には全員真顔になった。ニコニコ顔の妖精さん達から渡された物凄く膨大な資材の要求書を片手に。とてもじゃないが秘密裏には無理だった。ちょろまかすにはあまりにも多過ぎた。足がつく。下手すると国が潰れる。諦めて地道に屯田兵した。何故か白露(シラツユ)の奴が目茶苦茶張り切ってイモ植えだした。自信作と豪語した鳴門金時が確かに美味かった。が、今それはどうでもいい。

 

 そもそも都市とかを支えるだけのOMCSとなると、それなりの規模と数を揃えるが必要となる。それを揃える資材を用意するための予算の確保がまず無理だ。捻出しちまったら経済も財政もなんもかんもが一気に破綻する。だから国が潰れる。諸刃の剣よりもたちが悪い。自滅の刃だ。

 

 それに対して向こうはほぼ自前だけでなんとかしてしまう。土地さえあればなんとかしてしまう。無料(タダ)で良いというのも、根がお人好しなのもあるだろうが、何かしらの対価が必要となるようなことでは無いからだ。多分、呼吸みたいな感覚なのだろう。呼吸するのに消費カロリーは兎も角として目に見えた対価は必要か?もう笑うしかない。

 

 …もしかしたら、アンドロメダ(あの娘)も含め、深海棲艦達もそこまでの考えが及んでいないのかもしれないが。

 

 だが民衆とは自分達に何かしてくれる。施してくれる者に靡く。それでいて特に感謝するわけでなく、そのくせに何かと文句だけは一丁前に寄越してくる。為政者とは本来ならば損な役回りなのだ。しかしだからといってそのことに不貞腐られて私利私欲に走られたら、途端に(まつりごと)は乱れて国が傾く。そしていずれ国を滅ぼす(倒れる)

 

 それは一種の真理だ。そして今の(まつりごと)は既に末期も末期だ。大半の民衆も今更政治が変わることを期待していない。政策の良し悪しを秤にかけるのではなく、組織票の優劣が勝敗を決する形だけの、文字通り形骸化したなんちゃって民主主義だ。だがその組織票だって、そのことによって何かしらの利益があるからこそ成立する仕組みだ。

 

 その利益とは、配給の優先権並びに質と量の優越や補助金か免税などによる他よりかは楽な生活だろう。所謂バラ撒きによる餌付けだ。

 

 だがその仕組みもいつまで維持出来るか、正直先行きが覚束なくなりつつあった。今は目を背けていずれ訪れる破局という現実を直視しないようにしているが、ま、回避不能な未来だ。そこに回避可能かもしれない選択肢が降って湧いたら?節操なく、恥も外聞も一切合切捨てて(こうべ)を垂れ尻尾を振るだろう。

 

 

 あぁ、それに薄々と勘付いていて、嫌悪感から侵攻をしようというやる気が湧かない可能性もあるな。そういえば人類と積極的に関わる事に消極的なのは、同族同士でさえ簡単に騙し傷つけ合う人類に対しての嫌悪感があるそうだ。だからといって完全に突き放さない所に、深海棲艦達の心根の優しさがあるのだろう。その優しさに更に傾く事になったら?目の前で誰か困っていたら手を差し伸べちゃう様なオヒトヨシなのだ。アンドロメダ(あの娘)もそうやって手を差し伸べられ、その手を握り返した者の一人だ。だがただ手を差し伸べるだけでなく、庇護欲が刺激されるのか握り返された手を引いて、そのまま自らの胸へと優しく抱き寄せてその頭を撫で撫でし始めてしまう。

 

 とことん大切にしようとする。それは飛行場姫や泊地棲姫の発言や行動、それに異を唱えない他の姫さん達を見れば、一度庇護の対象となれば仮令それが人間であったとしても関係なくなるのだろう。

 

 弱き者を慈しむ心が悪い訳では無いのだが、際限がないと人間は余程自制心が強くなければ簡単に堕落して靡いてしまう。()()()()()()()()()

 

 

 どっかの新大陸の莫迦共が民主主義をセッセセッセと世界に安売りセールしまくったが、狂気の沙汰だ。

 

 民主主義とは万人が“賢人”であり、“高い道徳心”を持ち合わせていることが大前提である。

 

 では民主主義の大本営であるアメリカはどうか?教育がポリコレ(ポリコラ)?とかLGBT(えるじーナンタラ)?のワケワカラン莫迦騒ぎによって破壊された。道徳よりも目先の小金を優先する金満主義が尊ばれた。その結果が嘗ての超大国の高転びに転ぶ凋落劇に繋がった。

 

 では日本(属国)はどうか?大した違いは無い。嘗ていた世界では最後の大戦争と言われ、歴史上に於けるある種の特別な扱いをされていたが、この世界では過去の出来事の一つに過ぎないとう扱いである第二次世界大戦の敗戦によって、今までのありとあらゆるものが否定された。日本を日本と謂わしめる、その“核”となるものが否定され破壊された。そこから日本人が“可怪しく”なった。日本人が徐々にアメリカナイズ化された。目先の損得しか考えなくなった。

 

 そうして醸成されたのが、目先の損得勘定が尊ばれる今の日本の民主主義である。

 

 その“()()()()()()()()”、楽をしたいから深海棲艦を自らの支配者として迎合する勢力が必ず出て来る。それに対して既存の既得権益層と支配層が反発するが、表立っては行動しない。争わない。実際に行動する、争うのは自らに付き従う“下々”だ。それも直接的な指示ではなく、間接的な扇動によってだ。

 

 民衆、いやもう“衆愚”と言わせてもらおう。衆愚同士で血を流し合うことになるだろう。

 

 

 優しさだけではどうにもならない時もあれば、事態をより複雑に混乱させる時もある。ただ優しいだけでは救えない。

 

 深海棲艦達にそのつもりは無くても、修復困難な亀裂から分断へと広がる。

 

 

 その時が日本という国家の終焉の時だ。

 

 

 一応、このことはそれとなく土方には伝えていた。丁度陸軍の連中も来ているのだ。防ぐ方法がないか検討するにしても、基本方針として戦争を終わらせる方向で進めているのだから、“()()()()()()()()()()として上手く使ってもらいたい。使えるものはなんでも使わなくては。

 

 閑話休題。

 

 

 飛行場施設内、嘗て旅客機の整備を行なっていたであろうハンガーの一つが、今はアンドロメダとアポロノーム(あの娘達)の為に貸し出されている。

 

 因みにここで寝泊まりしているが、若い連中に気を使って部屋は嘗ての作業部屋にした。寝台代わりのソファーがちと硬いが、飛行場姫(姫さん)のお陰で空調もウォーターサーバーもちゃんと動いて中々快適だ。ただUX-02(ベオ)の奴は潜水新棲姫(潜水艦のおチビさん)に気に入られて初日から連れて行かれた事を付け加えておく。

 

 

 そんな生活の場と化したハンガーで、今は換気も兼ねて風を通す為に飛行機が出入りするための巨大なスライドシャッターの出入り口が開け放たれたままとなっている。

 

 

 そこから中の様子を見ることが出来た。

 

 

 

 最早一緒に居ることになんの違和感も無く、駆逐棲姫(駆逐艦の姫さん)と仲睦まじく寄り添い笑い合っているアンドロメダ(教え子)

 

 …もしここにヤマト(あの娘)が居たら、ヤキモチを焼くんじゃないだろうか?いや、流石にそんな狭量な娘じゃないね。寧ろ姫さんも愛する我が娘として可愛がるだろうねぇ。

 

 

 そう思いながらも今は就業時間みたいなものなのだが、それにも関わらずいちゃついている。それを周りは咎めることなく微笑ましく見ている。…まぁいちゃつきながらも仕事は完璧にこなしているものだから、というのもあるのかもしれないが、もう一種の名物と化している。

 

 唯一、泊地棲姫が子供達の教育によろしくないから、子供達の前では控えてくださいね。と軽く注意を促したくらいだ。

 

 そう、やめてくださいではなく、注意にとどめているのだ。

 

 なんというか、完全に甘やかされている感がある。

 

 

 それは矢張り、先の戦闘による罪悪感が尾を引いているみたいなのだ。

 

 猛烈に落ち込んだ上に自分が撃った深海棲艦達がこの地に到着した事で、見覚えのある傷付いた深海棲艦を見て更に激しく落ち込んだ。

 

 その姿を見るに見かねて、励ますよりも少しは甘えを覚えさせて心の逃げ場を作った方が良いと姫さん達は判断した様である。

 

 

 まぁ確かに一理はある。心に余裕が無ければ思考が負のスパイラルに陥りやすくなる。真面目な性格ならば尚更その傾向が強いし、自責に駆られやすい。突き進むと失敗に対して極度に恐れを抱く様になって何も出来なくなる。

 

 これはよろしく無い。

 

 かと言って甘やかし過ぎるのも考えものだが、ここには立派に子育てをしている姫さんが居ることだし、その辺りの匙加減は弁えている事だろう。

 

 その姫さんにとってアンドロメダ(あの娘)は同僚と言うよりも、面倒を見ている子供達と変わらない存在なのだろう。

 

 

 手のかかる子ほど可愛いとはよく言うが、地球最強クラスの超弩級宇宙戦艦もこれには形無しである。

 

 

 これが完全に絆して骨抜きにしてしまうことが目的だとしたら、色々と厄介ではあるが、これがアンドロメダ(あの娘)に対する庇護欲の発露であるならば、今はまだ結論付けるには早すぎる。暫くはのんびりしながら様子見としよう。

 

 空母棲姫(空母の姫さん)から乞われて久々にやった昔語りも、思いの外にギャラリーが集まって楽しい。日本に居た時と違って、素性を隠さなくて良いから言葉を選ぶ必要が無いから楽だ。…選ばなさすぎて引かれる時もあるが、そらはぁ、まぁ御愛嬌ということで。

 

 

 それに、だ。

 

 

 アンドロメダ(あの娘)が幸せでいられるのであれば、人類なんかよりもそちらの方が遥かに重要だ。喩えこの先アンドロメダ(あの娘)が深海棲艦としていることの方が幸せに繋がるというのであれば、それで構わない。

 

 

 これ以上戦うことなく、のんびりと過ごしてほしい。それだけが唯一の願いなのだ。

 

 

 アンドロメダ(あの娘)に戦いは向いていない。このまま人類の煩わしさに巻き込まれる事無く、只々平穏無事であってもらいたい。その眩しいばかりの笑顔のままでいてもらいたい。

 

 煩わしい事は全部こちらが引き受けるから、アンドロメダ(あの娘)にはこのままずっと姫さんと仲良くイチャイチャしていてほしいのだ。

 

 

 

 それがこの世界へとやって来た、この老い耄れの老巧艦のただ一つの心からの願いだ。

 

 

 

 





 なんだかんだ言ってアンドロメダを一番甘やかしているのは霧島(キリシマ)かもしれない。アンドロメダ()と再会して、孫娘を溺愛するおばあちゃん味が増した。と言うよりも、彼女も彼女で“壊れている”だけなのかもしれない。



補足説明

責任総代、守護代と所司代、輜重長、副長助勤

 方面軍司令官や機動部隊指揮官などの部隊を指揮する立場の総代、島などの土地といった陸上を統治する責任総代(但しこちらも基本的には総代と呼ばれる事が多い。)とは別に、主にイロハ級といった下級の深海棲艦が陸上を統治する姫級への敬称として用いられたのが始まりと言われており、近年では上位種である姫級達も、それを取り入れて互いの呼び名にするケースが見られており、主に役職に関してその傾向が強い。

 『守護代』とは島などの領地の統治と防衛を任せられていることから呼ばれる様になったとされている。

 『所司代』というのは、主に島などの領地を防衛するための機動戦力として駐留する護衛艦隊を束ねる立場の姫級に対する敬称とされている。

 『輜重長』などの呼び名は、総代以外の役職の長を表しており、基本的には陸上で活動する際の役割分担に於いて割り振られる。

 なお、これらは基本的に呼び方は統一されておらず、地域ごとに独自色が出ているのだが、そのためか若干趣味に走った様な呼び方が見られる。


マリアナスコーヒー

 日本統治時代、松江春次の起こした南洋興発株式会社は、砂糖事業に続き、高級品であったコーヒーを日本国民に飲ませたいということで、コーヒー事業も行なっており、サイパンで一番高いタポチョ山のプランテーションではコーヒーが栽培され、年間290トン輸出していた。しかし、タポチョ山はサイパン戦の舞台となり、戦後にはコーヒー栽培が忘れ去られていた。かつてコーヒー農園があったタポチョ山には、現在でも数百本のコーヒーの木が自生しており、カリフォルニア出身のジョーダン夫妻によって、野生化した原木が発見された。2001年から本格的な栽培がはじまり、「マリアナスコーヒー」としてサイパンのコーヒーが蘇った。
Wikipediaより抜粋


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 …前回の投稿から一ヶ月あまり。いろんなこと起き過ぎやろ!!

 アメリカの大統領候補者討論会。ジジイが有利になる様に目茶苦茶準備されて行なわれた討論会。始まる前はそう言われていたが、早々にジジイが「バッテリー切れですぅ…」を起こして大災害討論会と言われる程に。

 キエフの小児科病院に関しては、まぁNATOサミットが直近であったことからいつものパターン疑惑が強過ぎる。何らかの国際会議がある時は大概なんか起きる(起こす)がパターン化してる。ぶっちゃけ報道の信憑性はかなり怪しい。武器とカネを寄越すことへの正当化するパターンで今までにプロパガンダやらかしまくってたからなぁ。それに直前のクリミアでのドローン攻撃で民間人殺傷の事実は無視、この十年の間にキエフ政権が行なったドンバスへのジェノサイドの事実も無視。と言う切り取り塗れ。

 そうこうしていたら、恐れていた事態が遂に起きてしまった…。

 トランプ大統領の暗殺未遂。

 いつかは起きると思っていたら、本当に起きてしまった。

 この暗殺未遂事件に関してはYouTube他でも色々と出ていますが、時間が経つにつれて可怪しな点が幾つも指摘され、混沌としています。特に警備体制の不備や不審点に関しては次々と明るみになっています。これに関しましては何度かご紹介した事がありますYouTuber、カナダ在住の日本人やまたつ氏のYouTubeチャンネル、『カナダ人ニュース』の事件直後の7月14日から7月26日の動画をご覧になることをお勧め致します。なお、新しい情報が出たら続々と続報も続々とアップされております。


 しかし速報が流れた時は心臓が凍り付き倒れるかと思いました。そして間違いなく歴史に残るあの一枚の映像を見て、体の底から力が湧くかのような、言葉に言い表せない“熱”を感じました。私は特にこれといった信仰があるわけではありませんが、この時ばかりは神の存在を強く思わずにはいられませんでした。


 そして、ジジイが遂に選挙戦から撤退表明。

 どう考えても無理なの、だいぶ前から指摘されてたのにその都度に渡って陰謀論だの誹謗中傷だの差別だの白人至上主義だの民主主義の脅威だ敵だとか抜かして押さえ付けときながら、少しでも有利になる様に予備選挙のルール平気で捻じ曲げ、当時民主党で立候補予定だったRFKジュニアに散々ぱら嫌がらせして追い出した挙げ句、いざ選挙で負けそうになった途端に手の平返しで党もメディアも肩を組んでジジイを叩き出す。

 民意もクソもねぇな。なんのためにあの目茶苦茶な予備選挙やったんだよ?

 今だけ、金だけ、自分だけ。そのためならばどんなウソもつくし、騙される方が悪いと開き直る。そこに民意はあるんか?

 これが民主党の言う“正しい”民主主義のあるべき姿です。


「誰も見たことの無い、誰も議論したことの無い、そして誰も一度も受け入れたことの無い、所謂“彼らのルール”でもって一定の秩序を定めようとしている。」
ウラジーミル・プーチン



 まさにこの言葉通りの事が、アメリカで今実際に起きている。


 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。
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