艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 日本陸軍


 簡単に日本陸軍を説明。

 一応各兵科の名称を自衛隊独自のものから本来の名称に変更、いや、戻した?ものになってます。
 普通科→歩兵隊 特科→砲兵隊 施設科→工兵隊


 それにしてもロシア連邦軍の装備って独特だから調べていて面白い。特に大砲や多連装ロケットシステムの豊富さは脱帽もの。確かに古い旧式の物も多いが、数が少なく高価で故障した際や損失した際のダメージが大きな西側の装備と比べたら、確実に動いて数があるからある程度の潰しが効く兵器というのは案外大活躍したりするもの。大戦中の金剛姉妹やオールド・レディことウォー様みたいに。


 今回艦娘と深海棲艦の交戦距離に関して言及しますが、所謂捏造設定です。



第74話 Japanese Army

 

 

「土方さんよ、そいつはちと難しいですぜ」

 

 

 陸軍の軍服を着込んだ年若い士官が、向かい側に座る土方に渋い顔をしながら苦言を呈する。

 

 

 松村耕平(まつむら こうへい)陸軍少佐。現在小松島鎮守府周辺警備のために出動している陸軍部隊、香川県は善通寺市に司令部を構え駐屯する日本陸軍第14旅団第15即応機動連隊第1歩兵中隊隊長である。

 

 

 現在の日本陸軍の深海棲艦に対する防衛基本戦略は、海軍が撃ち漏らした深海棲艦の本土への接近阻害、着上陸を水際で阻止する事を一応の基本方針としていた。

 

 それは新ロシア連邦(NRF)並びにトルコの連合軍による『ダーダネルス海峡攻防戦』の勝利を手本とした、砲兵隊の火力投射による飽和攻撃をもって敵部隊の国土への接近、着上陸の意志を挫き、可能ならば撃破殲滅することを骨子とした作戦計画だった。

 

 そのため各種野戦砲、自走式多連装ロケット砲システムを中核とした野戦砲兵戦力の増強を主眼に置いた部隊の再編が行なわれた。

 

 

 しかし急激な人口減少による人員不足。海軍の大軍拡に伴う予算偏重の煽りを受けて、その実情はかなりお寒い限りだった。

 

 長大な日本の沿岸線をカバーするには、装備も人員もまったく足りていなかった。

 

 そこに来て初期の島嶼防衛に南方作戦での敗走や泥沼化した沖縄戦線での消耗戦が海軍以上に陸軍へと重く伸し掛かった。

 

 多くの重装備が輸送船と共に海に沈み、沖縄を始めとした島々の大地は随所で破壊された各種の兵器の残骸がその骸を晒していた。無論、戦死傷者も膨大だった。

 

 

 失われた装備は新ロシア連邦(NRF)からの支援でなんとか補填可能であったが、将兵はどうにもならなかった。

 

 確かに第二次大戦、所謂大東亜戦争以来となる徴兵制度を復活させたことにより、数の上では帳尻を合わせる事が出来た。しかしそもそも砲兵とは高度な知識と技能を必要とする専門技術職であり、玉石混淆な徴兵された兵隊が一朝一夕で砲術をマスター出来る様な簡単な兵科ではない。

 

 

 とは言え日本は新ロシア連邦(NRF)と違い、世界第三位の艦娘戦力を保有する強力な海軍国であることから、陸軍は飽く迄も“補助的”な、万が一の為の“保険”程度の戦力であると見做され、現有兵力でも上手いことやりくりしたらどうにかなるだろうと軍上層部は判断していた。

 

 それに“切り札”とも言える新兵器、自走化された沿岸レーザー砲台の存在が足りない砲兵戦力を充分に補えるとの、一種の楽観論に近い見解もあったことから、当初の計画よりも緩やかなペースでの増強に下方修正された。

 

 

 また陸軍は災害派遣や避難誘導、流通及び有事に際しての部隊の迅速な戦略移動に必要不可欠である交通インフラの維持に復旧支援などの戦闘以外にも多岐に渡る任務があるため、同じ陸軍とは言え砲兵隊にばかり注力は出来ない。

 

 特に近年では交通だけでなく、電気ガス水道通信と言った生活インフラの維持管理にも駆り出されている状態で、社会の死活に関わる公共事業の一環となっており、その活動を担う工兵隊の予算規模は年々増大し、徴兵された者の多くは戦闘訓練を碌に受ける事無く工兵隊に回されていた。しかしそれでも大型河川や海峡部などに架かる橋梁などの維持管理や再架橋に関しては遅れている状態である。

 

 そのため橋梁が使えない状態になっても独力での水上移動、渡河能力を有するBTR-80やBTR-82、BMP-3の様なロシア製の各種装甲車がかなり重宝されている。

 

 

 そしてそのBTR装甲車が数多く配備されているのが、諸兵科連合である即応機動連隊であり、松村少佐が率いる中隊はその連隊を構成する機械化歩兵部隊の一つだ。

 

 

 戦場の女神と称され、陸軍の永遠の華形である砲兵隊や、一般生活と最も密接に関わりのある工兵隊と違い、歩兵隊と戦車隊は現状やや影が薄い。

 

 

 これは戦前と違い、歩兵部隊のメディアへの露出が砲兵隊と反比例して極端に減った事もあるが、緒戦の島嶼防衛──小笠原諸島防衛戦に第一次沖縄防衛戦──に於ける大損害が大いに影響していた。

 

 上陸しようとした深海棲艦に対して迎撃のために戦車隊と共に多数の歩兵部隊を投入し、深海棲艦による砲爆撃に晒されて悉く鉄分混じりの挽き肉にされた。

 

 

 着上陸阻止自体は、旧自衛隊時代に米ソ冷戦時代から着上陸防衛として磨き上げられてきた基本作戦だったが、米ソ冷戦終結後、打撃力よりも即時展開能力に比重が置かれる事となっていた。

 

 

 しかし深海棲艦はそれらの想定された戦争とは、当たり前だがまったく別次元の戦争だった。

 

 

 歩兵が直接海を渡り、それでいて走攻防の全てが最新の戦車を上回り、個体によっては先の第三次大戦で猛威を振るった大量の徘徊型自爆ドローンを凌駕する航空戦力を、文字通り雲霞の如く飛ばして航空優勢を抑えてくる。

 

 

 こんな敵を想定した戦闘教義など、この当時どこの国の軍隊にもありはしなかった。

 

 

 悲しいかな、軍隊というものは本質的に“過去の戦争のプロフェッショナル”なのだ。

 

 今まであった戦争を分析解明し、より合理的かつ最適に、つまり前例よりも上手く戦う事で勝利を掴み取ろうとするのである。

 

 故に急激な変化に弱い。自分達の出来る今までの戦いを想定した行動を想定外の現状に無理に当て嵌めようとして、現実と想定の乖離から効果的な戦闘が出来ずに損害を積み重ねる。想定外に対する対処で後方と前方で深刻な認識の齟齬が生じて意思決定命令伝達にも大小様々な混乱が生じる。

 

 

 地対艦ミサイルや地対空ミサイルは押し寄せる深海棲艦の軍勢に対しては焼け石に水。それ以前に目標が小さ過ぎて当たらないからコストパフォーマンスが最悪過ぎた。そして一発も撃つことなく撤退するか、敵航空戦力に発見されて破壊された。

 

 この当時の火砲群は自衛隊時代の削減方針の煽りを受けて有効な火力投射が出来ない有り様で、戦車隊も保有台数の削減方針と代替となり得る16式機動戦闘車も各地への分散配備で絶対数が足りず、退役済みの90式戦車や退役し解体待ちで状態の良い74式戦車まで洗い浚い引っ張り出して砲台代わりにしてもまだ足りず、その穴埋めとして各種対戦車火器や軽迫撃砲を持った歩兵部隊が多数投入され、現代のバンザイ突撃(バンザイアタック)と海外から批判されるほどの大損害を積み上げた。*1

 

 特に小笠原諸島防衛戦では船舶による重火器の輸送が間に合わず、航空輸送での迅速な展開が可能だった歩兵戦力が防衛の中核を担う事となったが故に、部隊が丸々消滅する様な凄惨な戦いとなった。更にこの戦いに虎の子の第1空挺団が投入され、壊滅した。以降、空挺部隊は書類上の存在となった。

 

 

 

 これらの戦いの反省も踏まえて砲兵隊の増強が始まった訳だが、先にも述べた通り避難誘導や災害派遣にも人員が必要であり、歩兵部隊も変わらず重要な存在である。

 

 

 が、同時に砲兵隊による砲列の展開が完了するまでの時間稼ぎも求められていた。

 

 

 流石にそれまでの反省から火力の底上げを目的として、連隊を構成する各歩兵中隊の迫撃砲小隊には従来の81ミリ迫撃砲L16に代わってより火力の高い牽引式の120ミリ重迫撃砲2B11を、連隊の火力支援中隊には直接照準による水平射撃も可能な120ミリ重迫撃砲を主砲に持つ2S31『Вена(ヴェーナ)』装軌式自走迫撃砲か2S40『Флокс(フロックス)』装輪式自走迫撃砲のどちらかが配備され、さらには機動戦闘車隊にのみ配備されていた16式機動戦闘車を、各歩兵中隊に新設された機動戦闘車小隊へと配備が進められている。ただ生産設備がウラジオストクへと移転して以降、大戦中に製造して戦後に予備役保管にするには過多となった、或いは元々は輸出用だったのが輸出先の国家が崩壊したか政情不安で買い取り不能になり、買い手がつかずに倉庫で眠っていた自国の余剰兵器を捌きたいとの新ロシア連邦(NRF)側の思惑からかなりの横槍が入って生産台数が伸び悩んでおり、不足はレーザー誘導型対戦車ミサイルも発射可能な100ミリ低圧砲を装備する装軌式歩兵戦闘車BMP-3が充てられている。

 

 装備調達に政治的な裏事情が絡んだりしているものの、それでも総合的に見たら格段に向上した砲火力であるが、それを以てしても半ば気休め程度にしかならず、また一度定着した損耗率の大きさから来る悪いイメージも相俟って歩兵隊は配属を嫌がられる兵科となっていた。

 

 そのためもあってか、現在の歩兵隊は命知らずな荒くれ者達の割合が多く、松村少佐も昔はヤンチャで暴走族の(カシラ)で、部下の荒くれ者連中からも隊長ではなく“(カシラ)”だの“リーダー”だのと呼ばれていた。

 

 そして土方の部下である斉藤始と最も関わりのある者であり、部隊絡みで斉藤のことを大尉という階級関係なく“アニキ”と呼んで慕っている仲でもある。因みに斉藤の方が松村少佐よりも1歳だけだが歳上である。

 

 まぁ口は悪いが軍人としての仕事はちゃんとしており、荒くれ者達が問題を起こさないようにキチンと纏めているものだから、上官からの不興は口の悪さに苦言は呈されても、それ以外では特に無い。

 

 土方としても松村少佐の能力は評価しており、松村少佐も土方をマトモな軍人の筆頭格として、なによりも斉藤の直属上官ということもあって、自身の上官よりも信頼し敬っている。*2

 

 

 

 さて、そんな松村少佐に土方は何を話しているかというと、最初は周辺警備の労いなどの当たり障りのない内容だったが、その後にせっかくだからと本土防衛に関して最新の情勢を加味して現在作成中のレポートを、陸軍にも関係する内容があるから陸軍の視点からの意見を聞きたいとして、いくつかの下書きや覚え書きなどを記載した書面を手渡した。

 

 それは霧島(キリシマ)が可能性として報告に上げた、陸上型深海棲艦による陸地への侵攻で想定される最悪の事態について、土方なりにレポートの下書きという体裁で纏めたものである。

 

 

 従来の侵攻の様に大部隊による攻撃と違い、少数でこちらの警戒網を突破、或いは大規模な陽動部隊でこちらの注意を引いている隙に別働隊として、こっそりと上陸した陸上型深海棲艦によって沿岸部の飛行場を奪われ、拠点化されたとしたら?というものである。

 

 最初は気軽に目を通す様な様子だったが、読み進めていく内に段々と顔を険しくしていった。

 

 

 日本の飛行場は沿岸地帯に建設されている割合が多い。

 

 

 ここ徳島と同様に太平洋と面する隣県にある飛行場を例に挙げても、徳島の『徳島飛行場』、高知の『高知空港』、和歌山の『南紀白浜空港』という3つの飛行場はその悉くが海に隣接している。

 

 そのどれかが奪われて拠点化されてしまった場合を想定した反撃に関してである。

 

 これらの飛行場は現在軍が全て管理下に置いているが、人口減少による人手不足と財政難によって、本州とを結ぶ橋梁の長寿命化工事が遅々として進まない四国に於いて飛行場は港湾と並んで、人と物資を運ぶ重要なインフラでもある。

 

 また軍に於いても飛行場は、近年その規模が拡大している()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である、“基地航空隊”の重要な一大拠点として活用されており、本土へと飛来する深海棲艦の航空戦力に対して有効且つ効果的な本土防空を成し得るための、戦略的な重要拠点だった。

 

 さらに既存の対潜警戒網では探知不能、艦娘の哨戒だけでは侵入を防ぎ切れなかった深海棲艦の潜水艦部隊を探知し攻撃可能な対潜哨戒機を飛ばせるのも、基地航空隊だけであり、基地航空隊が無ければ本土の防衛は成り立たず、失う訳にはいかなかった。

 

 

 因みに、基地航空隊はその運用に於いて、当たり前といえば当たり前であるが、所謂オペレーターとして艦娘と専属の妖精さん達の常駐が必要不可欠である。

 

 

 では飛行場の管轄は艦娘の属する海軍かと言うとそうではなく、空軍の所管であり、配属されている艦娘と妖精さん達は海軍からの出向扱いとされている。

 

 

 これは基地航空隊で使用する機材の中に嘗ての帝國海軍航空隊だけでなく、帝國陸軍航空隊の機材がある事から、陸海での基地航空隊の指揮権を巡っての無用な主導権の争いを避ける目的があるとされているが、同時に海軍に寄り過ぎていた陸海空三軍のパワーバランスの調整と、艦娘の配備促進と維持の為に国防予算の海軍枠が常にカツカツで、基地航空隊にまで予算が回せず、これ以上の海軍への国防予算集中はただでさえ海軍偏重予算で常に苦しい状態にある空陸軍の予算削減に繋がり、大きな反発が出るのは必至だったという政治的な理由もあった。ただ空軍に割り当てられる基地航空隊予算に、本来ならば空軍独自の筈の予算も巧妙に抱き合わせて、少しでも予算を引っ張れる口実として利用されている現状もあり、問題視もされていた。

 

 閑話休題。

 

 

 

 少し考える素振りをしながら、最初の言葉に続けて自らの所見を述べた。

 

 

 ざっと纏めると、奇襲に近い形で奪われた場合、飛行場勤務の空軍と軍属職員並びに艦娘が事実上の人質となってしまい、下手な反撃が出来ないこと。相手が深海棲艦である以上、通常の軍やテロリストなどの武装勢力による占拠の様に特殊作戦群などの地上部隊を投入しての奪還作戦や人質救出作戦は無謀。もし人質が奇跡的に居ない、或いは人質を初めから諦めるとしたとしても、即座に効果的な反撃に出る事が難しかった。

 

 何故ならば拠点化後に即展開されるであろう敵航空戦力の存在が厄介だ。

 

 部隊を動かしている最中に発見され、空爆で各個撃破される可能性が高かった。

 

 一応の対空装備はあるものの、対空ミサイルによる既存の防空システムに期待が出来ない現状から、新ロシア連邦(NRF)から供与されたZSU-23-4『Шилка(シルカ)』自走高射機関砲と16式機動戦闘車の車体に退役して保管されていたエリコンの連装35ミリ機関砲L-90を単装に改造して搭載した改造自走高射機関砲、さらに陸軍で旧陸自時代から広く普及している高機動車の荷台を改造し銃架を取り付け、12.7ミリKord(コルド)重機関銃を載せた車両が配備しているものの基本的に気休め程度の装備である。陸軍の野戦防空は近隣の基地航空隊に依存しており、問題視もされているが解決案が無い状態で今日迄来ている。

 

 

「近場の中部方面隊第4砲兵大隊を引っ張り出して、多連装ロケット砲『スメルチ』のロケット弾をアウトレンジで雨霰とブチ込んで追っ払うのが手っ取り早く済むやり方かもしれやせんが…」

 

 

 中部方面隊とは第14旅団の上位組織であり、静岡県を除く東海、新潟県を除く北陸、近畿、中四国地区2府19県の防衛警備や災害派遣等を担任し、方面総監部は兵庫県伊丹市伊丹駐屯地に置かれている。

 

 その中部方面隊には直轄部隊として野戦砲兵の連隊があり、それが中部方面隊砲兵連隊として兵庫県姫路市姫路駐屯地の第1大隊、愛知県豊川市豊川駐屯地の第2大隊、岡山県勝田郡日本原駐屯地の第3大隊、愛媛県松山市松山駐屯地の第4大隊が配され、連隊本部は第1大隊の置かれている兵庫県の姫路市姫路駐屯地に駐屯している。

 

 

 これらの部隊には新ロシア連邦(NRF)から供与さらた47口径152ミリ牽引式榴弾砲2A65『Мста-B(ムスタ-B)』とその自走榴弾砲タイプの2S19『Мста-S(ムスタ-S)』 が少数だが配備され、若しくはより射程の長い54口径152ミリ牽引式カノン砲2A36『Гиацинт-B(ギアツィント-B)』を装備しており、さらには122ミリ40連装自走ロケット砲システムBM-21『Град(グラート)』も配備されていた。*3

 

 これに加えて、最近新ロシア連邦(NRF)から最大射程120キロ*4を誇る300ミリ12連装自走ロケット砲システムBM-30『Смерч(スメルチ)』が供与された。*5

 

 

 

 ついでにここで一つ、艦娘と深海棲艦が装備する火砲の射程について説明しておこう。

 

 

 双方が持つ火砲は、見た目こそかけ離れているものの、そのスペックに関しては然程大きな差異は見受けられず、射程も艦種によって差はあるものの、小口径砲を装備する駆逐艦級や海防艦級で大体2,000メートル前後のスペックを有している。そして大口径砲を装備する戦艦級だと、どんなに短くとも成人身長に於ける水平線の距離となる4,400メートルは確実に超える射程を有している。

 

 しかし実際の交戦距離は戦艦級で500メートル未満、駆逐艦級に至っては2、30メートルからほんの数メートルという目と鼻の先で撃ち合うことがザラにある。

 

 

 理由は単純にして明快。

 

 

 マトモに当たらないからだ。

 

 

 いくら普通の人間よりも肉体的に優れているとしても、海上を高速で動き回る人間サイズの目標を、視覚的には豆粒やコメ粒サイズの大きさしか見えていないモノに対して的確に、しかもこちらも高速で動いているのだから、マトモに標準を付けて狙い撃ち、直撃させるのは非常に困難だ。

 

 どんなに遠くへと強力な砲弾を飛ばす事が出来る巨砲であっても、当たらなければ意味が無い。手持ちの砲弾をただいたずらに浪費するだけだ。

 

 ならばどうするか?

 

 これもまた単純明快。

 

 

 当たる距離まで近付けば良い。

 

 

 だからこそ乱打戦の大乱戦となって、ノーガードの殴り合いの末に可愛らしい駆逐艦の艦娘が自身より大きな、まさに海に浮かべる黒鉄の城と言える強大にして凶悪な武装に身を包んだ超弩級の戦艦級深海棲艦の懐に忍び込み、至近距離から弱点を的確に突いて叩きのめしてしまうジャイアントキリングが発生する要因ともなっている。

 

 そのさまは装甲戦闘車両に肉薄攻撃を仕掛ける歩兵の様相を呈していた。

 

 故に艦娘による戦闘は、その本質を純粋な艦艇による海戦とは違い、歩兵戦闘の要素を加味して考えるべしとの教義が現在の主流である。

 

 

 とは言え、それは艦娘と深海棲艦という対等な相手同士による戦いに於いての事であり、従来型の兵器群で戦う人類だと別の戦い方となる。

 

 特に厄介なのは、最大射程で(めくら)撃ちだとしても、陸上に向けての場合だと沿岸地区の各種施設並びに市街地などの民間居住区にとっては充分な脅威と成り得るし、着弾によって発生する火災による二次被害だって大きな脅威だ。

 

 

 そのため、何が何でも水平線よりも向こう側で撃退する事が肝要であると判断され、より遠くで確実に接近を阻害するための突撃破砕射撃に匹敵する猛烈な弾幕射撃が可能とすることも、砲兵隊の増強が進められた理由でもある。

 

 より遠くで。それはすなわちこちら側の射程の長さを活かす事で敵からの応射を防ぎ、展開した砲列陣地を長時間維持して陣地転換による移動時間と再照準の時間を省いて火力投射の継続を維持すると同時に、砲列を潰すために飛来する敵空母艦載機の攻撃隊に際しての対空砲火に曝露される時間を長くし、尚且つ基地航空隊による迎撃時間を稼ぐ意味でも重要だった。

 

 

 その意味でこの圧倒的射程距離を誇る『スメルチ』の配備はまさに理想的な火力投射手段であると言えた。

 

 

 因みに、『スメルチ』供与は嘗て車両移動式短距離弾道ミサイル9K720『Искандер(イスカンデル)』を発射器も兼ねる車両ごと艦船に載せ、フィリピンに展開する深海棲艦が構築しているであろう拠点に対しての牽制攻撃を企図して新ロシア連邦(NRF)に購入したいと打診した事に端を発する。

 

 

 確かに新ロシア連邦(NRF)は日本に対して武器弾薬装備品を多数供与していたが、これには日本に対して提供するのは余剰装備のみとする明確な線引きがなされていた。

 

 今でこそ性能を抑えた輸出用モデルの『Стерегущий(ステレグシュチイ)』級フリゲート艦が近々引き渡されるのと、現在空軍の主力機であるSu-30MKにMiG-35などは最初期は別ににしても今では日本仕様として製造セッティングされた物が引き渡されており、新規製造された兵器の輸出に関する制限の緩和が進んでいるが、この当時は先の大戦中に製造した余剰装備、戦後の装備更新で予備役となった余剰装備の処分が本来の目的だった。

 

 そういった意味では『イスカンデル』は余剰装備と言える代物ではなく、新ロシア連邦(NRF)の軍事力を支える第一線級の主幹装備品であり、尚且つこのミサイルは基本的に敵の有力な防空網による阻害によって、航空戦力や巡航ミサイルによる攻撃が難しい高価値地上目標への通常弾頭を用いた攻撃をコンセプトとしているが、本国仕様では戦術核弾頭の搭載が可能なだけのポテンシャルも有していた。

 

 問題は仮令本国仕様ではない輸出用の廉価版であったとしても、衰退し弱体化はしているが、腐っても技術力はあると見做していた日本ならば独力で本国仕様に匹敵するレベルまで改造を施せるのではないか?と警戒していた。

 

 これには嘗てのイラクがイラン・イラク戦争の折に、『スカッドミサイル』の名称で知られるR-17短距離弾道ミサイル『スカッドB』を独自改造し、弾頭重量を半分に減らして燃料搭載量確保に充てたのと引き換えに射程距離の延伸に成功した『الحسين(アル・フセイン)』という前例があり、杞憂で済む話ではなかった。*6

 

 しかも日本が秘密裏に独自の戦術核弾頭を開発し、搭載する事も出来なくはないと新ロシア連邦(NRF)軍部と諜報部は見ており、さらには大統領府(クレムリン)もアメリカが何らかの形で介入して日本政府と軍部、さらにメディアの言論人やインフルエンサーの拝米保守派を焚き付けて新たな火種を起こし、極東ロシアに於ける国家安全保障の脅威になる危険性も捨て切れないとして難色を示した。無論、その事は日本側に直接明かすことはせず、表向きは連邦軍への配備向けの製造だけで手一杯であるから、供与が困難である事と、よしんば供与可能でも習熟訓練は一朝一夕に済むものでは無く、運用可能となるまでにそれ相応の時間が必要となると説明し、やんわりとした形で拒否の意向を示した。

 

 

 その代替案として提示したのが、ロシア語で『竜巻』の名を冠する多連装ロケットシステム、BM-30『Смерч(スメルチ)』である。

 

 

 ただこの新ロシア連邦(NRF)側からの打診の直後よりフィリピン方面での状況が動き出し、第二次沖縄防衛戦となる沖縄戦線での状況が逼迫しだした事で日本側がパニック状態になって交渉が停滞。暫く宙に浮いていたが、沖縄戦線の戦況が膠着状態になりだした辺りから漸く交渉が纏まり、新ロシア連邦(NRF)領内での運用訓練を経て日本での本格的な運用の目処がついて各地の砲兵大隊へと順次配備が進みつつあった。

 

 

「アレは弾薬の備蓄が当初の予定よりも遅れていると聞いているが?」

 

 

 その土方の言葉に松村少佐は苦り切った顔をしながら「…それが問題なんすよ」と答えた。

 

 配備が始まったのが最近という時期的な問題はあるが、それでも四国方面の部隊は首都防衛の観点から比較的優遇されている。

 

 そう。優遇はされているのだが、それが弾薬の充足率には繋がっていなかった。

 

 

 確かに『スメルチ』は理想的な装備ではあるのだが、陸軍上層部は現状でも充分な火力を発揮出来ていると見做しており、そこまで急を要するとは思っておらず、発射機である車両の配備が優先されて使用弾薬の備蓄は必要最低限を満たすにギリギリだった。

 

 元々フィリピン方面での牽制攻撃目的だった『イスカンデル』の代替だったというのも無関係ではなく、その運用に若干持て余しており、特に弾薬選定で当初予定していた射程120キロのM542破片効果榴弾弾頭ではなく、射程が70キロに下がるもののより広範囲に対する破壊効果が期待できる9M55Sサーモバリック弾頭であったり、対装甲攻撃弾頭を採用すべきではないか?と今でも意見が割れてしまっている。*7

 

 

 その煽りを受けて運用部隊だけでなく兵站にも混乱を来している有り様である。

 

 

「さっさと結論を出してほしいと、砲兵や輸送隊の同期と知り合い連中が意見書を束にして送り付けてるみてぇなんですがねぇ…」

 

 

 頭をガシガシ掻きながら松村少佐はそう漏らし、土方は腕を組みながら難しいだろうなと嘆息する。

 

 正直な所、陸軍を“保険”と言って軽視して来た事への“ツケ”が回ってきたのだと内心で思っている。

 

 

 松村少佐の様な現場は兎も角として、上層部はのんびりとしている。松村少佐はその事を上層部の危機意識が薄れていると吐き捨てていた。

 

 

 実際膠着状態の沖縄戦線は別として、本土は海軍と空軍が善戦していることもあり、陸軍は殆ど出番が無い。

 

 出番と言えば今回の様な警備出動や災害派遣、公共工事くらいのものである。

 

 沖縄戦線は海軍が実質的な主導的立場ということもあって、何かあっても陸軍上層部に責任が回ってくる心配がまず無い。

 

 

 であれば陸軍上層部としては海軍と空軍を横目に見ながら“天下泰平世は事もなし”と、退役まで大過無く勤め、つつがなく過ごせればそれで良しとする、所謂“事なかれ主義”的な風潮が醸成されていた。

 

 だから何かしらの責任が生じるような事態を嫌って()()()()な態度となったり、結論を先延ばしにする事が多くなった。

 

 

 それによって現在確立されている戦闘教義がそれなりに上手くいっている事もあり、下手に手を加える事に慎重…、いや、下手に変更することで何かしらの不具合が出て責任問題となる事を嫌がり、なんだかんだと理由をつけて何が何でも現状維持に固執する有り様となっていた。

 

 新装備の配備に関して意見が割れるのも、ある意味その延長線と言えた。

 

 

 一部ではその様をマジノ線に固執したガムラン将軍とフランス陸軍の様だと揶揄する声もチラホラとあるが、笑うに笑えない冗談だった。

 

 当時のフランスは政府も軍部もマジノ線の大要塞群を過信し、ドイツ軍の電撃戦に翻弄されて敗北した。

 

 

 その二の舞を演じることになるのではないだろうか?

 

 

 そう疑問を呈する声は現場レベルで出ていた。実際に矛を交えるのは彼らなのだから。

 

 もしも深海棲艦が戦い方を変えてきたら?そう不安に思っていたら、現実にその兆候が出始めた。

 

 

 海軍の哨戒網と防衛線が有力な深海棲艦の潜水艦部隊に良いように引っ掻き回された。それもかなり少数の部隊によって。*8

 

 

 松村少佐が土方の持ち掛けた話に真剣に受け答えをしているのは、単に松村少佐の個人的な土方への信頼というだけでなく、深海棲艦が今までに無い動きを見せる事で恐れていた事態が現実になった際への対処を現場レベルで意見交換をしたかったというのもあった。

 

 

 上が動くのを待っていたら、下手すると手遅れになるかもしれない。

 

 

 ならば多少の越権行為、独断専行であろうとも自分で動くしかなかった。

 

 

 万が一に際して最も最前線となるのが自分達の部隊なのだから。

 

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 部下の命だって預かっているのだから、出来ることはなんだってやっておきたかった。

 

 

 

 

 

*1
実際に突撃した訳では無く、深海棲艦の応射や爆撃による犠牲が大半を占めているのだが、あまりにも犠牲が多いことと交戦距離が近かったことから、先祖返りしたものと思われた。なお、交戦距離が近かったのは、確実にダメージを与えるために必中を狙ってギリギリまで引き付けたのが理由である。

*2
別に自身の上官、旅団長や連隊長が駄目という訳では無い。特に当たり障りのない真っ当な軍人であるし、それなりに評価してもらっていることから慕っている。しかし旅団長は些か日和見なところがあるため、土方ほど信頼を寄せていない。連隊長は今までに色々と気に掛けてくれていた恩義があるが、近々退役予定である。後任がどうなるかが目下不安の種となっている。

*3
その中には日本軍で使用されている3トン半トラックの荷台を改造して『グラート』の40連装発射器を載せた車両も存在する。

*4
最小射程20キロ

*5
BM-21『グラート』が複数の弾種に弾頭重量、製造国によって射程距離がまちまちだが、最小射程1.5キロから最大で40キロ。2A65『ムスタ-B』が通常弾24.7キロからロケット補助推進弾28.9キロ。2A36『ギアツィント-B』が通常弾28.5キロからロケット補助推進弾で33.5キロ。

*6
なお、『الحسين(アル・フセイン)』は射程延伸の代償として『スカッドB』よりも命中精度が低下しており、飛翔中の再突入時に空中分解する可能性があった。

*7
因みに『グラート』は主に9M521破片効果榴弾と9M218成形炸薬子弾頭が採用されている。

*8
実際はたった1人。しかも見た目は深海棲艦っぽくっも見えるUX-02(ベオ)のことだが。





 深海棲艦に対して通常の陸軍戦力でどこまで戦えるか?正直かなり厳しいとは思います。走攻防、どれをとっても既存の兵器群とは異次元のレベルでかけ離れ、しかもサイズが人間サイズ。当てるだけでも一苦労で、マトモにやり合うのは自殺行為でしょう。

 ならば作中の様に射程の長い兵器で座標をあらかじめ決めての効力射が妥当でしょうというのが、私なりの答え。

 無論、艦娘や基地航空隊を主軸に迎撃する縦深的防御戦が基本となるでしょう。作中では基地航空隊は索敵哨戒と防空のみしか語りませんでしたが、侵攻部隊への航空攻撃による阻止攻撃も重要な任務です。攻勢でも守勢でも、航空優勢は重要なファクターですからね。

 因みに空軍は深海棲艦が迎撃出来ない高度からのFAB-500やODAB(サーモバリック爆弾)等の航空爆弾による航空攻撃が主任務となっています。

 ただ戦争の長期化と戦線の膠着による影響で、パターン化した戦闘以外での急な変化に弱くなっています。今回出した新キャラ松村耕平少佐や現場はそのことを恐れています。

 まぁ当の深海棲艦側がもうやる気無くしているので、実は杞憂なんですけどね。でも彼らはそれを知らないですから。因みに松村少佐は戦闘による戦傷で片足義足です。本来ならば傷痍軍人として退役している所なのですが、人手不足、特に部隊を指揮できる人手が足りないことから退役させてもらえなかった。



補足解説

BTR-80

 БТР-80

 1984年に旧ソ連で開発、1987年からソ連陸軍自動車化ライフル師団で運用が開始され、現在(2024年時点)のロシア連邦陸軍自動車化ライフル師団でも主力として運用されている装輪式装甲兵員輸送車。

 輸出も積極的に行なわれており、旧ソ連諸国を中心に22ヶ国以上に輸出されており、5,000両以上が配備されているとされている。

 乗員3名と歩兵7名。

 水上速力9.5キロが発揮可能。


BTR-82

 БТР-82

 前述のBTR-80を大幅に近代化した車両。

 生存性、不整地走破性、信頼性、耐用年数はBTR-80と比較し、大きく向上している。


120ミリ重迫撃砲2B11

 1979年に開発され、1981年に運用が開始された重迫撃砲。


2S31『Вена(ヴェーナ)』自走迫撃砲

 2010年から運用が開始された装軌式自走迫撃砲。

 装軌式歩兵戦闘車BMP-3の車体に後装式の直射曲射両用長砲身120mm迫撃砲2A80を装備した砲塔を搭載したもので、120mmであればロシア規格NATO規格双方の砲弾を使用できる。BMP-3に準じた水上航行能力を有している。

 トイレが付いているらしい。


2S40『Флокс(フロックス)』自走迫撃砲

 2023年より運用が開始された装輪式自走迫撃砲。

 2S31『ヴェーナ』と同系列の120ミリ砲を装輪し、直射と曲射の両方が可能。


BMP-3

 БМП-3

 1987年に採用された装軌式歩兵戦闘車。

 対戦車ミサイルも発射可能な100ミリ低圧砲と30ミリ機関砲、さらに7.62ミリ機関銃を同軸で装備し、さらに2丁の7.62ミリ機関銃も装備するという、非常に強力な武装が特徴。

 しかし製造コストがそれまでに採用されたBMPシリーズと比べて高価で、連邦軍に纏まった数が揃ったのは90年代後半である。但し、高価とはいえ西側の歩兵戦闘車と比較したら安価であり、海外への輸出で成功している。

 乗員3名と歩兵7名から9名。

 水上速力10キロが発揮可能。


ZSU-23-4『Шилка(シルカ)』自走高射機関砲

 ЗСУ-23-4

 1964年に採用された自走高射機関砲。

 23ミリ4連装機関砲を納めた砲塔を持つ。


12.7ミリKord(コルド)重機関銃

 1998年に採用された12.7ミリの重機関銃。

 それまで車載機銃として使用されていたNSV重機関銃が、ソ連崩壊によって生産工場のあったカザフ・ソビエト社会主義共和国がカザフスタン共和国として独立。ロシアへのNSVやその部品の供給が滞った事で稼働率が維持出来なくなたことにより、それに対処する形で開発された。


2A65『Мста-B(ムスタ-B)』47口径152ミリ牽引式榴弾砲

 1986年にそれまで採用されていたD-20榴弾砲の後継として開発された榴弾砲。現在も更新は進んでいるが、D-20とD-20の改良型を主砲として装備する2S3『Акация(アカーツィヤ)』自走榴弾砲共々まだ暫くは第一線で使用される模様。

 “B”とは牽引式を意味する“Buksiuruemuy”の頭文字。


2S19『Мста-S(ムスタ-S)

 先述の『ムスタ-B』を改良した2A64榴弾砲(48口径)を主砲として装備する装軌式自走榴弾砲で、『アカーツィア』及びほか既存の数種類の自走榴弾砲を置き換える目的で開発された。

 近年NATO軍の自走榴弾砲と比べて性能が陳腐化しているとして、最大射程は精密誘導砲弾で70キロ、通常弾でも40キロと『ムスタ-S』の29キロよりも延長された後継の2S35『Коалиция(コアリツィヤ)-SV』に更新される予定。

 “S”とは自走式を意味する“Samokhodnuy”の頭文字。


2A36『Гиацинт-B(ギアツィント-B)』54口径152ミリ牽引式カノン砲

 1976年から配備が開始された長砲身牽引砲。54口径という150mmクラスの野戦砲としては異例の長砲身(8.197メートル。『ムスタ-B』が7.2メートル)を採用し、その長射程を活かして敵の部隊や兵器を破壊し、敵砲兵隊を壊滅させる対砲兵砲撃戦を得意とする。

 本砲を自走化(装軌式)させたのが、2S5『ギアツィント-S』である。

 同口径の榴弾砲よりも長砲身なのがカノン砲との定義があるが、冷戦後榴弾砲の長砲身化や榴弾砲への統廃合によって榴弾砲とカノン砲の区別は事実上無くなっている。ただロシアをはじめとした旧東側諸国では運用が続いている。


BM-21『Град(グラート)』122ミリ40連装自走ロケット砲システム

 1963年に配備が始まり、世界で最も広く使用されている自走ロケット砲。

 使用されるロケット弾の弾頭は基本的に対人、対非装甲車両用の破砕性弾頭であるが、中には対硬化目標用のHEAT弾や対戦車地雷散布弾頭、対戦車用の子爆弾散布弾頭も用意されている。

 すでに生産は終了しているが現在でもロシア軍の現役装備で、予備役だけでも2,200輌は保有している。

 世界中で現役ということもあり、ロシア製以外に多数のサードパーティ製の弾薬が存在する。


BM-30『Смерч(スメルチ)』300ミリ12連装自走ロケット砲システム

 1987年より配備が始まった長射程自走ロケット砲。

 70から90キロもの長射程を活かして敵軍の砲兵陣地や野戦司令部、燃料や弾薬などの物資集積所、部隊集結地域の装甲目標及び非装甲目標を攻撃対象とする。


Su-30MK

 Su-27を発展させた複座多用途戦闘機Su-30の輸出モデル。


MiG-35

 MiG-29から発展した戦闘攻撃機。

 2024年現在に於いて本機を正式採用している国は無い。ロシア航空宇宙軍に9機引き渡されているが、Su-27系列や後継のSu-57で戦力を構築する方針であるとされており、販売に苦戦するミグに対する救済措置の側面が強いとされる。


الحسين(アル・フセイン)

 イラン・イラク戦争にてイラクがイランの首都テヘランを攻撃するために、ソ連製短距離弾道ミサイル『スカッドB』を独自に改造して射程延伸させたミサイル。

 イラン・イラク戦争での実戦投入され、湾岸戦争でもイスラエルやサウジアラビアに向けて発射された。

 湾岸戦争後に全て破壊された。


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 また一ヶ月の間に色々と起きたなぁ。クルスクへの侵攻。当初はいつもの破壊工作部隊の小グループによる越境浸透プロパガンダ攻撃(個人的にピンポンダッシュ攻撃と呼称。)かと思っていたら、予想よりも大きな規模の部隊を押し出しての攻勢だった。ドネツク方面でのロシア軍の攻撃によって防衛線が圧迫されている現状で、攻撃に出るとは。

 しかし調べていく内にこれは嘗ての『ラインの守り作戦』、所謂バルジの戦いに於けるドイツ軍と同じだと言わざるを得ない。

 何故ならば攻勢に出たウクライナ軍は補給と航空優勢に重大な問題を抱えている。攻撃発起点であるスジャに対してロシア航空宇宙軍は連日に渡って空爆を仕掛け、西側と東側の装備が混在して補給品目が複雑なウクライナ軍の補給線を圧迫し続けており、現在前線でのウクライナ軍戦車等の重装備の活動が減少しているとのこと。燃料切れで放棄されたと思しき車両の投稿が幾つも上がっている。

 燃料不足による車両の破棄はバルジの戦いでも見られた。

 そもそもなけなしの兵力や重装備をクルスクに回した影響でドネツク方面でのウクライナ軍はロシア軍の圧力に耐えきれなくなって、随所で防衛線に綻びが生じロシア軍の進撃スピードが上がっているとのこと。確かにクルスク侵攻の暫く前より防衛線の抵抗が弱くなっているとの情報が出ていましたが。

 クルスク方面で攻勢に出た部隊が溶かされたら、重装備の損失も相俟って、しかもその重装備を扱うのは国外で訓練を受けた貴重な兵員。謂わば精鋭だ。それらが消えて無くなる。

 やっていることがまんま“ボヘミアの伍長”だ。

 キエフ政権応援団のメディアやネット投稿者などは未だ盛んに勝った勝ったと主張しているが、それが戦略的にどう影響するものなのか?そもそも勝った勝ったと主張していた反転攻勢、あれ気が付いたら報道や投稿が尻すぼみになっていつの間にやらダンマリになりませんでしたか?あの頃絶対成功すると盛んに主張していたのにも関わらず。そしてまた恥知らずにも勝った勝ったを連呼しつつ、ドネツクの現状は無視を決め込む。まるで大東亜戦争の大本営発表の様だ。


 歴史は繰り返すとはよく言ったものだが、私個人の懸念として、この侵攻の裏側にNATOと米国の西側戦争屋達による思惑があるのではないかと疑っている。


 どうせもうキエフ政権に勝ち目は無いのだから、次の対ロシア戦争に向けてロシアがどのタイミングで核兵器の使用に踏み切るかという、そのデッドラインを探ろうとしているのではないか?

 民主主義の守り手だのなんだのの美辞麗句並べてよいしょしながら都合の悪い事は情報統制で押さえ付け擁護し、無制限の支援にかこつけて懐を肥やし、最後は完全にボロ雑巾にし尽くす。結局民主主義なんて都合の良いプロパガンダの文言に過ぎない。


 そもそもヨーロッパではEUが音頭を取って「言論の自由は民主主義の脅威」と嘯き検閲の強化に乗り出した。
 先日フランスでテレグラムのCEOが空港に到着した瞬間に逮捕された。この前日にイスラエルの機密情報がハッカーによってテレグラムに投稿され、ネタニヤフ政権からテレグラムに検閲しろとの圧力があったが言論の自由の保証を理由に拒否したことが原因であるみたいだが、まず建前だろう。

 EUは以前よりX、旧Twitterのイーロン・マスク氏に対しても検閲の圧力を掛け、トランプ大統領とマスク氏の会談に際してEUでは見られないようにしろと圧力を掛けていた。理由は有害なコンテンツであると主張していた。

 巫山戯た話だ。

 言論の自由は民主主義の根幹ではないのか?言論の自由によって様々な意見を触れる事で取捨選択し、自ら考えて自らの“答え”を出す。そしてその“答え”に近い主張や政策を掲げている政治を選ぶのが民主主義ではないのか?

 権力者が情報を取捨選択出来る検閲は、自らの都合の良い情報だけを発信し、都合の悪い情報は揉み消す事が可能となる。今の誤情報対策だって検閲と何ら変わらない。ファクトチェックだってそれを行なっている者の支持する政党や政策に対して公平中立なチェックをしているだろうか?AIだってプログラマーの匙加減一つで如何様にでも出来る。メディアも同じだ。広告主といったスポンサーの御意向に影響されるし、そもそもメディアが偏っている昨今だ。

 西側における民主主義は確実に形骸化し、明らかに全体主義へと向かっている。

 アメリカでは予備選挙で誰も票を入れていない、そもそも立候補すらしていなかったインド系なのか黒人系なのかが都合良く変わる現職副大統領が民主党のトップエリート層だけによる談合で民主党の大統領候補となった。なんのための予備選挙だ?その予備選挙だって有力候補を追い出したりする滅茶苦茶なものだった。

 言ってることやってることが本当に滅茶苦茶で支離滅裂だ。

 その副大統領だってマトモに自らの考えを述べる事は一切避けている。書面の読み上げに終始している。
 そして打ち出した経済政策が、嘗てのソ連や共産国で悉く失敗した価格統制などという共産主義政策だ。

 元々ド極左であることは知っていたが、こんなのが民主党の大統領候補だという事実を、今現在日本人はどれだけ認識しているのだろうか?

 そしてアメリカ人は?最早政党の好き嫌い、トランプ大統領の好き嫌いで済む話では無くなっている。好き嫌いではなく掲げている政策や今までの実績を充分に吟味して()()()()選択をしてもらいたいと強く願う。

 11月の大統領選の結果如何によっては、間違いなく民主主義の分水嶺となり、世界がより大きな争乱へと向かうかどうかが変わって来るだろう。

 そういう意味ではトランプ大統領とケネディJrの共闘は大きな意味を持つと考える。


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 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。
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