艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 水上艦隊


 陸軍とくれば次は海軍。


第76話 Surface fleet

 

 

 日本海軍で戦闘を司る実働部隊は2つ存在する。

 

 

 1つは現在日本の国家安全保障に於いて最大の脅威に位置付けられている人外の軍勢、深海棲艦との戦闘を司る艦娘部隊。

 

 

 もう1つは現日本海軍の前身組織である海上自衛隊時代の実働部隊、自衛艦隊をベースに一部再編された、従来の水上艦艇の運用を司る水上艦隊。

 

 

 従来脅威とされ、所謂仮想敵国だった隣国が次々と倒れ、或いは情勢の変化によって脅威度合いを潜在的には別としても大幅に引き下げられた結果、安全保障に対する最上位の脅威対象が深海棲艦のみに絞られた事により、その脅威に対応する国防政策並びに実行力を発揮する主幹戦力が艦娘部隊となって久しい。

 

 

 しかし艦娘部隊のみによる長距離作戦行動、つまり長期の遠洋作戦を行なう能力が水上艦艇と比較すると大きく劣るため、水上艦隊には艦娘部隊の外洋での作戦行動を支援する母艦としての役割が求められた。

 

 給食などの給与、睡眠などの休養、補給に整備は勿論のこと、艦載機運用能力を有する艦娘は例外として、一般的な艦娘を上回る水上艦艇のレーダー索敵範囲の広さを駆使した作戦行動中の周囲への早期警戒の肩代わり。強力な通信機器による本土との通信ネットワークやデータ・リンクシステム。それらを駆使した最新の気象予報の取得。作戦行動中の傷病への応急処置や後送の迅速化など艦娘の消耗を抑え、戦闘に際して万全の状態で挑める態勢が構築された。

 

 最近では深海棲艦の対応能力向上により大規模飽和攻撃でもなければ効果が見られなくなっているが、ミサイルなどの長距離精密誘導兵器による火力支援や牽制攻撃も重要な任務である。撃ち落とされて命中しなくても、迎撃のために対応リソースの分散を強要する事で、戦闘正面に展開する艦娘達に掛かる圧力を少なからず低減させることが期待出来るからだ。

 

 これが新ロシア連邦(NRF)やその同盟国の軍隊ならば、彼らの持つ極超音速兵器を以て、その音速を超える速度性能を遺憾無く発揮して迎撃網を瞬時に突破するという、半ば力技な事も出来るが、残念ながら日本は極超音速兵器を保有していないし、新ロシア連邦(NRF)も日本に対して極超音速兵器を提供するつもりがなかった。

 

 まぁ正式な同盟関係ではないというのもあるが、誘導システムで使用される軍事衛星は最高軍事機密の塊であり、その運用に関しては神経質にならざるを得ない。それもあって近々供与が決定している20380型警備艦(コルベット)Стерегущий(ステレグシュチイ)』級、11661型警備艦(コルベット)Гепард(ゲパルト)』級には長距離巡航ミサイルの運用システムがオミットされている。

 

 そもそも現状でも既存艦艇の発射プラットホームなどの運用システムが基本的に西側(アメリカ)系がベースであるので、東側(ロシア)系とは根本が違うから、新ロシア連邦(NRF)製艦載兵器を提供されてもどのみち使いようが無いのだが。

 

 

 しかし、現在の日本は誘導弾の製造が芳しく無く、その影響で殆どの水上艦艇は定数割れどころか弾庫が空っぽになっている事が珍しくなくなっている。

 

 一時は既存艦をなんとか頑張って改装し、ロシア製対艦ミサイル*1を発射可能にする案もあったが、費用対効果から新造、つまり先述のミサイルフリゲートを導入した方が安く、また現実的な問題として、通常の整備のためのドック入りすら工員やら資材やらの不足が原因で四苦八苦している有様なのに、改装の為に長期間ドック入りする事で出来てしまう戦力の空白を穴埋め出来るだけの余裕が海軍には無かった事により、この案は立ち消えとなった。将来的に今現在就役している既存の国産艦艇が限界を迎えて退役するに伴い、海軍も陸軍同様にその主力となる艦艇がロシア製に置き換わるのは確実である。

 

 

 余談だが、新ロシア連邦(NRF)極東連邦管区Хабаровский край(ハバロフスク地方)の港湾及び工業都市、Комсомо́льск-на-Аму́ре(コムソモリスク・ナ・アムーレ)にあるАмурский судостроительный завод(アムール造船工場)が日本向け艦艇の建造を請け負っているが、近年この造船所で新ロシア連邦(NRF)海軍の主力艦である22350型ミサイルフリゲート艦『Адмирал(アドミラル) Горшко́в(ゴルシコフ)』級の建造がСанкт-Петербург(サンクトペテルブルク)Северная верфь(セヴェルナヤ造船所)以外で初めて起工されたとして一時期話題となった。

 

 これはセヴェルナヤ造船所で建造されていた太平洋艦隊へと配備する予定の『ゴルシコフ』級が、深海棲艦の跳梁跋扈によって完成後に太平洋へと回航させることにかなりのリスクを伴うと判断され、全艦がバルト海艦隊へと配備変更を受けての措置だった。

 

 当初『ゴルシコフ』級と比較して性能は控え目だが建造が容易とされ、建造されたほぼ全艦が黒海艦隊に配備されている11356M型フリゲート『Адмирал(アドミラル) Григорович(グリゴロヴィチ)』級が代替艦として建造を開始したが、途中から太平洋艦隊のより一層の戦力増強を主張していた現国防相の働きもあって『ゴルシコフ』級の建造も開始された。

 

 それと並行して、『ステレグシュチイ』級を設計ベースとしながらも、従来とは違った新機軸の実験艦『метель(メチェーリ)』なる新造艦が国防相の指示のもとに急ピッチで建造中であり、まもなく完成するとのこと。

 

 飽く迄も噂だが、その建造には新ロシア連邦(NRF)が持つ艦娘関連技術が惜しみなく使われており、従来では考えられないレベルでの省人化に成功しているらしい。

 

 その分より多くの艦娘を乗艦させ、従来よりも充実した支援能力を持つことが予想されている。

 

 当初は新規建造予定の『ゴルシコフ』級を設計変更して建造する案もあったが、『ゴルシコフ』級の配備計画に大きな遅延が発生する事から見送られた。

 

 ただ、今回の結果が良好であれば今後建造される艦艇の設計にもフィードバックされ、『ゴルシコフ』級の後継艦計画として正式に認可が下りる可能性もあり、その際には艦級名を『Адмирал(アドミラル) Открытое(アトクルィーティイ) море(モーリー) Поле(ポーリェ)』級にしたいとの国防相の強い要望が出ているとかなんとか。

 

 閑話休題。

 

 

 

 因みにだが、陸軍の各種装備品に空軍の航空機、海軍が導入する艦艇といった新ロシア連邦(NRF)製兵器の購入代金だが、その支払いには水資源の輸出と千葉県にある南関東ガス田一帯の採掘権を新ロシア連邦(NRF)へと売却していた。

 

 水資源は仮想水ではなくミネラルウォーターといった飲料水であり、南関東ガス田は水溶性の天然ガスが産出されるが、その地層にはガスと共にヨウ素を豊富に含んだ地下水、天然ガス鹹水(かんすい)がある。

 

 飲用に使える水資源は貴重な戦略資源であるのは言わずもがな。ヨウ素は主に消毒液で使用されているが、レントゲン造影剤や飼料添加物に工業分野、放射線障害予防薬などと様々な使用用途がある。

 

 ヨウ素は海中の海藻によって生物濃縮される元素で、かつては海藻を原料に工業的に生産されたが、1959年以降は工業的には天然ガス、チリ硝石、石油の副産物として生産されている。

 

 その中でも南関東ガス田から産出される鹹水は海水に似た成分だが、海水の2,000倍ものヨウ素を含んでいる。これだけ高濃度の濃縮ヨウ素が存在する場所は世界的にも珍しく、一時期日本はチリに次いで世界第2位のヨウ素産出国だった。そして南関東ガス田は日本のヨウ素産出量の実に80%を占めていた。

 

 しかし打ち続く混乱と世界情勢の変化、国内の急激な人口減少と産業の衰退で輸出が滞り、トドメに首都東京壊滅に端を発する関東一帯の未曾有の大混乱に巻き込まれて関連企業が被害を受けて採掘精製が出来なくなっていた。

 

 そこに目を付けた新ロシア連邦(NRF)政府が日本政府に採掘権の購入を持ち掛けた。

 

 

 当初こそ渋ったものの、そもそも日本には新ロシア連邦(NRF)から物を買うための決済取り引きに必要な外貨準備高が不足していた。今までの際限無い国外バラ撒き散財政策のツケで国庫がスッカラカンの素寒貧に…、ではなく、別の問題が原因だった。

 

 保有していたアメリカ・ドルは嘗ての対露制裁によるドル凍結が祟って新ロシア連邦(NRF)との決済取り引きでは使えなくなった。日本円は経済事情その他から貨幣価値が大暴落して使い勝手が悪い。ユーロも似たりよったり。必然的に新ロシア連邦(NRF)との決済取り引きには新ロシア連邦(NRF)の通貨であるルーブルでのやり取りとなったのだが、そのルーブルの準備高が今までの対米従属の外交政策が祟った対露蔑視外交のツケから絶望的なまでに不足していた。またルーブル以外だと、インドのルピーやトルコのリラなど新ロシア連邦(NRF)との交易が盛んで、日本ともそれなりに繋がりのある国の通貨という手もあったが、これらの国々とは今の戦争の影響で完全に関係が断たれてしまっていた。

 

 

 つまりカネはあってもその殆どが不良債権化した紙屑同然の使い物にならない代物で、実質国庫の外貨準備高が無いに等しいド貧乏になっていた。

 

 だからこそ少しでも外貨を稼ぐため、交渉の末に関連する課税の支払い、利益の還元が確約されたことで採掘権が売却された。

 

 

 新ロシア連邦(NRF)としても飲用可能な安全な水資源の確保と、先の大戦時に西側各国から受けた経済制裁を友好国などの第三国経由で躱した時と違い、世界規模での物流の寸断によって国内や現在まで存続して尚且つ交易路が継っている友好国だけでは賄えない資源の確保には常に頭を痛めており、資源の安定供給確保は必要であるとして、大戦時にも経験した様に、多少割高となってもやむを得ないとしてある程度目を瞑っていたし、兵器売却でリターンも見込めたからそこまで大きな損ではないと割り切っていた。

 

 

 日本の軍備は水とヨウ素によって支えられていると言っても過言では無い。

 

 

 だがそれももう限界だった。

 

 

 沖縄戦線での出費が際限なく膨れ上がって重く伸し掛かり、破綻は誰の目にも明らかなのだが、戦争とはギャンブル依存症に似た症状が時として見られる。特に劣勢であればあるほど、次こそは。次こそは。と視野狭窄になりながらどんどんとのめり込み、ドツボに嵌ってカネと人命をあたら浪費する。

 

 浪費に巻き込まれる者にとっては溜まったものではないが、かと言ってこの戦争を終わらせる落とし所も分からない。見当もつかなかった。

 

 

 終わらない戦争に辟易としながらも、終わらない戦争を続けるしか無かった。

 

 

 ハッキリ言って、これはあまりよろしくない状態だ。不平不満が溜まりに溜まっている状態で、それを解決出来るかもしれない方策と道筋を示されたら?

 

 それにひょいひょいと乗っ掛かってしまう者だって出てしまうだろう。

 

 この戦争にいい加減嫌気が差し、どんな形であれさっさと終わって欲しいと内心で思っている者は決して少なくはない。

 

 

 流石に表立って声高に主張したりする者はそう居ないだろうが、それでも徐々にだがチロチロと漏れ出す様になって来ている。

 

 

 その一例がイギリスでのQ.Eのうっかりクーデターからの不本意な戴冠(静かなるクーデター)から、現在表面化しつつあるConte(コンテ) di(ディ) Cavour(カブール)を首班とする旧イタリア艦娘達を中心とした地中海の動乱。海を渡ってアメリカではIowa(アイオワ)が政界進出を果たし、保守党大統領候補として次期大統領選に出馬していた。

 

 

 これらの中心は艦娘だが、その活動には彼女達に賛同する少なくない人間達が陰日向に支えていた。

 

 彼らとしても何かしらの切っ掛けさえあれば、今まで抑え込まれていた鬱憤からいつ不満が形となって噴出しても可怪しくない状態だったのが、明確な旗頭を得て彼女達と共に爆発した。

 

 

 そしてその爆発するタイミングを待っている者が、日本にも居た。

 

 

 海軍少将田沼透(たぬま とおる)

 

 

 呉軍港を母港とする第4水上艦隊の司令官にして同艦隊の旗艦DDH-184『かが』の艦長も兼任している。

 

 何かと真志妻大将と土方司令とは縁があり、当時横須賀勤務の提督だった真志妻当時少将がマリアナ諸島方面での作戦に参加した際に母艦としていたのが、『もがみ』型FFMの5番艦であるFFM-5『やはぎ』だったのだが、その艦長を当時中佐の田沼が務めていたのを皮切りに、その後のAL/MI作戦で起きた首都壊滅に際して深海棲艦に対する送り狼として追撃戦の母艦としたのが、この時偶々徳島沖を航行していた『やはぎ』だった。その際に土方当時中佐が臨時で艦長となるなどの紆余曲折があった。

 

 土方の目から見て、艦長としての能力にこれと言って特筆すべきものはなく、どちらかと言えば平凡であると評価していた。

 

 ただ、元々が砲術畑出身で砲術のエキスパートだった事から、真志妻当時大佐を交えた協議の末に艦長を土方に任せて砲術長と交代したという経緯である。

 

 その際に敵航空戦力の中核である空母棲姫に対して主砲である62口径5インチ砲による長距離射撃を敢行。撃沈にこそ至らなかったもののその戦闘能力を減殺させる事に成功するという、砲術のエキスパートとしての技量を遺憾無く発揮した大武勲を挙げた。

 

 この砲撃に空母棲姫は激昂したものの、土方の巧みな操艦指示で『やはぎ』は大きな被害を受ける事なく離脱に成功。

 

 しかしその操艦が(ふね)に無理な負荷を掛け過ぎていた為か、帰投後にエンジンが壊れてしまい、また大きな被害こそ無かったものの少なくない被弾によってあちこち穴だらけであり、完全修理に時間が掛かり過ぎるとして『やはぎ』の退役、廃艦が決定。

 

 その後暫くは別命待機で陸上勤務となっていたが、真志妻大将の暴走…、もとい大改革の折に、丁度空席となっていた『かが』の艦長を拝命した。*2

 

 ただ本人は「小口径でもいいから、砲が付いている(ふね)の方がよかった」と言って、『かが』艦長就任を拝命された事に酷く落胆していたと言われている。

 

 

 また「僕が艦娘でないのがとても残念だ。僕が艦娘だったなら誰よりも長距離射撃が巧みな艦娘になっていた」と周囲に漏らしていることでも有名で、さらには「無論、戦艦なら最高だ。よく飛ぶ砲!強力な弾!正確な狙い!あとはそこに僕の砲で撃ち砕くに相応しい強大な相手がいれば!完璧だ!!」などと周りをドン引きさせる勢いで力強く語る、大艦巨砲主義染みた根っこからの“大砲屋”である事が伺えた。

 

 その事もあってか、戦艦に強い憧れを持ち、いつか自分も戦艦になることを夢見る事で有名な夕雲型駆逐艦の19番艦艦娘清霜と非常に仲が良く、戦艦について熱く語り合う仲で、今ではほぼ専属の艦娘と言っても差し支えないくらい共にいる姿が確認されていた。

 

 

 因みに、先日UX-02(ベオ)による陽動作戦の際に交戦し、撃沈してはならないという交戦規定と連戦続きによるハンデがあったとは言え、圧倒的性能差があるUX-02(ベオ)を追い詰めて相討ちにまで持ち込んだ駆逐艦艦娘島風が所属する高知の浦戸警備府第7対潜隊群隷下の第78対潜隊司令官田沼芳美(たぬま よしみ)大佐とは歳の離れた兄妹である。

 

 些か頭のネジがぶっ飛んだ様な突飛な発言をする兄を反面教師にしたのか、お硬い真面目な妹で艦娘との付き合いも悪友の延長線上の様な感じの兄と、艦娘とは仕事に於いては基本的に上司と部下の関係な妹と正反対であるが、兄妹仲は悪くない。らしい。

 

 

 兄妹の思考面の相違は兎も角として、この戦争に関しては両者共にここらが潮時だという共通の考えを持っていた。

 

 

 その言動から継戦よりの考え方だと思われても仕方無い所があるが、引き時を弁えるだけの冷静な思考は一応持ち合わせていた。

 

 何よりそんな考え無しと仕事上とは言え、今まで我慢して付き合えるだけの忍耐を艦娘至上主義の真志妻大将は持ち合わせていなかったし、『かが』の艦長に就任出来るように裏から手を回す事もしなかった。

 

 場合によっては自身か土方が乗り込む可能性が高い(ふね)なだけに、出来る限り信頼の置ける者を自身のお膝下とも言える呉軍港を母港とする第4水上艦隊に留め置きたかった思惑もある。

 

 

 真志妻大将の思惑は兎も角として、『かが』艦長就任後に艦隊司令も兼任する事となった。

 

 これは何もこの当時からして珍しいことでは無く、兼任人事をしなければならないほどに人手不足が深刻だった事からの苦肉の策だった。

 

 無論、ただでさえ激務な艦長職にこれまた激務な艦隊司令職の兼任人事はかなり無茶な解決策であり、現場の努力に期待する無責任な方策である。

 

 だが、それは同時に一艦長では扱うことがなかったよりハイレベルな情勢に触れる事にも繋がった。

 

 そこからこの戦争の限界を感じ取った。それでも一軍人に過ぎない自身の立場からどうすることも出来ない現実に鬱屈とし、悶々としていた。

 

 

 そんな中、動員可能な水上艦艇を掻き集めての出撃が決定したと知らされ、その目的地が()()()マリアナだと聞かされた。

 

 

 最初はたちの悪い冗談かと思ったほどだ。

 

 

 海軍は本土近海の防衛が精一杯で、抽出可能な艦隊戦力の余裕が無い。本土防衛を考えなくていいならば何とかなるかもしれないが、そういうわけにはいかない。となると出せるのは少数だ。

 

 

 そんな艦隊ではどんなに運が良くとも基地航空隊や外洋防衛総隊外周艦隊の支援が期待出来るライン、大体領海を出た辺りから散発的な攻撃が開始され、徐々に被害を蓄積して途中で引き返す決断をせざるを得なくなるのが関の山で、強引に進撃を続ければ高価値目標となる大型艦が優先的に狙われる。

 

 何故なら大型艦は艦娘の主力母艦だ。特に護衛艦などの戦闘艦よりも空母に似た全通甲板型の大型艦は母艦機能を充実させている。戦闘艦よりも広大な艦載機格納庫を艦娘運用の為の簡易工廠や消耗物資の保管スペースとして転用しやすく、居住空間の余裕もあった。

 

 アメリカの大型空母(スーパーキャリアー)は別として、強襲揚陸艦や日本のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)、各国の軽空母やイギリスの『Queen(クイーン) Elizabeth(エリザベス)』級空母は艦娘母艦の中核として実際に運用されている。

 

 

 その事は深海棲艦も認識しているらしく、近年では特に集中的に狙われる傾向にあった。母艦さえ行動不能にしてしまえば艦娘の作戦行動可能半径や展開能力が著しく低下し、進撃が完全に頓挫するからだ。

 

 故に周囲を固める充分な護衛の艦娘と外周警戒も兼ねた護衛艦がなければ袋叩きにあって忽ち沈められるだろうが、艦娘は兎も角護衛艦が足りないのだ。

 

 生きの良い(ふね)は沖縄戦線で消耗し、損傷艦の修理待ちが港で数珠つなぎとなっている。現状でもかなりカツカツな遣り繰りで何とかしているのだ。

 

 

 それでも掻き集めて編成した艦隊であるが、矢張り明らかに戦力不足が否めなかった。

 

 

 裏側でどんな事があったのか、新ロシア連邦(NRF)が太平洋艦隊虎の子の新鋭艦で編成された艦隊を送り出した事で、数字の上ではそれなりの戦力となったものの、一度も合同演習などの艦隊行動の擦り合せをやったことの無い艦隊との合同作戦となると、艦隊運動に支障をきたすリスクを孕んでおり、実際の戦闘能力を発揮出来ない寄せ集めで見掛け倒しの張り子の虎な艦隊になりかねない。

 

 

 鬱屈とストレスは最高潮に達していた。

 

 

 そんな中で目の前で僚艦が事故を起こした。

 

 

 それが何を意味するのか、即座に理解した。

 

 

 作戦に反発したれっきとしたサボタージュだ。

 

 

 現場の不満は限界を迎えていた。無謀な出撃に、とうとう堪忍袋の緒が切れて行動を起こす者が出たのだ。

 

 

 その気持ちは痛い程理解出来た。こっちだって自棄(やけ)を起こしたくなっていたのだ。が、そこである違和感に気付いた。

 

 

 こんな出鱈目な作戦に、現場でさえ反発しているのに、“あの”真志妻大将が全く噛み付くことなく唯々諾々と従うなんてことがあり得るだろうか?

 

 あからさまなまでの艦娘贔屓な事で有名なあの真志妻大将が?

 

 

 

 有り得ない。

 

 

 

 艦娘のためならばどんな労苦も惜しまないとし、実際に行動と実績を以て艦娘達からの絶大な信頼を勝ち取って来たあの人が、今回に限ってなんらアクションを起こしていない、その兆候すら見せていないのは明らかに不自然、いや最早不気味とすら言える。

 

 

 

 そう考えていると、当の真志妻大将本人が不敵に笑いながら告げた。

 

 その顔はあの日、哨戒任務のために紀伊水道を出て徳島沖を通過していたら、突然『やはぎ』に手勢と土方さんを引き連れて半ば押し掛ける様にして乗り込み、開口一番に「私達と一緒に、連中に一泡吹かせてやろうじゃない」と言って来たあの日を彷彿とさせるものだった。

 

 

「このクソッタレな戦争を終わらせる為に、マリアナまで乗り込んで話をつける算段がついたの。手伝いなさい。()()()()()()()()

 

 

 耳を疑ったが、思考として疑うよりも、率直に面白そうだと思った。どうせ無茶な作戦で死ぬなら、あの日、この人の無茶に付き合って深海棲艦の機動部隊を単艦で追い掛け挑んだ時の様に、またド派手な事をやってみてもいいじゃないか。そう思った。

 

 

 

 

*1
3M24『Уран(ウラン)

*2
前任者は過労が原因の心筋梗塞を患って入院し、復帰は困難と判断され除隊となった。その2年後に容態が悪化して帰らぬ人となった。




 空軍の予定は今の所ありません。



補足解説

11661型警備艦(コルベット)Гепард(ゲパルト)』級

 1124型小型対潜艦Альбатрос(アリバトロース)(NATOコード、グリシャ型コルベット)の後継艦として計画、設計された。その後インド海軍向けに2隻建造されたが性能不足を指摘されてインド海軍が引き取りを拒否。それを受けてロシア海軍が引き取りカスピ小艦隊に配備され、1番艦『Татарстан(タタールスタン)』が艦隊旗艦に就いている。

 ベトナム人民海軍でも4隻が運用中で、2隻が発注済みである。(2024年10月現在)

 2015年10月、2番艦『Дагестан(ダゲスタン)』の率いる艦隊がカスピ海よりシリア内戦のアサド政権を支援するために3M14TE『Калибр(カリブル)』巡航ミサイルが発射され、イラン領空を通過後にシリア領内の反政府勢力ISISの拠点へと着弾。その事実から『カリブル』がアメリカの使用する『トマホーク』巡航ミサイルに匹敵、或いは凌駕する射程と飛行性能を持つことが確認されたが、同時にアメリカの発射プラットフォームとなる排水量10,000㌧近い運用艦艇よりも遥かに小さい満排水量2,000トン前後の小型艦(艦隊を構成していた『Буян(ブヤン)M』型に至っては排水量940㌧)でも『トマホーク』クラスの攻撃兵器が運用可能であり、それは運用に必要なコストが遥かに安く済むという事も証明された。



3M24『Уран(ウラン)

 2003年(輸出向けは1996年)に配備が開始されたロシア製対艦ミサイル。空対艦、艦対艦、地対艦とバリエーションがあり、それぞれKh-35、3M24『Уран(ウラン)』、3K60『Бал(バル)』と名称が違っている。

 その外見がアメリカ製対艦ミサイルA/R/UGM-84『ハープーン』と似ており、非公式に『ハープーンスキィ』とも呼ばれている。

 同クラスの対艦ミサイルと比較して安価(ハープーン約140万ドル。ウラン約50万ドル)で、数を揃えやすい利点がある。


仮想水(バーチャルウォーター)

 食糧輸入国が、もしもその食料を自国生産したと仮定した際に消費される水を推定した概念。

 1990年代にロンドン大学東洋アフリカ学科名誉教授のアンソニー・アラン氏が提唱した概念で、食料の輸入は形を変えて水を輸入していることと考えることが出来ると指摘している。

 食糧自給率が低い我が国は、食糧輸入という形で膨大な水も輸入していることになります。またこれに工業製品、材木も含めるとさらに膨れ上がります。



ヨウ素

 身近な物として怪我をした際に傷口を消毒する際に使用していた消毒液ヨードチンキが有名。

 ヨウ素の用途としては、本編でも述べた消毒液の様に殺菌効果が高いことからうがい薬や消毒薬、殺菌剤、防カビ剤などに用いられるほか、光に反応する特性を生かし、レントゲン造影剤や液晶ディスプレー用の偏光板、工業用触媒など多方面で利用されている。 次世代半導体の開発など、今後も医療分野から先端産業まで幅広い活用が期待でき、世界での需要は拡大傾向にある。


 放射線障害予防薬としての利用とは、放射性でない安定ヨウ素を甲状腺に取り込んでおくことにより、放射性ヨウ素が甲状腺に蓄積されにくくし、被爆によって発生する小児甲状腺がんを減らす効果が期待できる。18歳未満の者に対して特に効果があり、同時に優先順位が高い。40歳以上の者は有為な効果が期待できないため、服用は不要である(世界保健機関基準による)。
 また、ヨウ素以外の放射性物質に対しては効果が無く、ヨウ素剤を飲んだからと言って、放射線防護や除染を怠ってはいけない。
Wikipediaより抜粋

 より詳しいことはヨウ素剤について検索されると出て来ます。



Адмирал(アドミラル) Открытое(アトクルィーティイ) море(モーリー) Поле(ポーリェ)

 Адмирал(アドミラル) 訳)提督

 Открытое(アトクルィーティイ) море(モーリー) 訳)外洋、()

 Поле(ポーリェ) 訳)()



 国防相閣下ご乱心。


 …お巫山戯ネタはさて置き。

 艦艇の運用を艦娘が統率する妖精さん達に任せてみる事を骨子とした艦艇の開発、建造計画。

 自軍の艦娘部隊の不足を補うべく、水上船艇戦力の拡張に乗り出した新ロシア連邦(NRF)海軍だが、(ふね)は兎も角として、その拡張に乗り込む水兵や士官の採用と育成が追い付かないとの問題を解決するために国防相主導でスタートした。

 

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 日本とアメリカで大きな選挙が控えている。世界的保守回帰の動きが加速しているが、それは4年前のあの日から、世界が目に見えて滅茶苦茶になった事への反動だと思う。間近に迫ったアメリカの選挙は今後世界がどうなるかを占う重要性を孕んでいる事は間違い無い。

 私の率直な意見として、どこぞの嘘つき運び屋所管外ブロック人◯し野郎と言ってることがワケワカラン構文ポエマー野郎が悪魔合体したとしか言い表せないインド系なのかアフリカ系なのかがその時々で変わるご都合主義で仕事を禄にしないからマトモな実績が無い税金泥棒女副大統領が大統領になったら、ガチで日本は振り回され今よりも酷い事になると確信している。

 メインメディアが矢鱈とヨイショする奴原は、要注意しておかなければならない。まず碌な奴ではないし、広めている情報はかなり限定された切り抜きプロパガンダしか出さない。

 副大統領は身内からすら『ワードサラダ』、所謂アメリカ版構文ポエマーと陰口を叩かれているし、演説などの発言内容は中身が無い。経済政策は?外交政策は?その他あらゆる問題に対して具体的な回答を出していない。悉く抽象的。そもそも現職の副大統領なのにあんたこの4年間何してきたの?とトランプ大統領からツッコまれるくらいに何もしてこなかったから、ホント何を成したいのかが分からない。あんた総理になりたいと宣ってたとかいうどこぞの増税クソメガネか?とどっこいどっこい。

 そういうのが超大国(?)アメリカの大統領になってホントに大丈夫なのか?その場しのぎのワードサラダに一喜一憂して振り回される、なんとも情けない日本の姿が目に浮かぶ。

 4年前、現職大統領のクソジジイがしゃしゃり出できた時、今の様に世界が荒れに荒れると想像出来た人はどれ程いただろうか?大概マスメディアの言っていた事を鵜呑みにしていたのではないだろうか?少なくとも私はマスメディアの言っていた事を鼻で嗤ったが、それでも当時の予測が甘過ぎたと今思っている。国辱とも言えるアフガニスタン大敗走で、超大国アメリカの凋落を世界に晒してしまったことで箍が外れてしまった。

 トランプ大統領が再び大統領となれば、この外れてしまった箍を元に戻せなくとも、少しでもマシな形に修理出来る可能性があると見ている。

 それはトランプ大統領が在任していた4年前の実績、トランプ減税や対中関税の強化などによる経済の立て直し、国境の壁建設による不法移民に対する目に見えた抑止力、アブラハム合意といった中東和平などなどから、少なくとも現職よりも実行力に説得力がある。

 しかし、大きな問題もある。


「アメリカは核保有国に対して正面から事を構えるのを避ける」


 以前からこの事は指摘され続けていたが、今回のウクライナの一件でこれがほぼ証明された。

 ロシアが核のカードをチラつかせた途端、それまで強気一辺倒だったアメリカはその勢いが衰えた。

 これには民主党が抱える大きな“弱味”の存在が無視出来ない。

 民主党の岩盤支持層は人口の多い大都市圏に集中している。特にアメリカ最大の人口を抱えるカリフォルニア州は民主党の牙城にして大票田。上院の各州2議席配分と違い、下院はその人口に応じた議席が配分される。そのためカリフォルニアの大都市圏が核の脅威に晒されるとしたら?カリフォルニアには北の核ミサイルも届く。そしてカリフォルニアの大都市圏を外れた、内陸部の郊外や田舎は共和党支持者が多い。もし何かの機会でカリフォルニア全体の政党支持者の分布図を見る事が出来たなら、都市部は民主党支持を表わすブルーだがそれ以外は共和党の支持を示すレッドで、カリフォルニアの多くがレッドの割合が多くなる。それは他のブルーステイトでも同じ現象が見られる。大都市ほど民主党支持者が多い。ではその大都市が消えたら?人口変動で議席配分も変動するが、民主党にとってはこの上ない悪夢となる。

 だが元々カリフォルニアは完全なレッドステイトだった。しかしレーガン大統領最大の失策とされる不法移民への市民権付与によって、カリフォルニアに連邦市民権を得た不法移民が集中したことでブルーカラーに塗り替えられてしまった。この時に市民権付与に動いたのが民主党で、当時不法移民に悩まされていたレーガン政権に国境警備強化法案成立への協力を取り引きに、不法移民への連邦市民権付与を持ち掛け、レーガン大統領を騙した。

 初めから法案成立に協力するつもりなど毛頭無かった。

 時を経て、今もあの手この手で大量の不法移民を受け入れているのは、カリフォルニアの成功体験で味をしめた民主党が第2第3のカリフォルニアを狙っているのだが、それが同時に核のリスクによって自らの首を絞めつつある。

 では共和党はどうか?と言うと、核攻撃による政権批判リスクを鑑みたら考えものである。それに民主党が核攻撃を受けたことに対する責任追及という名のレジームチェンジ。政権転覆を目論む格好の攻撃材料として利用するだろう。


 アメリカの軍事力は、確かに世界有数ではある。だがそれは嘗てかわぐちかいじ氏が著書の『沈黙の艦隊』にて主人公の海江田四郎艦長が語った様に、たった1発の核の疑惑から睨み合いが生じた様に、核の脅威に際しては虚仮威しに過ぎない実態もある。

 核の傘などというものは、言ってしまえば「見ず知らずの誰かの為に、あなたとあなたの親きょうだい友人、恋人などの大切な人々と共に死に絶える様な決断が出来ますか?」のリスクが常に付きまとう。アメリカ人にそれを強要しますか?私達の為に一緒に核の炎に焼かれて死にましょうと?

 嘗てシャルル・ド・ゴール大統領は言った。「パリの為にアメリカはワシントンやニューヨークを滅ぼす決断が出来るとは思えない」と。

 そしていずれ、もしかしたらそう遠くない内にアメリカは嘗てのローマ帝国やソヴィエト連邦の様に崩壊する時が来るだろうが、崩壊後の混乱を如何に最小限に留めれるか?少なくとも現職路線だと崩壊スピードに拍車が掛かって世界の混乱はより酷いものになるだろう。


 日本は…。正直カルタゴの二の舞いにならないかと恐れている。


 それにしても民主党も形振り構ってられなくなったらしいね。ヒトラーにマクドナルドへの政治的制裁。節操がねぇなぁ。もしかするとウクライナ軍がクルスクで塩素ガスを詰めたドイツ製155ミリ砲弾を使用したとの情報が出た事への揉み消しを図っている線も有り得そうですが。


 まぁガス砲弾の真偽は兎も角として、最近活発化したトランプ叩き報道に関しての明らかに可怪しいツッコミ所を纏めている、いつもお世話になっているYouTuber『カナダ人ニュース』のやまたつ様のYouTubeのURLリンクを貼り付けておきます。



 https://youtu.be/zhdQIXqmbOA?si=MhnU_tW7-yLY5GNl



 少なくとも、これだけは言える。民主党は、特にそのトップエリート層は最近の言動を鑑みるに、今までにも増してかなり幼稚化が進行している。気に入らないものに対しての罵詈雑言(プロパガンダ)と暴力(司法の武器化)。それを隠そうともしなくなった。まるで癇癪を起こす我儘一杯に育った子供そのものだ。

 見た目は大人。頭脳は子供。それが今の民主党のトップエリート層。

 そんな連中に、日本の命運を委ねたいですか?


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