艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 死中に活あり


 色々書いていたら思いの外長くなりつつありましたので分けます。というか前話で書く予定でした内容をすっかり忘れていた私の落ち度なんですけどね…。


第6話 Find a way out of a fatal situation 前編

 アンドロメダを追撃する深海棲艦の大艦隊が、補給も兼ねた小休止のために一時的にその行き足を止めていた。

 

 その艦隊の中心部で、二人の姫級が話し合っていた。

 

 

「…どう思います?」

 

 

 アンドロメダが超大型空母と称した、2対の飛行甲板に挟まれた巨大な艤装に腰掛けるロングヘアーとサイドテールが特徴的なセーラー服を着こんだ姫級深海棲艦、この艦隊を指揮する存在でもある空母棲姫がもう一人の姫級に尋ねる。

 

 尋ねた内容は無論、同胞(はらから)の一人である駆逐棲姫がもたらしたアンドロメダに関する情報についてである。

 

 

「…眉唾、と言いたいけどあの娘の観察眼は確かなモノ。欺瞞情報が含まれている可能性に注意と言って来てるけど、私の見立てとしては────」

 

 

 長いツインテールが特徴的な、どこか勝ち気そうな表情をした戦艦タイプの姫級、南方棲戦姫が腕を組み顎に手を当てながら私見を述べていく。

 彼女の外見的特徴の一つである両腕に装着する主砲などの重装備をハリネズミの如く装備した巨大な艤装は、休憩中という事もあり消していた。

 

「───完全に私の上位互換ね。練度はそれほどみたいだけど、艦載機の質によってはどう転ぶかわからないわ」

 

 そう、彼女はアンドロメダと同様に艦載機運用能力を持つ実質航空戦艦型というオールラウンダーな姫級なのだ。

 

 

「それと練度の低さを艤装の性能が補っている感じかしら?」

 

 

 南方棲戦姫の分析に、空母棲姫は溜め息を吐きながら「その性能が問題ですね…」と呟く。

 

 

 駆逐艦とはいえ、駆逐棲姫は今までに様々な戦闘に参加しており、他艦種の戦い方も何度か見ているし、艦娘とも幾度も激戦を繰り広げたかなりのベテランだ。

 それら経験から来る洞察力や分析力は他の姫級達も一目を置くほど。普段は明るく飄々とした振る舞いが目立つが、彼女とて一端(いっぱし)の姫級の一人である。

 

 故に軽んじて一笑に付す様な真似は決してしない。

 

 

 南方棲戦姫が艦載機以外で着目したのは、やはりと言うべきかアンドロメダの主砲性能。

 一言で言えば『速い』。その一言に尽きる。

 

 旋回速度、仰俯角動作速度、装填速度、速射性能のどれをとっても本当に自身と同じ口径の砲*1なのかと言いたくなった程の速さで、しかも4基ある砲がそれぞれ違う目標に対応可能であるという。それでいて精度も悪くない。

 なにこれスゴイ!私にも欲しい!というのが率直な気持ちであるが、それと同等の物を装備したとして、アンドロメダの様な芸当を再現出来るかと問われたら「No」である。

 

 アンドロメダが今回やった様な空と海を同時対応するなどという複雑な同時交戦能力は南方棲戦姫が知る限りでは、同胞(はらから)だけでなく艦娘でさえ有しているモノはいないと確信している。

 

 何故なら操作する同胞(はらから)、艦娘共に処理すべき情報量に対して頭の処理能力や集中力が追い付かないからだ。

 

 簡単に言えば()()()運転が近い。どちらかが疎かにならざるをえない。

 

 だがアンドロメダにそんな素振りは一切なかったと駆逐棲姫は報告している。

 

 となれば考えられるのは2つ────

 

 

 妖精の大量導入による完全委託か、艤装の大胆で大幅な自動(オートメーション)化。

 

 

 アンドロメダの巨大な艤装であれば、それだけ大量の妖精が乗り込んでいたとしても何ら不思議ではない。

 兵器類の操作を完全に妖精に任せていたとしたら、出来なくもない。

 

 

 だがこの推論は駆逐棲姫が完全に否定している。

 

 

 何故ならば駆逐棲姫自身がアンドロメダの妖精達との積極的な交流を持つ事で、妖精のおおよその人数の把握に努めた結果、艤装の規模からは信じられないくらいの少人数だと判明。

 

 またアンドロメダが開示した情報の中に、実艦時代に関するものもあり、そこに『可能な限りの自動化、省力化を目指した』という主旨の文言があった。

 さらにアンドロメダ自身も以前に「戦争で人口が大きく減って、自動化を推し進めざるをえなかった」ということをポロっと漏らしていた。

 

 

 艤装の自動化。

 

 

 軍艦の建造史から見ても分かる通り、理論的には可能である。だが現状は技術的課題からまだまだ先の話だと言われている。

 

 

 アンドロメダはそれを成しているという。その事実に空母棲姫は軽い戦慄を覚える。

 

 

「本当に恐ろしい限りですね」

 

 

 同胞(はらから)、艦娘の両方に共通して言える事だが、従来は航行、戦闘、索敵等の全てを1人が賄うのが普通だったがその分負担も大きい。

 

 それ故に隙が生じて痛撃を受けたり、判断ミスをするケースが後を絶たなかった。

 

 

 だがその負担を分散、或いは分担出来るならそれが大きく変わって来る。

 

 事実、駆逐棲姫からの報告にはアンドロメダは戦闘に関しては大まかな指示を出すのみで、しかも索敵は『()()()()()()』とか言う支援()()()()なる存在が担っているという。

 

 

 つまるところアンドロメダはザックリと言えば操艦、航行にのみ専念すれば良いということになるのだ。

 

 

 あれほどの巨大で複雑な艤装を本当に扱いきれるのかと内心疑問に思っていたが、成る程そういうカラクリであり、未来ではそういう形に技術が進歩するのかと納得半分の驚き半分な気持ちである。

 

 また負担が少ないということはその分体力の温存にも繋がり、継戦能力も高いと分析出来る。

 

 厄介なと思う空母棲姫に対して南方棲戦姫は口元を吊り上げて不敵な笑みを浮かべ楽しそうにしている。

 

 何せ最近は特に出番もなく腕を(ぶし)(くすぶ)っていたのだから、久しぶりの戦闘に気分が高揚している。しかも相手が一筋縄でいかなさそうなのだから尚更である。

 

「楽しみだわ」

 

 その呟きに空母棲姫は首を横に振りながら応える。

 

「私としては投降して欲しいですね…。我々の本来の目的はマリアナへの増援です。下手に戦力を消耗したくはありませんが…」

 

 無論南方棲戦姫もその事は理解している。

 

「でも出し惜しみしてたら逆に消耗するわ。ここはこちらの優位な点である物量差を最大限に活かして一気に畳み掛けるべきよ」

 

 

「…下手に策を弄するよりかはシンプルに。確かに今回はそれが一番良さそうですね」

 

 南方棲戦姫の意見に一理あると頷く。

 

 

「私達も同時に仕掛けるわ。上手く行けば取り抑えて拿捕出来るかもしれないし」

 

 拿捕という言葉に空母棲姫は心底意外だと言う表情を浮かべた。

 

「意外ですね。てっきりアンドロメダさんを沈めるつもりなのかとばかり」

 

 それに対して心外ねという顔をしながら応える。

 

「こんな面白そうな娘、同胞(はらから)にしないなんて勿体ないわ。それにあなたも気になるでしょ?マゼランパフェなんか特に!」

 

 南方棲戦姫の返し、というか最後のセリフに空母棲姫は思い切りずっこける…こと無く激しく同意した。

 

「まったく、あの娘が羨ましい限りで頭に来ます」

 

 実は駆逐棲姫からの報告の中には今まで食べたアンドロメダのスイーツ等に関する詳細な情報と感想もあったのだ。

 それに空母棲姫は初めて同胞(はらから)に対して嫉妬の念を抱いた。

 

 

「独り占めは許せません。何としてもアンドロメダさんを私達の同胞(はらから)にしましょう」

 

「ええ。勿論よ!」

 

 

 やる気を漲らせる二人の姫級に対して、周りの同胞(はらから)達は呆れたかというと、こちらも大いに賛同して大いに士気を高めていた。

 

 

 理由は簡単。先日アンドロメダから嗜好品をご馳走になった潜水艦の同胞(はらから)達から他の同胞へと口伝てに話がどんどん回っていっていたのだ。

 

 そのため今やアンドロメダは姫級だけでなく、一般型の深海棲艦の間でも持ち切りな話題の中心的存在となっていた…。

 

 

     ────────────

 

 

 

 

 一方、その話題の中心人物達はというと────

 

 

「「へっくしゅんっ!!」」

 

 

 …ベタながら二人して盛大にくしゃみをしていた。

 

 

「うう~、誰かが噂したかな?」

 

「まさかそんな…。少し冷えたのかもしれませんね」

 

 そう言いながらアンドロメダは洗剤を溶いた湯に浸したタオルで駆逐棲姫の白くて小さな背中をやさしく拭う。

 

 

 今二人は教練で体に付いた汚れや掻いた汗を落とすためにタオルで拭っている最中であった。特に駆逐棲姫は激しい機動によって全身に海水を浴びており、ベタついていたからより入念に洗っていた。

 

 

 因みにではあるが、本来アンドロメダの場合、長期作戦行動の為にタンクベッドと呼ばれる睡眠と身体の洗浄が同時に行える特殊な装置が備えられている。

 一応一人用であり、またその機能柄緊急時以外では数時間は出てこれず、その間はずっと駆逐棲姫を放置することとなるため、万が一を警戒したのと流石に忍びないという思いから使用を止めていた。

 

 そのため今みたいにお互いの体を拭ったり、寝るときはお互い毛布にくるまって寝ている。…ほぼ確実にアンドロメダが駆逐棲姫の抱き枕にされていたりもするが。

 

 尚、就寝中はアナライザーが当直の任に就くため、うっかり衛星に駆逐棲姫と添い寝している所を盗撮されスキャンダルにされる心配は無い。

 

 閑話休題。

 

 

 アンドロメダに背中を拭ってもらい、気持ちよさそうにしていた駆逐棲姫が不意にピクッと反応した。

 

「どうしました?」

 

 思わず手を止めて問い掛けるアンドロメダ。

 

「追跡してきている空母のお姉さんからお姉さんに対して通信だよ。『武装ヲ解除シ投降サレタシ。太平洋空母艦隊総代ノ名誉ニカケテ寛大ナル措置ヲ約束ス。』だってさ」

 

 まさかの降服勧告にアンドロメダは一瞬呆気にとられた。

 

「律儀な御方のようですね。わざわざ降服勧告をなさるなんて」

 

「ただの堅物だよ~。それで、返信はどうする?」

 

「そうですね…」

 

 ここでふとアンドロメダの心にイタズラ心がわき上がり、ニヤリと笑みを浮かべながら答えを述べる。

 

 

「『お心遣い感謝するも、当方に降服の意思無し。』『バカメ』とお願いします」

 

「え?」

 

 最初の文言は兎も角、最後の普段なら聞かない様なアンドロメダの暴言ともとれるセリフに駆逐棲姫は思わず聞き返した。

 

「『バ・カ・メ』です」

 

 その答えに駆逐棲姫も可笑しくなって笑い出す。

 

「ぷっ!あはは!お姉さんもなかなか言いますね~。『返信。バカメ。だってさ』…わっ!?」

 

「えっ!?ちょっと!…って、ど、どうしました!?」

 

 まさか最初の文言全てすっ飛ばして『バカメ』とだけ発信するとは思わず、アンドロメダは大いに焦るが、直後飛び跳ねる様にして驚く駆逐棲姫にアンドロメダもビクッとしてしまう。

 

「ん~、すごく笑ってる。あ~、この声は戦艦のヒトだ」

 

 流石の駆逐棲姫も今回ばかりはやってしまったと肩を落とし、申し訳なさそうに告げる。

 

「戦艦さんからスッゴク上機嫌な声で『一戦所望ツカマツリタイ。』だって。えらく気に入られたみたいだよ?あのヒト戦闘狂な所あるからね~」

 

 

「勘弁して…」

 

 出来心とはいえ、怒って冷静さを欠いてくれたらいいなという狙いがあったのだが、まさか気に入られたという予想の斜め上な事態に思わず天を仰ぐアンドロメダ。

 

     ────────────

 

 こちらはこちらでアンドロメダの予想外の返答に気を良くした南方棲戦姫の高笑いが響き渡る。

 

「アハハハハハハハ!!やっぱり面白いわあの娘!最高よ!!」

 

 上機嫌に笑う南方棲戦姫を横目に見ながら空母棲姫は溜め息を吐く。

 

「恐らく挑発が目的だったのでしょう」

 

「まあそうでしょうね」

 

 笑いすぎて出てきた涙を拭いながら答える南方棲戦姫。

 

「明日中にはこちらの攻撃圏内に捉える事が出来ます。あなたが言った作戦で行きますが」

 

「そうなると明朝に私達戦艦隊は前進を開始する必要があるわね」

 

 二人は作戦を煮詰めていくが、それは至ってシンプルな物。

 

 艦載機を最大限全力出撃させて一斉に攻撃。その間に南方棲戦姫を中核とした戦艦部隊が一気に接近して畳み掛ける。

 

 大軍故に下手な小細工は逆に付け入る隙を相手に与えかねない。

 

 相手に考える暇や休ませる暇無く圧殺する。

 

 単純だがかえってそれが一番強いのだ。

 

 

 話がある程度纏まった段階で、ふと気になっていた事を話す。

 

 

「ところで、本当にあの娘の艤装を私達と同じに出来ないのかしら?結局の所はそこなんでしょ?あの娘がこちら側に来ない理由って」

 

 南方棲戦姫の問いに、空母棲姫は最近聞いたある噂話を思い出す。

 

「技術レベルが拮抗している今までの艦娘達に対してなら大きな進展があったという噂を耳にしましたが、アンドロメダさんは技術レベルの差が大きく不明な点が多いというのがネックですね」

 

「その噂なら私も聞いたわ。でもその話が本当だとしても、あなたの言う通り、あの娘にはまだ難しそうね…」

 

「物事はそう上手くトントン拍子に行かないものです。時間を掛けてでもじっくり進めて行けばいずれは」

 

「早く実現して欲しいものね…」

 

「その気持ちは私も同じです」

 

 どことなく憂いを帯びた表情を浮かべる二人。その心中に去来している思いはなんだろうか…。

 

 

 

 その後、話し合いはお開きとなり、明日の戦いに備えることとした。

 

 

 

 

 明朝、まだ日が昇りかけの黎明の時間帯。

 

 

 

 事態は急展開を迎える。

 

 

 

 

「本隊が攻撃された!?」

 

「艦載機の奇襲を受けて空母が炎上しています!」

 

「急にレーダーや通信が使えなくなったと思っ、な、何だあれはっ!!?」

 

 混乱の最中、聞きなれない音が聞こえたかと思うと、自分たちピケット部隊の頭上を巨大な『ナニか』が轟音と共に通過していった。

 

 

 

「ぴけっと部隊ノ直上ヲ通過。目標群上空ニ機影ナシ。航空隊ハ全機離脱シマシタ」

 

 

「対艦戦闘用意。主砲ショックカノン。航空隊が撃ち漏らした発艦準備中の空母に照準」

 

 

撃ち方始め(うちぃーかたーはじめー)

 

 

 

 アンドロメダの戦いが、今始まる。

 

 

*1
南方棲戦姫の主砲は16inch≒40.6cmとアンドロメダと同等口径の砲




 ちゃんと仕事していた駆逐棲姫さん。ただ自由奔放なだけではなく、抜け目無く見ている所は可能な限り見ている。ホントは出来る娘の駆逐棲姫さん。と思いきや通信でやらかしちゃう駆逐棲姫さん。

 スイーツに飢える深海棲艦の姫様達…。いくら恐ろしい存在とはいえど、言葉を介し、コミュニケーションがとれるのならそのメンタルは人間に近いところがある(筈)。誰だって美味しい物は食べたいと思う。

 アンドロメダの善意が大変な事に()良かれと思った行為が常に良い意味で返ってくるわけではない世の中の不思議!そしてちょっとした出来心が大惨事に…。

 南方棲戦姫さんは好戦的だけど姐御肌なイメージ。装甲空母姫さんもそうですが、お願いですからちゃんと服を着てください!!目のやり場に困ります!!


タンクベッド

 名前から気付かれた方も居るかと思いますが、銀河英雄伝説のタンクベッドが元ネタです。
 基本的に銀英伝のタンクベッドに近い機能を有しておりますが、本編でも語った通り身体を洗浄する機能があります。また負傷した際のメディカルシステムとしての機能も兼ね備えております。更には緊急脱出ポットとしての機能も付与されております。
 一応一人用であるためいくら小柄な駆逐棲姫とはいえ二人で一緒に使用することは(多分)出来ない(筈)。


 今回はここまでです。最後は少し駆け足過ぎた気がしますが。

 励みや参考になりますので、お気が向きましたら感想をよろしくお願い致します。
 それではまた次回。

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