艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 不安。焦り。

 前話の続き。

 ノリと勢いで出すかも分からない水上艦艇の艦名考えるのが楽しかった。まぁ架空艦は本編時点で退役した艦からの引き継ぎみたいなものだけど。
 


第81話 Anxious

 

 

 

  Адмирал флота(海軍元帥) Князь(クニャージ) Александра(アレクサンドラ) Суворов(スヴォーロフ)

 

 Главнокомандующий(海軍総司令官)として新ロシア連邦(NRF)海軍───Военно-морской флот(新ロシア連邦) Новый Российская Федерация(軍事海上艦隊)───を統べる女傑にして、嘗てのГангут(ガングート)を上回る武勲の数々から、新ロシア連邦(NRF)艦娘部隊として初となる栄誉勲章、Герой НовыеРоссийской Федерации(新ロシア連邦英雄)を授与された国家英雄の老将、常勝無敗を謳われたБородино́(ボロジノ)前弩級戦艦(艦隊装甲艦)艦娘Князь(クニャージ) Суворов(スヴォーロフ)そのヒトである 。

 

 

 彼女こそ、現在の新ロシア連邦(NRF)海軍を形作った立役者と言っても過言では無い。

 

 自軍の艦娘戦力の不足、特に西側諸国と比して前弩級戦艦や準弩級戦艦といった旧式戦艦が主力艦の中核を占め、空母は皆無という、脆弱な戦力を補完するためには、既存の通常戦力を滞りなく発展拡充させつつ、積極的に活用して火力支援に充てる必要があると、艦娘として第一線で戦っていた当時より強く主張していたことで有名だった。

 

 それが『ダーダネルス海峡攻防戦』の勝利に繋がった事で、彼女の主張の正しさの証明にもなった。そしてその功績に傲る事無く判明した問題点の指摘と改善案の提言によって、今の地位に就く切っ掛けとなった。

 

 

 また軍内部に於けるタカ派の最右翼として有名で、自他共に認める国粋主義者の愛国者でも知られている。

 

 アンドロメダ達と同郷の国防相、ミロスラヴァ(スラヴァ)を以てして頭が上がらないとする、数少ない存在の一人である。

 

 

 別に国防相であるミロスラヴァ(スラヴァ)と対立している訳ではなく、寧ろ向いている方向性は二人共一致しており、共に通常戦力を重要視している。

 

 そして彼女がГлавнокомандующий(海軍総司令官)に就任した時点で既に、ミロスラヴァ(スラヴァ)主導で開発が進められていた、深海棲艦()()対抗可能とされる対艦・対地ロケット(ミサイル)用新型弾頭、『Белорусская(バグラチオン)』の完成が間近で生産配備に向けた計画も進行中だった。更にはその発展型の開発にも既に着手しており、完成の暁には既存の戦術が大きく変わるとして以下の様に述べている。

 

 

「覆し様のない()()()()()脆弱な我が軍主力艦の打撃力を補完するため、敵部隊への第一撃には水上船艇部隊及び潜水巡洋艦部隊並びに航空部隊、可能ならば沿岸ミサイル部隊を積極的に活用し、敵の索敵圏外である遠距離から画期的な新型ロケット(ミサイル)を用いた飽和攻撃にて大打撃を与え、その後にлинейный корабль(戦列艦)の直接火力支援部隊による援護射撃のもとにКрейсера (巡洋艦)Эскадренный миноносец(艦隊水雷艇)の軽快部隊が銃剣突撃の如く一気呵成に攻め立ててトドメを刺せば良い。さすれば無駄な犠牲を出さなくて済む。なにも劣勢な我等が無理を押して西側の真似をする必要は無いのだ」

 

 

 そう語っている様に、西側と比較して大きく劣る主力艦戦力を補うため、西側以上に積極的で効率的な通常戦力の投入を前提とする諸兵科連合ドクトリンを提唱していた。

 

 それを可能と成らしめた国防相ミロスラヴァ(スラヴァ)を讃えて彼女曰く、「閣下が国防相に就任して以来、着実に軍の改革と強靭化という実績を挙げ、延いてはそれが偉大なる祖国が世界に冠する強国である事実をより盤石なものとする事に繋がっている。閣下こそ母なる祖国に粉骨砕身奉仕する模範的国防相である」とミロスラヴァ(スラヴァ)のことを高く評価しており、かなり積極的なまでに協力的で好意すら寄せている程なのだが、その好意が些か強過ぎてやや暴走気味なきらいがあるとして、ミロスラヴァ(スラヴァ)は若干苦手意識を持っていた。 

 

 

 ただ、唯一対立している要素として、ミロスラヴァ(スラヴァ)は基本的に艦艇の建造に関しては既存艦艇の段階的な改良、発展による水上船艇部隊の能力底上げに主軸を置き、新型艦の建造は最小限に留めるという考えだったのに対し、彼女は概ねその考えに同意し賛同しつつも、新型艦の建造に関しては寧ろ積極的に進めるという考えを示していた。

 

 

 

()()()()に於ける母なる祖国の将来を見据えて、世界に冠する偉大なる我が母なる祖国の威光を世界に、そして我が人民に遍く知らしめる我が海軍の象徴として、Перспективный Авианосец(将来航空母艦)計画は是が非でも進めなければならない」

 

 

 そうして建造が開始されたのが旧ソビエト連邦時代に建造された、11435型『Кречет(クレチェト)』重航空巡洋艦『Адмирал(アドミラル) Кузнецо́в(クズネツォフ)』以来の、より本格的な大型空母、Перспективный Авианосец(将来航空母艦)計画案『Шторм(シトルム)』に基づく最新鋭原子力航空母艦、23000型重原子力航空巡洋艦『Сибиряков(シビリャコフ)』である。

 

 

 今でこそ艦娘は海洋戦略の中核的立場を確立しているが、かと言って既存の海上戦力を一掃するまでに至るほどでは無い。小回りといった機動性の優位性はあっても、単独での行動可能半径は艦船と比較すれば、艦種にもよるが概ねその半分にも満たない

 

 艦娘と既存の軍事力は互いの不足部分を補い合う関係であるのだが、いずれ母艦や既存の艦船は老朽化などから新造艦へと更新する時期が必ず訪れる。

 

 だが西側諸国は行き過ぎた左翼政策による自国産業の自滅的衰退から、艦艇の更新が極めて困難な状態へと陥ってしまい、既存艦艇をなんとか遣り繰りして騙し騙し使っている状態で、その既存艦艇すら延命措置が碌に出来ずに次々と廃艦状態となっており、自主的な軍縮を遂行している真っ只中である。

 

 

 人類社会に於ける世界の軍事バランスは、第三次大戦以前では考えられなかった程に大きく変動しており、特にここ数年は新ロシア連邦(NRF)の新領土である旧東欧東側、現在のПри участии(新たな) новых соотечественников(同胞達の参加による) федеральные округа(連邦管区)の戦後復興に伴う重工業の再稼働が本格化した事による経済成長、復興予算の縮小から国力の底上げが順調に軌道に載りつつあり、更には左翼思想著しい西側諸国から嫌気が差して亡命して来た技術者に科学者、エンジニアやマトモな知識人や軍人などといった幅広い分野の人材達も新たな活躍の場で成果を挙げてきており、各種分野に於ける技術レベルの底上げに貢献していた。

 

 それらを加味し、今の内に西側諸国に対しての優位性を確保する絶好の機会でもあった。

 

 

 そしてその象徴としても、分かり易い“力”の象徴が必要不可欠だと彼女は考えた。

 

 

 謂わば、『Сибиряков(シビリャコフ)』とは新ロシア連邦(NRF)に於ける『アンドロメダ』の様な、復興と更なる発展・躍進を表わす象徴(シンボル)的な存在としての意味合いを持った(ふね)なのである。

 

 

 “象徴”という政治的要素も絡むとなると、ミロスラヴァ(スラヴァ)としても建造の認可に吝かではなかった。

 

 

 元々旧ソ連時代末期に建造され、老朽化した艦艇が未だ多く残る海軍戦力の更新と、次世代へ向けた増強を目的とした建艦自体は必要であると考えて立案していたが、立案当初は戦後復興が最優先事項の時期であり、国力のリソース配分と国内の経済状況を加味して、先ずは旧ソ連時代からの老朽化した艦艇群を徐々に新造の代替艦へと置き換える計画で進めていた。

 

 

 またロシアという国は、古くからその広大な国土に数多の少数民族が暮らす多民族国家であり、それらを纏め上げる為には強い国家指導者と、強大で万人にも分かり易い明確な“力”である強力な軍事力が必要不可欠であるというのが、この広大な国土を持つ国の国家安全保障に関わる全員の共通認識であり、常識だった。

 

 

 故に、当初進められていた建艦計画の一部延期や、退役予定艦の一部現役延長等といった変更を加えた末に、本艦の建造が認められた。

 

 

 そういった経緯で建造が開始された『Сибиряков(シビリャコフ)』なのだが、СЗФО(北西連邦管区)Архангельская область(アルハンゲリスク州) Северодви́нск(セヴェロドヴィンスク)に拠点を置く新ロシア連邦(NRF)最大の造船会社、北部機械建造会社“Севмаш(セヴマシュ)”の造船ドックにて最終艤装工事中とされていたのだが、何時の間にかドックを出て洋上公試を開始している姿が確認されていた。

 

 また近隣に位置する新ロシア連邦(NRF)海軍最有力の艦隊、Северный флот(北方艦隊)の根拠地があるМурманская область(ムルマンスク州) Североморск(セヴェロモルスク)の動きが活発化しており、同艦隊に所属する補助艦艇や艦隊の中核(ワークホース)となる汎用艦22350型フリゲート艦『Адмирал(アドミラル) Горшко́в(ゴルシコフ)』級、その中でも現状Северный флот(北方艦隊)にしか実戦配備されていない最新改良型にあたる22350M型に「随時ドック入りして整備を受け、セヴェロモルスク港内にて待機せよ」との暗号通信が発せられていた。

 

 そしてその命令を受けた艦の中には艦隊の新たな主力艦を務める最新鋭原子力駆逐艦、23560型艦隊水雷艇『Лидер(リデル)』級の1番艦『Адмирал(アドミラル) Лазарев(ラザレフ)』、最近就役したばかりの2番艦『Адмирал(アドミラル) Кузнецов(クズネツォフ)』が含まれていた。

 

 

 解析した情報によれば、これらの新鋭艦で編成された艦隊を訓練も兼ねて太平洋へと回航し、現地にてТихоокеанский Флот(太平洋艦隊)と合流した大艦隊を以て同盟国インドへと親善訪問する長距離航海計画を企図しているとのこと。

 

 

 これに関連してか、新ロシア連邦(NRF)の人工衛星の打ち上げなどを担っている射場施設がある新ロシア連邦(NRF)СФО(シベリア連邦管区) Республика Казахстан(カザフスタン共和国)*1Космодром Байконур(バイコヌール宇宙基地)ДФО(極東連邦管区)Амурская область(アムール州)Космодром Восточный(ボストチヌイ宇宙基地)СЗФО(北西連邦管区)Архангельская область(アルハンゲリスク州) Космодром Плесецк(プレセツク宇宙基地)では、普段は第三次大戦時に破壊された各種衛星網の再敷設のために、軌道を覆うデブリの動きを慎重に見極めながら衛星の打ち上げを実施しているのだが、最近になってアジア太平洋方面をカバーする衛星の打ち上げ計画が急に増えていた。

 

 

 

 経由地であるТихоокеанский Флот(太平洋艦隊)の各基地では、測量を目的とした調査用艦艇と新鋭の『Горшко́в(ゴルシコフ)』級フリゲート艦や20380型警備艦(コルベット艦)Стерегущий(ステレグシュチイ)』級の配備増加に伴い退役が近いと噂される旧式の1155M『Фрега́т(フレガート)』型フリゲート、通称『Удалой(ウダロイ)』級駆逐艦の4隻が現在進行中の作戦との兼ね合いから『Горшко́в(ゴルシコフ)』級の代役として、そして11442型『Орлан(オルラーン)』重原子力ロケット巡洋艦、通称『Киров(キーロフ)』級ミサイル巡洋艦が急遽ドック入りして整備を受けだしたとの情報があった。

 

 

 そして目的地のインドでも同海軍の空母『 विक्रांत(ヴィクラント)』を始めとした複数の軍艦、補給艦がドック入りして整備を開始し、同軍に所属する艦娘部隊*2の主力に集結命令が出されたとの情報もある。

 

 

 新ロシア連邦(NRF)とインドの両国は以前より、現在の航空便以外での往来をなんとかして再開したいと切望し模索していた。

 

 そこに来て停戦和平合意の可能性が見えた事で、これを機に『北極海航路』から太平洋を経由してインド洋へと至る航路の開拓を検討する動きが見られた。

 

 

 元々両国はモスクワとムンバイを船舶や鉄道、道路で結ぶ全長7,200kmの複合輸送網である『南北輸送回廊』で繋がっていた。

 

 しかし途中の経由地であるイランは先の第三次大戦での激戦地であったことから国土が荒廃し、特に交通網のインフラは米軍の攻撃で大きな被害を受け、その復旧の目処が未だ立っておらず、このルートの再開の目処も立たなくなったていた。

 

 黒海を出発し地中海からスエズを経由する従来のルートは、EUとの緊張状態から事故に見せかけた妨害を受けるリスクが高くて敬遠されており、この戦争直前までは相対的に期待が増していた『北極海航路』であったが、この戦争による影響で此方も現状運航不能状態となっていた。

 

 

 それが俄に戦争終結の可能性が現実味を帯び出した事で、新ロシア連邦(NRF)は海軍を使って航路の安全性をアピールするために既に動き出していた。

 

 

 これに乗る形でインドもエスコートの艦隊を編成して、いつでも出迎えに行ける様に準備を整えているのだ。

 

 

 

 ただ、問題として太平洋からインド洋へと至る東南アジア一帯の航路であるが、当然ながら深海棲艦に制圧されて以降はマトモに整備はされていない。

 

 特に最短ルートであるマラッカ海峡は凡そ400㌔の長狭で浅瀬が多いのだが、潮汐により強い潮流が発生し、この強い潮流が“サンドウェーブ”と呼ばれる波紋状の砂州を形成するため、水深を頻繁に変化させてしまい、船舶が座礁する危険性が極めて高い。

 

 だが、当然のことながら現地政府組織の大半が機能不全やら消滅しており、そもそも深海棲艦がこの海域を実効支配している事からも手出しが困難で、当の深海棲艦はそのサイズから多少の障害物など物ともしないものだから、整備する必要性を全く感じていなくてずっと放置したままである。

 

 

 故に、この海峡を測量した最新データが反映された海図など、最早この世界の何処にも存在しない。

 

 

 排水量10万トン近い大型艦『Сибиряков(シビリャコフ)』を通過させるには、あまりにもハイリスクだ。

 

 通過するならば浚渫、しかもかなり深く掘削する必要があるのだが、流石に莫大な予算が必要となるし時間が掛かり過ぎる。

 

 

 ならば、多少遠回りにはなるが、マラッカ海峡から南東方向に直線距離で約3,300㌔の位置にある、ポストマラッカマックスと呼ばれるマラッカ海峡を通過出来ないサイズの大型船舶が通過可能なロンボク海峡を使うしかない。

 

 

 ただここも長いこと手付かずである。偵察衛星からの画像解析だけでは判明しない事も多々ある。だからこそ、Тихоокеанский Флот(太平洋艦隊)Северный флот(北方艦隊)に先んじて現地の測量と最新の海図を作成すべく、大急ぎで調査艦艇を派遣する準備に追われている。

 

 

 無論、調査艦艇を直掩する護衛艦隊もである。

 

 

 この艦隊には測量とその護衛任務だけでなく、深海棲艦の支配領域内を通過することで、深海棲艦側の反応と和平合意への本気度を試す、一種の“踏み絵”としての役割がある様にも思える。

 

 

 何故ならばТихоокеанский Флот(太平洋艦隊)に配備されている11442型『Киров(キーロフ)』級とは、Тихоокеанский Флот(太平洋艦隊)旗艦『Адмирал(アドミラル) Нахимов(ナヒーモフ)』しか有り得ず、本艦が出張るということは本艦を座乗艦と定めている艦隊司令のРеволюция(レヴォリューツィア)大将こと、Гангут(ガングート)本人が身分を偽ること無く、空母を除けば第二次大戦以降、世界最大の水上戦闘艦としての威容を誇り、西側諸国からは巡洋戦艦と呼ばれることもあるこの巨艦のマストに自身の将旗を掲げて出張るということだ。

 

 

 Гангут(ガングート)Суворов(スヴォーロフ)の腹心にしてお気に入りであると周知されている。実際、彼女は自身の引退後の後継は、艦娘としての実績や将官としての実績からГангут(ガングート)であると考えているフシがあるとの情報もある。

 

 

 詰まり、Гангут(ガングート)は、当の本人はどう思っているかは置いといて、新ロシア連邦(NRF)海軍の将来を担う非常に重要な存在なのである。

 

 

 そんな海軍の将官が座乗する艦と、その艦隊に何かあったら?

 

 

 しかも航行予定航路の大半は深海棲艦の領域の中でも、自身の生存の為に欠かせない食糧の一大生産拠点であるインドネシアの目と鼻の先である。

 

 その周辺を防衛するために配備されている戦力は、間違いなく深海棲艦にとっては最も強力であり、最も統率の取れた信頼出来る精鋭部隊である。

 

 

 もしもそんな海域で攻撃を受けたとするなら?

 

 

 和平合意は偽りだったとして、深海棲艦はその信用を未来永劫に渡って失う事となる。

 

 

 それに『Адмирал(アドミラル) Нахимов(ナヒーモフ)』の機関は核動力であり、当然ながら原子炉を搭載している。

 

 それが攻撃を受けたことで、深刻なダメージによって万が一その原子炉が破損したら?そのまま沈没してしまったら?

 

 周辺海域は深刻な核汚染に曝される。その影響は計り知れない。

 

 

 それと旧式とはいえ、1155M型フリゲートの『Адмирал(アドミラル) Трибуц(トリブツ)』、『Маршал(マルシャル) Шапошников(シャポシニコフ)』、『Адмирал(アドミラル) Виноградов(ヴィノグラドフ)』、『Адмирал(アドミラル) Пантелеев(パンテレーエフ)』は元々Большой противолодочный корабль(大型対潜艦)と呼ばれる外洋での対潜対空防衛任務に比重を置いた戦闘艦であったが、2010年代後半から順次開始された近代化改修によって、本艦の後継代替艦でもある『Горшко́в(ゴルシコフ)級』の初期型に匹敵する強力な対艦・対地火力投射能力が付与された有力な汎用打撃艦として生まれ変わっており、艦歴こそ長いが今でも充分に第一線を張れる強力な艦艇群である。

 

 

 『Нахимов(ナヒーモフ)』を含め、これらの戦闘艦には主力兵装の一つとして長距離巡航ミサイル『Калибр(カリブル)』が標準装備されているのだが、その弾頭には通常弾頭だけでなく、1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。もしも全艦の3С-14(3S14) «УКСК(UKSK)»VLSの全てに『Калибр(カリブル)』が装填されていると仮定して、その本数、凡そ150弱。

 

 射程距離2,500㌔とかなりの広範囲をカバーしており、先の衛星とデータリンクにより発射母機の艦艇からは捉え切れない内陸部まで攻撃可能である。

 

 攻撃に対する反撃兼報復として深海棲艦の、文字通り生きていく上での生命線であるインドネシアの耕作地帯へ向けて無差別に撃ち込まれたら、核弾頭による破壊と共に土壌への核汚染を広範囲に齎し、この地の農業は壊滅的な被害を受けることとなる。

 

 新ロシア連邦(NRF)は食糧不足に喘ぐ西側諸国と違い、食糧完全自給の国である。西側諸国はインドネシアに対して“取らぬ狸の皮算用”を目論んでいるが、新ロシア連邦(NRF)はそんなことお構い無しである。

 

 しかも国土の大半が面する海洋は深海棲艦がその過酷な環境から、全くのゼロではないが殆ど活動していない北半球の更に北側、北極海に面する位置であり、この地には新ロシア連邦(NRF)海軍最有力のСеверный флот(北方艦隊)が控えている。バルト海はその立地から閉鎖性海域で、Балтийский флот(バルト海艦隊)が防衛を担っているが、外海出口には北海油田を防衛するイギリス本国艦隊がドイツHochseeflotte(大洋艦隊)を鼻で笑いながら警戒し、欧州大陸側にはドイツのHochseeflotte(大洋艦隊)主力が英本国艦隊に対してメンチ切りながら哨戒しているため侵入が困難。太平洋方面は障壁としての日本列島、そしてСеверный флот(北方艦隊)に次いで有力な戦力を有するТихоокеанский Флот(太平洋艦隊)が守護している。黒海方面もバルト海同様に閉鎖性海域で、此方は地中海も作戦範囲に含むЧерноморский флот(黒海艦隊)が担当しているが、地中海へと繋がるその出入り口は“あの”因縁のダーダネルス海峡が鎮座している。

 

 本土への直接攻撃に晒されにくいという強味もあって、実は新ロシア連邦(NRF)は東南アジアに於ける深海棲艦支配領域への核攻撃に対するハードルがかなり低かった。

 

 

 仮令艦隊が反撃する暇無く瞬く間に全滅したとしても、インドネシア全土を灰燼に帰す事が可能なだけの戦略ミサイルが控えている。

 

 

 ただし、新ロシア連邦(NRF)には『核抑止力の国家政策指針』という核兵器の使用に関する明確な指針が存在する。

 

 その条項に則ると、核兵器の使用は飽く迄も防御的なものであり、同盟国を含めた先制核攻撃を受ける明確で疑う余地の無い差し迫った危機的状態に対する、所謂“後の先”の場合と核戦力に対する干渉行為によって核報復手段に支障が出て機能不全になる危険性でもなければ、通常弾頭ならばまだしも、核兵器の使用に踏み切るには大義名分(理由)が弱過ぎる。

 

 いくら将来を嘱望されている有望な将官と共に艦隊が一つ潰されたとはいえ、それによって核戦略等の国家安全保障に重大な影響を与えた訳では無いし、国家存亡リスクにまで至る程の重大事態には発展するわけでもない。

 

 強大な戦力を誇る新ロシア連邦(NRF)陸軍を打ち敗れるだけの陸上戦力が有れば話は別だが、深海棲艦は並の歩兵よりは強くても、その戦略機動は“陸に上がった亀”同然となってしまう。そもそも陸軍運用ノウハウなんて持ち合わせていないし、陸上での兵站能力は推して知るべし。

 

 

 実際、新ロシア連邦(NRF)政府と軍部の率直な見解として、深海棲艦との戦いは「“戦争未満”」であると見做している。それもあって現在実施中の日本との合同作戦のことを「“特別軍事作戦”」であると国の内外に示しているのだ。

 

 

 

 しかし、核の使用に関しては“()()()国家若しくは地域・勢力に対して”を想定したものであり、深海棲艦に対しては完全な“法の抜け穴”状態なのである。

 

 

 それにである。

 

 

 そもそも既存の国内法と、元より拘束力も無ければ既に形骸化どころか風化著しいがそれでも形だけは微かに残っている国際法の全てに於いて、深海棲艦は想定外、“法の外”の扱いなのである。

 

 

 事前通告、その他諸々関係なく奇襲的先制核攻撃をしても非難される謂れは無い。

 

 

 衛星画像の解析でインドネシアが深海棲艦にとって謂わば重要な兵站策源地であることは、各国政府と軍部の情報のやり取り等から周知の事実である事は判明しており、「継戦能力を根本から断つための策源地に対する戦略爆撃を実施しただけだ」と開き直る事すら出来る。

 

 そもそも「人類の敵」と声高に叫び、自国民の窮乏に目もくれずに今なお戦争継続を内外に示しておきながら、何もしない西側諸国の方が人類に対する裏切りだと逆に糾弾出来る。

 

 

 それでも新ロシア連邦(NRF)が今までそういった行動を起こさなかったのは、単純に国家としてのメリット──国益──が無いからに過ぎない。寧ろ深海棲艦の存在は西側諸国を圧迫して衰弱させてくれる途轍もなく有難い“敵の敵”だ。ならば積極的に関わるよりも“降り掛かる火の粉を払う”程度の適当に“いなす”だけの対応でも充分に国益に適っていた。

 

 それが昨今の西側諸国で起きつつあった、艦娘との対立構造の表面化という情勢の変化から、方針の転換を図り、“対話の為の小窓”を開けて相手の出方を伺うアクションに出た。

 

 が、想定よりも事態の動きは早かった。

 

 

 西側諸国で艦娘が独自に今まで敵対していた深海棲艦との対話に乗り出し、欧州では停戦・和平合意の取り付けに迫りつつあった。その艦娘の動きに賛同した人類勢力が合流して対立構造がより鮮明になって分断が激化した。

 

 

 その流れに新ロシア連邦(NRF)としても対話の為の“小窓”から、自ら“扉”を開けて接触を図るアクションに出た。それが──非公式ではあるが──前大統領と閣僚の派遣だった。

 

 

 ただし、だからといってそう簡単に信用して友誼を結ぶという訳では無い。現状は飽く迄も()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というスタンスだ。

 

 ニッコリと握手をしている反対の手にはお互い武器を持ち、足下では互いの足を踏み合う。隙を見せたのならば、何時でもその喉元を狙えるのだと、口には出さぬ鋭い目線のメッセージを微笑みで誤魔化しながら互いに牽制し合う。

 

 色々と思う所はあるかもしれないが、それが外交。国際政治というものだ。油断すれば寝首を掻かれる。

 

 

 深海棲艦は信用に足るのか?

 

 

 それを推し量る為の艦隊派遣というのが本当の目的なのだろう。

 

 

 同時に無言の圧力をアンドロメダにも掛けてきていた。

 

 

 この一連の情報とそこから想定される事態、深海棲艦で真っ先に気付くのは全地球規模でデジタル情報を、技術格差でシバいて好き勝手に引っこ抜き仕放題なアンドロメダ以外に有り得ない。

 

 

 この状況下で深海棲艦と、それに与するアンドロメダがどう動くのかを試している。

 

 ここでコケると後々まで尾を引く結果となり、今後の行動に影響が出る。特にアンドロメダにとっては直接的な影響よりも、日本に居る土方達を始めとした同郷の旧地球軍組の者達が何らかの不利益を被るという、間接的な影響があった。

 

 

 言葉を選ばずに言えば、事実上の人質である。実際新ロシア連邦(NRF)から日本に派遣されている艦娘は全員連邦軍参謀本部情報総局(GRU)に所属する特殊部隊(スペツナズ)としての一面もあり、今でこそ国防相の直接指示により情報収集から土方達やその関係者の周囲をそれとなく警護する態勢となっているが、情勢次第では万が一のリスクがゼロとは言えない。

 

 

 アンドロメダからしたら、種族的には艦娘であるかもしれないが、心は完全に深海棲艦へと寄っているとの思いが強く、深海棲艦としての利益を優先するとの考えがあるし、それとなくその立場を公言している。

 

 とは言え、だからといって旧地球軍組の事を無視するほど薄情でいられる精神は持ち合わせていないし、その意思に関係なく拉致同然ででも深海棲艦の支配領域へと連れ出そうと考えるほど、自分勝手にもなれない。…いや、最悪の場合はそれもやむ無しとは、一応考えている。

 

 

 考え出したら切りが無い。

 

 

 自身の武力をチラつかせ、力技で解決する事も不可能ではない。新ロシア連邦(NRF)、というか軍事を取り仕切る同郷のミロスラヴァ(スラヴァ)国防相が、アンドロメダの不興を買ったり、直接衝突する事態だけは極力回避する様に動いている。アンドロメダの持つ“力”は容易に国家を滅ぼし去るシロモノだ。

 

 一応、核攻撃に対しても対処、無力化する手段だってある。誘導に使用する衛星網を狂わせたり、発射されたミサイルの弾頭の自爆コードを瞬時に解析し、正規の手段で無くとも送信して一斉に無力化することだって出来る。隔絶した“力”は、時として不可能を可能にするのだ。

 

 

 その“力”は殆ど大規模災害の如く、防ぎようが無い。出来る事は恐れて警戒するくらいだ。

 

 

 しかし自然災害と違い、会話が成り立つ。理屈が通る。そこに抜け穴を見出だす事が出来る。

 

 

 それに隔絶した“力”があっても、それだけで全てが解決する訳では無い。寧ろアンドロメダ自身、“力”に頼り切る事に忌避感があった。

 

 

「“力”に頼る者は“力”によって滅ぼされる」

 

 

 嘗ての自身の艦長である山南一佐が漏らした言葉だ。

 

 

 “力”を行使するだけではいずれ袋小路に嵌まる。そして倒れる。その時に大切なモノまで巻き込んでしまわないだろうか?

 

 

 それが不安で仕方ない。

 

 

 とは言えである。

 

 

 結局のところ新ロシア連邦(NRF)艦隊に何かしらの危害を加えなければ何も起きないのである。

 

 艦隊への核弾頭の積み込みだって、最悪を想定すれば有り得るが、決定権を持つ大統領府(クレムリン)にその兆候は今のところは無い。現場の暴走で勝手に積み込むにしたって、保管庫から必要となる核弾頭を持ち出してミサイルに取り付け完了するまでに、その痕跡が残るものだ。

 

 

 あって欲しくないが西()()()()()()()()()()があるかもしれないが、それならば逆に此方から尻尾を掴む事が出来る。

 

 

 人間が何かしらの行動をすれば必ず足跡が、指紋が、履歴が、映像がどこかに残るし、その行動に際して必ず通過しなければならない“要点”という経路が存在する。

 

 それを押さえてさえすれば、ある程度はなんとかなる。

 

 

 兎も角、肝心なのは付け入る隙というか、武力行使や介入の口実と成り得る“切っ掛け”さえ与えなければ良いのだ。

 

 

 取り敢えず“穏健派(主流派)”は特に心配は無い。終わりの見えない戦争に厭戦気分の蔓延により前線では士気の低下が著しい。

 

 今のところサボタージュまでは起きていないが、後方ではローテーションによる前線への配置転換を嫌がる傾向が強くなっている。

 

 そこに来て和平の話だ。実際ヨーロッパでの艦娘と対してだけだが、電撃的な和平合意が締結されたという事実は深海棲艦の支配領域全域で大きな衝撃を与えた。

 

 

 しかしそれはかなり好意的な反応が圧倒的多数を占めていた。

 

 

 もうすぐ戦争が終わる。

 

 

 延々と続く戦争に鬱屈として、暗く塞ぎ込むかのような重苦しい閉塞感が、和平への期待から徐々に和らぎつつあるとの明るい話題を耳にするようになった。

 

 誰も彼も疲れ切っているのだ。未だ戦争継続を叫んでいるのは実際に戦場に出ない、戦場を知らない知ろうともしない一部の頭お花畑の気が狂ったニンゲン共だけだ。

 

 

 この状況で和平合意をぶち壊す真似をするとは思えない。

 

 

 ぶち壊すとしたら、それは“過激派”が可能性として非常に高い。

 

 ただ、同時に“過激派”としてもリスクがある。

 

 

 なんと言っても相手は艦娘部隊も乗艦する完全武装の空母打撃群による派遣艦隊だ。調査艦艇による先遣艦隊にしても護衛艦が古い艦艇で乗艦する艦娘部隊の人数は、派遣艦隊の新しい艦艇よりかは少ないが全くのゼロではない。

 

 西側諸国と比較して艦娘戦力の劣る新ロシア連邦(NRF)軍ではあるが、その分脅威に対して敏感であり、対応も苛烈で容赦が無い。

 

 戦闘になれば大きな損害を被るのは必須である。

 

 そして最近の“過激派”の動向から推測するに、リスクを避ける傾向にある。

 

 

 新ロシア連邦(NRF)艦隊に対しては何も起きず、戦争がそのまま停戦。和平合意締結によって戦争の終結が正式なものとなれば、本格的な交易が開始され、海洋航路の遠洋航海もある程度回復するかもしれないが、狙うとするならばそのタイミングだとアンドロメダは見ていた。

 

 自身が“海賊”と蔑称する様に、“過激派”が文字通り海賊の如く、交易の船舶を襲撃するのではないか?

 

 

 そちらの方が寧ろ怖い。

 

 

 戦時下ならばまだしも、正式な和平合意が成されて戦争終結と相成った後なだけに、外交的に不利な立場に立たされるし、それが原因で世論が一気に過熱し再び戦争という流れになる危険性があった。

 

 深海棲艦が派閥によって一部独自路線状態であるとする事実を国家権力として認識しているのは、現イギリス王室であるAgincourt(エジンコート)朝配下の王室政府と、新ロシア連邦(NRF)政府。それに日本海軍艦娘部隊の責任者、真志妻亜麻美大将とその一派の側近くらいのものである。

 

 

 一般社会では皆無である。

 

 

 故に、“過激派”の破壊活動はそれ即ち深海棲艦の総意と見做され、和平合意は偽装されたものであると、民衆は考えるだろう。

 

 

 一応、新ロシア連邦(NRF)では旧連邦時代と同様に内政は首相が、外交並びに国防、戦争に於ける宣戦し、講和及び条約を締結する権限は大統領にある。

 

 現新ロシア連邦(NRF)大統領Александр(アレクサンドル) Куту́зов(クトゥーゾフ)氏はタカ派の政治家として有名であるが、同時に硬軟を使い分ける老獪さも併せ持つ厄介極まりない政治家だ。

 

 

 深海棲艦から攻撃を受けたという事実。それに対する報復を訴える民衆の声を武器として、軍事行動の決断を内外に正当化出来るし、交渉の場に於ける圧力にも使える。

 

 特に新ロシア連邦(NRF)の外交及び国家安全保障の基本方針は「“対話には対話”で応じるが、“力には力”を以て対処する。されど、“対話の為の小窓”は常に開いている」という、前大統領のПутина(プーチナ)政権時代からの路線を引き継いでいる。

 

 そしてその“力”の苛烈さは第三次大戦での東欧紛争で遺憾無く発揮されていた。

 

 

 だが何より恐ろしいのは、“対話の為の小窓”による交渉は“対話には対話”の時よりも厳しい内容を突き付けてくる。

 

 

 派閥の違いはあれど、防止する手立てを打たずに静観した。として、どんな苛烈な要求を突き付けられるか、想像するだけで頭を抱えたくなる。

 

 

 そうならないためにも“過激派”に対して何らかの対応策を講じなければ、後々に厄介なことになるとアンドロメダは判断していた。

 

 

 しかし、そうなると同胞に対して手を上げる行為に対して忌避感のある深海棲艦には些か荷が重い。

 

 

 念の為、万が一の為に先遣艦隊と派遣艦隊には自身と、申し訳ないが妹のアポロノームに人質も兼ねて乗り込むつもりでいる。

 

 

 だがその後となると流石に手が回らない。

 

 

 どうするかと考えた末に、艦娘の艦娘による民間軍事会社(PMC)の立ち上げを構想したのである。

 

 

 

 

*1
第三次大戦の影響と東方の隣国中華連邦崩壊の余波による急激な政情不安から一時無政府状態となり、内戦勃発による飛び火を理由に軍事介入し、後に新ロシア連邦(NRF)主導とインドの立ち会いのもと国民投票の結果を経て併合。

*2
その主力は英国から大英連邦加盟国へと派遣されている艦娘が戦力の中核である。





 …自分でも書いててこんがらがってきた。



補足説明

Князь(クニャージ) Александра(アレクサンドラ) Суворов(スヴォーロフ)

 新ロシア連邦(NRF)海軍元帥、海軍総司令官。

 ロマノフ朝Росси́йский импера́торский флот(ロシア帝国海軍)Бородино́(ボロジノ)』級эскадренный броненосец(艦隊装甲艦)の4番艦、日露戦役に於ける日本海海戦での第二太平洋艦隊旗艦『Князь(クニャージ) Суворов(スヴォーロフ)』の艦娘。

 “Александра(アレクサンドラ)”は男性名“Александр(アレクサンドル)”の女性形であり、艦名の由来である常勝不敗の伝説的軍人、Александр(アレクサンドル) Васильевич(ヴァシリエヴィチ) Суворов(スヴォーロフ) Генералиссимус(大元帥)(イタリア公アレクサンドル・ヴァシリエヴィチ・スヴォーロフ=リムニクスキー伯爵《露語:Князь Италийский граф Александр Васильевич Суворов-Рымникский, 》ルムニク・スヴォーロフ伯。イタリア大公。)に由来する。


 国粋主義者にして愛国者。軍部きってのタカ派であり、国防相大好きっ娘なアル中。


 西側諸国と違って顕現する艦娘、特に主力艦であるэскадренный броненосец(艦隊装甲艦)若しくはлинейный корабль(戦列艦)新ロシア連邦(NRF)では称される、所謂戦艦級の艦娘の多くが自身の様なロマノフ朝Росси́йский импера́торский флот(ロシア帝国海軍)時代の前弩級戦艦や準弩級戦艦といった、弩級戦艦建艦競争時代以前の旧式艦を由来とする戦艦艦娘が主力艦の中核を占め、空母に至っては皆無という抗いようの無い問題が新ロシア連邦(NRF)海軍の艦娘部隊にはあった。


 実際、前弩級戦艦の彼女や彼女の姉妹達、そして同世代の僚艦達は、最低でも世界大戦期レベルの能力を有する深海棲艦と真正面から戦えるだけの能力を有していなかったし、どこぞの極東の島国よろしく能力差を猛烈で過剰な訓練で覆せると思い込めるほど、楽観主義者になれなかった。

 故に通常戦力も最大限に活用するしか無かったし、その最も効率の良い運用方法を模索するために知恵を絞りに絞った。


 確かに彼女は新ロシア連邦(NRF)艦娘に於ける武勲艦娘の筆頭格と言えるのだが、彼女の武勲というのはГангут(ガングート)の様な直接の武勇によるものというよりも、そういった作戦立案の提言や部隊指揮に依るものがその多くを占めている。

 その結果、新ロシア連邦(NRF)軍は『ダーダネルス海峡攻防戦』での陸海軍共同による作戦で世界が予想もしなかった勝利を掴んだ。


 だがこの勝利に彼女は不満があった。


 確かにこの戦いで敵は撤退し、味方は殆ど被害らしい被害を受ける事なく健在。しかし叩けると思った敵主力はその悉くを取り逃した。

 その事実に不機嫌の余りに癇癪を起こし、その後数日間は誰とも口を利こうとしなかったほどである。

 そして何を思ったのか、突然Генеральный штаб(参謀本部)Георгиевский(ゲオルギエフスキー) Начальник Генерального штаба(参謀総長)を訪ねたかと思うと、本来ならば聖歌隊で歌えるだけの美声の持ち主なのに、водка(ウォッカ)をキメすぎて酒焼けしてしまった残念声で「我がВоенно-морской флот(海軍)の改革を私にやらせろ!」と直談判をかまして大暴れしたという。

 元々奇行が目立つ上に、気難しくて扱い辛いアル中な一面がある事で知られていたが、これには流石に困り果てた参謀総長は上位であるМинистерство обороны(国防省)の、この時既に国防相の地位に就いていたミロスラヴァ(スラヴァ)に助けを求め、以前より彼女に興味のあったミロスラヴァ(スラヴァ)は特例で面会の場を設けた。この時が2人の初顔合わせとなった。

 で、まぁ、なんやかんや意気投合し、紆余曲折を経て海軍総司令官に就任することとなった。なお彼女の直接上官となる事となってしまったГеоргиевский(ゲオルギエフスキー)参謀総長は顔面蒼白となっていたという。



 元々本編中に出す予定だったものを、長過ぎたためにこちらに移設。

 なんか出すオリジナル艦娘の殆どが変人っぽくなってるな。ただ、スヴォーロフ元帥は気難しい上に誰であろうと容赦無く批判するものだから、左遷や解任される事もあったし、1796年に解任されて田舎に引っ込んだ頃には、教会の聖歌隊に入って一日中歌ってばかりいたという。ドストエフスキーの『分身』には「あの有名なスヴォーロフ将軍が鶏の鳴きまねをしたことは周知の事実だ」という文章があったりする。



新ロシア連邦(NRF)海軍建艦計画

 当初の国防相案では旧ソビエト連邦時代に建造された艦艇群を新造艦の代替艦艇へと置き換え、各方面の艦隊を段階的に増強を図る事が骨子だったが、途中から海軍総司令官案の重原子力航空巡洋艦建造が盛り込まれ、一部計画変更が加えられた。なお、Каспийская флотилия(カスピ小艦隊)に関しては、沿岸国がほぼ新ロシア連邦(NRF)の事実上の衛星国となった事でカスピ海での権益問題が沈静化し、深海棲艦も同海では出現しない事もあって艦隊の戦略的意義が低下した事により、現状維持である。


 1164『Атлант(アトラント)』型ロケット巡洋艦(『Слава(スラヴァ)』級ミサイル巡洋艦)956『Сары́ч(サルィーチ)』型艦隊水雷艇(『Современный(ソヴレメンヌイ)』級ミサイル駆逐艦)は既に退役、予備役編入。一部は練習艦となった。

 1155M及び11551M『Фрега́т(フレガート)』型フリゲート艦『Удалой(ウダロイ) Ⅰ・Ⅱ』級駆逐艦Сибиряков(シビリャコフ)建造に伴う代替艦建造の遅延により現役を一時延長。

 上記の艦艇群の代替艦は主に22350型フリゲート艦『Адмирал(アドミラル) Горшко́в(ゴルシコフ)』級20380型警備艦(コルベット)Стерегущий(ステレグシュチイ)』級である。ただし1164型等の艦隊旗艦を務めていた艦に関してはЛидер(リデル)』級が代替予定だったが、先述のСибиряков(シビリャコフ)の建造が優先された影響で完成が遅れ、一部艦隊では代理旗艦が充てられている。(下記参照)


 11442『Орлан(オルラーン)』型重原子力ロケット巡洋艦(『Киров(キーロフ)』級ミサイル巡洋艦)は代替艦のЛидер(リデル)』級の建造遅延により、現役延長。代替艦との交代後はそのまま退役解体予定。


 11435『Кречет(クレチェト)』型重航空巡洋艦『Адмирал(アドミラル) Кузнецо́в(クズネツォフ)は当初艦娘母艦に改装する計画があったが、Сибиряков(シビリャコフ)』級の建造に伴い練習艦に種別変更。現在の主力艦娘母艦は小型ミサイル艦をベースとした艦艇が担っている。なお、国内の防衛産業研究所や造船メーカーからは揚陸艦をベースとした西側型の母艦案がいくつか発表されている。


 以下、本編時点での23560型艦隊水雷艇『Лидер(リデル)』級建造、新ロシア連邦(NRF)海軍各艦隊への配備状態及び予定。

1番艦Адмирал(アドミラル) Лазарев(ラザレフ)、就役中。Северный флот(北方艦隊)所属。現旗艦『Киров(キーロフ)』級『Пётр(ピョートル) Великий(ヴェリーキイ)退役をもって旗艦引き継ぎ予定。

2番艦Адмирал(アドミラル) Кузнецов(クズネツォフ)、公試終了で海軍へと引き渡し完了。Северный флот(北方艦隊)に編入。

3番艦Адмирал(アドミラル) Ушаков(ウシャコフ)、建造中。Тихоокеанский Флот(太平洋艦隊)編入予定。就役後、現旗艦『Адмирал(アドミラル) Нахимов(ナヒーモフ)より旗艦引き継ぎ予定。

4番艦Маршал(マルシャル) Устинов(ウスチノフ)、建造中。Балтийский флот(バルト海艦隊)編入予定。就役後、退役した前旗艦956型『Современный(ソヴレメンヌイ)』級艦隊水雷艇『Настойчивый(ナストーイチヴイ)』(解体予定)の代わりとしてСФ(北方艦隊)より移籍して来ていた現旗艦、1155型の改設計型11551型(通称、『Удалой Ⅱ(ウダロイⅡ)』級)『Адмирал(アドミラル) Чабаненко(チャバネンコ)より旗艦引き継ぎ予定。Чабаненко(チャバネンコ)は予備役編入予定。

5番艦Варяг(ヴァリャーク)、公試中。Черноморский флот(黒海艦隊)編入予定。就役後、11356M型フリゲート艦『Адмирал(アドミラル) Григорович(グリゴロヴィチ)』級2番艦『Адмирал(アドミラル) Мака́ров(マカロフ)より旗艦引き継ぎ予定。

6番艦Адмирал(アドミラル) Нахимов(ナヒーモフ)、発注済み。Балтийский флот(バルト海艦隊)編入予定。

7番艦Пётр(ピョートル) Великий(ヴェリーキイ)、建造予定。Тихоокеанский Флот(太平洋艦隊)編入予定。

8番艦 艦名未定(Москва(モスクワ)若しくはСлава(スラヴァ)のどちらかと有力視されている)、建造予定。Черноморский флот(黒海艦隊)編入予定。



 『Лидер(リデル)』級8隻はソ連時代に『Киров(キーロフ)』級を7隻乃至9隻建造する計画だった事から、もしかしたらこれくらいは造るかなぁと予想した数字。多分現実だと良くて3〜4隻。悪かったら0〜1隻かな。個人的には『Лидер(リデル)』級と下記の改良型『Горшко́в(ゴルシコフ)』級で編成された艦隊を見てみたい。



22350M型

 ロシア連邦海軍フリゲート艦『Адмирал(アドミラル) Горшко́в(ゴルシコフ)』級の最新拡大改良型。


 全長135メートルから164メートルに、排水量4,500㌧(満5,400㌧)から7,600㌧(満9,000㌧)にと艦体が大型化し、経済速力14ノットで4,500マイル(約7,242㌔)から9,000マイル(約14,484㌔)に延びている。

 武装も強化され、対艦・対地ミサイルVLSの3S14UKSKが初期型16セル(5番艦からは32セル)が48セルへ、複合対空ミサイルシステムの9K96『Редут(リドゥート)』が初期型32セルから64セルと、大幅に強化されている。

 無人航空機(UAV)の運用能力。


 2025年より1番艦が起工する予定で、最終的には12隻建造予定とのこと。


 完成したら物凄い重武装。艦隊組んで3M22«Циркон(ツィルコン)»やP-800«Оникс(オーニクス)»を一斉発射したら見応えありそう。



1155M『Фрега́т(フレガート)』型フリゲート、NATOコード『Удалой(ウダロイ)』級駆逐艦

 元々Большой противолодочный корабль(大型対潜艦)と呼ばれる外洋での対潜対空防衛任務に比重を置いた戦闘艦であったが、2016年よりТихоокеанский Флот(太平洋艦隊)所属の『Маршал(マルシャル) Шапошников(シャポシニコフ)』から以下の近代化改修工事が実施された。

 1.ミサイルの更新:背負式の2番砲塔を撤去し、3S14UKSK多目的VLS16セルに換装。3M-54«Калибр(カリブル)»巡航ミサイルの運用能力を付与。艦橋左右根本のRPK-5«Метель(メチェーリ)»対潜ミサイル四連装発射筒を撤去し、Kh-35U(3M-24)«Уран(ウラン)»艦対艦ミサイル四連装発射筒2基に換装。対艦攻撃能力を向上。

 2.艦砲の近代化:AK-100・100㍉単装砲2基からステルス砲塔を採用したA-190・100㍉単装砲1基に換装。

 3.電子装備の更新。


 上記の近代化改修と同等工事は現在ロシア海軍が有する残り6隻の1155型とその改良型11551型の1隻にも施される予定である。改装後は艦種を大型対潜艦からフリゲート艦に変更される。なお、本艦の計画名『Фрега́т(フレガート)』とはロシア語のフリゲートを意味する。(本編では全艦改修済み。)

 本編中の『Адмирал(アドミラル) Трибуц(トリブツ)』、『Маршал(マルシャル) Шапошников(シャポシニコフ)』、『Адмирал(アドミラル) Виноградов(ヴィノグラドフ)』、『Адмирал(アドミラル) Пантелеев(パンテレーエフ)』の4艦は実際にТихоокеанский Флот(太平洋艦隊)に所属する1155型である。


 『Горшко́в(ゴルシコフ)』の代打として急遽参戦。当初は対日航路の警備任務艦のみの予定でしたが、近代化改装と現存艦の多さから使えそうと判断。旧ソ連時代の艦艇の中でもお気に入りの艦。


 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。
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