艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 空回り


 現在退職後の色々な手続きとかしながら療養中。ハッキリ申し上げて時間はあっても精神的な問題から集中力が持たず、ネタはあっても執筆に集中出来ない、気力がエンストしやすいのが悩みのタネ。それでもゆっくりと進めてまいります。


 コーヒー農園農園長兼サイパン島責任者飛行場姫と霧島(キリシマ)先生メイン。

 ついでに何かとどえらいお騒がせな深海棲艦ルーキー、駆逐ラ級についても。現在の予定では名前付けるつもりでいます。というか既にほぼ決めてます。正直に言えば姫級未満で通常イロハ級以上という、実は一番欲しかったポジションの娘達だったんで、イベントがラ級君達の大暴れで阿鼻叫喚となっているのを知りながら、この娘達は使えるとガッツポーズしてました。


第82話 Spin one's wheels.

 

 

 

 あの後駆逐棲姫が段々と眠たくなり、うつらうつらと船を漕ぎだしたため、お開きとなった。

 

 

 

 

「まったく。あの娘はどうして大事なことを一人で抱え込むのかしらね…」

 

 

 明日のための仕込みが終わった飛行場姫が、その日の疲れを癒す為にいつも入浴後に利用しているラウンジのソファに腰掛け、自身がブレンドしたコーヒーにアイリッシュ・ウイスキーを混ぜて生クリームを浮かべたカクテル、アイリッシュコーヒーを堪能して寛ぎながらも、先ほど厨房で聞き耳を立てていたアンドロメダ達の話の内容を頭の中で反芻し、思わず溜め息を吐きながらそう呟いた。

 

 

 普段アンドロメダはニコニコと微笑みながら楽しく仕事を、傍から見たら物凄い勢いで妹のアポロノーム共々片付けていた。

 

 側仕えという、実質的な直属の部下として仕える者達であり、アンドロメダには専属のお手伝いと説明して付けた同胞(はらから)から、止めどころを見失うと姉妹揃って延々と働き続けてしまうから、ストッパー役の駆逐棲姫にその都度叱られるのが、最早名物になっていると語っていた。

 

 

 側仕えの娘達もそんな日常にとても楽しそうに過ごしていた。

 

 

 

 因みにアンドロメダ姉妹の側仕えとは人類から『駆逐ラ級』と呼称される、一般的なイロハ級深海棲艦の駆逐艦では初となる艦娘と同様な姿形の、完全な人型をした駆逐艦の娘達である。

 

 

 その実力は従来の非人間型の駆逐艦級を明らかに上回り、姫級に迫るとも劣らないほどの強力なもので、実際に交戦した“とある”艦娘部隊からは、アメリカ方面でのアメリカ海軍第3艦隊(太平洋艦隊)との戦闘で、一度の会戦で出現した同一の姫級としては過去に前例が無いほど大量出現し、アメリカ軍からわざわざ“量産型”とカテゴライズされ、各国軍部に警報を発する程となった『米駆逐棲姫』と呼称される姫級に匹敵する可能性が高いと分析、報告されていた。

 

 事実、米駆逐棲姫は姫級の中でも最多の人数を誇っていたりする。

 

 なお、アンドロメダの姉としてずっと一緒に居る駆逐棲姫曰く、米駆逐棲姫とは活動海域の違いから、あまり面識のある間柄というわけではなく、昔一度だけだが、ハワイの拠点から慰安旅行目的で西太平洋方面へと訪問して来ていたグループに参加していた数人とたまたま会った事がある程度とのこと。

 

 

 一応、活動の中心がアメリカ方面だった事もあって日本方面での戦闘には、たまたまアジア方面に研修と現地視察のために出張していた折に、日本軍によるフィリピン方面海域への威力偵察作戦のタイミングと重なり、その時がたまたまフィリピン方面展開部隊の交代、再編途中で即応可能な戦力が不足していたから、急遽予定を変更し遊撃隊として参加した時くらいしか出た事は無かった。まぁそれでも姫級最多人数の片鱗は見せつけていたが、アメリカ方面と比較するとかなり控え目であった。

 

 とはいえ、日本侵攻の足掛かりであるフィリピン海域に複数の米駆逐棲姫が確認されたという事実から、近い内に“量産型”の姫級がアジア方面の西太平洋でも本格的に投入される可能性が高まったとして、日本海軍の外洋防衛を司り、土方が司令を務める外洋防衛総隊隷下の外周艦隊は未確認個体の出現に神経を尖らせた。

 

 

 そしてその後の奄美群島北東沖で生起した戦闘に、空軍の早期警戒管制機(AWACS)や艦娘の持つ偵察機部隊が多数の未確認個体を含んで編成された部隊を確認。

 

 これが駆逐ラ級の存在を人類が初めて認識したタイミングであり、これに対して土方は敏感に反応し、急遽予備兵力から高速戦艦隊並びに水雷戦隊を一部抽出して臨時の高速偵察部隊を編制。この部隊の指揮は土方の秘書艦である高速戦艦艦娘の金剛に一任され、更に予備兵力から抽出した空母隊による航空支援も付けて威力偵察を実施。

 

 

 その交戦データなどから米駆逐棲姫と同種の“量産型”姫級の新種である可能性が高いと判断し、土方は直ちに全軍に対し警戒警報を発令。同時に味方の被害拡大を阻止するために即時撃退を判断。“切り札”の投入を決断していた事が、最近のアンドロメダを介した日本海軍とのやりとりで判明した。

 

 それで、まぁ、その“切り札”として投入されたのが、深海棲艦から『ピンク髪に率いられた精鋭集団』として非常に恐れられている、“あの”春雨(ハルサメ)姉妹による特殊遊撃隊だった。

 

 

 ラ級達はその持てる力の限りを尽くした。姫級に迫る強力な個体である事を鼻に掛けず、毎日鍛錬を怠ることなく日々精進を重ねて来た。

 

 最初に遭遇した“通常”の艦娘部隊は、交戦開始直後より情報収集を目的とした“負けない戦い方”を選択していたことと、何より指揮を執る旗艦の金剛(高速戦艦艦娘)とその直率部隊が相当な手練れの戦闘集団であった事もあって、結果的に逃げられはしたが、終始優勢のまま戦いを進めることが出来た。

 

 

 事実、この時に交戦した金剛率いる威力偵察部隊は航空支援のために距離のあった空母隊は別として、直接交戦した偵察部隊はその殆どが大破による戦闘能力を損失した状態であり、支援のために飛ばした艦載機部隊の被害も想定を上回る激しい対空砲火を受けた事により、大損害を受けていた。

 

 

 だがそれが日本軍の警戒レベルを最大級にまで引き上げ、皮肉なことに外洋防衛総隊の、いや、日本軍“最凶”部隊を呼び込む結果となってしまったとは、思いもしなかった。

 

 

 春雨(ハルサメ)達はラ級が確認された部隊の中でも、最もラ級の人数が多い部隊に対して、狂気染みた攻勢を仕掛けたという。

 

 

 ラ級達は無論『ピンク髪』の事は事前に知っていたし、過去の交戦情報を独自に調べ上げ、最も厄介な脅威であると判断して最大限の警戒と遭遇しても積極的な交戦は避けて即時遅滞戦術に切り替え、救援要請を早急に出して周囲の部隊を呼び込み、何とか物量戦に持って行く算段を立て、そのための綿密な打ち合わせも充分にやっていた。

 

 

 だが何がなんだか分からないまま、強引に乱戦状態に縺れ込まされて仲間は次々と戦闘不能となっていった。

 

 それでも何とか粘りに粘って他の部隊や予備隊など、直ぐに動くことが可能だった戦力をありったけ呼び寄せ、当初の目論見にほぼ沿う物量に物を言わせての反撃を試みて押し返そうとしたものの、結果はたった10人の戦闘グループに、ただ一方的に蹂躙されただけに終わった。

 

 しかも誰一人戦没戦死せず、()()()()()()()()()()()()()()()()という、明らかに手加減されていたであろう事を突き付けられ、肉体的なダメージよりも精神的なダメージで打ちのめされた。

 

 

 しかしこの時部隊を率いて直接交戦(蹂躙)した戦闘指揮艦の春雨(ハルサメ)本人曰く───

 

「正直、手強かったです。奇襲に近い強襲を仕掛けた事で、目論見通り混乱させる事に成功こそしましたが、そこからの立ち直りが予想よりも早く、巧みな連携で想定以上に粘られ、さらに予想よりも早く予備兵力や増援が投入されたこともありまして、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 詳細な分析がまだですので、幾つか疑問点や不明点はありますが、現時点での私の私見では使用されたと推測される装備、個体としての戦闘技術や機動性能。なにより混乱しつつも遅滞戦へと切り替え、増援による戦力が整ったタイミングでの反転攻勢に移ったその判断力からも、相当な作戦指揮能力があるのが伺えます。

 

 以上のことを鑑みて、先の報告で金剛さん達が仰っていた通り、駆逐艦級の“量産型”姫級に相当するとして、全部隊に警戒を呼び掛ける必要があると具申致します」

 

───と報告していた。

 

 

 この「()()()()()()」というのは、春雨(ハルサメ)達が普段の作戦行動で使用する()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事を暗に示しており、事実この戦闘後の全員の偽装艤装は被弾などの損傷こそ無かったものの、内部機構はオーバーヒート寸前で事実上の大破判定を受け、完全分解によるフルメンテナンスが必要な状態であり、暫くの間は最悪の時は本来の艤装を隠すという方針を放棄する以外は、全員出撃不能状態となっていた。

 

 

 その報告を受けた霧島(キリシマ)と土方はこの事実を重く受けとめ、この推定“量産型”姫級の新種に対する更なる分析と、“通常の”部隊でも対抗可能な方策を早急に確立すべく、戦術研究に取り組んだ。

 

 同時に、外周艦隊全部隊に接敵しても直接交戦は可能な限り避ける様に命令し、真志妻大将を通して各国に対しても警戒を促す様に、そして彼女の指揮下である本土近海を担当する内海防衛艦隊にも警戒を呼び掛ける様にとの要請をかけた。

 

 

 ただその後しばらくして分析が進み、強力ではあるものの耐久性が他の駆逐艦級の姫級と比較して著しく劣っている事が判明し、更には姫級は今までの交戦記録から、総じて高い自己修復能力を有しており、撃破したはずの個体が短期間で何度も出現を繰り返しているのは、この能力に依る所が大きいとされているのだが、この新種にはそこまでの自己修復能力が備わっておらず、それは通常のイロハ級に該当する特徴であることから、最終的に姫級に近い戦闘能力を有しするイロハ級の新型、“駆逐ラ級”の識別コードが割り振られた。

 

 

 それでも通常の艦娘からしたら厄介な相手である事に変わりなく、発見次第空軍に対して緊急近接航空支援を要請せよとの通達が成され、空軍はそれに応じて最優先の航空攻撃を実行する決定が下された。

 

 これは航空支援可能範囲に侵入した姫級に対して実行される対応マニュアルと同等の迎撃方針であり、通常のイロハ級深海棲艦に対しては姫級への対処後に、脅威度認定の高い空母級を含む艦隊から順番に順次攻撃を行っている。

 

 詰まり駆逐ラ級は深海棲艦の主力空母である空母ヲ級の艦隊よりも脅威度認定が高く、姫級に準じる存在であると正式に判断されたのだ。

 

 

 現在の空軍は日本本土周辺海域への侵入を試みる深海棲艦に対する接近阻止攻撃任務に特化しており、迎撃されない高々度から、『深海棲艦に対してのみ、尚且つ海上でのみの使用が限定可能なのであれば、特例として開発・製造・保有・使用を認める』との特別条項が新たに設けられた“改定クラスター爆弾禁止条約”に基づき条約締結国でも保有と使用が許されたクラスター爆弾の雨を降らせている。

 

 また高価なミサイルと違って面制圧などの費用対効果に優れており、外れても子弾の同時着弾の際に発生する無数の水柱から視覚による威嚇効果も見込める。

 

 状況次第では運用コストがミサイルよりも安価で、直撃すれば一撃の破壊力がクラスター爆弾よりも優れている滑空爆弾を使用する場合もあるし、最大限の脅威に対しては面制圧と破壊力の両方に優れではいるが、保有量が限られているサーモバリック爆弾が投入される。

 

 

 これにより、現在空軍が保有する航空戦力は従来の様なミサイルを一切装備せず、主翼や機体下部のパイロンには各種の爆弾を満載した攻撃機として常にスクランブル態勢で待機している。

 

 

 事実、自分達の警戒範囲外から、そして迎撃機や対空砲火が一切届かない遥か上空を悠々と飛行し、一方的に爆弾の雨を降らせて帰って行く人類の航空戦力に対して深海棲艦はかなり手を焼いており、艦隊陣形の幅や艦隊間の距離を大きく広げるなどして被害を最小限にとどめるための工夫や、姫級達はイロハ級に似た格好に偽装して脅威認定を誤魔化そうと、自身と体格が似ているイロハ級のコスプレを施すなどの、涙ぐましい努力を試みており、その努力は今なお継続中とのこと。

 

 閑話休題。

 

 

 だが当のラ級本人達はまさか自分達がそんな高い評価と脅威認定をされていたなどとは思いも寄らないことであり、この戦闘で50体のラ級とその他の戦力を以てしても圧倒的、いや、絶望的なまでの力の差で捻じ伏せられてしまったとして心が完全に折れ、戦いに対して強いトラウマを植え付けられて塞ぎ込んでしまい、後方の事務担当勤務に異動となるか完全リタイアで引退したり、比較的軽い症状の者でも以後の作戦で人類側の猛爆に耐えかねる個体が続出。

 

 

 戦闘能力は姫級に匹敵しても、その耐久はそれまでのイロハ級よりは高い程度で、クラスター爆弾の子弾でも当たりどころ次第では注意が必要なのに、ましてや姫級ですら直撃すると一撃で大破させられる事もある大型滑空爆弾の直撃や、使用頻度は低いがサーモバリック爆弾の爆発加害範囲内にいようものなら、遺体すら残らない様な即死が免れないのだ。そもそも至近弾ですら致命傷である。

 

 厄介なことに、日本を支援する新ロシア連邦(NRF)はこの手のクラスター爆弾や滑空爆弾が旧ソ連時代からの在庫と第三次大戦での新規生産で腐る程有り余っており、日本に対して在庫処分も兼ねて捨て値に近い格安で提供していた。ただし、サーモバリック爆弾は新ロシア連邦(NRF)本国軍での使用と備蓄が優先とされたため、供給量は控え目であった。

 

 

 そしてその新ロシア連邦(NRF)が日本に於ける自国の権益である千葉の南関東ガス田の防衛、現地に進出した新ロシア連邦(NRF)の半国営ガス会社Газпром(ガスプロム)社従業員といった現地邦人保護を名目に、旧北方四島の航空宇宙軍基地から哨戒機や爆装した航空戦力を飛ばす事もあるのだが、ガスプロムが海外従業員保護の為に契約しているとされる民間軍事会社(PMC)が、首都東京壊滅以降に放棄されていた関東圏にある飛行場設備を借用、修繕して独自保有としている航空戦力を飛ばしたりもしている。

 

 

 当初は現地邦人の要望に基づき、本国との往来や現地で不足する機材や生活物資に医薬品の輸送と、万が一に際して速やかに本国へと邦人を避難させるための輸送機の運用が可能な滑走路を欲していると、新ロシア連邦(NRF)政府外交筋を通して日本政府へと打診がなされたのが切っ掛けで、交渉の末に当初は買収だったものを、政権内部で新ロシア連邦(NRF)民間軍事会社(PMC)が駐留する事に関しての賛否で意見が割れて交渉が難航。ただ対立するどちらも少しでも外貨を獲得したいとの点では意見の一致もあったため、最終的に貸与という体裁での合意が締結された。

 

 締結後、輸送機と共に飛来したのが、先述の民間軍事会社(PMC)が独自保有していると主張する航空部隊だった。

 

 この部隊はその装備の充実ぶりと作戦行動などから、どう考えても新ロシア連邦(NRF)航空宇宙軍の指揮管制下で動いているフシがあったり、警護という名目でいつの間にか展開していた陸上部隊も装備が矢鱈と充実しているなど、民間軍事会社(PMC)に偽った新ロシア連邦(NRF)正規軍の疑惑が濃厚で、飛行場貸与を切っ掛けに殆ど実効支配に近い租借地と化してしまっているが、日本政府及び軍部としては壊滅した関東圏の防衛にまで兵力を回す余力が既に無かったため、またなんだかんだ言っても当初交わされた貸与の代金に少なくない色を付けて支払われている事から、この行動を事実上黙認している。

 

 何より空軍予算の多くが艦娘の基地航空隊部門に割かれている事から、従来の空軍戦力維持に回せる予算が少なく、基地航空隊部門予算と抱き合わせる事で何とか現行戦力の維持に努めているとされている空軍としても、この民間軍事会社(PMC)の航空部隊は魅力的であり、何より旧空自時代からの戦闘機が消耗部品の枯渇による稼働率低下から、新ロシア連邦(NRF)製戦闘機を急遽採用し機種変更する様になった事も相俟って、同社の航空要員を教官として秘密裏に招聘したり共同作戦を展開する密約を()()()()()()取り付けていた。

 

 それだけでなく、金銭の受け渡しや軍事物資、たまに分解すればパーツ取りに使える使い古しの機体などの横流しが平然と行なわれているとの噂もある。

 

 

 ただこれらの事もあって、空軍は比較的高い稼働率や練度が維持されているとの指摘もあり、それが結果として航空作戦に於ける任務成功確率の高さにも繋がっているともされているため、下手に追求する訳にはいかなくなっている。

 

 まさに痛し痒しである。だが深海棲艦にとってはそのせいで容赦無く激しい爆弾の雨を降らされまくっているものだから、たまったものではないが。

 

 

 こういったこともあって、ラ級達は前線配備ではなく後方の輸送隊護衛任務や拠点防衛任務に回される事態となってしまった。 

 

 それがなんの因果か、トラウマの原因となった春雨(ハルサメ)達の嘗ての上司と言っても差し支えのない存在であるアンドロメダ付きの側仕えとして、後方事務担当に回されていたラ級の数人が仕事を手伝っている。

 

 

 真面目で仕事熱心。言われたことを卒無く黙々とやり遂げ、分からない事は率直に聞くなど、着飾らない優秀な部類ではあるものの、先のトラウマも影響してか失敗を極度に恐れて多少のことでも取り乱したり落ち込んで自責思考に陥りやすく、更に追い打ちとなる様に、自分が前線に出たりしたから他の同胞(はらから)達に要らぬ被害を出してしまった。自分達は疫病神だと思い込んでしまっており、自分から周りを遠ざけようとしてしまっているのが玉にキズであるとされていた。

 

 しかしアンドロメダはそんな彼女達に親身に寄り添いながら、しっかりと丹念に指導し、どんな小さな事でも褒め、自分達が日々取り組んでいる仕事は一見地味だが、私達同胞(はらから)達の活動を陰日向に支える大切な仕事であり、それを卒無くやり遂げられているだけでも、貴女達は同胞(はらから)になくてはならない大切な存在で、貴女達は決して疫病神なんかじゃないと優しく言い聞かせ続けた。

 

 

 その甲斐もあって塞ぎ込みがちだった彼女達は少しずつ元気を取り戻し、アンドロメダにとても懐くようになった。

 

 アンドロメダもそんな彼女達を心から受け入れ、とても可愛がっていた。

 

 

 ところで駆逐棲姫とラ級達はこの島で会うまで直接的な面識は無かったものの、お互いが同じ駆逐艦という艦種同士でもあり、何よりお互い大好きなモノがアンドロメダであるということもあって、今では完全に同好の士として意気投合している。

 

 そんな駆逐棲姫と種族の枠組みを越えた姉妹関係となり、そして相思相愛の仲であるアンドロメダとの仲睦まじさに、ラ級達は尊さを感じた。

 

 

 そこから公私に渡って2人に仕えるような感じとなっている。ただし2人のプライベート時間はちゃんと弁えているはずである。

 

 

 兎も角として、そんな側仕えのラ級達とも上手くやって行けており、他の同僚の同胞(はらから)達とも毎日楽しく仕事に打ち込んでいたものだから、その内心に抱え込んでしまっているものに気付くことが出来なかった。

 

 

 ただ妹のアポロノームにそれとなく聞いたら、「姉貴は表情に出さないからなぁ」と遠い目をしながら返してきた。

 

 身内のアポロノームですら気が付くことが難しいのだ。

 

 

 お互い心を開きあい、双方の合意のもとに身内同然の同胞(はらから)となったものの、元々の身内ですら気付くことが難しいアンドロメダの心の内を、深海棲艦達が気付くのは流石に難しい。

 

 もしかしたら駆逐棲姫は何か勘付いていたかもしれないが…。

 

 

 それでも、せっかく同胞(はらから)となったのだから、出来れば書簡とかの形式に拘る事無く、いつでも気軽に言葉にして相談して欲しいとの思いから、飛行場姫は愚痴と共に溜め息を吐くしか無かった。

 

 

「まぁそう言いなさんなって。あの娘は不器用なんだよ」

 

 

 飛行場姫の向かい側の席に座る霧島(キリシマ)が、ロック割りのスコッチ・ウイスキーのグラスを片手に、飛行場姫の愚痴にそう返した。

 

 

 客人でありながら、またアンドロメダ(教え子)のほんわかとしたヒトに好かれやすい雰囲気と比べると、普段の言葉遣いはややぶっきらぼうで、目付きのキツい三白眼をした目の下にはクマがあり、草臥れた感じのする風貌からは言葉に表せない凄味と近寄り難い雰囲気があるものの、日本ではなんだかんだ言って仲間の悩みを聞いたりと相談役や御意見番みたいなことをやってたりもしていたからか、ここでも飛行場姫や他の姫級達の話相手をすることが増えていた。

 

 

 その時は決まってお互い酒を片手に、基本的に夜中は姫級のみが寛ぐ場という、一種の暗黙のルールが存在するラウンジで、酒の席の上での与太話という形をとっている。その方が普段なら口に出来ない不満やら何やらが喋り易くなるからだ。

 

 

 それは教え子であるアンドロメダにも言えると、霧島(キリシマ)は思っている。

 

 

「不器用で心配症。それでいて周りに心配をかけさせまいと、気丈に振る舞っちまうのが板に付きすぎちまってるのさね。

 

 まぁ軍にいた頃の感覚がまだ抜け切れてないのもあんだろうね。あン頃は思考は出来ても、それ以上の事が出来なかったからねぇ…」

 

 

 自身にも覚えがあるのか、どこか遠くを眺める様に、過ぎ去った過去を懐かしむ様に噛み締めて語る霧島(キリシマ)に、飛行場姫は何とも言えない表情を浮かべる。

 

 因みに霧島(キリシマ)の言った軍とは、地球軍の事である。

 

 

 そんな霧島(キリシマ)は、最愛の教え子が今や教えを請われ、知識と技術を授ける立場になったことに、その姿を見て教え子の成長を嬉しく思う、喜びの感情を抱いていた。

 

 まぁ教師と教え子というよりも、面倒見の良い先輩と、その先輩を尊敬し慕う後輩の様に見えなくもないが。少なくともとても仲の良い親密な関係を築けている事に、内心では安堵していた。

 

 自身がそうだったが、異邦人故の無意識に心理的な壁を作ってしまい、集団の中で浮いたり距離感が掴めず孤立する事があって苦労したものだ。

 

 春雨(ハルサメ)達も、最初のうちは何かと苦労していた。

 

 

 生きた時代が違い過ぎるのだ。どうしても価値観や判断基準、死生観といった物の考え方で何かしらのズレが出てきてしまうのだ。

 

 …まあ、春雨(ハルサメ)海風(ウミカゼ)の2人に関しては、お互いが絶妙にバランスの取れた共依存の関係という、特殊過ぎて別の意味でかなり浮いていたが。

 

 

 だがアンドロメダを見ていると、今の所はそこまで大きな心配はなさそうで、胸を撫で下ろしていた。ただ妹のアポロノームは元々がフランクで姉御肌な性格だったこともあり、些かヤンチャに振る舞う様な素振りが垣間見え、トラブルを起こさないか心配になってはいる。まぁ姉の手前、変なことは起こさないと信じているが。

 

 

 

「貴女はそう言うけどねぇ、あの娘が貴女と貴女の故郷の娘達にとって大切な存在である様に、アタシ達にとってもあの娘は大切な、同胞(はらから)の一員なの。

 

 あの娘が種族の違いはあれど、同胞(はらから)として共にありたいとの意思を示してくれた時、アタシはどんなに嬉しかったことか…。

 

 だからあの娘の心の内で思い詰めていたことに気付いてあげられなかったのが、アタシには辛いのよ…」

 

 

 飛行場姫は悲しそうに霧島(キリシマ)に言い返す。

 

 

 霧島(キリシマ)は滞在していて感じた事だが、彼女達、深海棲艦は同族への愛情が非常に強い。そして仮令同族でなくても、一度完全に心を開きあって受け入れた者に対しても同様であった。

 

 

 事実、アンドロメダとその妹アポロノームは立場としては飛行場姫の配下という扱いになっているのだが、当の飛行場姫自身は2人を可愛い年下の従姉妹の様な存在に思っている。正直立場なんてどうでもいい。甘えて来て欲しいし、甘やかしたい。純粋な武力で言えば2人の方が圧倒的に強い。それでも庇護欲全開で守ってあげたいとの思いが強い。

 

 2人は想像を絶する人類種の存続を賭けた宇宙絶滅戦争の真っ只中で激しく戦い、そしてアポロノーム()アンドロメダ()を庇う様に助けた直後に散華し、そのアンドロメダ()アポロノーム()を失った直後に彼女が最愛の存在とするヤマト()までもがほぼ戦没(生死不明)となる瞬間までも見てしまい、悲しみと憎悪のあまりに他者を思い遣る優しく温厚な心が豹変して悪鬼羅刹と化し、復讐一辺倒の自暴自棄な戦いに身を投じる様になってしまいながらも、最前線での激しい戦闘のさなかに沈んだ(死んだ)と思っていたヤマト()と再開したことで本来の心を取り戻し、ヤマト()の窮地を最後の気力を振り絞って助け出した直後に、その助けたヤマト()の目の前で跡形も無く消滅してしまったという、あまりにも非業過ぎる最期を遂げてこの世界に来たのだ。

 

 

 2人共、もう充分過ぎるほど戦った(苦しんだ)のだ。

 

 

 もう戦いなんて忘れて、こっちの世界ではのんびりと悠々自適に過ごしてもらいたいし、そうさせてあげたいと、深海棲艦の姫達は2人と関わりを深めていくうちに、2人を知れば知るほど、自然とその思いが強くなっていっていた。

 

 特に姉のアンドロメダは、本人には言わないが、ただ優しいだけでなく、その精神が些か繊細に過ぎる。戦いといった争い事には向いていない性格だ。

 

 

 本人には悪いが、正直生まれてくる時代が悪過ぎたと思うのだ。

 

 

 もしも戦乱の遠退いた平和な時代に建造されな(生まれた)のならば、お役御免で退役するその時まで大過なく役目を勤め上げ、その温厚な優しい性格のまま一生の大半を愛するモノ達に囲まれて、幸せで心穏やかなまま終える事が出来たことだろう。

 

 

 だが時代がそれを許さなかった。彼女の繊細な心に重すぎる宿命を強要した。結果、その心に深い傷を残したのだ。

 

 

 アンドロメダは駆逐棲姫を「お姉ちゃん」と呼んで慕って懐き、駆逐棲姫はそんなアンドロメダを「私の大切な妹」と公言して可愛がり、相変わらずお互いを想い合っているが、最近アンドロメダは普段見せない様な、とろんとした顔で駆逐棲姫に甘えを見せる事が多くなっていた。

 

 

 駆逐棲姫はそれを嫌がることなく、寧ろとても喜び、愛する妹分であるアンドロメダの甘えを優しく受け入れてさらに可愛がっている。

 

 

 おそらく、これが本来のアンドロメダの本当の姿なのではないか?本当は甘えたい相手にはとことん甘え様とする。

 

 

「あの娘、本当は甘えん坊なんじゃないの?」

 

 

 その飛行場姫の問いに、霧島(キリシマ)は「ふむ…」と、考え込む素振りをする。

 

 

 今にして思えば母親のヤマトとの数少ないひと時を過ごしていた際、あの娘は普段は見せないとてもリラックスした顔をしていた様な気がする。

 

 それはもしかしたらヤマトへの、思いっきり甘えたいとの感情がチラついていたのかもしれない。

 

 

 そう言えば昔ヤマトから、あの娘から恥ずかしそうに頬を赤らめてモジモジしながら膝枕を上目遣いでおねだりされ、あまりの可愛さから即OKしたとか、その際に嬉しさのあまり蕩けきった顔で太腿に、それでも恥ずかしさからか控え目に頬擦りする姿がまた可愛くて理性がトビかけたとかなんと…。そんな惚気話か自慢話かよくわからない話を物凄いハイテンションのマシンガントークで聞かされた様な記憶が…。

 

 あまりの勢いに押されて殆ど聞き流してたが、たしかそんな感じだったはず…。

 

 

 記憶を頼りに熟考した結果、思い出したあの頃の記憶。この世界にやって来てからもう何年も経っていたから、ついつい忘れていた。

 

 いやはや歳は取りたくないものだねぇ…。

 

 

 というか、そもそも私をいつも「先生」「先生」と呼んで笑顔で慕ってくれていたのも…。

 

 

「…否定は出来ないかも───」

 

 

 そこまで言って、ふと思った。あの頃のあの娘はその立場もあって心の内で本心を隠す様にしていたからか、どうも本心とかを無意識に抑えつけて素直になれないみたいになっているのかも。

 

 だがあの駆逐艦の姫さんは矢鱈とスキンシップが好きだとか。それが結果としてあの娘の抑えていた心の“枷”の様なものを徐々に、そして次々にベリベリと引っ剥がし取っ払って…。

 

 

「猫か、あの娘は…?」

 

 

 思わずそう呟いてしまった。猫にも色々あるが、たまに鎮守府に迷い込んでそのまま居付く野良猫に、なんかそんなのがいた。

 

 初めは警戒とかしていたが、駆逐艦の娘らが何かと相手をしているうちになんか懐かれたり甘えて無防備な姿を晒したりしだしたと聞いた。

 

 

 何となくそれに似てる気がしてきた…。

 

 

「なら、アタシ達にも甘えて欲しいの。甘えたい欲望と衝動に正直になって、本当は甘えん坊な所をアタシ達にさらけ出して欲しい。アタシ達に欲望の赴くままに存分に甘えて来て良いの。アタシ達はそれを喜んで受けとめてあげる。みんなにこれでもかと甘え倒して欲しいの。

 

 アタシ達はそれを絶対に拒まないから…。

 

 あの娘には、この世界で負わなければならない責任や義務なんて、本当ならこれっぽっちも無いのよ…」

 

 

 

 だから、私達のために抱え込まないで…。

 

 

 

 最後はか細い声でそう呟いた。その顔はいつものややガサツそうな姉貴分的なものとは違い、今にも泣きそうなほどの悲しみを湛えていた。

 

 

 そんな顔をされるとは思っていなかった霧島(キリシマ)は、これはもしかして昔に何かあったな?と思考を巡らせるが、それを今ここで聞き出すのは無粋だと判断して胸中にとどめ、軽く息を吐きだし、徐ろに懐から葉巻を取り出すと愛用のライターで火を灯し、紫煙を燻らせ始めた。霧島(キリシマ)にとってありがたいことに、飛行場姫を含めて大概の姫級達は喫煙に対して寛容であった。

 

 

 

「…ホント、アンタら()なんだかんだ言いながら心根が優しいねぇ」

 

 

 これは皮肉無しに霧島(キリシマ)の率直な思いだった。

 

 

 葉巻を口に咥え、自身がここに来てから悉に見てきた深海棲艦達の事を思い浮かべた。

 

 

 私自身、実際にここで世話してもらっている傍ら、何人かの姫さんや世話役の戦艦ル級といったイロハ級。なんならあの娘が深海棲艦の一員としての仕事の傍ら育成に力を入れている駆逐ラ級のお嬢ちゃん達とも一通り話をしたし、一番あの娘が世話になり、擬似姉妹としながらもお互い懐き合い相思相愛な仲である駆逐棲姫の嬢ちゃんとも言葉を交わし合ったが、「なんでこいつら戦争してるんだ?」と言いたくなるくらいに、その心根が温厚でお人好しなのだ。

 

 

 因みにこの島では泊地棲姫が子供達から好かれているが、聞いたところによると、インドネシアで港湾管理長の肩書を持つという港湾棲姫は、その巨大な背丈や、本来は自身が侵蝕し自らの艤装と化した港湾設備を操作する役割と共に、人間程度なら容易に引き裂ける鋭利な爪指の艤装を有しているのだが、どうも生来から戦いに対してあまりにも向いていなさ過ぎる性格の様で、他者を傷付ける事に嫌悪感がある言って爪指の武器としての機能を自ら使えなくしてしまった程の心根の優しさの持ち主らしく、泊地棲姫をして同胞(はらから)随一の母性の塊と言わしめ、人間の子供達から途轍もなく懐かれ、困り顔をしながらも子供達に深い愛情を惜しみなく注いでいるとのこと。

 

 それでいて元々から姉妹とも言える北方棲姫の事を溺愛し過ぎるあまり、自身が陸上型で航行不能にも関わらず、「ちょっと妹に会いに行って来ます」と言っては何度も港で水没し、その都度他の姫級や部下達、挙句の果てに領内に住む人間達にまで救助されるという、とんでもない抜け具合を発揮するオッチョコチョイでもあるらしい。

 

 

 飛行場姫の嬢ちゃんはあの娘が戦いに向いていないと言った。その事には同意するが、正直な所感として、アンタらも良くも悪くも、丁々発止や時には騙し合うといった駆け引きの類いに向いていない。

 

 まぁ人類に対する不信感とか、もっともらしい理由は口にしているが、本気で嫌って拒絶しているならば、子供達の面倒なんて見ないだろうし、限定的とはいえ領域内に居る人類と共存するなんて真似はしないだろう。

 

 良くて労働奴隷として使い潰す行為に及んでも可怪しくないのに、まるでそれが当たり前であるかのように共に土を耕し、作物を育て、そして収穫を共に喜び合い、その食糧を当然の様に分け与え、何でもないように清潔な水まで無償で与えている。

 

 

 それだけに飽き足らず、酒にコーヒー、茶葉などの数々の嗜好品を試作してはその都度改良を繰り返して製造にまで漕ぎ着け、領域内で流通させているし、人類の領域へと余剰食糧を含めて密輸まで成功させている。

 

 しかもその総量は徐々にではあるが、年々右肩上がりである。それはつまり開墾による農地面積の拡大が順調に進み、労働力が不足しておらず、また生産効率が向上している事を意味している。

 

 それでいて面倒を見ている人間の子供達に最低限の読み書きや計算などの、所謂寺子屋的な教育を「読み書きが出来た方がなにかと便利だから」と言って施しているとのこと。実際にここでは泊地棲姫や彼女に仕える深海棲艦が子供達に文字の読み書きを教えている所を見させてもらった。

 

 ただどうしても紙とかの筆記用具に関しては領域外との交易取引でしか入手経路が無く、日々の業務でも使用する都合上、慢性的に不足気味だとのこと。そのため現在こちらに向けて順調に航行中の日露艦隊に積み込まれた物資の一部は、始めから贈り物とする事が秘密裏に決定していたのだが、定時連絡の遣り取りから急遽追加で大量の紙と筆記用具が積載されたと聞いている。

 

 

 正直なんで未だに戦争なんかしてんだろうねぇ?その言葉しか出て来ない。

 

 

 いやまぁ、落とし所とか、終わらせる為の外交とかのノウハウが無いとか、そもそも外交の為の窓口が無いとかの、理由は幾らでも挙げられるが、言い出したら切りが無いからそれらの問題というか課題は一旦脇に置いておこう。

 

 

 少なくとも、ここに来て出会った深海棲艦はみな揃いも揃って良い娘達ばかりだ…。

 

 

 

 

 あの娘がここでの生活にとても馴染んでいるのもよく分かる。優しいけど、なんだかんだ言ってヒトの好き嫌いが激しい娘でもあるからねぇ…。

 

 

 あの娘はここの連中がみんな大好きなんだ。大好きだから、守りたいんだ。嫌いな奴のために、考え得る今後起こるかもしれない悪い可能性とそれによって起こり得る不利益、対応策を考えたりはしないだろう。

 

 

 心配して心配して、可能な限り対策を考える。楽観的になって足元を掬われるよりかは、とことん心配する。それが杞憂で終わったのならばそれで良し。なにか出来たのに何もせず傍観し、いざ事が起きた際に軽々しく「想定外でした」などと宣う痴れ者に堕ちたくない。

 

 

 全ては大好きなみんなのために。出来ることに全力を尽くそうとする。

 

 

 だから、()()()()()()()

 

 

 

 

「教え子であるあの娘にはちと悪いけどね、私から言わしてもらうとだが、あの娘の考える心配事の一部は完全に杞憂だと考えるね」

 

 






 猫と化すアンドロメダ…。でもアンドロメダには心許せて安心し切っている相手にはそれくらい腑抜けたというか心安らいでる姿を見せてもいいと思うとの、私の願望。

 もしも駆逐棲姫にちゃんとした足があったなら、アンドロメダは確実に膝枕をおねだりしていた。

 てなわけで、アンドロメダ大好き時間断層工廠工場長ドーラにはアンドロメダのささやかな願望を叶えて貰うために、所謂再生医療も頑張って貰う予定。オラッ!ビシバシ働け!



 ラ級達の名前は人類側識別コードのα、β、γ、δ、ζをアンドロメダ座を構成する恒星の仮符号と一致する恒星の名称から採ります。

 α、アンドロメダ座α星の別名から『アルフェラッツ』。のつもりでしたが、それだとアンドロメダの末妹と被るため短縮して『アルフェ』。
 β、アンドロメダ座β星の別名から『ミラーク』。
 γ、アンドロメダ座γ星の別名から『アルマク』。
 δ、アンドロメダ座δ星は別名も『デルタ』のため、奎宿の拼音(ピンイン)より『クイサー』。
 ζ、アンドロメダ座ζ星は別名が無く、奎宿の2番星を意味する奎宿二の拼音(ピンイン)より『クイス』。

 拼音(ピンイン)とはラテン文字を使用する中国語の発音記号体系のこと。
 奎宿で統一する事も考えましたが、そしたらアンドロメダ座α星だけハブられてました…。

 以後アンドロメダ達の側仕えとして、姫級以外の深海棲艦準レギュラー枠でちょこちょこ出す予定です。現在の予定では日本への渡航にも、全員かは分かりませんが同行する予定。


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補足解説と説明


Газпром(ガスプロム)

 天然ガスの生産と供給に於いて世界最大の企業。創立は1992年2月17日。

 ロシア政府が株式の50.23%を保有する半国営の天然ガス独占企業。


 本作に於いて日本に進出しており、千葉の南関東ガス田の採掘事業を担っています。

 同社が契約しているとされ、日本に展開する民間軍事会社(PMC)新ロシア連邦(NRF)の法律に基づきСовет Безопасности РФ(連邦安全保障会議)の影響下にあるため、新ロシア連邦(NRF)軍とは密接な関係で、実質新ロシア連邦(NRF)軍が日本に駐留していると言っても過言ではありませんが、所謂グレーゾーンです。

 因みに装備は日本軍よりも良いです。

 量では日本軍が上回りますが、武力衝突となりますと無視出来ない損害を被るためメリットが無く、武力を以て追い出す事は実質的に不可能です。そもそも新ロシア連邦(NRF)からのシーレーンでなんとか生き長らえている状態ですからね。


 本音を言いますと、設定で日本の国力を下げ過ぎた弊害がここに来て私の首を絞めた結果、苦肉の策として出した次第です…。いや空軍ってマジで維持大変なんすよ…。主力戦闘機としたSu-30MKやMiG-35といった第四世代機の維持は、この世界の日本の落ち込んだ国力だと本当は無茶なレベル…。Su-30MKに関しては極東のコムソモリスク・ナ・アムーレにスホーイ社の製造工場があるため、頑張ればなんとかなりそうではあるのですが。戦闘攻撃機のSu-24を航空宇宙軍へのSu-34の配備増加で順次退役した機や、先の大戦で再生産して余剰となったSu-25攻撃機なんかを払い下げで供与を受けたの方がまだ現実的だった可能性、大…。そのうち出そうかな…?こういった所に私の詰めの甘さが出て来る…。

 兎も角空軍の維持を考えたら、横流しとかの非正規ルートの窓口が必要と思い、苦肉の策として民間軍事会社(PMC)の駐留を決めました…。


深海棲艦に対して高々度爆撃は効果的なのか?

 正直なんとも言えません。

 人間サイズだけど防御力が人間と段違いに高く、機動性も高い。滑空爆弾を使用しても、命中さえすれば効果があるだろうけど、その肝心の命中率は如何程のものか?面制圧可能なクラスター爆弾にも成形炸薬弾頭の対装甲攻撃型があるため、当たればそれなりに効果はあるとはしています。一番効果が高いのはサーモバリック爆弾だと思います。

 少なくともミサイルよりかは運用コストに優れてはいるのは確実です。

 牽制や足止め、陣形を乱したりする事は出来るし、奇襲効果もある程度は期待出来る。

 因みに使用爆弾はロシア製FAB(ファブ)無誘導爆弾に精密誘導能力を付与し、射程も延伸するキットを装着して滑空爆弾化した物です。アメリカのJDAMに相当します。本来はFAB滑空爆弾の誘導方式はGPS衛星リンク型ですが、本作ではJDAM同様レーザー誘導型もあるという設定です。

 FABは現実でも旧ソ連時代から大量の在庫を航空宇宙軍が抱えており、JDAMの様に専門の設備で誘導装置キットを装着しなくても、現地の飛行場で装着する事が可能など、兵器としての方向性は似通っていても運用コスト面を含めてJDAMとは色々と差異があります。誘導装置キットの名称はУМПК(UMPK)(Унифицированный модуль планирования и коррекции、統合滑空修正モジュール)。なお誘導装置が始めから付いている精密誘導爆弾はKAB(カブ)と呼ばれます。

 FAB或いはKABの次に表記されます数字はその爆弾の重量を表しています。FAB(KAB)-500ですと重量500kgとなります。


 本当は徘徊型自律兵器、所謂自爆ドローンの大量投入による波状攻撃で、対応能力を飽和させた段階で仕掛けるのが効果的かもしれませんが、深海棲艦相手だといくら安価な自爆ドローンとはいえ費用対効果に疑問符が浮かびます。ただ現実でドローン兵器の発展具合が想像よりも早く凄まじいだけでなく、低コスト化と省力化も図られている物もあることから、執筆開始当初よりもまだなんとか使えるかも?というレベルにはなってきているのが少々悩ましい。


 結局のところ、現代の戦闘で安価なドローンに対して高価な迎撃ミサイルを使用するのと同様に、費用対効果では深海棲艦に対して従来の通常兵器は割に合わない場合が多く、だけど何もしないよりかはマシなのかも。

 姫級などの厄介と判断された高価値目標に狙いを絞ってプレッシャーを与え続ける事が出来れば、それだけ消耗を強要出来るし、ラッキーパンチで無力化させる事が出来れば、本命の艦娘部隊への負担が軽減出来る。

 艦娘部隊の支援として効果があるならば、それだけでもやってみるだけの価値があると考えている。というのが、一応現時点での私の考え。



 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。
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