艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 不安要素。

 いよいよ深海棲艦マリアナ諸島勢力圏へと突入。の前に、「もしもし?問題発生」


第88話 Anxiety factor.

 

 

「ヌオぉぉぉ…!!」

 

 

 Гангут(ガングート)は『かが』の公室で激しく身悶えていた。

 

 

「まぁ…、その、なんだ。気をしっかり保て」

 

 

 

 艦隊は予定通りマリアナ諸島サイパン島への航行を続けていた。

 

 日本艦隊では最初こそ混乱はあったものの、艦隊乗員はもとより士気が低かった事からも「戦闘が起きないのならば」と賛同の意思を示し、艦娘達は最終的には自分達が敬愛するボス、“総提督”真志妻亜麻美の考えならばそれに従うという形で落ち着いた。

 

 新ロシア連邦(NRF)艦隊は大統領の会見と、直後の自分達のマスコット的上官によるその場のノリと勢いとводка(ウォッカ)をキメた様な演説の勢いにより、異を唱える者は居なかった。

 

 

 その後にマリアナ諸島に到達する前の、最後の打ち合わせをすべく関係者を『かが』へと呼び集めていた。

 

 日本艦隊からは艦隊を指揮する土方司令、旗艦『かが』の艦長田沼少将。新ロシア連邦(NRF)艦隊からは連絡将校のСофи(ソフィー)少佐ことГангут(ガングート)。そしてオブザーバーと警護のために数名の艦娘が『かが』艦内で高級将校が会合を行なったりする際に使用される公室に集まったわけなのだが、その際にГангут(ガングート)は自身の勢い余った先の演説がバッチリ傍受されていた事実を知り、羞恥で顔を真っ赤っ赤にして頭を抱えながら身悶え現在に至る。

 

 

 流石の土方もこれには宥めるしか出来なかったが、嘗てГангут(ガングート)が現役の艦娘時代に日本へと派遣されていた際の真志妻麾下の部隊で同僚だった経験から、こういう時の対処方法も弁えていた。

 

 

「それで、例の件についてだが、矢張り潜水艦か?」

 

 

「あぁ。音紋の解析からянки(ヤンキー)の『Virginia(ヴァージニア)』級攻撃型原潜だと判明した。そいつが1隻、およそ1時間ほど前から付かず離れずの距離を保ったままこの艦隊を追尾している」

 

 

 先程の羞恥に身悶えていた姿は何処へやら、真面目な話となると途端にスイッチが切り替わって落ち着き払った姿となるのである。

 

 因みに音紋とは水上艦艇及び潜水艦のエンジン、推進器、船体の振動などによって発する音の周波数を分析して得られる波形の特徴から、人間の指紋の様に特定が可能であり、その音源から艦種と艦名を割り出せるのである。

 

 特に水中での活動がメインの潜水艦だと、目視確認が困難であるため音紋解析による識別に依存している。

 

 閑話休題。

 

 

「…1隻だけか?」

 

 

「今のところは。

 

 それと、ここへ赴く直前にХабаровск(ハバロフスク)の司令部から連絡があったのだが、現在Воздушно-Космические Силы(航空宇宙軍)11-я армия ВВС и ПВО(第11航空・防空軍)が長駆太平洋方面まで飛ばしているСамолёт ДРЛО(早期警戒管制機)がU-2偵察機らしき機影を日本本土上空で捕捉。高々度で南下しているのを確認したとの報告が来ている。予想針路は、この艦隊だ。

 

 この事に関してそちらで何か情報はないか?」 

 

 

 土方は1隻だけの米原潜に何か引っ掛かる物を感じたが、一旦棚上げにして先にГангут(ガングート)からの問いに関連している可能性が高いと思われる情報を答えた。

 

 

「関連があるとすれば、在日米軍が岩国基地周辺で空軍の基地航空隊とトラブルを起こしたという情報がある。

 

 詳しい内容は情報が錯綜していて不明だが、今の段階で分かっているのは現地の空軍基地航空隊の活動を米軍の無人機が突如飛来し妨害。同時刻、周辺空域を監視するレーダーサイトが南下する不明機を一瞬だけ捉えたとの情報もある」

 

 

日本(こっち)の都合なんて知ったこっちゃない。なんて事は米軍の連中の今までからしてよくあることなんですがねぇ、今回のはいくらなんでも度を越してるってんで、空軍に配属されている艦娘達も相当ブチギレてるみたいなんですよ。

 

 なんせ基地航空隊に所属する貴重な対潜哨戒機の東海(とうかい)を含めた何機かがこの妨害行為で墜落したって話なんでね、それで敵機の襲来かと慌てた防空隊がスクランブルしたとか、対空砲を撃ち上げて味方を誤射して撃ち落としたとか、兎も角情報が混乱しているみたいなんですよ」

 

 

 土方の言を引き継ぐ様に田沼少将が補足を述べた。

 

 これらの返答を受け、Гангут(ガングート)は顎を擦って考える素振りをする。

 

 

「ふむ…。空軍のミサワではなくイワクニか…。イワクニは在日米軍の海軍と海兵隊が使用する航空基地だが、オキナワのカデナから撤退した空軍も利用していると聞く…。

 

 で、だ。そのことについて貴様に聞きたい。この一連の出来事について何処まで認識している?」

 

 

 そう言ってГангут(ガングート)は鋭い目付きをオブザーバーとして同席している1人の艦娘に向けた。

 

 彼女はHeywood L.Edwards(ヘイウッド・L・エドワーズ)。米海軍駆逐艦艦娘Fletcher(フレッチャー)級134番艦の艦娘であり、第7艦隊に所属するColorado(コロラド)が旗艦を務める艦娘部隊の中でも、部隊司令であるGarfield(ガーフィールド)准将の司令部付き艦娘、役職はStaff officer(参謀)と呼称され、日本海軍で言う所の秘書艦や副艦の様な提督を補佐する立場の艦娘であった。

 

 本作戦に際して在日米軍第7艦隊からのオブザーバーという形で乗り込んでいるが、先の新ロシア連邦(NRF)大統領の会見で「この作戦の裏にはアメリカによる陰謀が絡んでいる」との発言もあって、艦隊内では些か肩身の狭い状態にある。

 

 

「…誤解の無いように願いますが、最初に述べられました原潜を含めて我が軍の一連の行動について、()()初耳です」

 

 

 しかしそれでも艦隊の参謀を務める艦娘である。Гангут(ガングート)からの刺す様な視線に一切動じる事なく、知らないと言い切った。

 

 

「巫山戯ているのか貴様?西太平洋方面は貴様が属する在日米軍第7艦隊の活動範囲だろうが!それにも関わらず、その活動範囲内で作戦行動中の部隊に関して司令部付き参謀の貴様が何も知らんとは何事かッ!?しかも同盟国の軍にも被害を出しているというではないか!?」

 

 

「何度でも申し上げますが、この一連の行動について()()初耳です。

 

 それにヒジカタ中将とタヌマ少将が情報の混乱が起きているとのお答えがありました。詰まり情報の真偽が不明であるため、私からお答え出来る事はありません」

 

 

 Heywood(ヘイウッド)の返答に納得のいかないГангут(ガングート)は眉根を吊り上げ、語気を強めて威圧する様に問い詰めるが、立て板に水の如くHeywood(ヘイウッド)は知らないとの言葉を繰り返す。

 

 

「貴様ッ!」

 

 

「よさんかСофи(ソフィー)()()

 

 

 ヒートアップするГангут(ガングート)を見兼ねた土方が仲裁に入る。その際に敢えてГангут(ガングート)の偽名であるСофи(ソフィー)と階級の少佐の部分を強調するかの様な口調で。

 

 

 この場に居る全員がこのГангут(ガングート)新ロシア連邦(NRF)Военно-морской флот(海軍) Тихоокеанский Флот(太平洋艦隊)司令であるСофья(ソフィーア) Октябрьская(オクチャブリスカヤ) Революция(レヴォリューツィア)大将本人である事を知っている。

 

 そして何故わざわざСофи(ソフィー)少佐と偽っているのかも。

 

 

 それは偏に階級の問題である。

 

 

 この艦隊を指揮しているのは土方であるが、その階級は中将である。対してГангут(ガングート)は土方よりも高位の大将である。

 

 軍事常識的に中将が大将に対して命令を発する訳にはいかない。しかもそれが他国の軍人であるなら尚更である。後々に外交問題へと発展する危険性を孕んでいる。

 

 本来ならばГангут(ガングート)は自身の本拠地であるВладивосток(ウラジオストク)に居るべきであり、新ロシア連邦(NRF)派遣艦隊の指揮は表向きの艦隊司令であるЯковлев(ヤコヴレフ)大佐に一任すべきなのだが、今回の作戦は国防相Мирослава(ミロスラヴァ)の個人的な意向が強く、その彼女の意を汲み、尚且つ土方とも面識があって緊密な連携が可能で、派遣する艦隊を統制可能な将官はГангут(ガングート)しかおらず、苦肉の策として今回の偽名と偽の階級を仕立てて連絡将校としたのである。

 

 

 ただそうなると、今のГангут(ガングート)の発言は連絡将校という、仮初(かりそめ)とはいえ彼女の現在の立場からは逸脱した行為と言えた。

 

 

 しかも相手はアメリカ第7艦隊の艦娘部隊を指揮する司令部付きの参謀の立場にある艦娘である。

 

 アメリカ軍では艦娘に正式な階級は与えられてないが、その拝命された役職が事実上の階級代わりとなっており、参謀は佐官クラスに相当すると各国では認識されている。

 

 そしてHeywood(ヘイウッド)は司令部付き参謀。これは中佐相当とされている。因みに艦隊旗艦のColorado(コロラド)は大佐相当である。

 

 詰まりГангут(ガングート)ことСофи(ソフィー)少佐は中佐相当であるHeywood(ヘイウッド)に食って掛かった事となる。

 

 しかも今までの言葉づかいも、今のГангут(ガングート)の立場からしたらこの場では相応しい言葉づかいとは言えなかった。土方は直接言葉にはせず、暗にその事を咎めていた。

 

 

 土方とそれなりに付き合いのあるГангут(ガングート)は、土方のその気遣いを理解していた。だが───。

 

 

「…ヒジカタ閣下。出過ぎた真似なのを承知な上での発言です。

 

 我が軍が感知したこの偵察機の動きは、当該原潜による長距離有翼ロケット(巡航ミサイル)の使用に際しての誘導目的である懸念があります。

 

 ()()()()()()()()()、攻撃を察知次第我が艦隊は全力を以って迎撃し、当該艦は我が艦隊と日本艦隊の安全及び作戦行動の遂行に対する重大な脅威であると判断して即時撃沈。若しくは強制浮上を視野に入れた行動をとります。無論、偵察機の撃墜も視野に入れています。

 

 これはМирослава(ミロスラヴァ) Министр(国防相)閣下からの“作戦行動に支障をきたす脅威があると判断した場合は、必要と判断した行動を速やかに実行せよ。責任は私が取る。”との正式な命令に基づく行動です。

 

 これがその命令書です」

 

 

 そう言って持ち込んだ鞄から一通の封筒を取り出し、土方に差し出す。

 

 封筒を受け取り中身の書類を取り出す。その文章はロシア語のКириллица(キリル文字)で書かれた書面と英文で書かれた書面とに分かれていた。

 

 英文の書面を手に取り、内容を読むと確かに先の発言内容と一致する文言が記載され、両方の書面の末尾には国防相Мирослава(ミロスラヴァ)による直筆と思われるサインもあった。

 

 

 念の為、土方は部屋の隅で控えていた春雨(ハルサメ)海風(ウミカゼ)に目配せすると、書類の真贋を確かめさせた。

 

 2人は2ヶ国言語で書かれたそれぞれの書面を受け取るとすぐさま速読し、双方内容が一致していることと、自分達のメインフレームのアーカイブに記録してあるМирослава(ミロスラヴァ)の筆跡記録とサインの筆跡を確認。ダブルチェックから本物であると返答した。

 

 

 この確認作業の終了を待ってГангут(ガングート)は再び口を開いた。

 

 

「閣下はアメリカが休戦交渉を妨害する目的で強硬手段に打って出る可能性を懸念しておいででした。

 

 先のマシツマ閣下の発表があったこの期に及んでも、貴国との同盟国であるはずのアメリカは公式には明確な態度を見せておりません。であるならば、最悪の事態は想定すべきであると判断致します」

 

 

 口調こそ改めてはいるが、このГангут(ガングート)の発言に対して流石にHeywood(ヘイウッド)も眉を顰めた。

 

 事実Гангут(ガングート)が指摘した通り、彼女の本国アメリカは政府も軍も未だに正式なリアクションを一切起こしていないのだ。

 

 しかもアメリカは自分達にとって目障りな真志妻大将を失脚させるべく、今回の大元となる作戦を仕組んだということもあって、Гангут(ガングート)はアメリカの動きに対してかなり神経質になっていた。もしかすると土方の暗殺を目論み、隙を見てこの『かが』を直接狙う気なのではないか?と内心で強く警戒していた。

 

 

「…成る程。そいつは確かにあり得る話ですな。

 

 土方司令、ここは一旦真志妻大将を通じてGarfield(ガーフィールド)准将に確認をとってもらっては如何(いかが)でしょうか?」

 

 

 田沼少将はГангут(ガングート)の危惧するところに理解を示し、正規ルートで在日米軍に確認を取る案を提示した。

 

 これはある意味でアメリカに対する牽制にもなるし、何を目的としているかを推測する上での探り針にもなる。

 

 

「いや待て。

 

 少佐、米原潜は間違いなく1隻だけか?それと艦名は特定出来ているか?」

 

 

「…現在確認されているのは間違いなく1隻のみです。音紋解析の結果から、『Virginia(ヴァージニア)』級36番艦のSSN-809『Long Island(ロングアイランド)』と出ています」

 

 

「…『Long Island(ロングアイランド)』?その艦は確か現在第3艦隊の所属艦です」

 

 

「…あの引き篭もりの第3が?…と、失礼」

 

 

 Гангут(ガングート)が答えた艦名にHeywood(ヘイウッド)は所属艦隊を答えたが、それに対して田沼が意外とばかりに驚いた顔でつい口を挟む。だが口をついて出た言葉が失言であったとして即座に謝罪した。

 

 

「いえ。事実ですから。

 

 ですが張り子の虎の水上艦隊は兎も角、潜水艦隊は深海棲艦からの妨害を受けずに比較的安全に作戦行動が可能なため、現在最も活発に動いている実動部隊です」

 

 

 Heywood(ヘイウッド)自身、思う所があるのか田沼の言葉に軽く苦笑しながらも同意しつつ、アメリカ本国での海軍艦艇に関する活動の実態を述べた。

 

 

 事実ハワイ失陥以降、アメリカ海軍艦艇の活動は目に見えて停滞していた。

 

 表向きは深海棲艦による本土への本格的な侵攻に備えての艦隊戦力の温存のためとされているが、造船業の著しい衰退によって現有戦力の維持すら厳しく、これ以上の戦力損失を恐れて“Fleet in being(現存艦隊主義)”の戦略を事実上採用したという背景がある。

 

 その事でアメリカ政府と軍は国民に対して「現有艦隊がハワイの深海棲艦にプレッシャーを与えており、本土への直接侵攻を躊躇させている。艦隊が居る限り本土は安泰である」と盛んに喧伝しているが、アメリカ軍に所属する艦娘達は港をほぼ出る事がなくてただ桟橋で括り付けられている事が多く、見てくれだけは立派だが老朽化しつつある自軍の艦艇の有様から、単純に深海棲艦からマトモに相手にされていないだけだとして、冷ややかな目で見ている者が多かった。

 

 

 実際、東太平洋方面を担当する深海棲艦達は、太平洋の分断による日米連絡線の遮断の継続と、その維持の為にアメリカ艦隊の封じ込めが出来ればそれで良し。と考えており、アメリカの方針は願ったり叶ったりだったりするため、艦娘達の読みは強ち間違いとは言い切れなかった。

 

 

「とは言え、妙な話だな…。

 

 第7艦隊所属艦ならまだしも、活動範囲外の艦隊からわざわざ太平洋を横断させるのは幾らなんでも非効率の極みだ。

 

 そもそも第3艦隊の根拠地である西海岸からここまでは距離がありすぎて、いくらこの艦隊がぶっつけ本番の共同作戦の都合から、航行しながらの合同訓練などで通常よりも時間を掛けているとはいえ、このタイミングでこの艦隊を捕捉し追尾しだすには、とてもじゃないが時間の計算が合わないぞ」

 

 

 Гангут(ガングート)は腕を組み、疑問を口にする。

 

 ここでは伏せているが、第7艦隊が根拠地としている佐世保基地近海には攻撃型原潜であるПодводный крейсер(潜水巡洋艦)が常に最低1隻は張り付いている。

 

 それと同様に北米大陸の西海岸領海近辺にも数隻がパトロールで派遣──ただしローテーションの問題から西海岸全域をカバーするだけの艦数ではない──しているが、その際に掛かる移動時間から計算して、この艦隊が出撃するタイミングに合わせて西海岸の基地から出撃したとしても、このタイミングで接触するには時間が合わないのだ。

 

 事前に待ち伏せする様に出撃していたとしても、今度は艦内の食糧等の備蓄物資が不足する危険性がある。ハワイという太平洋全域の海軍戦略に於ける最重要な要衝を失陥したツケとも言える。

 

 そんなリスクを冒すくらいならば、初めから第7艦隊の所属艦を向かわせる方が効率的だ。わざわざ第3艦隊から向かわせる必然性が無い。

 

 

「おそらくPearl Harbor(パール・ハーバー)爆撃(定期便)支援と偵察のためにHawaii(ハワイ)沖を遊弋している部隊の艦だと思われます」

 

 

 アメリカはハワイが深海棲艦によって制圧されて以降、パール・ハーバーの海軍基地施設を中心に戦略爆撃機による高々度爆撃を定期的に実施している。

 

 しかし先の世界大戦で衛星網に大きな損害が出た影響で、事前の情報収集と渡洋爆撃に必要となる航法に問題が発生したため、攻撃型原潜が支援のために展開していた。

 

 

「ハワイ沖に到着して任務に就いたばかりの艦を向かわせたとしましても、かなり無茶をさせていることになりますね」

 

 

「本国の潜水艦隊は比較的物資の供給が優遇されていますが、同時に最も酷使されている事で同胞のsubmarine(潜水艦艦娘)達からも相当な悪評を買っています」

 

 

 このHeywood(ヘイウッド)の説明に、Гангут(ガングート)は内心で「(成る程。だから第7艦隊の連中は動かなかったのか…)」と納得した。

 

 

 先にも述べたが、新ロシア連邦(NRF)は佐世保の第7艦隊の動向に対して常に目を光らせている。そのためここに配備されている米原潜の出入りもかなり正確に把握している。

 

 当初の予想では小松島からの艦隊出撃に合わせて佐世保から攻撃型原潜が動く可能性があるとして、それに対する牽制も兼ねて955型Ракетный подводный крейсер(戦略任務) стратегического назначения(ミサイル潜水巡洋艦)の『Борей(ボレイ)』級2隻を日本海と太平洋へと展開させた。

 

 この動きに対する警戒行動として攻撃型原潜が動いたのを確認した。

 

 日本政府とアメリカが変な動きに出ない様に牽制する事が目的ではあったが、こうして派手に動けば艦隊への直接的、或いは間接的な邪魔な行動に出るかもしれない艦を減らす事が出来ると踏んでいたが、予想に反して小松島を出発した艦隊に対する動きに出てくる事は無かった。

 

 

 考えられるのは、在日米軍の物資不足は予想よりも遥かに深刻であり、複数の攻撃型原潜を同時に動かすのは困難となっている可能性だろう。

 

 無論、状況証拠からの憶測の範囲を出ていないが、実際動きが見られなかった以上、そう考えるしかなかった。

 

 

 しかしこの一連の動きと情報から、ある意味で憶測の裏付けとなった。ハワイ沖に展開している艦を回してくるのは些か予想外だったが、そうしなければならないのが現状なのだろう。

 

 それに1隻だけならどうとでもなる。こちらには念には念を入れてТОФ(太平洋艦隊)に配備されているПодводный крейсер(潜水巡洋艦)の中で最も新鋭の885型『Ясень(ヤーセン)』級を3隻、それも多少無理を押し通して選りすぐりの者達を連れて来た。

 

 彼らは艦隊への水中からの脅威の接近に対して警戒しており、米原潜を探知したのも彼らの内の1隻だ。

 

 彼らは警戒を維持しつつ戦闘態勢に入っている。米原潜を如何様にでも料理出来る状態である。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 同志ヒジカタに対する明確な脅威は密かに、だが確実に処理する。そうГангут(ガングート)は考えていた。

 

 

「しかし、こうなりますとこの米原潜の目的は例のU-2偵察機の誘導となりますかね?」

 

 

 ここからは米原潜の事からU-2偵察機の話へと移った。結局の所、アメリカは何を目的として動いているのかがイマイチ掴めない。

 

 一番の関係者とも言えるHeywood(ヘイウッド)が何か知っている可能性もあるが、何も知らない可能性もある。

 

 

「…まさかな。

 

 少佐、Alaska(アラスカ)Anchorage(アンカレッジ)Elmendorf(エルメンドルフ)空軍基地を中心とした11AF(第11空軍)の動きに関して何か情報は入って来てないか?」

 

 

「いえ、本土を含めて()()()()()が動いたとの情報はありません。

 

 もっとも、我が国の衛星監視網も前大戦の影響もあって万全とは言えない状態であるため、100%の確証とは断言出来ません」

 

 

「だからわざわざいつもの哨戒機ではなく、貴重な早期警戒管制機を太平洋にまで進出させたのだろう?」

 

 

 土方の指摘にГангут(ガングート)は苦笑する。

 

 

 そう、通常は海上を監視するための哨戒機を飛ばして深海棲艦の接近を警戒・監視しているが、早期警戒管制機、所謂、AWACSは機体に大型のレーダーを装備し、別名“空を飛ぶレーダーサイト”と呼ばれる様な空中の監視と味方の航空戦力の航空管制を主任務とする機体である。

 

 機内はレーダーを含めて複雑な電子機器の塊であり、非常に高価な機体で運用に掛かるコストも決して安くは無いため、保有している国は少なく、大量に保有している国は更に少ない。

 

 

 日本は前大戦以前よりアメリカで製造された機体を保有していたが、製造元であるアメリカの製造業の衰退と物流が遮断された現在の状況では、消耗部品の入手が不能で運用が困難となり、保有機は全機退役に追いやられていた。

 

 ただ日本を深海棲艦に対する外殻防衛線の重要な防壁と考えていた新ロシア連邦(NRF)から退役間際の中古ではあるものの提供を受け、なんとか運用を続けている。

 

 

 その新ロシア連邦(NRF)は自国で開発し製造している国ではあるが、広大な国土面積に比して保有機は充分とは言えなかった。

 

 ソ連崩壊後の経済の立て直しと再編。それが一段落したと思ったら第三次大戦が勃発。極めつけは戦後処理で割譲という名目で押し付けられた、荒廃した旧東欧東側──現在のПри участии(新たな) новых соотечественников(同胞達の参加による) федеральные округа(連邦管区)──の復興に予算を持って行かれて後回しにされていた。

 

 それでも新領土の防空網の構築に必要であるとの判断から、なんとか予算を遣り繰りして地道に増やしているが、充分とは言えていないのが現状である。

 

 日本に送った機体が退役間際の古い機体だったのも、新しい機体や現役機は自国の運用に回すので手一杯という新ロシア連邦(NRF)の事情があった。

 

 

 そんな貴重な早期警戒管制機をВКС(航空宇宙軍)が飛ばしたのは、エルメンドルフ空軍基地に展開している戦略爆撃機の動向を警戒してのものだった。

 

 

 元々アラスカを担当とする11AF(第11空軍)は戦闘機を中核とする航空団が配備されていたが、Aleutian(アリューシャン)列島の要所、Dutch Harbor(ダッチハーバー)が深海棲艦に制圧された時期から暫くして戦略爆撃機の展開が確認されていた。

 

 

 確認された当初は同時期に制圧されたハワイ諸島のPearl Harbor(パール・ハーバー)と同様にダッチハーバーに対する空爆作戦の可能性も考えられたが、一度も実行された事は無い。

 

 

 幾つか理由が考えられるが、パール・ハーバーとは状況が違い過ぎるのが先ず挙げられる。

 

 

 深海棲艦との戦いの最前線となる事から住民が元々疎開していたハワイ諸島と違い、前線から遠く離れていた事もあってダッチハーバーに駐留していた守備隊は少なく、隣接するUnalaska(ウナラスカ)市には住民が暮らしていた。

 

 だが深海棲艦の奇襲を受け守備隊はその殆どが住民を見捨てて逃走。ごく僅かな守備隊と住民だけが取り残された。

 

 公式記録には深海棲艦の攻撃により全員死亡とされているが、実際は緩い占領統治による共存関係を築いていた。

 

 この事実は半ば公然の秘密となっているが、アメリカ政府にとっては人類共通の敵であるとする深海棲艦へのイメージ・プロパガンダ戦略が根底から覆る事態として、不都合極まりない状態にある。

 

 だからといって軍事的な強硬手段を用いて消し去ろうにも、ただでさえ経済の行き詰まりや政策の失敗が重なり、国内の統制が上手くいっているとは言えない状況が足枷となっている中で、自国民の生存者を巻き込む事を前提とした作戦行動は結果として国内の統制がコントロール不能に陥り、崩壊する危険性が高い事を恐れて実行を躊躇わせていた。

 

 

 次に、地理的な問題である。

 

 

 ベーリング海を挟んだ対岸は言うまでもなく、アリューシャン列島の西端にあるКомандорские(コマンドルスキー)諸島は新ロシア連邦(NRF)領である。この事実が無言の圧力となっている。

 

 

 新ロシア連邦(NRF)もダッチハーバーの状況は認識しているし、なんなら民間レベルでは互いの漁業関係者が取り引きしていたりもするし、軍事に於いては今現在もアラスカ付近上空の防空識別圏ではВКС(航空宇宙軍)が活発な活動を見せ、時折意図して領空侵犯もして情報収集を行なっている。

 

 

 ダッチハーバーへの強硬手段に出れば新ロシア連邦(NRF)が即座に察知して何らかのアクションを起こすこととなる。

 

 その際に何かの弾みで一歩間違えれば新ロシア連邦(NRF)との想定外な武力衝突からの、準備不足な状態での全面戦争に突入する切っ掛けとなる危険性があった。

 

 深海棲艦と新ロシア連邦(NRF)、この2つを同時に相手取る二正面戦争を展開出来るだけの力はアメリカには残されていなかった。

 

 

 故に大規模な奪還作戦は行なわれず、防御を固めるくらいで殆ど放置に近い状態だった。

 

 

 とは言え流石に何もしないのは不味いと判断したのだろう。国内へのアピールとしてか、数機の戦略爆撃機がエルメンドルフ空軍基地に常駐する様になった。

 

 

 現状これを政治的アピールのみに徹した戦力としてカウント出来ない遊び駒と見るか、状況に応じて自由に動かせる遊撃戦力と見るか、その判断が難しい。

 

 

 状況次第でどちらにも転ぶ可能性があるのだ。

 

 

 今までは深海棲艦という未知の敵に振り回され、そちらの対応に負われていたが、元々現政権の中枢メンバーは旧ロシア連邦時代から病的とさえ言われているほどの、過激な反ロシア強硬派思想で凝り固まった敵対政策推進派の者達が多数を占めている。

 

 深海棲艦が動かない事をいい事に、彼等が病的なまでに敵対視する新ロシア連邦(NRF)へと矛先を向ける可能性も捨て切れない。

 

 事実、軍の予算編成などからその兆候があるとして、議会では保守党上院議員にして次期大統領候補のIowa(アイオワ)が政府と軍に対しての糾弾を行なっている。

 

 

 新ロシア連邦(NRF)としても万が一に備えて常時警戒を維持している。

 

 特にオホーツク海は現在、新ロシア連邦(NRF)の報復核攻撃戦略の基幹となるРПКСН(戦略任務ミサイル潜水巡洋艦)の活動を支える上で不可欠な要衝である。

 

 

「領空付近をこれ見よがしに飛ばして牽制していますが、連中が本気でやる気なら、捕捉されようがお構い無しに無視して突破するでしょう。こちらは航続距離の問題で追跡が困難ですから、その飛行目的を外交ルートなどを通じて問い合わせても、訓練飛行や軍事機密などを盾にして(シラ)を切られたら、それ以上の追及は困難です」

 

 

「だが何もしないよりかはマシだ」

 

 

 Гангут(ガングート)も土方も、最悪の可能性を想定して話を進める。

 

 可能性として米戦略爆撃機が長駆飛来し、ステルス性能を持った巡航ミサイルによる遠距離奇襲攻撃を艦隊に対して仕掛けてくるのではないか?と。

 

 最も最悪の事態は弾頭に戦術核を仕込んだ無差別飽和攻撃である。艦隊の防空網を一発でも突破したら、艦隊は壊滅的な被害を受ける事となる。

 

 

「…となりますと、例の偵察機はこの艦隊に対する攻撃前の事前偵察行動と可能ならば戦果確認で、追尾中の米原潜は偵察機と戦略爆撃機の誘導及び残存艦へのトドメを刺す役割って所ですかね?」

 

 

「なんとも言えんが、連中が本気で仕掛けてくるつもりでいるのならば、その可能性はゼロではないだろう。

 

 だがその為にしては水中戦力が少ないのが気掛かりだ。

 

 Софи(ソフィー)少佐、まだ何処かに米原潜が潜んでいるかもしれんし、もしかしたら先に探知した艦は囮という可能性もある。そちらでも警戒を強めてくれ」

 

 

Всё понятно(了解した)

 

 

 

 現状手元にある数少ない情報から考え得る推論と対策案が述べられ続ける中で、Heywood(ヘイウッド)は一言も口を挟まずにいた。

 

 

 彼女自身、本心では自らが属する軍に対する信用は限りなく低く、目の前で話し合われているこの艦隊への自軍による攻撃の可能性に対し、否定どころか「本国の連中ならやりかねない」と考えていた。

 

 

 しかし、一応はアメリカ軍に属するという自身の置かれた立場から、この場での発言で()()()()()明確な否定も肯定もする訳にはいかず、答えても特に問題の無い内容か玉虫色の言葉に終止し、その後はただただ沈黙を貫いていた。

 

 

 それに、少なくとも彼女が信頼する直属上官のGarfield(ガーフィールド)准将は「そこで起きた事を出来る限り見届け、みなに伝える事が君の任務だ」と伝えていた。

 

 艦隊旗艦のColorado(コロラド)も「ヒジカタとガングート(あのバカ)の2人に任せておけば、なんとかなるでしょ」と言って送り出した。一見すると無責任な言葉の様にも聞こえるが、誰よりもプライドが高く、おっちょこちょいな所がある彼女なりに2人を信頼した上での言葉だった。

 

 

 ならば、何が起きようとも可能な限り泰然として傍観者に徹するのみ。

 

 そう考えてこの場での積極的な発言は控え、ただこのまま静かに控えるつもりでいる。

 

 





 さて、アメ公が何の行動も起こさないのは不自然かと思って書いてみたけど、この後どうするか…。

 特に米原潜どうしよう?問答無用で撃沈か、拿捕か、衝突事態は起きない別の可能性か…。


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補足説明

Virginia(ヴァージニア)』級攻撃型原潜

 アメリカ海軍が冷戦時代、世界最大の配備数(改型の同型艦を含めて62隻)を誇った『Los Angeles(ロサンゼルス)』級攻撃型原潜の後継として、またソ連海軍の原潜を圧倒出来る高性能艦として建造が開始されるも、冷戦の終結と高性能故の建造コストの高騰によって準同型含め3隻(予定では29隻)の建造で打ち止めとなった『Seawolf(シーウルフ)』級を教訓として設計、『Los Angeles(ロサンゼルス)』級の退役に伴い多数が建造されている攻撃型原潜。(計画66隻、2025年現在43隻建造)

 但し2020年代から冷戦時代に建造された『Los Angeles(ロサンゼルス)』級の退役が進んでいるが、その退役の速度に建造が追い付いておらず、建造を促進する施策が講じられてはいるが衰退著しいアメリカの造船業の現状を鑑みるに実効性が疑問視されている。

 また29番艦以降のBlockⅤの建造艦は艦体が大型化し、その水中排水量は10,400トンとなり(BlockⅠ〜Ⅳでは7,800トン)、艦体が細長く戦略原潜の『Ohio(オハイオ)』級に近いシルエットとなったことで水中運動性能の低下が懸念されている。


 …冷戦後のアメリカ兵器って調べてるとなんか迷走してるっていうか、ゴタゴタが絶えないイメージ。『Oliver Hazard Perry(オリバー・ハザード・ペリー)』級が退役して以来となる新型フリゲート艦の『Constellation(コンステレーション)』級フリゲート艦も紆余曲折で2隻調達をもって結局調達計画が中止になったし。『Arleigh Burke(アーレイ・バーク)』級イージス駆逐艦(と『Ticonderoga(タイコンデロガ)』級ミサイル巡洋艦)の代替艦予定となる次世代水上戦闘艦のDDG(X)もどうなることやら。


Fleet in being(現存艦隊主義)

 別名“艦隊保全主義”。

 艦隊決戦の様な積極的な戦闘を避け、自軍の艦隊を温存することにより、艦隊の潜在的な能力で敵国の海上活動を妨害する事を目的とした海軍戦略である。

 「Fleet in being」の言葉を最初に用いたのは、17世紀のイングランド海軍の提督、Arthur Herbert, 1st Earl of Torrington(初代トリントン伯爵アーサー・ハーバート)である。

 大同盟戦争初期にイギリス主力艦隊の司令長官を務め、1690年6月にフランス艦隊と遭遇した際に消極的な退避行動をとった末、女王メアリー2世の命令でようやく“ビーチー・ヘッドの海戦”を戦ったが敗退。本国に帰還したハーバートは敗北責任を問われて軍法会議にかけられると、「私が常々述べているように、わが方が健在な艦隊を保有している限り、彼らフランス側はイギリス本土侵攻を試みるはずが無いのです。(I always said that whilst we had a fleet in being, they would not dare make an attempt.)」と、自己の消極的な指揮を弁明した。

 このハーバートの言葉が以後そのまま戦略についての軍事学用語として定着した。

 現存艦隊主義は、自軍艦隊が存在していることで生じる脅威によって敵国の海上活動を妨げようとする消極的な戦略構想である。現存艦隊主義に基づく基本的な艦隊運用は、出来る限り艦隊決戦を回避して自軍の海上勢力を温存することとなる。戦術的には、仮に海戦となっても敵艦隊の撃滅を追求せず、敵の攻勢戦略を阻止できる程度の損傷を与えることが目標となる。逆に自軍艦隊が撃滅されることを避けるために、柔軟な撤退が可能なような戦術行動を行う。「見敵必戦」をモットーとするような積極戦略とは対極に位置する。

 このような現存艦隊が効果を発揮するのは、保全された艦隊が敵国の海上行動を阻止しうる潜在的な能力を保持している場合に限られる。たんに艦隊が現存するだけでは脅威とならない。

 また現存艦隊主義の欠点としては、制海権の獲得が出来ないことである。自国の自由な海上活動を可能にするためには、積極的に敵艦隊の撃滅を図らなければならない。

 現存艦隊主義は、国力に劣る国が、より強大な海軍国に対抗する戦略として採用されることが多い。劣勢国側が艦隊を温存して自己に有利な時と場所を選んで投入できる態勢を保持することで、相手国はいつどこに劣勢側の艦隊が出現しても対応できるよう、劣勢側以上の兵力を待機させなければならず、効率的に敵の海上勢力を拘束できる。

Wikipediaより抜粋


 日本に於いて最も身近な例が、日露戦役における帝政ロシア海軍ТОФ(太平洋艦隊)の旅順艦隊が採用した戦略である。当艦隊の存在が日本から大陸への兵站輸送網の脅威となり、帝國海軍の主力艦隊である聯合艦隊は自由な作戦行動を抑制させられた。

 もしも旅順要塞軍港に立て籠るТОФ(太平洋艦隊)が残存した状態で第二ТОФ(太平洋艦隊)、所謂バルチック艦隊と日本では呼称されるБалтийский флот(バルト海艦隊)が来航していた場合、聯合艦隊は2倍の艦隊を相手取らなければならなくなっていた。また帝政ロシアもその戦略を対日戦に於ける基本戦略として採用していた。

 しかし帝國陸軍第三軍による旅順攻囲戦によってこの当初戦略は破綻した。ただ、もしも日本海海戦で第二ТОФ(太平洋艦隊)を取り逃しウラジオストクに入られていたら、この艦隊の存在が日本の海上輸送網を再び脅かす事で講和の内容が変わっていた可能性がある。


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 この先どうなるんだろうねぇ。正直分からん。だがこれだけは断言出来る。何かが崩壊する時、何かが終焉を迎える時、何かが消えた時、その後に訪れるものは必ずしも望んだ未来とは限らないこと。今よりももっと酷い未来かもしれない。

「こんなはずじゃなかった」

 そう悔恨しながら嘗て夢見た理想とかけ離れた現実にただ絶望する事になるかもしれない。

 理想と現実の乖離。それはいつの時代にだって存在した。

 世界の嫌われ者は滅びて当然。そう考えるのは自由だ。だが本当に滅びた後に訪れる事を考えた事はあるだろうか?

 最近の狂乱とも言える熱狂に、冷めた思いでいる。

 あれから84年が過ぎた。84年後、その頃の歴史は今をどう評価しているだろうか?

 少なくとも私は寿命的に生きていないのは確実だから、確かめる術が無い。あの世で笑っているか、それとも嗤っているか。

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 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想、若しくは分からない点に関しましての質問がありましたら返信で可能な限りお答えし、後書きの補足説明にも加筆致しますので、よろしくお願いいたします。
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