艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 逃亡者達


第91話 Escapees 2

 

 深夜の『かが』の長官公室。

 

 取り敢えず立ったまま話をする訳にはいかないとして、土方とГангут(ガングート)、そしてScamp(スキャンプ)は少し手狭だが応接机に腰掛けた。

 

 ただ春雨(ハルサメ)海風(ウミカゼ)と違い、夕立(ユウダチ)江風(カワカゼ)も給仕はからきしなため、机に並ぶのは灰皿とインスタント飲料のみであるが。

 

 

「先に一つ確認したいのだが、貴艦が乗っていた(ふね)の艦長は、確かPatrick(パトリック) Bates(ベイツ)大佐だったと記憶しているのだが、間違いないか?」

 

 

「ああそうだよ。Bates(ベイツ)艦長で間違いない。

 

 てか、そんくらいの調べはついているんだろ?」

 

 

 そう言うとScamp(スキャンプ)は煙草を咥えたままちらりとСофи(ソフィー)少佐こと、Гангут(ガングート)へと視線を送る。

 

 Гангут(ガングート)、正確には彼女経由で新ロシア連邦(NRF)情報部から情報を得ているのだろう?と仕草で問い掛けているのだ。

 

 これに対しГангут(ガングート)は素知らぬ顔を決め込んだまま紫煙を吐き、土方も特になにも答えないでいる。

 

 

「…彼はどうした?」

 

 

「あー…。一応、共犯者っつーか、3艦纏めて脱走しちまうって事の言い出しっぺが艦長なんだ。艦隊を纏めるために艦に残っているよ」

 

 

 頭をガシガシと掻きながら語られたその事実に、土方は表情にこそ出さなかったものの、予想外の答えに意表を突かれた。

 

 

「最初は元々のHawaii(ハワイ)方面でのReconnaissance mission(偵察任務)が終わったら艦をKitsap(キトサップ)原潜基地のドッグに入渠する予定だったから、途中でこっそりとAleutian(アリューシャン)新ロシア連邦(NRF)勢力圏ギリギリのラインであたい()を降ろしてもらう話だったんだが、まぁその後に色々あってね。

 

 それに関しては大佐のprivateに関わるからな。そん事についてはあたいの口からは言えねぇ」

 

 

「…分かった」

 

 

 土方は記憶の中から、Bates(ベイツ)大佐の経歴を思い出す。

 

 

 Patrick(パトリック) Bates(ベイツ)大佐は代々続く軍人一族Bates(ベイツ)(Family)の生まれで、彼はその三男だと聞いているが、兄弟は既に戦死しており、父親はパンデミック期に他界。今は母親と彼の妻、それと2人の子供が居るとされている。諸事情により親戚筋とはかなり疎遠だという。

 

 ただその家柄が示す様に根っこからの職業軍人であり、祖国アメリカへの愛国心と忠誠心が強く、それでいて今となっては珍しい、政治的思想に傾倒していない、政治的野心もゼロという、絵に描いたどころか額に入れて飾っている様な、愚直な軍人一筋な人柄で、素行も悪くない若く優秀な潜水艦乗りとされている。

 

 だからこそ、先のScamp(スキャンプ)の発言に意表を突かれる事になったのだ。

 

 

 Scamp(スキャンプ)はプライベートに関わるから言えないと言った。「理由は分からない」ではなくだ。それは詰まり理由を知っているという明確なサインだ。そしてこれは半分意図した彼女なりのリークだろう。

 

 家族に何かあったと見て間違いない。それも祖国への愛国心と忠誠心が消え去る程の深刻な事態が。

 

 

 …あまり詮索するつもりは()()()()()()無かったのだが、今現在のアメリカの内情を少しでも知っていれば、嫌でも察しが付く。愚直な軍人一筋だけでは政治的思想の対立と野心が渦巻く軍の中では寧ろ疑いの目で見られて警戒され、疎まれる。それがある程度の出世を果たしている優秀な若手の人物ならば尚更だ。

 

 別に珍しい話ではない。それなりに出世すれば軍であっても途端に政治の臭いが鼻を突く。特に軍上層部といった中枢に近ければ近いほど、政府や他の官僚機構とも何らかの形で関わり出す都合上、より顕著になる。

 

 

 だが現場指揮官、それも艦長クラスにまで影響及ぼす様な事はそうそうないものなのだが…。それにBates(ベイツ)大佐は優秀であっても現場でこそ能力を十全に発揮するタイプの人間だ。

 

 …いや、それが逆に不味かったか。現場の将兵からの人気や支持が高いとそれが上層部の人間から疎まれる原因になったりもする。人気者はいつの時代、どんな場所でも不特定多数による嫉妬や何かしらの嫌がらせを受ける対象となったりするものだ。当の本人からしたらいい迷惑だが、社会や組織とはそういうものなのだ。

 

 

 しかし現在のこの場合だと大佐の人気の高さは寧ろプラスに働く。

 

 

「取り敢えず、艦隊は大佐の指揮下にあり、現状では特に問題ないと判断して良いのだな?」

 

 

 兵達からの人気の高さが大佐への信頼となり、その指揮を、言葉を素直に受け入れる土壌となる。

 

 

「ああ。それはあたいが保証する。

 

 ここに到達する前に、なんでも副長…、今は元副長だが、まぁ()()()()()()()()()()()()()()()、今はあたいが副長代理って事になってる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()らしいが、なんとか()()()()()()()ってよ」

 

 

 …どうやら分裂を引き起こす危険因子に対し、その()()を大佐は決断し実行した様だ。おそらくハワイ沖で発見された水死体がその消毒された該当者と見ていいだろう。しかし、これは事前にそれなりの目星をつけていたと見て間違いないだろう。

 

 考えられるのは、転属されて来た()()()()?それか、()()()()…。

 

 

 もしそうでないなら、相当辛い決断を下した事になる。

 

 

 船という一つの閉鎖空間に於いて船乗りとは一つの家族であり、一心同体だ。いかに高性能な艦船であっても、それを十全に乗りこなすには乗り込む船乗り達の息の合った高度な連携と意思疎通が必要となる。そこから強固な信頼関係が醸成され、(おか)に居る家族とは違う、掛け替えのない大切な第二の家族となるのだ。

 

 そして艦長とは家族を纏める家長、主人の立場である。その家長が大切な家族の一員を切り捨てる決断を下すのは並大抵の精神力と覚悟では出来ない事だ。

 

 

 それでも決断を下したということは、大佐の覚悟と決意の表われであると見るべきだろうが…。

 

 

「相当消耗しているのではないか?ただでさえ軍の指揮系統から離脱した事で、最低限の支援も受けられなくなった状況下にも関わらず、3隻の指揮を執っていたのだからな」

 

 

 家族同然の者を切り捨てる決断をし、その後に別の家族も纏めて率いる事となったのだ。皆の前では心配をかけまいと気丈に振る舞っていたとしても、その心身は相当疲弊していてもなんら可怪しくはない。

 

 

「…まぁ、その辺は覚悟していたさ。それに休むのも軍人の仕事だ。艦長が休んでいる時はあたいが指揮を引き継いでいた。

 

 そのためにあたいは副長代理を引き受けた」

 

 

「よくもまあ、引き受けたものだな」

 

 

 Гангут(ガングート)が半ば呆れ混じりに、頬杖をつきながらぼやく様に口を挟んだ。

 

 

「元はと言えば、あたいが蒔いたタネってのもあるからな。

 

 …それに、前の副長はハッキリ言やぁ()()()みたいな奴だったからな」

 

 

 …成る程。どうやらその副長は“余所者”だった事は確定と言える。

 

 

「乗員はどうなんだ?故郷(くに)に家族を残している者もいるだろう?」

 

 

 これは気になっていた事柄である。(おか)には本来の家族だけでなく、親類や友人だっているハズなのだ。それをГангут(ガングート)は問い質した。

 

 

「ケッ!テメェだってちったぁStatesの内情を知ってるんだろ?」

 

 

「…すまん。愚問だったな」

 

 

 吐き捨てる様なScamp(スキャンプ)の返しに、Гангут(ガングート)が己の発言が失言だったとして、率直にScamp(スキャンプ)に謝罪した。

 

 

 アメリカ国内での軍の扱い、特に海軍に関しては、必ずしも良いと言えるものではないと聞いていた。

 

 

 嘗て世界最強の軍隊、そしてその力の象徴とも言える、世界のどの海域であろうとも展開可能な空母打撃群。その圧倒的な戦力投射能力を以って世界に睨みを利かせていた艦隊戦力を複数保有していたアメリカ海軍であるが、その栄光は第三次大戦での中東侵攻に際して肝心要の空母である『Nimitz(ニミッツ)』級原子力空母『George Washington(ジョージ・ワシントン)』が大破炎上、傾斜し甲板上の艦載機を滑落させながら漂流している姿がSNSを通して世界に晒してしまい、その火消しと揉み消しに国を挙げて奔走したが、結果的に修理不能と判断され退役解体となって以降、急速に落ちぶれ、そこに来て深海棲艦の猛攻によって太平洋艦隊が一時期壊滅的大損害を受けた。

 

 

 その後深海棲艦に対抗可能な戦力とされた艦娘を大量に揃え、世界最大の艦娘部隊を保有するまでに至り、残存艦艇と大西洋艦隊から抽出・回航された艦艇によって再編した艦隊戦力と共に大規模な反転攻勢を開始したものの、深海棲艦の策略にまんまと引っ掛かってハワイとアリューシャン列島への電撃的侵攻を受け失陥。作戦は中断され退却を余儀なくされた。

 

 それでも退役し解体予定だった老朽艦やモスボール艦を引っ張り出し、可能な限りの再稼働工事を施して再就役を果たした艦艇を加え、大西洋艦隊の艦娘部隊を急遽空輸して増強、再編した艦隊戦力を以って乾坤一擲の奪還作戦を発動したものの惨敗し、空母打撃群は壊滅的な大損害を受け、衰退した造船業では残存艦の維持に手一杯で最早艦隊の再建は厳しく、今や沿岸の制海権を維持するのが精一杯な有り様である。

 

 

 世界最強と信じて疑わなかったアメリカ海軍の艦艇は軍港の桟橋に係留されたまま動かず、時々思い出したかの様に小規模な戦隊がヨタヨタと力無く出撃している程度だった。

 

 

 政府は深海棲艦の本格的な本土侵攻に対する抑止力として機能していると必死に強調しているが、記念艦の様にピクリとも動かない多くの艦艇群を見て、それを率直に信じ切る者は、特に軍港近くの住民にはほぼ皆無だった。

 

 そしてその軍港周辺には乗員や基地で働く軍人達が住み、家族が暮らす住居もあるが、碌に動かないのに自分達の払った血税から払われる高い給料を貰っている事に不満や反感を覚える住民は少なくなかった。

 

 また世界最大の艦娘戦力の整備と維持に膨大な予算と資源が注ぎ込まれ、その代償として増税と社会保障の削減など様々な形で市民生活に皺寄せが伸し掛かったのだが、それにも関わらず全くと言っていいほど成果を出さない事への不満も高まっていた。

 

 

 結果、海軍に対する国民感情は税金泥棒・穀潰しというイメージが次第に醸成、定着化され、海軍に所属していたり関わっている者に対する民衆の風当たりは次第に厳しいものとなり、それは家族や親族に対しても向けられ、深刻な軋轢を生み出していた。

 

 

 Bates(ベイツ)大佐の家族と親戚筋の仲が疎遠となったのも、これが原因であった。

 

 

 下手に海軍関係者と関わりがあると知れ渡ると、平和な抗議活動とされる破壊活動の(何かあった)際に攻撃の対象として狙われる確率が高く、実際死傷者が出ているのだ。

 

 それを恐れて離縁や離婚者が続出する事態が近年問題となっており、さらに仮令海軍を辞めても再就職の際に精神的・肉体的な嫌がらせを受けた挙げ句に断られ、その後浮浪者になって野垂れ死にや襲撃された事態も起きており、下手に辞める事も出来無い八方塞がりな状態に置かれていた。

 

 

 この様な状況下でも着実に支持を伸ばしているIowa(アイオワ)はある意味で化け物と言えるが、彼女の政界デビューがもう少し遅かったならばここまでの支持は得られなかった可能性があると言われている。

 

 

 だが海軍に対する民衆の風当たりの強さは、最前線に立って命懸けで戦う現場の将兵からしたら溜まったものではない。

 

 それは艦娘達とておなじだった。

 

 

 そんな中、海軍上層部の高官、政府の閣僚や官吏、さらには議会の議員の中から、海軍の不甲斐なさは艦娘達の怠慢にあると主張する者が少なからず出ていた。

 

 

「高待遇を受けていながら、一応の戦っている素振りを見せて適当に切り上げ、さも激戦だったかの様に吹聴し、偽りの戦果を捏ち上げて給与を騙し盗っている」

 

 

 それが彼らの主張である。無論、客観的な証拠や具体的な事例といった根拠を示さない、感情的な誹謗中傷としか言えない酷いものだ。

 

 これには艦娘や現場の将兵もたまらず反論を試みたが、それに対して「なら何故海の化け物どもを押し返せない!?何時になったらヤツらを皆殺しに出来るんだ!?文句を言う暇があったらさっさとヤツらを皆殺しにしろ!!」とますます感情的となって頭ごなしに怒鳴り散らし、様々な有形無形の制裁を加えて反論を捻じ伏せていた。

 

 

「そもそもの話として、我々艦娘に積載可能な燃料は水上艦艇と比較にならないほど少く、航続距離は短い。なにより航行・索敵・戦闘の全てをほぼ1人で対応せねばならず、艦艇の乗員と違って交代制による休息すら出来無いのですから、作戦行動中の疲労と消耗はとても激しい。必然的に我々の行動可能範囲と時間はどうしても限られます。

 

 そんな実証済みの事実を都合良く忘却の彼方へと放り投げ、外洋に出ての大規模な作戦行動には艦娘を大量に運用可能な空母か、強襲揚陸艦級の大型母艦が必要だと分かりきっているのに、その肝心の空母と強襲揚陸艦は消耗し尽くし、マトモに稼働出来ていないのですから、何を莫迦な戯言をとしか言えませんがね。

 

 まぁ責任転嫁の他責思考ってやつですよ」

 

 

 Гангут(ガングート)が呆れ返った口調で話す。

 

 事実アメリカ海軍では艦娘運用の中核として大型原子力空母や強襲揚陸艦が充てられていたが、先に述べた通り太平洋艦隊はハワイ奪還作戦で大損害を受け、未だにそのダメージを回復出来ていないどころか、修理の目処すら立っていなかった。

 

 これが記念艦同然と化している艦艇の実態だった。

 

 

「最近じゃマトモに動ける(ふね)が足りねぇからって、沿岸警備隊(Coast Guard)哨戒艦(Cutter)哨戒艇(Patrol boat)も動員しているぜ」

 

 

「おいおい、一応警備艦(哨戒艦)の中には、最低限自前である程度は戦える船もあるとは聞いているが、殆どは軽武装だろう?しかも小型の船もとなると、乗り込む艦娘はかなりの苦労を味わう事になるぞ」

 

 

 アメリカの沿岸警備隊が保有する船の中には小口径の速射砲を主砲として装備し、海軍の艦艇とも情報共有が可能なネットワーク・システムを有する船があるが、小型の船艇ともなるとその能力は極めて限定的である。

 

 また艦娘の運用能力に関しても同様な問題を抱えていた。

 

 

 これと似た問題として、A2/AD、Anti-Access/Area Denial(接近阻止・領域拒否)を海軍の基本戦略として採用している新ロシア連邦(NRF)Военно-морской флот(海軍)では、近海での作戦行動を主眼に置いていた事もあって、21631型『Буян(ブヤン) M』級小型ミサイル艦などの小型艦艇を艦娘母艦として改装し運用していたが、現場からは即応性は兎も角、乗艦可能な人数や艤装整備区画と機材の不足、積載可能物資が少なく、柔軟で安定した運用に問題があるとの意見が出ており、早期の解決が望まれていた。

 

 

 Гангут(ガングート)も現役時代にそれを経験しており、当時各方面艦隊で配備が進んでいた20380型『Стерегущий(ステレグシュチイ)』級警備(コルベット)艦の活用に関する意見具申や実際に活用し、現状と比較しての有用性と改善点などを報告として提出したりしていた。

 

 ただ現在はВМФ(海軍)総司令官Суворов(スヴォーロフ)元帥がМирослава(ミロスラヴァ) Министр(国防相)を説得し、外洋作戦能力向上に向けて動き出した事によって大型の艦艇を母艦とする計画が持ち上がり、現在運用中の強襲揚陸艦23900型『Иван(イヴァン) Рогов(ロゴフ)』級汎用揚陸艦を設計ベースとした新造艦の設計・建造計画案、汎用母艦24000型計画艦の案が出ていた。

 

 

 新ロシア連邦(NRF)は従来西側諸国の主流であった、大型母艦による艦娘の大量集中運用の方向へと移行し始めたのだが、皮肉なことに西側諸国最大の軍事力を持っているとされていたアメリカが新ロシア連邦(NRF)に於いて問題ありとの意見が噴出している方向へと移行しつつあった。

 

 

「仕方ねぇよ。デカいヤツは武装以外『Arleigh Burke(アーレイ・バーク)(クラス)とどっこいどっこいだって話を聞いてるが、それ以外は間に合わせだ。

 

 …上の連中は多分、近い内にNRF(おたくら)と戦端を開く為に、これ以上動ける戦闘艦の損失を出したくないってのが本音なんだろ」

 

 

 このScamp(スキャンプ)の言葉にГангут(ガングート)はあからさまに顔を歪め、不機嫌さを隠そうとしない舌打ちをし、隅で控えていた夕立(ユウダチ)が欠伸をしながら「アメリカって、ひょっとして相当お莫迦さんっぽい?」と、隣にいる江風(カワカゼ)に尋ね、聞かれた江風(カワカゼ)は「現実が見えてねぇンだろ」と心底つまらなさそうに耳の穴を指でほじくりながら、素っ気なく返していた。

 

 

 Scamp(スキャンプ)の予想が正しければ、深海棲艦との戦いを継続しながら新ロシア連邦(NRF)との戦いの為に戦力を温存する。という事になる。

 

 その可能性については以前より指摘があったし、議会でIowa(アイオワ)が現在政府に対して超党派で厳しく問い詰めている問題でもあった。

 

 

 そもそもの問題として、現在のアメリカ海軍は新ロシア連邦(NRF)とマトモに戦えるとは到底言えない状態である。

 

 

 太平洋艦隊、そして距離的に最も最前線となる佐世保基地を母港とする第7艦隊であるが、深海棲艦の最も多い海域を担当している事もあり、一時は4隻の空母が配備されていた有力な艦隊となっていたが、激戦の果てに著しく消耗して配備されていた空母、更には強襲揚陸艦とミサイル巡洋艦の多くは廃艦同然となるか太平洋の波濤に消え、残余の艦艇も戦力としてカウント出来ない有り様となっていた。

 

 唯一動かせるのはなんとか単独で本土と行き来が可能な原潜くらいだが、佐世保の沖合いには新ロシア連邦(NRF)原潜が監視のために潜んでいる。

 

 

 本土の第3艦隊は既に述べた通りであり、事実上太平洋艦隊の水上艦隊は壊滅状態である。

 

 

 それに対し大西洋艦隊としてVirginia(ヴァージニア)Norfolk(ノーフォーク)海軍基地を母港とし、東海岸及び北西大西洋を担当とする第2艦隊はアメリカ海軍に残された最後の有力な艦隊戦力とされている。

 

 因みに東大西洋全域及び地中海を担当としていた第6艦隊は、第三次大戦直前のNATO解体によって本国へと引き上げており、その際に第2艦隊に吸収合併された。

 

 

 大西洋艦隊は太平洋艦隊と比べるとパナマ失陥とカリブ海を巡る戦い以降、戦闘は小康状態となったのが艦隊戦力の保全へと繋がった。

 

 しかしパナマ運河とカリブ海が深海棲艦に制圧され、公然の秘密だが本土への上陸を許してしまっており、フロリダでのんびりまったりとバカンスを満喫されている有り様である。しかもちゃんとマナーを守ってキチンとお支払いやチップまで渡すなど、札束を武器とした浸透戦術による侵略…もとい、しっかりお行儀の良い優良な観光客として馴染んでしまっている。

 

 …それは兎も角として、このパナマ・カリブ海方面の深海棲艦の動向次第では東海岸を直接狙える位置にある。これはアメリカの中枢の喉元に短剣を突き付けられているも同然な状態だ。

 

 

 これを無視して我が身に危険が及ぶ事を許容出来るほど、ワシントンD.C.で踏ん反り返っている連中の肝が据わっているとはとても言えなかった。

 

 仮に第2艦隊を出撃させたとしても、カリブ海に展開する深海棲艦とヨーロッパ大西洋方面に展開する深海棲艦の一大根拠地である旧スペイン領カナリア諸島の深海棲艦、そこにヨーロッパ動乱の影響で地中海の勢力図が深海棲艦有利へと傾いた事で、地中海からも深海棲艦が出てくるかもしれず、この3つの深海棲艦の大艦隊から挟み撃ちに合う危険性があった。

 

 更にはイギリスが深海棲艦と和平の合意を果たしてしまった。今後イギリス本土を深海棲艦が堂々と寄港地として利用する可能性もある。

 

 

 こうなっては大西洋から北海を抜けてバルト海方面、もしくは地中海経由で黒海方面から新ロシア連邦(NRF)本土を狙うのは困難だ。

 

 或いはより北側のノルウェー海、もっと北側のグリーンランド方面からバレンツ海に至るにしても、気象条件の厳しさと新ロシア連邦(NRF)ВМФ(海軍)最大にして最強の艦隊であるСеверный флот(北方艦隊)が待ち構えている。

 

 

 そもそもNATO解体で第6艦隊が引き上げた際にヨーロッパに展開する基地施設も全て引き払っており、どこにも寄港地が存在しない。長駆遠征してボロボロの疲弊した状態で新ロシア連邦(NRF)艦隊と遭遇すれば、バルチック艦隊の二の舞を演じるだけである。

 

 

 実質アメリカ海軍の水上艦隊は新ロシア連邦(NRF)に対してその戦略的価値を失っている。

 

 

 これでは水上艦隊を温存する意味が無い。

 

 

 正直に言って、達成不可能な戦略の為に完全な遊兵を作ってしまい、戦力を無駄にして前線で戦う自軍の負担を悪戯に増大させ、結果として戦果よりも大きな損失を出し、自軍を余計に疲弊させてしまっている。本末転倒にも程がある。

 

 夕立(ユウダチ)江風(カワカゼ)が小馬鹿にした様に呆れ返るのも無理はないのだ。

 

 Scamp(スキャンプ)自身、「(ちげ)ぇねぇぜ」と言いながら上機嫌に嗤っていた。

 

 

「…取り敢えず、本国には警戒を強める様に要請を出そう。

 

 水上艦隊は兎も角として、未だПЛАТ(攻撃型原潜)は各方面に展開し、РПКСН(戦略ミサイル原潜)も稼働状態だ」

 

 

 現状のアメリカ海軍に対して新ロシア連邦(NRF)が警戒しているのは水中戦力である原潜部隊だ。

 

 この部隊に関してはアメリカもその稼働率の維持に全力を注いでいる。

 

 無論、言葉に出さずとも常時警戒を緩めていないし、報復核戦略の中核であるРПКСН(戦略任務ミサイル潜水巡洋艦)が核抑止パトロールのために護衛のПодводный крейсер(潜水巡洋艦)共々海中にその身を潜めている。

 

 

 だが───。

 

 

「ああ。そうした方が良い。最近SSBN(戦略原潜)の動きについてちょいとばかし気になる噂話を耳にした」

 

 

 通常、巡航ミサイルによる対地攻撃任務も想定している攻撃型原潜と違い、戦略原潜は国家間の全面核戦争が発生した際の報復核攻撃任務の中核を担っている都合上、深海棲艦との戦いに投入される事は基本的に想定されていない。

 

 また作戦行動は深海棲艦の活動が活発でない海域や、深海棲艦の潜水艦部隊が活動出来ない深度で活動しているため、潜水艦艦娘が護衛として乗艦する事も無い。

 

 

 但し仮想敵国による追跡や妨害、若しくは不測の事故を警戒して護衛の攻撃型原潜が随伴しており、その攻撃型原潜には乗り合わせている。これは出港直後や通過予定海域が浅瀬だった場合に、先行して針路上に深海棲艦の潜水艦や対潜部隊が存在しないか確認し、必要ならば針路変更や先制攻撃で撃破することによって、戦略的に重要かつ貴重な戦略原潜が失われる危険性を排除するためである。

 

 この運用に関しては新ロシア連邦(NRF)ВМФ(海軍)もそうだが、戦略原潜を保有している英仏海軍でも同様とされている。*1

 

 

 そのため深海棲艦との戦いに関わらない戦略原潜の活動に関して、潜水艦艦娘が自身の乗艦する母艦となる攻撃型原潜が護衛任務に就く際に、その行動に関する情報を持っていたりする。

 

 

第2艦隊(2F)から転属してきた奴から聞いた話だ。そいつが言うには1隻のSSBN(戦略原潜)が暫く前から核パトロール任務から外れたらしいんだが、コイツがどうも妙なんだよな」

 

 

「率直に答えろ。ソイツはSSBN-826『District(ディストリクト) of(オブ) Columbia(コロンビア)』じゃないのか?」

 

 

 Гангут(ガングート)の目付きが険しくなり、口調は詰問するかの様な厳しさを帯びる。当のScamp(スキャンプ)は「やっぱ知ってたかぁ…」と言うかのような顔で、柳に風とばかりに紫煙を吐き、短くなった煙草を灰皿に押し付けながら答える。

 

 

「ああそうだよ。一番の新顔なヤツだ。ただでさえ現行の老朽化した『Ohio(オハイオ)』級は無理くりに使い倒してガタが来てるってのにな。今はなんの任務に就いているのかすら分からねぇ。

 

 仲間が何人かあの手この手で聞き出そうとはした。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 だが返ってくる答えは揃いも揃って“分からない”の一言だけだとよ。

 

 つーか、おたくらロシアの方がなんか知ってんじゃないのか?」

 

 

「答えはНет(ニェット)だ。

 

 知っていたらわざわざ聞かん。就役直後に何度か大西洋で捕捉、追尾した記録はあるが、それ以降はソイツの推進機音らしきものを捉えても追尾には至っていない。それにこちらの諜報網ですらその動向が掴み難くなった」

 

 

「…作戦行動中に消息不明、或いは重大な問題が発生した事実を隠蔽している線は?」

 

 

 ここで土方が自身の推論を述べた。

 

 土方は事故による沈没、或いは深刻な欠陥や問題が見付かって作戦遂行能力を損失したのではないか?と疑った。

 

 最新鋭の戦略原潜が老朽艦よりも使い物にならなかったとあっては、海軍の問題だけでなく政府を巻き込んだスキャンダルに発展しかねない。

 

 

 現在アメリカは大統領選の真っ最中だ。幾ら現政権が長期に渡って独裁体制で国政を牛耳っているとはいえ、近年の政府に対する不満の高まりを体現するかの様な対抗勢力の上院議員Iowa(アイオワ)の躍進に、政権は危機感を募らせて様々な妨害工作を乱発し、その中には国外に敵を作る新ロシア連邦(NRF)脅威論も含まれており、Iowa(アイオワ)新ロシア連邦(NRF)との繋がりを問題視する新ロシア連邦(NRF)ゲート問題を作り出していた。

 

 そこに来て彼らが主張する新ロシア連邦(NRF)の脅威に対する物理的な備えとなるはずの戦略原潜に関わるスキャンダルは、政権にとって痛手と言える。

 

 同時に新ロシア連邦(NRF)に対して核抑止体制に穴が出来ている事を悟らせないためと、『Columbia(コロンビア)』の推進機音を発する囮魚雷(デコイ)を定期的に放流しているのではないか? 

 

 

「いや、それはねぇと思う」

 

 

 新しい煙草をГангут(ガングート)から貰い、今度は自前の使い古されたライターで火を灯しながらScamp(スキャンプ)は土方の推論に対して否定的な考えを述べた。

 

 

「任務が一体なんなのかは分からねぇだけで、さっき言った第2艦隊(2F)から来た奴ってのは、元々港湾防衛隊にいた奴で、決まって深夜帯にひっそり出入港している事までは掴んでいる。ソイツも実際警備中に目撃していると言っていたし、音紋も間違いねぇらしいんだが…、とっ!な、なんだ!?」

 

 

 

 突如警報が鳴り響き、(ふね)が揺れ、バランスを崩しそうになったScamp(スキャンプ)が驚きながら机にしがみついた。

 

 

 (ふね)が急加速し、急速に転舵した揺れ方だ。

 

 土方とГангут(ガングート)、そして夕立(ユウダチ)江風(カワカゼ)も各々何かに掴まるなどしてバランスを保ったが、机に置いてあったコーヒーは倒れたりして中身がこぼれ出していた。

 

 

「«総員戦闘配置!!対潜戦闘ぉ、用意!!

 

 これは演習に非ず!繰り返す!これは演習に非ず!!»」

 

 

 警報に引き続き、艦内放送が響き渡る。

 

 直後、内線の呼び出し音が鳴り、土方がスピーカーボタンを押した。

 

 

 それを横目にしながらГангут(ガングート)は無線機を取り出し、ロシア語で何かを話し出していた。おそらく自身の乗艦で艦隊旗艦の『Адмирал(アドミラル) Исаков(イサコフ)』と連絡を取り合っているのだろう。 

 

 

「私だ。状況報告を」

 

 

「«雷撃です!本艦隊…いえ、本艦に向け、艦首左舷方向から魚雷(フタ)!急速接近中!現在敵魚雷に対して平行となるべく回避操艦中です!»」

 

 

 やや混乱しながらも、当直士官から現状に対しての報告が告げられる。

 

 

「敵潜の確認は?」

 

 

「«はい。いいえ!航路哨戒中の外01(がいマルヒト)第七駆逐隊が艦隊に接近する雷跡を確認したのみです!敵潜、発射ポイント共に不明!現在七駆が前衛艦『ゆうぎり』と共に敵潜を捜索中です!»」

 

 

 外01第七駆逐隊とは、外01が土方の指揮する外洋防衛総隊の司令部である小松島鎮守府に割り振られたコードナンバーであり、ここに所属し活動する艦娘駆逐隊の第七駆逐隊を意味する。

 

 艦隊の航路の安全を確認すべく、前衛艦である護衛艦『ゆうぎり』よりもさらに前に出て哨戒活動に就いている七駆が発見したということは、魚雷を放った相手は七駆を狙って外したか、その後方に位置する『ゆうぎり』を狙ったのかもしれないが、狙いが甘くて逸れたのがこちらへと向かって来ているのだろう。

 

 

 敵魚雷が直線で突き進む無誘導魚雷ならば、敵魚雷の進行方向に対して投影面積が最小になる艦首を向けるのは理に適っている。無論、着弾までに回頭可能な時間的余裕と接近する複数──今回の場合だと2本──の魚雷の間隔が艦の最大幅よりも広くなければ駄目だが。

 

 

 今まで深海棲艦は水上・水中問わず、無誘導魚雷しか使用していなかったし、アンドロメダから得た情報から深海棲艦は誘導魚雷を保有していない事実が判明した。

 

 これは彼女らが使用する各々の生体艤装の内部、或いは自らの体内にて、その都度必要と考えた弾薬を生成しているのだが、生成された弾薬の構造は驚く程に極めて単純、簡素な仕組みである事から、誘導装置の様な複雑な仕組みを持った構造の弾薬は生成出来ないものと推測される。

 

 それは姫級の様な上位種であっても大差がない様で、ものは試しにと駆逐棲姫や潜水新棲姫、さらに南方棲戦姫ほか魚雷を扱う姫級達も協力して生成を試したが、悉く失敗していた。

 

 

 因みに艦娘の場合、艤装で使用する弾薬は全て鎮守府若しくは警備府の敷地内にある工廠、母艦となる艦船に据えられた簡易工廠にて生産されているが、旧地球軍組(極一部の例外)を除いて誘導魚雷を使用する事は不可能だった。

 

 これは通常の艦娘では艤装の能力、特に火器慣性装置が誘導魚雷を運用するには能力が不足しているためとされている。

 

 

 つまり、深海棲艦も通常の艦娘も共通して誘導魚雷を使用する事が出来ないのである。

 

 

 そして現在航行中の海域は深海棲艦の支配領域に近い。魚雷を撃ってくるとしたら、深海棲艦くらいしか考えられない。休戦交渉の為に向かっている艦隊に対して何故?という疑問はあるものの、では何処の誰がと問われたら、即座に返答出来ないだろう。

 

 何らかの手違い、或いは休戦を望む派閥とは違う、別派閥による妨害目的の攻撃という可能性が有り得た。事実アンドロメダ達からもその存在、アンドロメダ曰く“過激派”の存在に関する情報を得ており、注意を促されていた事もあって、艦隊全艦に休戦の意向を伝達した後も周辺警戒は維持させていた。

 

 

 故に、接近中の魚雷は消去法から深海棲艦によるもので、直線でしか来ない。しかもかなりの長距離から放たれた流れ弾の魚雷だ。これならば回避可能だと判断した上でこの魚雷と平行になる回避操艦を選択したのだろう。

 

 

 

 だが───。 

 

 

 

「«待ってください!前衛艦『ゆうぎり』より報告!»」

 

 

 想定外、予想外の事態というのは往々にして発生するものだ。

 

 

「«接近中の魚雷はM()k()4()8()()A()D()C()A()P()と判明!針路を変え、本艦との接触コースに!!»」

 

 

 この報告にScamp(スキャンプ)は愕然となり、咥えていた煙草を机に落とした。幸いこぼれたコーヒーの上に落ちたため火は消えたが、そんな事を気にする余裕はScamp(スキャンプ)には無かった。

 

 

 Mk48 ADCAPとは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「«回避不能!衝撃に備えてください!!»」

 

 

 

 その数秒後、艦底部より鈍い衝撃が伝わる。

 

 

*1
唯一の例外はインド海軍で、戦略原潜は保有しているが攻撃型原潜は今現在就役していないとされている。





 …またもや終わらなかったぞい。


───────


補足説明

Kitsap(キトサップ)原潜基地

 正確にはNaval Base Kitsap.キトサップ海軍基地。

 アメリカ西部最北、野球のシアトル・マリナーズを有するシアトル市のあるWashington(ワシントン)州(州都はオリンピア市)のキトサップ半島に位置する海軍基地。

 2004年にBangor(バンゴール)潜水艦基地とBremerton(ブレマートン)海軍施設の併合により、現在のキトサップ海軍基地となった。

 アメリカで3番目に大きな海軍基地で、原子力艦艇に対応できるアメリカ海軍造船廠4ヶ所のうちの一つ、2つある戦略核兵器施設の一つであり、アメリカ海軍最大の燃料貯蔵所でもある。


 作中に於いては太平洋艦隊の水上部隊が作戦能力をほぼ失った事により、この基地による原潜のメンテナンス及び支援能力が太平洋方面の海軍戦略を支えていると言っても過言ではないが、同時に新ロシア連邦(NRF)はこの基地を見張っていれば太平洋における米原潜の動きを把握出来るとして、沖合いには常時Подводный крейсер(潜水巡洋艦)が張り付いています。


Norfolk(ノーフォーク)海軍基地

 Virginia(ヴァージニア)州ノーフォークにある、アメリカ最大にして世界最大の海軍基地。

 第2艦隊の母港。


 作中に於いてはアメリカ海軍最後の有力な艦隊であります第2艦隊の母港ですが、基本的に首都ワシントンD.C.防衛の為にその主力は動けず、パナマ・カリブ海方面の深海棲艦に対してはFlorida(フロリダ)Mayport(メイポート)海軍補給基地に駐留する、第2艦隊の分遣隊が対応していますが、その戦力は防衛というよりも警戒と監視に重点を置いた戦力配置となっています。因みに上院議員Iowa(アイオワ)が現役時代に、漂流中のArizona(アリゾナ)をカリブ海で発見した時に所属していた基地でもあります。


Coast Guard(沿岸警備隊)

 United States Coast Guard,USCG アメリカ合衆国沿岸警備隊。

 連邦政府の法執行機関であり、アメリカ合衆国軍を構成する陸軍・海軍・空軍・海兵隊・宇宙軍の5軍種の常備軍に続き、平時に於いては6軍種目となる組織。但し国防総省ではなく国土安全保障省に属し、戦時には海軍の特別部局となる。

 Cutterとは日本の巡視船に相当し、機関砲だけでなくボフォースの70口径57ミリ速射砲やオート・メラーラの76ミリ速射砲などの火砲を装備しているタイプも存在する。Boatは巡視艇に相当し、沿岸周辺の哨戒、犯罪の取り締まりを担っている。機銃のみの軽武装。


 作中では戦時下のため海軍の指揮系統に置かれ、消耗著しい海軍艦艇の穴埋めとして近海防衛を担っています。

 しかし本編で語りました通り、艦娘部隊を運用します母艦としましては些か役不足なのが否めない状態で、少なくない船艇が撃沈されています。


 余談ながら、2025年11月に計画中止、調達が2隻で終了(3隻目は不明)となった『Constellation(コンステレーション)』級ミサイルフリゲート艦の代替となるFF(X)はUSCGで運用中の『Bertholf(バーソルフ)』級カッター(ジェーン海軍年鑑では『Legend(レジェンド)』級カッターとされている)がベースとなるもよう。但しいきなり問題点が出ている。…近年のアメリカ海軍軍艦調達で迷走し過ぎて問題出過ぎじゃないだろうか?


23900型汎用揚陸艦『Иван(イヴァン) Рогов(ロゴフ)』級

 ロシアが現在(2026年2月15日時点で)2隻建造中の強襲揚陸艦。

 フランスに発注し、建造後に引き渡しが中止となった『Mistral(ミストラル)』級の代替として設計・建造が開始された。

 設計は『Mistral(ミストラル)』の派生とされており、同艦のよりもやや大型化している。(『Mistral(ミストラル)』級全長210メートルの約21,000トンに対して『Иван Рогов(イヴァン・ロゴフ)』級は220メートルの約40,000トン)


 本作では本艦を設計ベースとします艦娘運用にも対応しました派生艦、24000型汎用母艦の建造計画案が進行中であり、ТОФ(太平洋艦隊)СФ(北方艦隊)には23000型原子力重航空巡洋艦『Сибиряков(シビリャコフ)』級が配備されることから、Балтийский флот(バルト海艦隊)Черноморский флот(黒海艦隊)への配備が予定されています。


SSBN-826『District(ディストリクト) of(オブ) Columbia(コロンビア)

 アメリカ海軍で『Ohio(オハイオ)』級の後継艦として現在(2026/02/21時点で)建造中の戦略原潜。予定では12隻を建造する事となっているが、運用コストが『Ohio(オハイオ)』級よりも高コスト(一時期2倍になるとの見積もりが出ていた)で、今後の海軍の建造計画に影響を与えるとの指摘が出ている。

 『Trident Ⅱ(トライデントⅡ)(D5)』型SLBM発射管が前級の『Ohio(オハイオ)』級の24基に対して16基に削減されているが、水中排水量は同等とされている。


 本作では経済の低迷や建造コストの高騰などから建造計画が大幅に遅延しており、1番艦のみが就役しています。


MK48 ADCAP

 米海軍が採用している潜水艦用長魚雷(重魚雷)。

 対水上艦艇攻撃では目標艦の艦底部で起爆。その衝撃によって艦底部と竜骨を破壊・破断し、致命的な損傷を与え、小型艦ならば艦体が真っ二つに裂けて沈没する。


───────


 さてさて。情勢は頗るよろしくないとしか言えないですなぁ。

 バランス・オブ・パワー。勢力均衡による牽制と協調。一強状態だと迷走・暴走に対して歯止めが利かなくなる。この状態だけはなんとしてでも避けてほしかったのだが、ままならないものだ。しかもあからさまに怪しさ満点のポッと出の新興勢力。

 ある意味で想定した中でも一番最悪な状況になってしまった。

 資源・エネルギー・食糧問題も相変わらず感情論と楽観論がごちゃ混ぜになっている。そこに論理や具体性は存在しない。

 防衛に関しても武器があれば良いというものでもないし、一朝一夕に増産出来るものでも無い。そもそも何処から購入しているか?購入先の生産能力はこちらの需要を満たしているのか?購入先の政治状況は?構成部品は何処製か?有事に際しての備蓄は?エネルギーは?

 官民一体となってウクライナから何も学んでいない。いや、駄目な事を学び、失敗と判定された事を抽出して改善が必要とされた部分のみを削ぎ落とすか隠蔽し、駄目さに磨きを掛ける事に心血を注いでいる。正真正銘の莫迦か?

 なによりもデジタル、サイバー攻撃に対する備えは?攻撃は何も目に見えた物理的なものだけとは限らない。デジタルは便利ではあるが、同時に脆弱性をも併せ持つ。厄介なのは攻撃を受けた際に攻撃者の特定が難しいだけでなく、もし攻撃者と特定した相手が実は冤罪で間違っていたとしたら、とんでもない事態を引き起こす。それを利用した偽旗作戦による社会への擾乱、疑心暗鬼に陥らせる事も可能だ。感情的で短絡的な者ほど踊らされやすいものだ。


 (いさ)ましさは一文字変えるだけで(あさ)ましさになる。


 家の壁や屋根、柱を自ら壊して火に焚べ暖を取るも、なぜこんなに寒いのか?なぜ雨や風が家の中にまで入ってくるのか?と首を捻る。寒いのは火力が足りないからとさらに壊したり今度は札束や衣服すら火に焚べる。そんな滑稽な姿を晒しながら隣近所を指差して嘲笑う。

 
 過去の栄光に胡座をかいて、美辞麗句を並べ立てた未来を騙る。だけど今、現在、現実に関しては目と耳を塞ぎ、明言無き無言の圧力によって黙らせる。


 他人を嗤っている余裕など無いのだ。その隙に国家という家の柱が抜き取られ、或いは限界を迎えて圧し折れて、家そのものが音を立てて倒壊する。今まで散々嘲笑ってきた特定国家の建てて問題があって壊れた建築物みたいにね。



 せめてボリス・エリツィン時代のロシアの様にならない事を祈る。


───────


 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想、若しくは分からない点に関しましての質問がありましたら返信で可能な限りお答えし、後書きの補足説明にも加筆致しますので、よろしくお願いいたします。
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