艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり 作:稲村 リィンFC会員・No.931506
高々度長距離偵察機U-2、コールサイン“
ランドマークとなりそうな山や河川、湖や都市などの目立つ地形を見ながら飛ぼうにも、今飛んでいるのは大海原の上空だ。頼りになるのは航法装置の計器のみ。
先の世界大戦で多くの衛星が失われ、GPS衛星からの充分な航法支援が得られないものだから、下手に気を抜けない。指定された飛行経路を少しでも外れると、その分の燃料を無駄にロスしてしまう。
ただでさえ操縦にクセのある気難しい機体だ。高々度を飛行中は空気密度の薄さから揚力が発生し難く、最高速度と失速速度の差は僅か19km/hしかないのだ。
とはいえ機首を下げれば揚力は回復するため、失速が即墜落に繋がる訳では無い。ただし高度が低下するという事は作戦行動中であれば撃墜されるリスクも高まる。
ただ今回の作戦に関して言えば撃墜の可能性はかなり低い。いや、ゼロと言っても過言では無かったため、パイロットは然程緊張していなかった。
何故なら今向かっている空域は
特にこれといったトラブルも無く順調な飛行が続き、多少気持ちに余裕が出てきたのか、パイロットは空腹を覚え、目的の空域までまだ暫く余裕がある今のうちに腹ごしらえをしておくかと、ヘルメットに設けられた穴からチューブ入りの糧食を口にした。
そこでふと、今回の出撃に関して考えを巡らせる。
マリアナ諸島方面で通信の途絶えた
その際にニホン軍とトラブルがあったみたいだが、気にしても仕方が無い。司令部が何とかするだろう。
そう言えば、マリアナ諸島と言えば確かニホンの艦隊と、何を考えているのか知らないが
まぁ今回の出撃とは関係ないだろう。
それよかヨーロッパ大陸の連中が仲間割れしてイギリスが
だが本国でも暴動騒ぎとの噂だ…。これからどうなっちまうんだろうな…。
本国と言えば、今回の出撃は原潜の捜索と言っていたが、西太平洋を管轄する
そんな事を考えながら飛び続けていると、レーダーが洋上を進む2つの水上艦隊を捉えた。
それはマリアナ諸島へと航行している日露の合同艦隊だと識別信号から直ぐに分かった。分かったのだが、一言で言って妙なことになっている事に訝しむ。
レーダーに映る日本艦隊の光点は、やや斜め後方で並走する
さらに艦隊の前方にも艦船を表わす2つの光点と艦娘の小さな4つの光点が確認出来た。
何かトラブルがあったのか、酷く混乱している様に見える。情報を得るべく通信傍受を試みるが、それも混乱からか誰が発信しているのかが分からないほどに、かなり錯綜している。
それでもなんとか艦隊が潜水艦からの魚雷攻撃を受けているとの内容までは掴むことが出来、尚且つ幾つかの突発的な熱源が発する赤外線反応を検知した。
解析結果から艦娘による爆雷投射の可能性が高い。
戦闘状態にあるのは間違いなさそうだが、どうも日本艦隊の輪形陣内部にまで侵入されている様だ。
まぁ間違いなく、待ち伏せを受けたんだろうな。ッたく、それ見たことか。だ。これが現実だ。海の化け物との平和なんて夢物語なんだよ。
そんな事を考えながらパネルを眺めていると、艦隊の先頭を航行する2つの光点の片方から、ひときわ目立つ赤外線反応が発生し、直後に直進する高速飛翔体の存在をレーダーが捉えた。
明らかに何らかのミサイルが発射されたようだ。
ニホン艦隊は国内産業の衰退で自力によるミサイルの生産が思う様に出来ず、弾庫がほぼカラの張り子の虎だと聞いている。となるとイワンの連中ということになるが、奴ら、遂に海の化け物共に対応する実用的なミサイルの開発に成功したのか…?
これが事実ならば戦慄を禁じ得ないと、パイロットは冷や汗をかく。アメリカでは開発の難航が予想され、その費用と資源を艦娘建造に充てるべきとの見解から、早々に開発計画が打ち切られた。
何より既存の兵器武器弾薬の製造ラインが先の第三次大戦以前から稼働しているという、古い生産設備に依存しており、戦時中に新規の製造ラインを立ち上げようとしたものの、着工はしても際限なく膨れ上がる莫大な戦費が重石となり、さらにインフレが追い打ちをかけ、終始資金繰りの問題から工事が中断と再開を繰り返し大きく遅延した。
最後は工事業者と工期の見直しと建設費用の支払いに関して揉めだし、裁判沙汰にまで発展したと思ったら業者が裁判中に経営難で破産。そうこうしている内に第三次大戦の終結も重なって色々と有耶無耶となり、結局新規の生産設備は完工せずに放棄され、施工途中の建屋が今やホームレスの集合住宅となっていた。
これ以降、新規の生産設備の建設計画が立ち消え、既存の生産設備の延命措置が決まった所へ深海棲艦との戦闘が始まり、既存の兵器システムでは劣勢に立たされ、その後に艦娘が登場したことで戦線を押し返す有効な手段となった事からも、早期警戒に必要不可欠となるレーダーなどの既存の索敵システム関係に発展改良を施すことは別として、新規の兵器開発関連は予算を大きく削られ艦娘関連の拡充に全力を注ぐ事となった。
先の大戦以前なら、戦いながらも兵器開発と製造も平行して行なうことも辛うじて出来ただろうが、今のアメリカにそんな余力は無かった。
だが
しかし、発射後のその飛翔した方向が解せない。戦闘中の方向とはまるっきり別の方向へと向かって射った。敵の別働隊でも見付けたのか?
この事に困惑していると、機体のレーダー警報受信機が反応。対空レーダーに捕捉された様だ。
その直後に船舶で世界的に使用されている国際VHFの無線通信システムの、特に緊急時の呼び出しと応答の際に使用されるガードチャンネルにて通信が入った。
「«
随分と高圧的だなぁ…。まぁ
応答しない訳にはいかないな…。
「
この空域での飛行目的でも聞いてくるか?と予想し、さてどこまで喋るべきか?と考えながら応答の文言を述べたが、返ってきた通信内容はあまりにも予想外なものだった。
「«
「
思わず叫んでしまう。捜索中の原潜『
レーダー反応から、ニホン艦隊の中央に位置する『カガ』の速度が徐々に低下している。周辺の艦艇は救援の動きを見せている。赤外線反応からは火災は起きていない様に見えるが、恐らく浸水が発生しているのだろう。
…
「«
なんてこった!さっきのミサイル発射は『
…いや待て。そもそも
「«
事態の真偽、より詳細な情報を聞き出そうとしたが、この有無を言わせない事実上の最後通告が発せられた直後、これが単なる口先だけの脅しではなく、本気であることを証明するかの様に、U-2のコクピット内をけたたましいアラート音が鳴り響いた。射撃管制レーダーから照射を受け、自機が完全にロック・オンされた事を告げる警告音だ。
パイロットの顔から血の気が引いた。
事実
マジかよっ!?
U-2のパイロットは自衛装備である
…やむを得ないか。
そう判断すると、返信はせずに操縦桿を傾けて翼を翻した。
基地に戻れとの指図だったが、別にこっちはそれを了承する言質までしたわけじゃない。戻ってるフリをして距離をとり、連中の索敵圏外から限界まで通信傍受で情報収集を続けよう。それと、司令部に緊急連絡だ。
「目標、射程外への離脱を確認。
…艦長、少々やり過ぎなのでは?」
レーダーに映る光点が艦隊から離れるのを見ながら、レーダー員が後ろに立つ
この時『
警告を無視してさらに接近して来ていたら、躊躇なく即座に発射し撃墜する態勢だった。
「構わん。
なにより、奴は何も答えなかった。素直には引き返すつもりはないのだろう。おそらく一旦距離をとってこちらの索敵範囲外から様子を伺う可能性が高い。引き続き対空警戒を続けてくれ」
「
「艦長、『
副長が日本艦隊への支援に出していた艦からの通信を伝えに来た。
…どうやら、上手くいった様だな。
「分かった。
「
一通りの指示を出し終えた
ヤレヤレ。何とかなったな…。後は
それにしても艦隊に『
『
今回の謀略の実行にあたって閣下は彼を指名し、彼はそれを二つ返事で快諾してくれた。彼が居てくれたお陰で何とかなった。
些か強引な謀略ではあったが、まぁ閣下らしいと言えば閣下らしいが、その結果として『かが』を損傷させてしまった。今頃閣下はヒジカタ閣下に釈明を───。
ここで
「と、いかんいかん。副長、『かが』との通信を繋いでくれ」
「«前衛艦『ゆうぎり』の佐竹艦長から続報と、
『
「…そうか。
「«それと、『
「…了解した。だが今回の詳しい状況に関しての報告だけは直接曙本人の口から確認を取りたい。彼女の『ゆうぎり』への帰艦を待って、佐竹艦長共々リモートでの報告と聴取を行ないたいと伝えておいてくれ」
「«了解。
最後に、超高々度で当艦隊へと接近していた米軍機をレーダーが捉えましたが、その後すぐに針路を反転。レーダー範囲外へと離脱しました。反転する直前に『
「ふむ…。
「«はい。いいえ、何も»」
「分かった。引き続き警戒態勢を緩めない様に、各艦及び各隊への伝達を頼む」
「«了解しました»」
ここで通話は終了したが、ソファーで足を組み、煙草を吹かしている
「
その報告に満足したのか、終始上機嫌なまま通信が終わり、無線機を懐に仕舞い込んだ。
「ま、概ね筋書き通りだな。まったく、
「…そろそろタネ明かしを願いたいものだな?
土方は
確かに彼女には今回の事態への対応を依頼したし、その際の責任もとるとは言ったが、些かやり過ぎではないか?と思ったのだ。
「はい閣下。タネ明かしという程のものではありません。小官は
土方からの詰問に、
「1つ目、
2つ目、適当なところで第2射の兆候を示しながら、密かに自艦のエンジン音を発する
そして最後の3つ目として、
以上3つの条件を達成致しましたら、3艦全乗員の亡命受け入れに関して、
ただそれだけの事です。先程同志
ただ問題は、いかにして誰の目から見ても
ですが、結果として閣下の乗艦を傷付けてしまったことは、陳謝します」
「
たまらず
「ああそうだ。攻撃を仕掛けてきた
そうして全乗員は死亡した。という事にすれば、ある程度の追及は躱せる」
「いくらなんでも無理がないか!?」
「ふん!嘘と証明出来なければ嘘は嘘でなくなる。嘘とバレたところで、開き直ればいいさ。西側の連中もよくやる方法だよ。
それにこの海域は深海棲艦の支配領域な上に、平均水深は並の潜水艦では到達不能な深さだ。撃沈を示す残骸の捜索をしたくても出来ん海だ」
確かにな。と土方は内心で呟いた。
国家は常に正直で清廉潔白であるわけではない。時には自国民にだって平然と嘘をついて欺く事だってやるし、曖昧な言葉を選んで煙に巻く事や、責任の所在を有耶無耶にして逃れたり、適当な尻尾切りのスケープゴートを仕立てて強引に幕引きを謀る事だってザラにある。
そこに国家を統治する政治形態の違いによる差異は関係無い。洋の東西を問わず、どの国だって結局は人間が統治している以上は、似たり寄ったりの行動をしたり問題を抱えたりするものだ。
そして
「それに貴様らと共に逃亡を決断した2艦も、ハワイ沖で沈んだ事にしたのだろう?なら今度は貴様の乗艦である『
貴様ら全員、これで晴れて自由の身というわけだ」
「…皮肉なモンだな。自由を謳った国から抜け出して、死んだことになって自由を得るなんてよ」
自嘲気味なこの
「ようこそ。無責任な自由の国から責任ある自由の国へ。偉大なる我が母なる祖国
「…おい、アタイはまだ
勝手に話を進めるなと言わんばかりに半眼で睨みながら文句を告げるが、当の
「んん~?貴様は我が国の領海近くで艦から降ろして貰うつもりだったと言っていたではないか?
それはつまり、初めから我が国に亡命を希望する気だったのだろう?何か問題でもあるのか?」
ああ、そうだったと、
この短時間の間に色々と有りすぎて、ウッカリ忘れていた。
「まぁそうは言っても、正式な亡命受け入れに関する受理と手続きは本国に帰還してからになるから、今の所は飽く迄も仮だ。暫くは私の指示に従ってもらうぞ」
「…ああ。分かったよ。アタイらの身柄、アンタに任せるよ」
そう言って
自分の知らない所で勝手に話が進められ、色々と取り引きとか交渉とか、無い知恵を必死になって絞り出して考えていたのに、既に諸々のお膳立てがほぼ出来ていた。これではまるで自分はピエロを演じさせられていたみたいで、なんだかむしゃくしゃして、ちょっとくらい言い返してやろうとしたが、それも結局は墓穴を掘るだけに終わり、なんだか色々とバカバカしくなったのだ。
「…とんだ茶番劇だったな」
呆れ返ったように土方は溜息を吐く。
多少の無茶は強引にでも押し通る。嵌れば得られる成果は大きいが、外せば大損する運任せなやり方だ。だが彼女はその運すら強引という言葉で無理矢理にでも鷲掴みにし、力技で引っ張り込む様な“豪運”の持ち主でもあった。
ただ
「まぁそう仰らないで下さい。それに
「なぁ、ちょっといいか?」
ソファに寝っ転がって煙草を吹かしていた
「そのお邪魔虫ってのは、ひょっとしてさっきの話に出てたヤツか?ありゃ一体なんだったんだ?」
この
完全に忘れていた様である。これには流石に
仕方ないと土方は掻い摘んで
「日本本土からこの艦隊へとU-2高々度偵察機が飛来して来ていた。
本艦にオブザーバーとして乗艦している第7艦隊に所属する
おそらく、この艦隊の追跡命令を出した直後から音信不通となった、貴艦と共に叛乱逃亡した『
「カーッ!まさかここまで飛べる
完全に想定外だった様で、両手で頭を乱雑にガシガシと掻くと、頭を下げた。
「なに、貴国アメリカの潜水艦から襲撃を受けた事実を素直に伝え、合同艦隊の旗艦を務める『かが』が被弾した事実も伝えた上で、犯人を撃沈。この海域は戦闘状態にあると親切に教えてやったのだ。
そして無闇に接近すれば、無用な誤解と混乱を生むと伝え、不幸な衝突を回避するためにも引き返す様に警告し、レーダー照射を当てただけだ」
まぁ撃墜する気満々だったがな。という言葉は流石に話さなかった。
そしておそらく距離をとって様子を窺っているかもしれないということも、確定情報ではない事から伏せた。
たださっきまで気不味そうに顔を逸らしていたにも関わらず、得意げに語ったものだから
「となると、暫くうちらは下手に通信で電波を出すマネはしない方が良さそうだな。
多分だが、脅されて尻尾巻いて帰ってきました。なんて恥ずい報告はしたくねぇだろうから、ギリギリまで情報収集して成果を得ようと粘るだろうからな」
「…矢張り、貴様もそう思うか?」
「アタイならそーするよ」
ここで
「
もしパイロットが恥も外聞とか諸々を捨てれるヤツだとしても、その上の連中が自身の保身のためにゼッテー許さねぇよ。帰った途端に尻尾切りの生贄にされるのがオチさ」
充分に吸い尽くした吸い殻を灰皿に押し付け、少し悲痛な顔をしながら続きを話す。
「アタイら艦娘だって、杜撰な情報分析や希望的観測で立てられた無茶な作戦計画が原因で、案の定作戦が破綻して失敗する羽目になったにも関わらず、その一切の原因や責任をアタイら艦娘に擦り付けて来やがって、何人もの仲間が
現在のアメリカ軍部内に於ける闇の一端を、図らずも知ることとなった。責任逃れや転嫁が横行し、組織としての自浄作用が機能しておらず、その弊害が現場へと押し付けられている。
日本のAL/MI作戦と同時に開始された、アメリカのハワイ諸島奪還作戦が惨敗に終わった時に、アメリカ軍では少なくない艦娘が敗戦の責任をとらされて除籍処分という名の不名誉除隊や追放があった。
しかしその処分が下された艦娘の殆どは、作戦の成否とはなんら関係のない艦娘だったと言われている。
それに対して作戦の立案に携わっていた者達が何らかの処分が下されたとの話は殆ど無い上に、数少ない言い逃れや擁護が不能として処分が言い渡された者達も、それはほぼ形だけの処分に過ぎず、ほぼ全員が後に元職に復帰していたり、形ばかりの左遷からの新部署を立ち上げての重要な役職入りを果たすという、事実上の栄転を果たしている割合が多かった。
だが組織とはそういう物だ。特に巨大化した組織ともなると、巨大化する過程で得た権益や利権との絡みもあり、組織の維持と保身を最優先に考え動く様になる。
不都合なものは徹底的に隠蔽され、時には抹消される。組織の力を維持するために必要ならば罰則規定すら捻じ曲げたり都合良く利用する。これが所謂組織の論理に於ける弊害というものだ。
「つーか、さっきの通信は大丈夫なのか?」
思い出したかの様に、
「問題ない。傍受されている事を前提に、悟られぬ様にお互い言葉を選んで話ていた」
それなら問題ないか…。と納得したところで、今度は土方へと顔を向ける。
「ところでよ、ヒジカタのオジキ、この艦に
「…問題が無いと言えば嘘になるな。この艦隊での彼女の立場は、あまり良くない。それでも職務には忠実であろうとはしているが、今回の騒動の発端となったサン・ディエゴの事件について聞いてからというもの、精神的にかなり参っていた。
今は自室に籠もったままだが…」
「油断するなよオジキ。奴はクソ真面目なのが取り柄だとは聞いてるが、かなりのクセモノだって噂があるヤツだ。
…何か企んでるかもしれねぇ」
そこへ再び内線の呼び出し音が鳴り、土方がスピーカーへと繋ぐ。相手は田沼少将だった。
「«土方司令、たびたび申し訳ありません。
噂をすれば影。と、今丁度話題に出ていた
彼女の自室には艦橋へと直通している通信手段が無かったため、直接艦橋へと赴いたのだろう。
「«『
今、
どうやら
この報告に土方は「そうか」とだけ答え、
「(
「(シッ!姉貴、変な事言うもンじゃねぇ!)」
取り敢えず、艦隊は一時『かが』の応急修理のために停止する事となった。
調査の結果、Mk48魚雷は艦体に激突した際の衝撃で弾頭部分が完全に潰れた状態で艦体の外板を突き破り、そのまま突き刺さっている状態で発見され、物的証拠として回収される事となった。
魚雷によって出来た破孔の修理はドック入りするまでそのままにすることとなり、浸水は水密隔壁の水密区画で封じ込め、隣接する区画では排水作業と防水作業が夜通しで行なわれた。
突き刺さった魚雷の信管が最初から破壊されている事実を知らない現場は、爆発物処理の訓練と経験のある潜水艦艦娘達を集めて撤去と回収作業に取り掛かったものの、魚雷の破損具合から信管の状態が分からず、作業中に誤作動を起こして爆発する事を恐れてどうしても慎重にならざるを得なく、時間が掛かると予想されたが、
これによって回収されたMk48魚雷ADCAPは『かが』の格納庫で厳重に保管され、後日アメリカへの正式な抗議を行なう上での重要な物的証拠として活用されるであろう事は、誰の目にも明らかだった。
その後、
無論、それは
彼女はこの後
これら一連の作業が行われている最中に、土方は『ゆうぎり』の佐竹艦長と同艦に帰艦した自身の直属の部下である曙の両名とのリモートによる報告の聴取が行われた。
その時の曙はいつものツンケンした態度とは打って変わり、やや意気消沈している様に見えたと土方は語っている。
彼女は今回の魚雷探知からの自身の行動と、自分が指揮する七駆への指示と行動、そして『
その際に
確かに言葉にすれば事実である。しかし日米のトラブルに
ただ
それにである。もとを正せば今回の一件は土方が
その佐竹艦長からは、結果的に大事に至らなかったとは言え、艦隊の旗艦たる『かが』が被雷し損傷した事実に変わりはなく、それは艦隊の前方で航路の安全を確認するだけでなく、艦隊に迫る脅威を早期に発見、適切に対処する立場にある前衛艦としての役目を果たせなかった本艦の怠慢であり、その責任の所在は艦長たる自身にあるとして、如何なる処罰も甘んじて受けると申し出てきた。
これに対して土方は、艦隊を構成する各護衛艦がマトモな対処行動に動けていなかった事実を引き合いに出し、この事態は深海棲艦への対策にのみ重点を置いてきた軍の戦略や教育方針に問題の根幹があるとして、誰にも対応出来無い不可抗力な結果であるとの考えを述べ、現時点での処罰は考えておらず、本作戦終了後に正式な調査委員会を設けて艦隊全体としての問題点の洗い出しを行なう上で協力してもらうため、委員会立ち上げと共に出頭する様に、またそれまでに問題点や改善点を思い付く範囲で書面にしたため纏めておく様にと申し渡して終了とした。
兎も角これで漸く当初の目的地、マリアナ諸島サイパン島へと到着する事が出来る。
次回、漸くWelcome to Saipan!
…自分で言うのもなんですが、最後はちょっと巻き過ぎたかな?と思ったり、色々と無理矢理だったかと思う所。
因みに
銃声は出力を下げていたことにより最小限に抑えられ、なおかつ周りの喧騒によって掻き消されました。
補足説明
U-2高々度偵察機
米ソ冷戦時代の米国で
最高高度は27,000メートル。最高速度はマッハ0.8。
高々度を飛行するため、パイロットは特殊な与圧服を着用する必要があり、これはほぼ宇宙服と大差ない代物である。
元々はソ連などの共産圏の邀撃機では迎撃困難な高々度で侵入し、軍隊の配備状況などの軍事機密情報を撮影する強行偵察目的で開発されたが、地対空ミサイルの発達により1960年の『U-2撃墜事件』などから、その優位性は薄れた。
現在は電子・光学センサーの発達により、無理して強行偵察を行なう必要が薄まり、直接相手国の上空を飛行しなくても、かなりの情報収集が可能となっている。また偵察衛星よりも遥かに目標に近い位置での偵察行動が可能であり、より精度の高い情報が得られる。
後継機SR-71の退役、無人偵察機RQ-4
当初の予定では問答無用の警告無しで撃墜するつもりでしたが、『
48N6系長距離対空ミサイル
3К96 «
誘導方式は本編で語った通り、指令・慣性・セミアクティブ・レーダーホーミングによる複合誘導方式で、誘導に使用されるレーダーは『
陸上型のS-400«
限定的ながら弾道ミサイルの迎撃能力を有しており、運用システムを含めて今なお改良及び性能向上が進められているため、 3К96とS-400で同名の48N6でも多少の性能の違いがあり、48N6の後ろに続く単語と数字で違いを見極める必要があります。そこがややこしいため、48N6“系”としました。
久々に本を一冊紹介させて頂きます。
本作を執筆するにあたって少なからず参考にさせて頂いています、伊藤貫先生、ジェイソン・モーガン教授による対談本───
アメリカ帝国の衰亡と日本の窮地
護憲左翼・拝米保守の欺瞞を撃つ!!
100年ぶりの大転換期!
自主防衛、中立主義、自主規制で
存亡の危機を乗り越えよ!
教養を失い、経済学に乗っ取られたアメリカ人/哲学なきアメリカ人が世界一の経済力・軍事力を持つ怖さ。
ニコニコしながら悪いことをするのがアメリカ人/指導者層すら、他国の歴史に興味のないアメリカ。
二大政党制が貧富の格差を広げている/マスコミ人が司祭の役割を務める社会は、最悪の社会。
日本人はジャパノロジストとジャパンハンドを崇め、ひたすら服従してきた/日本人の外交議論は、単なる情緒主義。
戦前の日本人が今後の日本人の〝逃げ場〞になる/日本は核保有して自主防衛・中立主義・自制主義を目指すべき。
前書き
第1章 アメリカ一極覇権の無謀な論理
第2章 教養を失い、経済学に乗っ取られたアメリカ人
第3章 アメリカ人は他国民の歴史と価値観に関して、無知で無関心
第4章 アメリカ文明とは何か
第5章 アメリカの機能不全をカトリックは救えるか
第6章 日本の「國體」を考える
第7章 日本は核保有して自主防衛・中立主義・自制主義を目指すべき
後書き
全280ページ。
現在の混迷する世界情勢を読み解く上で参考になる一冊だと思います。是非手に取ってご一読して頂けたらと思います。
それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想、若しくは分からない点に関しましての質問がありましたら返信で可能な限りお答えし、後書きの補足説明にも加筆致しますので、よろしくお願いいたします。