ドライフラワーを束ねて   作:ペネトレート

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ハーメルンでは初投稿です。この形はpixivじゃあ無いよなあとか思いながら書いてました。拙い部分はめちゃめちゃあると思いますが一度読んでみてくれると嬉しいです。


初め 出会い

昔から惚れっぽいのが悩みだった。惚れっぽいと言ってもすぐに人を好きになると言う意味ではなくて、何事にも熱しやすい、入れ込みやすい性格というわけだ。だからある意味では今の職業であるウマ娘のトレーナーというのは案外間違った選択ではないのかもしれない。これはそんなトレーナーの話だ。

 

 

鈍色の雲の色は今の自分のことをそのまま写したかのようだった。中央トレセン学園のトレーナーになったは良いものの当然ウマ娘にだって選ぶ権利はあるもので新人、無名、名家の出身でもない俺は見向きもされない。これでもトレーナー養成校の頃は優ばっかりだったんだぞと言いたいところだが、現場を知らない自分はどのウマ娘からも同じように写っているだろう。

 

「そろそろ潮時かな」

 

トレーナーを辞めるわけではない。どこかのベテラントレーナーの補佐をしてサブトレーナーとして実績と信頼を得ようとしているだけだ。本来であればそれが普通なのだが、彼は自身が入れ込みやすい性格だと言うことを自負しているためチームの担当になった時に全員に同じ熱量を注ぐことができないと判断していたのだ。

 

「でも、そんなことも言ってられないよなぁ…田沢さん(懇意にしている先輩トレーナー)のところに厄介になれないか聞いてみるか」

 

そんなことを呟きながらスマホを取り出そうとするとターフを駆けるウマ娘が目についた。その髪は肩口あたりに切り揃えられ、左耳の黄色いリボンの美しいウマ娘だ。随分と魅力的な走りをする。

 

 

「綺麗だ」

 

 

ポロっと吐いたその言葉を聞いたらしく誰かが寄ってきて口を開いた。

 

 

「君は新人トレーナーかい?」

 

 

1人だと思っていたため驚いて振り返ると、ここトレセン学園で知らない者はいないだろう伝説の7冠バであり生徒会長であるシンボリルドルフがたっていた。

 

 

「シンボリルドルフ!どうしてここに?」

 

 

「トレセン学園の生徒会長がターフを駆けるウマ娘を見ることに何か理由が必要かな?」

 

 

「いや、そんなことは…」

 

 

「はははは!すまない。少々意地の悪い言い方だったね。何を隠そうあそこで走っているウマ娘に話があっただけだよ」

 

 

(怖そうなイメージがあったけどそう言うわけでもないのか)

 

 

「あそこって、あの黄色のリボンの?」

 

 

「ああ、彼女はエアグルーヴ、初志貫徹。意志の強い一本筋の通ったウマ娘だよ。」

 

 

「エアグルーヴ…確か、以前オークスを取ったウマ娘の子どもにそんな名前のウマ娘がいた気がするな」

 

 

「博覧強記、驚いたな。まだ新人だと言うのに昔のウマ娘にまで精通しているのかい?」

 

 

「え、まあ趣味みたいなものだしな。ああ、思い出したダイナカールだ。その娘さんか。」

 

 

「私のお母様の話をしているのか?」

 

 

急に割り込んできたのは先のウマ娘であるエアグルーヴ。近くで見ると正直ちょっと怖い。紅のアイシャドウがよく似合っている。

 

 

「やあ、エアグルーヴ。君の話をしていたら君の母の話が出たと言うわけさ。今少し時間はあるかい?」

 

 

「今であれば、はい。」

 

 

「君がトレーナーと上手くやれているか話を聞きたくてね。」

 

 

「ああ、彼女ですか。すみませんがあのトレーナーとは契約を解除しまして」

 

 

「そうか、今回もか」

 

 

(契約解除か。言葉は聞くし、あることはあるけど、実際に踏み切る例は中々無いよなあ。しかも名を上げたウマ娘なら尚更)

 

 

「して、貴様はみない顔だが新人トレーナーか?」

 

 

「ん?ああ、そうだよ。」

 

 

「私のスカウトにでもきたのか?まさか会長を…?」

 

 

「え、違うよ。会長さんとは今初対面だし、ただここで走ってるウマ娘を見てただけ」

 

 

「はあ、貴様、トレーナーだから許されているが側から見れば捕まってもおかしく無いな」

 

 

「酷いな。俺だって能力自体はあるつもりなんだけど…」

 

 

「さて、辛気臭い男は放っておいて会長よろしければ今後についてお聞きしたいことが…」

 

 

エアグルーヴは一瞥もくれずに去ってしまった。シンボリルドルフはと言うとこちらに目配せをしていたのだが、あれにどんな意味があるのかは分からなかった。

 

 

「エアグルーヴは良いウマ娘だったなあ。まだ会長さんには見劣りするけどちゃんと鍛えればそれこそ歴史に名を残す…」

 

 

でもトレーナーいないのかと思い出したところでそれ以上思考するのを辞めた。

 

 

人馬一体とはよく言ったもので、歴代の優秀なウマ娘を見てきてもトレーナー無しに大成したウマ娘は皆無と言って良い。そういう風にお話を仕立て上げられているのかと子供の頃は疑っていたが、どうやらそうでも無いみたいだ。

 

その理由には自分が書いた論文にあるが簡単に言えば本格化が関わってきている。と思う。

 

ウマ娘は自身の能力が飛躍的に伸びる時期がある。それが本格化だ。この時期は急に食事の量が増えたり体が軽く感じたりなど様々な状態になる。そしてこれは思春期と同時期に起こるためか、精神的にも肉体的にもうまく本格化に対応できず戦績を落としてしまうウマ娘も少なくない。ここがトレーナーの必要な理由だと考える。トレーナーとはウマ娘の道を示す羅針盤のような存在。ウマ娘が自身の成長に対応ができなくなったのならば、外からトレーナーが軌道を修正する必要がある。不安を感じたのであれば取り除き、普段よりも運動量が増えたのであれば最適な運動量になるようにメニューを考える。食べすぎても筋肉が付きすぎないようにする。

 

今考えただけでもこれだけのことがある。これをトレーナー無しで完遂することなどほぼ不可能に近い。事実あのシンボリルドルフだってチームに所属しトレーナーの指導をしっかりと受けている。

 

つまりだ。エアグルーヴはトレーナーにうまく馴染めない性格だと言うこと、それはレースで走る云々の問題ではなく本格化した時に上手く対応できないことがあるということ。母親が優秀だと言うのにそういうことは教わっていないのだろうか。いや、彼女は聡そうだからきっと気づいてる。だから徹底的に探しているのかもしれないな自身の理想に合うトレーナーを…

 

 

「会長さんも言ってたな、初志貫徹。つまり彼女にはやはり意志がある。何かはわからないけどそれを叶えるためにトレセン学園に来ているんだ。」

 

 

「話聞いてみたいな」

 

 

もう暖かい4月の暮れ。彼はジャケットを着直した。

 

 




読んでくださりありがとうございます。結構間隔は空くかもしれませんがちゃんと続き物にします。
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