教祖が呪い、豚猿が嘲笑う。こいつら、ヒーロー志望なんだぜ……? 作:かりん2022
「は?」
悟の怒りが篭りに篭ったその言葉に、伊地知はヒッと身を竦ませた。
「つまり、悠仁を渡して、傑は自分達で取りに行けって事? それも、悠仁には傑と同じように星落としをさせると? 舐めてんの?」
「そうだ」
「素直に傑を助けてくださいお願いしますって言えないの?」
「ああ? 散々星落とししてきた奴を受け入れられるわけがねーだろ。奴がいると和解ができねー。ここで切り捨てた方が組織の為になんだよ」
「でも悠仁には星落としさせるんだよね?」
「そこまではさせねぇ。だが、相手の新兵器が通じねぇよってアピールが必要だ。だから、夏油を奪還したらテメェらに売り飛ばす」
「……」
「ヒィィっ」
怒りで言葉の代わりに呪力が吹き出した五条。それは、灯里に取り憑いていた呪霊が余波で消滅するほど。
だが、トリオン兵である灯里には見えないので無視する。代わりに伊地知が怯えているので、恐らく凄いことになってるんだろうな、と予測はつくが。
「お前さ、傑の事、どう思ってんの?」
「角の攻撃衝動に浸されきった私以上に壊れた人形」
ついに手が出た。
灯里を真希が庇い、貫かれる。
貫かれたまま、真希は頭を地につけた。
「次期教祖候補としてお願いします。どうか、前教祖を助けてください」
「お姉ちゃん!!」
「大丈夫だ、真依。トリオン体だ」
そうはいっても、ひどい様子でトリオンが漏れているのが分かる。
「同じく、次期教祖候補としてお願いします。全ての技術情報の提供の準備は出来ております。相手のトリオン技術も必ずや解析して、提供いたします。それで呪術師以外も戦えるようになるはずです」
「傑は! お前だけは信じてたんだよ! 傑を裏切るのか、初代トリオンモンスター!」
「しょうがねーだろ! あいつは周囲を巻き込んで死に向かって走り続けてきた、止めるのは並大抵の事じゃ無理だ!!」
「!!」
「血に汚れきったあいつには、生きる理由が必要だ。対外的にも、あいつ自身にも。今回のは良いきっかけだ。宿儺も、好きあらば暴れたがってるんだろ。いいぜ。好きなだけ暴れろよ。和平はその後「あのさ、もう黙っててくれよ」「我が組織は創設者とはいえ残滓なんかを頭に置くつもりはありません。これは総意です」」
言われて、渋々灯里は黙る。
「傑は、非術師を猿って呼んで毛嫌いしてた。そして、そんな自分の事も嫌ってて、苦しんでた。傑に必要なのは生きてて良いって許しじゃない。傑自体が認めてないし、傑は血を流しすぎた。だから、そちらに預けたいってのは、私達の意志でもある。ずっと止めたかった。こうなるまで止められなかった。けれど、最初で最後の切っ掛けをもらえたから、今回で意地でも止める」
「政府としても、今のままでは受け入れる事はできません。傑さんには消えてもらわなくてはならないし、しかし侵略を防ぎ続けた功労者を見捨てるのはそれはそれで触りがあるのです。向こうに利用されても困りますし。全ての情報を提供することはもちろん、奪還にも人を出させていただきます。大きな貸しを我が団体と政府に一つずつ作ったと考えていただいてもいい。宿儺の秘匿死刑の猶予、一回までの暴走に対する免罪をお約束します。どうか」
「一つ条件がある」
「お聞きします」
「お前ら全員、生身で一発ずつ殴らせろ。それと、悠仁の派遣については本人の意思を尊重させてもらう」
そして、呪術界とボーダーは手を組むこととなった。
悠仁は、困った顔で手を振った。
「俺、例え侵略者相手でも殺すの嫌なんですけど」
「だよね。ただ、受けても君にデメリットはないと思う。執行猶予が政府のお墨付きでつくし」
「可能なんですか」
懐疑的に伏黒が聞く。
「いやー。悠仁の所持トリオン、凄いらしいんだよね。3代目トリオンモンスターを名乗れるほど。で。その大量のトリオンを使ってやりたい事があるらしい。そのプロジェクトが終わるまで無事だよ」
「プロジェクト?」
「星。日本も欲しいらしい」
「あんた、宇宙にいくわけ?」
流石に野薔薇が目を丸くして聞いた。
「似たようなものかな。まー、縛りを結ぶわけでもないし、いつでも呪術界に逃げ帰って大丈夫。それでも契約は守らせるし。流石に傑の奪還には参加することになるけど、それは僕が守るから」
「いーの? それで」
「まあね。傑の引き取りに付随する諸問題を考えれば、それぐらいは余裕で許されるよ。宿儺に関しては、僕が向こうの秘密兵器を破壊するのでも問題ない事だしね」
「人を殺さなくて良いなら、やってみます」
「正直、侵略者も侵略者皆殺しマンも関わりたくないですが、虎杖が行くなら俺も行きます」
「ちょっと私を置いていく気? 意地でもついてくからね!」
「ありがとう。僕が君たちを守るから、大船に乗ったつもりでいなさい! あっ 向こうでは人は極力殺さないで、傑の奪還だけするから。そのためにトリガーも借りてきたし、一ヶ月で使いこなして救出に向かうよ」
「門外不出のはずでは?」
「この後に及んでそんなの許すはずないでしょ。トリガーの貸与はこれから呪術界に継続的にされる事になる。流石にトリオン最低値以上の術師に限定されるけどね。恵も野薔薇も規定値余裕でオーバーだよ。呪術師ほど珍しい人種じゃないしね。トリオン値高い人」
「先生、一ヶ月も良いのか?」
「準備は欠かせないからね。……大丈夫。傑は待ってくれるよ」
「……俺、頑張る」
「そういう事なら、時間は無駄にはできないな」
「今日中に最低限の使い方を覚えるわよ!」
「「「おー!」」」
「3人とも、ありがとう」
「貴様ら、俺様がそんな訳のわからぬ存在の言うままに力を振るうと本当に思っておるのか。おめでたいな」
「でもたまには暴れたいでしょ?」
「ドン引きするほど暴れてやるわ」
「それは傑がやってるんだよなぁ」
「できれば死人はなしでお願いシャス!」
「本当にふざけるなよお前ら」
宿儺がプンスコする横で、恵と野薔薇はせっせと色々なトリガーを試していた。