教祖が呪い、豚猿が嘲笑う。こいつら、ヒーロー志望なんだぜ……? 作:かりん2022
「こっ この人たち、なんなんですか!?」
「えーと、ごめん。いう事はできないかな」
「どっちの味方なんですか!? 貴方も選ばれた人ですよね!?」
「そうだけどこっちの組織にも所属してる」
「こっちの組織って何ですか!?」
「えーと、秘匿義務があっていえない。とりあえず、トリガー解除はしない方がいいと思う」
私は戸惑いつつも、大人しく拘束された。
なんとか説得できれば良いんだけど。
私は、縛られて目隠しをされた。
「傑」
「悟」
悟の声がして、少しホッとしてしまう。
「そんなにあの鬼女、好みだったわけ?」
戸惑いつつも、答える。
「そうだけど」
頭をかく音がする。
「あいつ、何。トリガーって?」
「言えない」
「通じると思ってんの?」
「だって呪術規定だって、部外者に呪術師のこと教えちゃダメだろ。この件については、悟は部外者だから言えないよ」
「真面目か!! 誰にだったら言うんだよ!」
「それはもちろん、関係者?」
「じゃそいつ言えよ。連れてきてやるから」
「言えるわけがないだろ」
「それより、さっきの子、離してあげなよ。一般人に迷惑を掛けないのが規則だろ」
「あのな。心配してる場合か。俺に話さないなら、他の奴が受け持つことになる。尋問されるぞ」
私は、一生懸命考えた。
「それでも、言えないよ。勿論、向こうに聞かれても、呪術界の事については黙ってるし」
「あのな、あのエイリアン? との戦いで何人攫われて何人命を落としたと思ってるんだよ」
「そんな事言われてもね。呪術師だって呪霊のする事全てに責任は持てないだろ?」
「呪術師は国の承認を得てる。お前らは得てんのか?」
「えーと、駄目だよ、言えない。私が勝手にベラベラ話していいことじゃないよ」
「真面目か!! あのな、ふざけている場合じゃないんだぞ。本当にお前やばい立場だし」
そんなこと言われても困る。
「……駄目だよ、やっぱり規則を破るのは悪い事だし」
「命が掛かっていても?」
「あー……死にたくはないなぁ」
「じゃあ言えよ」
「ちょっと待って。遺品を渡してもいいものかどうか考える」
どうせだったらブラックトリガーになって悟に貰われたいけど、それって勝手に譲渡してもいいものなのか。
「遺品? もしかしてあの女のか」
「いや、私の遺品を君に」
「ふざけんなよ!!!」
ガンッと蹴られる。
「痛いな! 動けない相手を蹴るなよ」
「言わなきゃ尋問はこんなもんじゃねーんだよ!」
「耐えられなかったら大人しく自害するよ」
「あのさあ! ほんっとお前!!!」
「悟。もう良いそうだ」
夜蛾先生の声がする。
「いや、絶対俺が説得するから」
「悟」
静かな声。
「傑。言えよ! 今すぐ言え!!」
「悟、ごめん」
まあトリオン体だからきっとなんとかなる。なるといいな……。
私は頑張った。一緒に捕まった人も頑張ったらしい。
トリオン体だと痛みを感じなくすることができるのが幸いした。
でも辛いのは変わりない。ブラックトリガーになるしかないかな……。
そんな時、政府から来たという人が面会に来た。
「エイリアン対策室です。あなた方からお話を伺いたい」
「えっ この場合どうすれば?」
「洗いざらい話してくださればそれで結構ですよ」
私は困った。この人も係の人といえば係の人なのではないか?
「その」
私はそれでも言葉を飲み込んだ。
「いや、すみませんが、使いがちゃんと来ると思うので、それを待ちます」
「使い? それは君の所属している組織かな?」
「それは、言えませんが……」
「呪術師は秘匿された組織だ。本当に君がここに囚われていることに気づき、助けに来てくれるのかな?」
「その、でも、すみません」
彼女は遺書で、ブラックトリガーがボーダーか類似する組織に渡らない場合は壊してくれと頼んでいた。
ネイバーの手に渡るのも、兵器として利用されるのもゴメンだと。
だから、私は。
「……すみません」
「では、こうしよう。わたしたちで、君達の組織に呼びかけて窓口の存在を教える。そのための最低限の事でもだめかな」
「お願い、します。ボーダーという組織です」
「わかった」
それから、十日が経った。また悟が会いにきた。
「ボーダー、ちっともお前らの事助けにこねぇんだけど?」
「時間が掛かるのは仕方ないよ」
「なんで?」
「言えない」
ため息。
手が、私の手を包んだ。何かを握らせる。
「!!」
「お前のお友達。渡していいかどうかわからない遺品ってこれ?」
「そうか……」
「なあ、もう一度聞く。あんな鬼女がそんなに大切? 付き合ってたの?」
「違うよ。でも、頼られたからね」
「……はっ。じゃあ、俺が頼ったら同じ事してくれんのかよ」
「もちろん」
しばし、間が訪れた。
「じゃあ、助けてくれって言ったら助けてくれんの?」
「もちろん。親友だろ?」
「じゃあ、言えよ!」
「それは出来ない」
「あのさあ! 街がエイリアンに襲われて大変なんだよ」
「出してくれれば応戦するよ。戦い終わったらちゃんと戻るし」
「傑! ……いや待て。それ縛る?」
「信じられないなら縛るよ。ここからちょっとの間でも出たいと思ってるし、君には悪いと思ってる。私は、呪詛師になりたい訳じゃないんだよ。今でもちゃんと呪術師のつもりだし、ボーダーのつもり」
「そうかよ」
そして、私はそこから出された。
たまには生身でお風呂に入りたいけど、無理だよね。
いつも通り補助監督に送られ、いつもと違ってトリオン兵と戦った。
「待て! 俺はボーダーだ!」
「!? いや、ボーダーが地球を攻撃するはずないだろ!」
「ちっ騙されないか!!」
ああああああ! どうしよう、本物と会ったこともないのに本物と偽物の区別つけなきゃいけないわけ!?
不安を抱えつつ、ネイバーを撃破し、呪専の牢屋に帰る。
そんなことが数回続いた。
その後、予想通りボーダーと名乗る人が面会に来た。
「よく頑張ったね。ブラックトリガーを渡してもらおう」
「お断りします。貴方がボーダーだという証拠を見せてくれるまでは」
「いいだろう。トリガーを見せるのでいいかな?」
「そんなのネイバーにも出来ますよね」
「なら、どうする?」
どうしよう。
嘘発見器とかないのかな。
「ええっと、ボーダーのシンボルの由来を教えてください」
「いや、すまん。不勉強で知らないんだ。本部と今、連絡がつかなくてね」
苦し紛れの言葉にまさかの返答が返ってきた。
「ついてきてくれれば、証拠が見せられるんだが」
「実はネイバーでマザートリガーへの生贄コースは嫌です」
「だよねぇ。うーん。困ったな。どうすればいい?」
「私が聞きたいです」
そこに、悟が来た。
「傑。ボーダーってやつがまた来た」
はい、片方は確定で偽物。
「いやー。面白いことになってるみたいだね。……助けに来るのが遅れてごめんね。俺はボーダーの迅悠一って言います」
「信じるな、偽物だ」
「あー、はいはい。本物がどっちかわからなくて困ってるんだろ。いい解決策がある」
「本当ですか?」
「ああ。ボーダーはこちらの世界にボーダーを作る手伝いをする。業務は侵入者の撃退。条件は、君のボーダーでの勤務。正直にいえば、持ってるトリガーくれ、というのが本音なんだけど、やっぱりこの世界の人のトリガーは奪えないでしょ。灯里ちゃんも結局助けられなかったし、灯里ちゃんのブラックトリガーは君が使えば良いよ。ただし、対価としてそっちの技術情報と資源を少し欲しいかな」
「はい!」
「……技術情報はこちらも提供できる。騙されるな、そいつはお前達のデータが欲しいだけだ!」
「なら、提供してもらおうか。本物でも偽物でも、この世界が侵略から自衛できるならそれが一番だろ?」
「は……はい!」
そこで、悟が口を開く。
「つまり、傑はもうなんでも話せるって事でいいか?」
「そうだね。でも俺達の方が持ってる情報多いと思うよ? 夏油君もまだ不安だろうし、俺達がちゃんとボーダーの基礎を用意した後に夏油君から話を聞きたいかな。もちろん、その時には俺にも君たちにも話をしてくれるよな、夏油君」
「ちっ」
「はい。はい。はい……」
私は安堵で涙を流す。
トリオン体でも、尋問はきつかったのだ。
「夏油君は丁重に扱うこと。代わりに情報はいくらでも渡すよ」
そして、私は迅悠一に助けられたのだった。
後で、政府からの告知で他の後継者が死ぬ気でネイバーに潜入し、ボーダーを探し出してくれた事を聞いた。そうして、この世界にもボーダーは出来たのだった。
そして、呪専の隣に建てられたボーダー支部で、私はへちょっとなっていた。
「おかしくないかい!? 呪術師でありボーダーであるっておかしくないかい!? 呪術師ってだけで大変で忙しくて死にそうなのに!!」
「仕方ねーだろ、お前のボーダーへの所属が条件での情報提供だったし」
「うう。ごめん、悟」
悟もボーダー勤務である。本当にごめん。悟だって忙しいのに。
「ほんまやで、一つ貸やからなー傑くん」
「一番楽しんでる人に言われたくないね、直哉」
直哉は転校してまでボーダーに入った変わり者である。呪術があるんだからいいじゃないか。
なお、ボーダーは年齢が小さければ小さいほどトリオンの伸びがいいということで、最年少は真希ちゃん真依ちゃんという幼児である。流石に実戦には連れて行ってないが。
最年長は迅悠一の連れてきた甚爾という人で、なんでもこの人がボーダーを抜けると大変な事が起きるらしい。彼は未来予知のサイドエフェクトを持っているので、なんとか引き止められるよう頑張っている。
並行世界と言っていいど酷似したボーダー本部のある世界だが、この世界との差異は割と大きく、なんと言っても呪霊がいない。
術師なら呪霊を産まないという仮説を間に受けて向こうに行って呪霊を発生させて大目玉を食らったのは黒歴史だけど、呪霊がないから平和になれるわけでもないということを知ることができたのは大きかったと思う。
とにかく、差異がないようで大きい世界では、考え方が違うのかトリオン技術の進む方向性が違い、お互いにいい影響を与えられている。
ブラックトリガーも、そのうち解除できそうだ。
ハッピーエンド、と言っていいだろう。
ただし。
「絶対過労死する……」
「恨みますよ、夏油さん」
「まあまあ、ペイルアウト使えるようになって生還率上がったじゃん」
「任務数がその分増えてるんですよ!」
「トリオンも呪力も多い勝ち組どもは大変だな。まあ私はトリオンほとんどないし、仕事減って嬉しいけどな」
「俺はクラスメイト増えて嬉しいけど」
悟は本当に強いなぁ!
さっさとブラックトリガー解除方法探して、灯里さんにバトンタッチして呪術師に戻りたい。
戻れるよね? 戻れると言って。
私ははふぅとため息をついた。