【完結】南西諸島海域の研究所にて 過去   作:ふじこれ

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楽しい時間はあっという間に

 

 

―続き

 

 

 

 翌日。外は快晴のため清霜と時雨はベランダへ出て床に座って仲良く会話をしていた。

 

 もちろん朝食を済ませ、二人とも苦い薬を飲んだ。いつもの苦さに慣れつつあった清霜であったが、時雨の方は違った。眉間に皺を寄せて『うぇぇ……にっがぁ……』などと嫌そうな顔をしていた。そんな時雨に清霜は言った。

 

 

 

清霜「大丈夫! 時雨ちゃんも明日かその後には慣れるよ!」

 

時雨「うぅぅ……そうかなぁ?」

 

 

 

 こんなにも苦い薬? に慣れる日なんて来るのだろうか、と時雨は思った。

 清霜は『わたしでも慣れたんだから、ね!』といいニコニコしていた。

 

 

 

 昼食までの間、二人は雑談をしていた。昨日では話し切れなかったことが主だ。

 清霜は時雨に向かって待ち遠しい事、やってみたいことを話していた。

 時雨はそれに頷くか、または偶に自らも話していたため二人の間で会話が途切れることはなかった。

 

 

 

 二人の会話やその雰囲気を遠くから見ていた職員は『和むなぁ……』と思っていた。

 

 しかしその中でも何名かは後ろめたそうな顔をする者や悪人面をする者もいた。

 

 

 彼女らの背後にはゆっくりと魔の手が迫ってきていた。

 

 

 

 =============

 

 

 

 そんなこんなで昼食を終えた二人だが、午後は職員から外出許可を貰ったので研究所の周りを一周しようと話していた。

 『危険な場所があるから気をつけて』と言われると元気よく返事をし、外へ向かって歩いて行った。

 

 

 

 外の天気は快晴。そよ風が吹いているため、今日は絶好の散歩日和だと言えるだろう。

 この島の周りには様々な漂着物が流れ着いていた。車のタイヤや明らかに腐っていそうなスイカ。それに大きな木の枝。そして深海棲艦の亡骸。

 

 

 

 二人は流れ着いた漂着物なんかよりも既に死んでいる深海棲艦の亡骸の方へ意識が行った。

 傍へ近づくとおおよそは想像がついた。大口径の主砲とヲ級の頭部にある装甲らしきもの。

 

 そしてイ級、カ級と思われる個体の一部。どこかで戦闘をしたのだろうか。

 見た感じではどれも黒く焦げていた。

 

 しかしイ級、カ級と思われる個体には大きな噛み跡が残されていた。

 二人はそれを見て頭の上あたりから『?』が出てきた気がした。それほどに不可解だった。

 

 

 

清霜「ねぇ、時雨ちゃん」

 

時雨「なんだい。言いたいことは、アレかい」

 

 

 

清霜「うん……深海棲艦は食べラレたっけ?」

 

時雨「うん? 今、なんて? 深海棲艦がどうかしたのかい? えっとアレの答えだけど。あの噛み跡からして、シャチかなんかじゃないかな」

 

 

 

清霜「ふぅん……そうなんだね。イ級って齧られるんだね」

 

時雨「そうだね。新しい事が分かったね。職員さんに伝えようよ」

 

 

 

清霜「……………………」

 

 

 

 急に会話が途切れる。

 深海棲艦の亡骸を見ながら話していた時雨は静かになった清霜の異変を感じ取ったので振り向くと小さく『ヒッ!』と短い悲鳴を上げた。

 

 

 

 清霜の顔に青い縦線が入っていたのだ。首から下へどんどん広がって行っていく。

 

 時雨が心配して大声で呼びかけたり、肩を叩いても反応はなく、むしろ叩かれた衝撃で力なく崩れ去った。

 それを見てまたびっくりしたのであった。このままでは埒が明かないと思った時雨は清霜も担いで彼女が出せる最大のスピードで研究所へ向かった。

 

 

 

 =======

 

 

 

 清霜は気がつくと不思議な空間に居た。自身が立っていたところは海の上というか水の上だった。

 その空間はまるで空間の一部を切り取った部屋の様であるが弱々しい風が吹いても波は少しも微動だにせず。その状況に不審感を抱いた清霜は時雨の名を呼びつつも、前へ進んでいった。

 

 

 どれぐらいの距離を歩いたかは分からないが、目の前には草花茂る場所があった。そしてそこへ上陸? するとたちまち霧が清霜ごと辺りを覆い尽くす。

 

 

 それに驚き、闇雲に進んでいると橙色をした小さな光が現れた。なんとなく、それについて行くしかない、と思った清霜は光に誘われるがまま行くとそこにはぼやっとした人影が現れた。

 驚きつつもその人影に問いかけるも反応は返さない。何回か呼びかけをして分かったことがあった。今自分が見ているのは後ろ姿ということを。

 

 

 

 清霜は咄嗟にどうしたら気がついてもらえるか、を考えた結果がこれだった。

 

 

 

 ①呼びかけてもダメなら、肩を叩く。

 

 ②前を向いているのなら、回り込んで視界に入ってから声を掛ける。

 

 ③上二つがダメなら、置いてまたどこかへ

 

 

 

 その二択が浮かんだ答えだ。どちらを実行に移してもいいだろうなと思っていた。気付いてもらえれば、いいだけなのだ。①から実行していこうと考えた清霜は大声で呼びかける。

 

 

 

 が、反応はない。なら近づいて――肩を叩こうと思い近寄った。

 相手は目と鼻の先に近づいてきている清霜の存在に気がついていないようだ。清霜は肩を二回叩いた。

 するとようやく相手がこちらを向いたのだが――相手の顔を見て恐怖と驚きのあまり清霜は絶叫した。

 

 

 

 それは何かしらの肉? を口の中でくちゃくちゃと音を立てて咀嚼していたのだ。

 口の周りは赤く、服には血か何かの液体が飛び散っていたようで所々シミになっていた。まるで図書館の本で見たゾンビのようだ、と思えた。

 

 

 

 なによりも、驚いたのはその顔が自分――――いや清霜(じぶん)の顔だったのだ。

 背格好は多少違えども顔は清霜、そのものだった。それは咀嚼していたものを呑み込むと血生臭い口臭を吐きながらこういった。

 

 

 

『次は――――あなたの番だからね』と。

 

 

 

 それは狂ったような形相をしてゲタゲタと声をだして笑った。それを見た清霜はとてつもない嫌悪感を抱いて逃げようとしたが突然、足元が崩れ落ちそのまま落下していった。

 最後にそれが落ちる清霜を覗き込み狂った笑みをしながら何かを言っていた。落下中のためか上手く聞き取れなかった。

 

 

 

『もうすぐ、あなたもそうなるからね』

 

 

 

 ==========

 

 

 

清霜「うわぁぁぁぁっぁ!!」

 

 

 

 ガバリという効果音がなりそうなほど勢いよく飛び起きた。

 はぁ、はぁと息を切らして布団を掴んでいた。清霜の足元には看病してくれたであろう時雨が寝ていた。

 

 

 

 ドッドッドッドと早い脈の音を聞きながら、あれが質の悪い夢であったことを理解した。

 

 『…………はぁ~……』という息を吐きながらゆっくりとまた呼吸していく。自分は倒れてたのか、時雨が自分を連れて行ってくれたのか、着替えは職員が行ってくれたのかなどの思いが次々に溢れてくる。

 

 

 

 申し訳ないことをしたな、と思った清霜は部屋の電気をつけようとするが――途端に眠気に襲われて抵抗虚しく、再び眠りについてしまうのだった。 

 

 

 

 その様子を見ていた職員の一人が『実験は順調だ』と呟いていたが誰にも聞かれることはなかった。

 

 

 

 

 

―続く

 

 

 

 

 

 




意外に書けたし、まとめれた。
清霜ちゃんが居た所は生と死の狭間的な所です。

生=艦娘。死=深海化あるいは深海棲艦。


清霜ちゃんにフラグが立てられました(今更)

次回もよろしくお願いします
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