―続き
朝を迎えた清霜は夢であった異なる道を進んだ清霜の言葉を思い出していた。あの言葉は事実なのか、と。
モルモットとして見られていたのなら――自分や時雨ちゃんが飲んでいたアレは――と考えたらゾクッと悪寒がした。
思わず、両腕を擦り上げる。艦娘は人間とは違う。ただの善意ではなく、本当に実験動物として扱われていたのなら――。
そう考えていたら悪い方向に考えが行ってしまった。
だって職員さんたちがあんなに優しかったのは――いやまだその時ではない、と清霜は思った。
しかしどうしてもこの気持ちを晴らしておきたかったので最後に聞くことにした。
=========
最後の食事は皆に祝福されながら、だった。
良くしてくれた職員たちからは『向こうに行っても元気でね』とか『沢山活躍してね』など。普通に言われたら嬉しいし、やる気が湧いてくるものだろう。
実際、清霜は嬉しく思うと 同時に『あれは嘘だったんだ。ここは素晴らしいところだ。
どこへ配属になるか分からないが縁があればまた来よう!』と徐々に疑う心は小さくなっていった。いつもよりも豪勢だったような気がした。ちなみに薬は飲んでない。
そして時雨ともハグをして『いつかまた』と会う約束もした。後は大本営行きの船に乗って本土へ向かえばいいだけ――――――のはずだった。
=======
清霜「…………うぅん。ここは…………?」
あれ、いつの間にか寝ていたようだ。
本土、ひいては大本営にはもう着いたのだろうか。にしても暗い気がする。
まだ船内にいるのだろうか。それよりも何か頭がはっきりとしない。
みんなに祝われて、時雨ちゃんと約束して。船に乗って――あ、そういえば何か飲んだ気が――。
ガチャ、ガチャ
清霜「? なんの音だろう。金属が擦れる音? まぁとりあえず起き上がって――あれ? 起き上がれない?! な、なんで!」
暗いから照明をつけようかと思ったけども何故か起き上がれなかった。
ふと思った。手足に違和感を覚えた。
何かついてるような、そんな感じだった。
幸い音はよく聞こえるので思いきり動かしてみた。
少し痛いがガチャガチャと音が鳴った。その時、清霜は思った。
清霜「(嵌められた! あのゴースト? が言ったのは本当だったんだ…………)」
項垂れることも出来ないから、目を伏せている時にバン!と大きな音が鳴り部屋が明るくなった。
急な事なので思わず顔を背ける。
そしてどこからか拍手する音が聞こえてきた。
黒囲「やぁ。清霜君。元気かい」
目の前に現れたのは所長の黒囲だった。
清霜は『拘束されているから、元気ではない』という顔をするが黒囲は無視して話を続ける。
黒囲「君に会わせたい人がいるんだ。君が丁度ここを離れる数時間前に受け取ったんだがね。まぁ元々、君を生かすつもりはなかったんだが……事情が変わってね」
黒囲は淡々とそう話した。生かすつもりはない、という部分を聞いてから清霜は自分を責め始めた。
だが、会わせたい人とは誰だろうか。戦艦の人か、あるいは姉妹か。黙ったまま聞いた。清霜の様子を伺っていたが、予想通りだと思い職員に連れてくるように言った。
職員は無言で立ち去り、数分後長さ三m、幅二mの大きな長方形の箱を持ってきた。
運びながら職員は気味の悪い笑いを繰り返していた。清霜には気にならなかったのか少し、気に入らない態度になり箱を蹴った。
箱はガタン、ガタンと大きく揺れたが蓋が空くことはなかった。そして黒囲が『開けてくれたまえ』というと職員が箱を開けるとそこには――。
??「むぅ!? む゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!!!」
清霜「ゆ、夕雲姉さん!!」
会いたかった姉妹…………いや長女がいた。しかも猿轡を噛まされ、手足にリボンを巻かれて。
自分の姿を見て驚いたのか、歓迎されているのか。とにかく分からないが『もがもが』と騒ぐ夕雲がいた。
清霜は早く会話したいと思い、拘束されている状態でも力任せに暴れる。
すると黒囲から『感動の再開だろう? ほら、行ってやりなさい』といやに気持ちの悪い言葉を耳にしたが子気味のいい音と共に拘束具は外されたので、その勢いのまま姉の元へ行く。
姉に近づくにつれ、姉の様子がよく見えるようになってきた。姉である夕雲の身体は震えていた。清霜は『まぁこんな目にあったのだから仕方がないだろう』と思っていた。
早く解こうとして、夕雲に巻き付いていた足のリボンを無理矢理、引き千切った。
ブチブチという音が室内に響く。しかし姉の震えは止まらない。むしろ、こちらを見てブルブル震えるどころか泣き始めている。
清霜は 『あぁ! 無理に引き千切ったから……ごめんなさい、、夕雲姉さん……』と思い、次は手のリボンを優しく解くもまだ震えは止まらない。
夕雲「…………」
清霜「夕雲姉さん……今、楽にします」
夕雲はブルブル、ガタガタと震えていた。寒いのかな、と思ったがそのまま猿轡を外した。
『これで夕雲姉さんと話せる!』と思ったのも束の間。夕雲の眼を見て分かってしまった。
清霜の姿を見て、怯えているのだ。理解が出来てないでいると夕雲がゆっくりと口を開いた。
夕雲「こな……ぃ……で」
奥歯をガタガタさせながら、今最も会いたかった姉が今にも消え入りそうな声を出して清霜を――――。
清霜は自分の姿を確認しようと思い、ふと手や脚を見る。
すると艦娘生者の様な血色のいいものではなく深海棲艦死者のような色をしていた。
清霜「(もしかしてわたしを見て、震え、、て、、る? なんで、どうして……わたしの手……え? なんで? なんで?)」
自分の変化に精神がついていかず、よろよろと歩きながら距離を取っていた姉の元へ行こうとすると夕雲はあまりの恐怖を感じたのか吐いてしまった。
びちゃびちゃと吐しゃ物が床に撒かれる。
夕雲はまだ、吐き続ける。その後、その場に座り込んで黙ってしまった。
清霜そこまで行けず、手をついて座り込む。表情はさっきと違って絶望していた。
そしてさっきまで黙っていた黒囲が急に大笑いし始める。
『くつくつくつ…………あはっはっはっは!!』
清霜「…………何がおかしいのさ」
ギラリと睨みつけながら言うも黒囲には効いていないようだった。
しばらく笑うと黒囲は吐いて座り込んでいた夕雲に話しかける。
黒囲「夕雲君! 君のご所望通り、妹を連れてきてあげたのに怯えて、吐いて拒絶したかのようにするだなんて酷いじゃないか!」
夕雲「嘘は、、辞めて! 私の妹たちは……あんな深海棲艦よりも醜い化け物じゃない。どこへ隠したの!」
清霜「……!! そんな……」
夕雲の言葉を聞いて、尚の事絶望する。
謎の薬を打たれ、身体が醜く変貌した挙句、会いたかった姉の言葉によりさらに清霜の精神はより深くまで沈んでいく。
そんな清霜を置いておいて黒囲に向かって夕雲は約束が違うと言った。
黒囲は夕雲を納得させるべく、職員に拘束するように指示を出す。夕雲は拘束され、職員と黒囲と共に部屋の外へ行った。
清霜「…………」
清霜の心は深くまで沈んだ。
そして打たれた薬:試製A.D.Pは不発に終わったが彼女は艦娘であることよりも深海棲艦に成ることを望んだため――深海化が始まった。
―続く
新キャラクター
何も知らない姉 夕雲
深海化が始まった艦娘 清霜