【完結】南西諸島海域の研究所にて 過去   作:ふじこれ

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お気に入り増えてたので、投稿を早めました




蝕まれる精神と契り

 

 

 

 

―続き

 

 

 

 清霜は今、現在進行形で闇の中に居た。室内が暗いのではない。

 彼女が最も会いたかった――姉たちの中で一番会いたかった人物。

 

 夕雲に拒絶されたことにより受けたダメージが深刻なのだ。それにより心に大きな傷を作ってしまった。

 投薬の影響もあり、艦娘ではないようになってきていたが、清霜は深海棲艦に成ることを望んだ。

 

 

 

 半ば自暴自棄になっているように見える。

 醜く変貌してしまった自身を受け入れられない、ということもある。あまり警戒をせず、良薬は口に苦しなどと言われながらも何個も飲んだ。

 

 それにより清霜は艦娘ではいられなくなった。

 しかし深海棲艦でもない自分はなんだろうと思うようになっていた。曖昧な存在。醜い存在。そんな意識が彼女の精神を蝕んでいく。

 

 

 

清霜「わたしは――……一体。何者なの……?」

 

 

 

 ずぶずぶと沼にハマっていく。

 自問自答ですら満足に出来ないので、満足できる回答を必死になって探す。

 

 しかし見つからない。そんな状況に陥ってしまうと本人の力では抜け出せない。

 他人の協力がないとだが――それは今の状態では不可能に近かった。

 

 

 

 一度芽生えた殺意が彼女の心をどんどん侵食していく。

 時雨や職員と楽しそうに話す、彼女は徐々に消えつつあった。深海化の影響は薬により、ブーストを掛けられていた、ということもあったからか通常よりもかなり早いペースで――――。

 

 

 

 それにより彼女の肉体にも変化が訪れ始めた。

 髪は色素が完全に抜けていないものの濃い灰色からかなり薄い灰色となった。

 

 そして拒絶された原因である肌の色にも変化が始まっていた。元々死人の様な肌は更に青白くなった。目にも影響が出始めた。突然、目の痛みを感じた。

 

 無意識のうちに両手で瞼を擦るも痛みは増すばかりであった。ついには血涙が流れ始めたのだ。ひとしきり泣き終わると痛みはなくなり、はっきりとした視界が返って来た。

 部屋の明るさにもなれ鏡を探して部屋内を散策していた。立てかけてある板のようなものをひっくり返してみると鏡になったので自分の容姿を確認すると艦娘だった面影はなく深海棲艦の――イ級の様な物ではなく人型のような感じになっていた。

 

 

 

 そして気になっていたことを確認する。

 チブタイラーだったところを触ってみると少しだけサイズアップしていた。夕雲()ほどではないが、まぁマシになったと思うと口角を少しだけ上げた。

 細部まで確認をしてみようと思った彼女は自分の身体がどう変化したのか、触ったりして確認していた。ある変化に気がついた。

 

 

 

 腰の左側に小さな羽のようなものが生えていた。触ってみるが鳥の羽と同じように思えた。

 前述のとおり小さな羽では満足に飛ぶことも出来ないだろう、と確信した清霜は大して気にしなかった。

 

 どうせ、この後に来るだろう下 衆……もとい黒囲か職員に相談すればいいと思ったからだ。

 それ以外の変化はあまりなかった。強いて言うならば、身体の筋肉量が少しだけ増えたような気がした。決して脳金ファイターではない。

 

 

 

 “艤装は出せるのか”をやってみているが基本は小口径らしい。

 ただ、艦娘の頃の小口径ではなく所々生物の彷彿とさせる艤装のようだった。

 

 

 

清霜「うぁ……なに、これ……」

 

 

 

 黒い生き物が纏わりついた砲を見て一言。実際に深海棲艦とは一度も対峙したことはない。

 図書館へ案内され、そこで見ただけの知識だ。

 

 通常個体と記されているものが扱う艤装ではなく、姫個体……もとい姫級と称されるものが扱う艤装に酷似していた。

 自分の扱う艤装がどんなものか理解できたためしまう。

 

 

 

 艤装は光の粒となって消えた。そして状況整理のため、一度その場に座り込んだ。

 

 

 

清霜「…………」 

 

 

 

 そして清霜は整理していくうちに先ほどの艤装を思い出してどこでもいいから撃ってみたいという思いが生じた。

 思ったときに即座に行動を起こす。清霜は早速立ち上がりしまった艤装を展開する。そして目の前にあるコンクリートの壁に向かって砲撃をした。

 

 

 

 コンクリートの壁と清霜の位置は僅か10mにも満たない距離だった。

 すっと砲を壁に標準を合わせる。そして放った。

 

 

 

 ドォンッ! 

 

 

 

 弾を発射する際の音が聞こえたかと思ったらその矢先――

 

 

 

 バコォォンッ!! 

 

 

 

 射出された弾がコンクリートの壁に着弾すると同時に轟音と共に思いきり爆ぜた。

 壁は見事に割れ砕けたようだった。

 

 清霜の一帯に煙が生じるがそんなことはどうでもよかった。 

 驚くこともせず、また煙を吸いこんで噎せる事もなかった。

 

 

 ただただ壁の方を見つめていた。

 

 

 煙が晴れ、視界に映し出されたものを見て満足した表情を浮かべた。

 壁に傷すらつかなかったら何発も撃ち込んでやろうと思ったいたがその必要はなかったようだ。

 

 

 

清霜「……この力なら、あの“ピー”共を殺せるような気がする」

 

 

 

 呟きながら艤装をしまう。

 無残に砕けてた壁に近づくと思わぬことが分かった。

 

 

 

清霜「……もしかしてここは……地下?」

 

 

 

 そう。破壊された壁の下には土があった。現在、清霜がいるところは地下だった。

 船に乗る時に、いや乗った後に眠らされてここまで運ばれたのだ。

 

 どうりでここには窓がないわけだ。

 心なしか部屋内が冷え始めている気がするがそれは気のせいだろう。

 

 

 

清霜「これからどうしようか……な」

 

 

 

 誰かに聞いてほしいのか、あるいは孤独を紛らわせる為か彼女の声はいつもよりも少しだけ大きいものだった。

 しかしこの部屋には清霜しかおらず、帰ってくる言葉などない――はずだった。どこからか分からないが、声が聞こえた。

 

 

 

??『……なぁ。お主、どうして我らと同じ姿をしておるのだ?』

 

清霜「!! だれ?」

 

 

 

 心底驚いて後ろを振り返るも姿は見えない。ならば横は、と見ても何もいない。

 壊された壁と部屋の四隅には監視カメラがついてあるだけだった。清霜はとうとう幻聴が聞こえ始めたのかと思い、そろそろマズイと感じ始めた。

 

 

 

??『お主の考えが手に取るように分かるぞ。安心せい、聞こえとるのは幻聴なんぞではない。こんな所になぜおるのか、そしてなぜ我らと同じ姿をしておるのか、説明してもらうぞ』

 

 

 

 どこから清霜の表情を見たのか分からないが、そういって質問をしてきた。

 なぜか答えないといけないような気持ちになってしまい自分がされてきた経緯を言った。

 

 この部屋には清霜以外だれもいないので、傍から見れば気が狂ったように見えるだろう。

 謎の声は“うん、うん”と相槌を打っていた。

 

 

 

清霜「ここから出て、夕雲お姉ちゃんの元へ行きたい」

 

??『それが貴様の願いか?』

 

 

 

清霜「うん。そうだよ」

 

??『そうか……結論から言おう。ここから出る事は叶わぬ。そして姉に会う事も叶わぬ。理由は――「そんなことない! わたしには力がある!」……最後まで聞けい』

 

 

 

 清霜の望みはあっさりと否定される。

 先ほど使った艤装を使い行使しようと考えた。

 

 しかし謎の声は“最後まで聞け”と言った。

 清霜は思いとどまり、聞くことにした。

 

 

 

??『いいか? 貴様はこの半端な姿を姉の元で晒し、拒絶されたのであろう。今行っても結果は同じだ。少しは頭を使うのだ。後に、貴様を監禁した張本人が来るだろう。その時に伝えても無駄、だ。そんな面白いものを逃がすとは到底思えん。それにその禍々しい力を使ったとしても無駄だ。自惚れるな、半端者。見たこともない兵力で拘束されてお終いだぞ』

 

 

 

清霜「……そんな、この力でも殺せないなんて……」

 

 

 

 謎の声が言ったことを真に受けてガクリと肩を落とす。

 艦娘ではなく、深海棲艦の力を以てしても叶わないなんて――清霜の心を覆う影は更に侵蝕していく。

 

 

 

??『そんなに落ち込むな。解決案をくれてやる。我を取り込め。そうすれば、我の力を貴様に与えてやれる。人間を殺すのも、姉を虜にするのも容易いぞ』

 

 

 

 それは闇の契りそのものだった。謎の声から悪魔のような囁きが聞こえてくる。

 清霜は迷った。取り込むにはかなりのリスクがあるからだ。

 

 逆にこちらが取りこまれる可能性がある。

 しかしそれ以上に大きなメリットがあった。故に彼女は答える。

 

 

 

清霜「いいよ。わたしの半分、上げる」

 

??『……クックック……契りは結ばれた。短い間だが、よろしくな』

 

 

 

 清霜の魂と謎の声の魂とで契りは結ばれた。

 ところでお互いに名前を知らなかったので聞くことにした。遅い、自己紹介である。

 

 

 

清霜「そういえば、名前は?」

 

??『我の名は、深葬姫(しんそうき)。半端者よ、名は何という』

 

 

 

 かつての名は駆逐神棲鬼(くちくしんせいき)だが……今の方が気に入っているためそれを名乗った。

 

 

 

清霜「わたしの名前は清霜。短い間、だけどよろしくね。深葬姫」

 

 

 

 そしてここに居た半端者は偽神に近づいたのだった。

 

 

 

 ======

 

 

 

 カメラで一部始終を見ていた、黒囲は深海棲艦として覚醒した清霜を見て次のフェーズに進めると思ったのだった。

 

 

 

黒囲「見えるかい、夕雲君。君の妹は正真正銘の化け物になった様だよ。……まぁ聞こえていないようだから寝かしておいてあげるよ」

 

 

 

 気色悪い笑みを浮かべながら、そう言うが夕雲の目は虚ろであり焦点が定まっていないのだった。夕雲は半開きの口からよだれを垂らして座り込んでいた。

 

 

 

 

 

―続く

 

 

 

 

 

 

 




新キャラクター

 深海化してなお、悪魔の契りをした 清霜

 かつての名は駆逐神棲鬼 深葬姫(しんそうき)
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