【完結】南西諸島海域の研究所にて 過去   作:ふじこれ

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寝れなくなったので5時から書きました。
思ったよりも進まなかったけど一応清霜の過去は終了です。


投薬の果てに 歪む

 

 

 

 

 

―続き

 

 

 

 

 

 清霜が死肉を貪っていると黒囲が現れた。すぐさま殺そうと構えるが、次が出せなかった。

 理由は黒囲がにやにやしたまま黙ってタブレット端末に映し出されたモノに目を奪われる。

 

 それは夕雲の姿だったからだ。構えも解いて画面に話しかけていた。

 

 

 

 

 

 しかし画面の向こうの姉は四肢を拘束されており自由に身動きが取れない様だが本人は寝ているかのようにピクリとも動かなかった。

 向こうでは防護服を身に着けた職員が試験管のようなものを持って夕雲に迫っていた。コツコツと迫り歩く音が鮮明に聞こえる。

 

 

 

 

 

 清霜は“これ以上、姉に手を出してみろ!! すぐさま、喉元を食いちぎってやるッ!!”と殺意を剥き出しにして黒囲に叫ぶ。

 

 剥き出しの殺意に晒されているのにも関わらず黒囲は黙ったままだった。

 職員は動かない夕雲の元まで行くと懐から小さな長方形の箱を取り出す。中身は注射器。それを使って試験管の中身を吸い出す。

 

 

 

 

 

 何故か急に画面がズームアップされる。注射器の中身を見せつけるかのような感じがした。

 清霜は今にも場所を吐かせたいくらいに怒りに溢れていたが、下手に動けば姉の身が危険だと判断して動くことも出来ないでいた。それを見て黒囲がニタニタと下衆の表情をした。

 

 

 

 そして注射器の中身は夕雲に投与された。

 投与された途端、じっと動かなかった夕雲から信じられないような悲鳴が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 『ぐっがぁぁぁ……アアァァアァ!!!!』

 

 

 

 

 

 夕雲から上がった悲鳴は絹を引き裂いたかなんてそんなレベルじゃない。

 人体に劇毒を無情にも致死量以上に入れられた、もしくは熱された焼き鏝をカサブタに押し当てられたぐらいだろうか。とてつもない痛みを感じた為、断末魔とも言えるほどの絶叫を上げた。

 

 

 

 

 

清霜「黒囲ィイ……!!」

 

 

 

 

 

 ギリギリと噛みしめる音が聞こえる。

 清霜の顔は怒りに染まっていた。血の涙を流しながら黒囲を睨みつける。

 

 先ほどの殺意に憎悪も入り、とんでもないことになっていた。

 その空間に居ようものなら、ストレスで胃に穴が空くだろう。

 

 

 

 

 

 それか心の弱い者は死ぬか失神するほどだ。

 しかし元凶は気にも留めない素振りを見せ、まだ続く激しい痛みに叫ぶ夕雲が映るタブレットの電源を切った。何ともない表情をして口を開いた。

 

 

 

 

 

黒囲「今、見たように君がこれから行うことに反対や拒否の姿勢を見せると夕雲君があぁなる。今はまだ痛いくらいだが、何度もされたら心が壊れるか、ショック死するだろうね。まぁ私達には関係ないが」

 

 

 

清霜「!」

 

 

 

黒囲「深海棲艦に堕ち、力と知性を得た君なら分かるはずだ。君が出すべき答えを、ね」

 

 

 

 下卑た笑みをしながら、選択を突きつける。清霜の脳内は一択だった。

 

 

 

清霜「協力する、から。夕雲姉さんには……」

 

 

 

 

 

 先ほどの映像を見てからの清霜に怒りと憎しみが満ち満ちていたが、黒囲の言葉を聞いて満たされていたものが抜けていく。

 激しい痛みに泣き叫ぶ姉の姿は見たくも聞きたくもなかったのだ。

 幸い、自分は痛覚が無くなっている。耐え切れない痛みを叫ぶ演技をすればいいと思ったのだった。

 

 

 

黒囲「流石、清霜君。実に賢い選択をした。後で職員がベッドを持ってくるからそこに寝そべってほしい」

 

 

 

清霜「…………わかった」

 

 

 

 

 

 素直に言う事を聞く。従順なフリをしておく。

 その言葉を聞いて一旦職員と黒囲は退室した。清霜は“はぁ”と短い溜息を吐いてその場に座り込んだ。先ほどまで清霜とその他を見ていた深葬姫が話しかけてきた。

 

 

 

 

 

深葬姫『なぁ、いいのか?』

 

清霜「何が?」

 

 

 

深葬姫『もしかしたらお前も姉も元に戻れなくなるぞ。あいつらは信じられない。私達を貶めた人間と同じ表情をしていたからな』

 

 

 

清霜「何を今更。もう元には戻れないでしょ……それに私達? あなたみたいなのがまだいるの?」

 

 

 

深葬姫『まぁな。その話はあまりしたくないが、おいおいな。それと――お前、あまり深海棲艦の肉を摂らない方がいい』

 

 

 

清霜「なんで? アレがないとお腹がすくんだけど。それに駆逐級じゃなくて軽巡級、重巡級の肉を食べているときが不思議な力を感じるんだけど」

 

 

 

深葬姫『…………とにかくだ。アレらはあまり食べない方がいい。お前の体にとっては毒だ。特に戦艦級、空母級は、だ。身体器に合わない。別の施設で見たから言える事だが……深海棲艦モルモットに同種、異なる艦種を生きたまま剥ぎ取った肉(薬漬け)を与えていたのを見た』

 

 

 

清霜「そのモルモットはどうなったの? 死んだ?」

 

 

 

深葬姫『モルモットの名前はヲ級とかだったか? そいつの身体から砲と黒い巨腕が生えた。人間たちが言っていた言葉を思い出すと“戦艦棲鬼の艤装”を部分的に生やすことに成功した、とかなんとか』

 

 

 

清霜「ふぅん。上位種の艤装を生やすって…………もしかしてその肉さぁ。薬漬けだったんじゃない? そのヲ級は薬漬けじゃなかったんじゃないかな。わたしだったら大丈夫。既に薬漬けだからね! 毒に耐性がついてんだから、今更食べたところで死にはしないし、大丈夫だって!」

 

 

 

深葬姫『…………お前の身体だ。好きにしろ。あ、あと我は少し、ここを離れる。上に行って情報を盗み見てくる』

 

 

 

清霜「そっか。じゃあ、また後で」

 

 

 

 

 

 ふわふわと浮上していく深葬姫に向かって清霜は手を振った。

 

 

 

 

 

黒囲「独り言は済んだかね?」

 

清霜「…………えぇ」

 

 

 

 

 

 耳につく声がすると思い反対の方向を向くとそこにはニタニタと笑う黒囲と防護服をフル装備した職員が6名いた。

 

 

 

 

 

黒囲「とうとう幻覚まで見えてきてしまったのか。それは残念だ。まぁ君は重要なサンプルだからね。死のうが生きていようがどっちでもいいのだけども」

 

 

 

清霜「早く始めて?」

 

黒囲「まぁまぁ急かさなくても初める。まずは君を無力化してからだな」

 

 

 

職員A「…………」

 

 

 

 

 

 大人しく身を差し出すと“プシュッ!“と小さな音が聞こえたとともに視界がぐにゃぐにゃと歪んで暗くなっていった。

 

 

 

 

 

清霜「(また、この感覚か……)」

 

 

 

 

 

 そのまま“バタッ”という音を立てて清霜の意識は一時的にログアウトしたのだった。

 

 

 

 

 

 ========

 

 

 

 『――…………、薬の所為で聞きにくく――…………』

 

 『その可能性もあるな――、で――…………の可能性を――』

 

 

 

 『所長――爪を――、――して、――――――』

 

 『次は指を――。ほぉ再生能力が向上――…………』

 

 

 

 

 

 なんだろうか。ぼやぼやと所々靄がかかって聞こえないような気持悪い感じ。

 目が開かないから耳に集中して――あっ。この感じ足の指の爪が剥がされた? 何処の指か分からないけど――本来だったら痛みに飛び起きるのだろうけど。

 

 全く感じない。

 まぁ剥がされている感覚はするからなんというか、嫌だな。変なところで変な余裕を作りたくはない。

 

 

 

 

 

 仕方ない。痛みに目をかっぴらかせて叫ぶか…………あれ? 開けない。違った。開かない。

 なんで? まぁでもわたしの瞼とかその辺が動いているはずだから反応を示してくれた、的な感じで言葉が飛んでくることを期待しよう。

 

 

 

 

 

職員A「所長。被検体Kに反応。痛みのためか、瞼が僅かに動いております。もしかしてKは起きていて――この会話を耳にしているのでは?」

 

 

 

 おっと。目が見えないからよく分からないが、鋭い。

 注射針並に鋭い。散々刺されたから、例えが上手いって? いやまぁそうだけどさ。あ、口も動かせない。これは呼吸とか鼻からしかできないんじゃないか?

 

 

 

黒囲「いやそれはない。かなり強い薬を投与した。目が覚めるのは早くても後6時間後だとも。その時には第二フェーズは終了していると思うがね」

 

 

 

職員A「なるほど。では、私は一度上に戻り資料を持ってきます」

 

黒囲「あぁ了解した。では、ジリアン君。試製A.D.Pを貸したまえ」

 

 

 

ジリアン「了解です。どうぞ」

 

 

 

 

 

 ふむふむ。なるほど。後6時間はこの状態と、ね。

 いやいや! わたし暇じゃん! あーあ、痛みに耐性なんてつけなければよかったよ。

 

 それと薬物と毒物に耐性もね。

 あ、でもどっちにしろ、致死量をぶち込まれてるんだから嫌でも耐性ついちゃうか。

 

 あれ? でも気持ち悪さとか倦怠感?も消えるもんなの? ……まぁその辺はまた聞けばいいか。深葬姫に。

 

 

 

 

 

 ―6時間後

 

 

 

 

 

 あーあ。ほんとに暇だった。

 途中で寝ちゃったもん。まぁ感覚で分かったけどあの職員も人間も拷問レベルの実験を何度もやってくれたものだ。

 

 あーでもなんていうか、感覚で分かるのだけど、わたし確実に強くなっている!

 

 ようやく薬も切れてきたから――暴走を装ってお礼に殺してしまおうか?

 

 

 

 

 

 なんて考えていると肘、膝から先の感覚が突如、失せた。

 あれ? なんて思っていると職員の驚く声が聞こえてくる。それは清霜の耳も疑うほどだった。

 

 

 

 

 

職員A「所長! 切断面をご覧ください!…………徐々に再生していきます。再生時間は――ピッ! 1.5秒…………これは最高傑作なのでは!!!!」

 

 

 

黒囲「あぁ。本当に素晴らしい。データは取ったかね? これを上に提出すれば私も幹部に昇格だ。ここにも更なる資金が送られるだろう」

 

 

 

職員A「えぇ。勿論です。私は上に戻りますので――」

 

 

 

 

 

 黒囲と話していた職員はそのまま上に戻っていく足音が聞こえた。

 職員と黒囲の会話を聞いて清霜は“腕や足を切断されて1.5秒!? もう立派な化け物じゃん! もしかしてこのまま戦艦になれるのでは!?”と脳内で喜びに震えていた。

 

 このまま行けば姉と再会できる。それがなによりも嬉しかった。そんな感情に水を差すようなことをするのが黒囲クオリティ。

 

 

 

 

 

黒囲「清霜君。君は我が研究所の最高サンプルだ。夕雲君も、だがね。君達の姉妹が我々に見せた絆は素晴らしいものだった。君達を一度、サンプルとしてこのまま拘束して――『ブチン!!』…………機を伺ってたね?」

 

 

 

 

 

 目を細めて言う黒囲を無視して力のまま引き千切っていく。

 ブチン、ブチン、ブチン、ブチンと音を立てて拘束具は無残なゴミに変わっていく。

 

 黒囲はスチャという効果音が付きそうなほど、スムーズに懐から対深海棲艦用に開発された銃を構える。

 

 

 

 

 

 無言のまま清霜はベッドから降り、ペタペタと裸足で歩く音が周囲に響く。

 黒囲には興味を示さず、伸びを行う。伸びたり膝を曲げたりすると同じ姿勢で居たのかバキバキと関節の音が鳴った。

 

 当の本人は気持ちの良さそうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 黒囲は今が仕留め時と思ったのか、撃とうと動作を行う。

 しかし清霜は敏感になっているようで目で追い、小型の…………イ級が纏うような主砲を出して向け、威嚇する。

 “動けば撃つ”と。清霜の行動の意味を知った黒囲は自分が追い詰められていることを知った。

 

 

 

 

 

黒囲「…………」

 

清霜「…………」

 

 

 

 

 

 二人の間に緊張の糸が張り詰める。ほんの、数秒で決着がつく。そんな時だった。

 

 

 

 

 

『緊急事態発生!! 繰り返す、緊急事態発生!!』

 

 

 

 

 

 頭上のスピーカーから焦ったような声が聞こえた。黒囲は隙として捉え、構え撃った。

 

 清霜は当たる直前で避けた。次は――清霜が構えた時だった。スピーカーから衝撃的な内容が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

『被検体、モルモット時雨が――暴走。職員はすぐさま、戦闘態勢に――繰り返す。被検体、時雨が…………見境なく機関を破壊。大勢が犠牲になっている模様。ボォン!! ……パラパラ……あ、止めて、止めてくれ。止めっ……あぎゃあああぁぁああ!!』

 

 

 

 

 

 時雨ちゃんが暴れている? 音から察するに部屋を破壊して回って今のように人間を殺しまわってるということ? 時雨ちゃんには失礼だけど、羨ましい。わたしだって目の前のゴミを殺してとっとと合流したいよ。

 

 

 

 

 

 ボォン! ドゴォン! ドゴォン!

 

 

 

 

 

 頭上で轟音が鳴り響く。今いる空間もミシミシと音を立てている。

 そういえばここは地下だったような。何階かは知らないが地下一階だったらすぐに合流できそうな気がする。

 

 

 

 

 

黒囲「私は確認しなくてはならない。その為にも眠っててもらう」

 

清霜「わたしは貴方を殺して時雨ちゃんと合流して夕雲姉さんを助けるんだ!!」

 

 

 

 

 

 ドォン!!

 

 

 

 

 

 黒囲と深海化した清霜が引き金を引こうとしたとき清霜がいる周囲の天井が崩れてきた。

 

 ガラガラと音を立てて、落ちてくる。突然の出来事で両者行動できなかったが――そこは深海化した清霜の方が回復は早かった。

 すぐさま引き金を引いて道ずれにしようとしたが運命の女神さまは見方をしてくれなかった。

 

 

 

清霜「なっ!?」

 

 

 

 

 

 ガキン!

 

 

 

 

 

 嫌な音が聞こえた。見たくない結果が見えたような気がした。

 清霜の放った弾は黒囲の後頭部に当たるはずだったのにその直前、降り注ぐ瓦礫に直撃した。その僅かな差は清霜の今後を変えた。

 

 

 

 清霜はそのまま瓦礫に埋まった。

 地下の崩落に巻き込まれ、意識を失うことはなかったが骨が折れた。

 

 修復された。なんとかして持ち上げる。

 ゴロゴロと瓦礫が転がる。上を向くと空が見えた。地下から地上が筒抜けになるほどの衝撃だったということだろうか。

 

 

 

 

 

 何日ぶりかの太陽が見えた――ような気がした。

 眩しすぎて思わず、目を瞑った。痛みは感じないはずだったが。反射的に、だろう。

 

 

 

 

 

 ――こんなに――眩しかったっけ

 

 

 

 

 

 そう呟いた。

 当たり前のことを吐いているとき背後には誰かが迫ってきているのを気がつかないほど、久しぶりに見た太陽に心を奪われていた。

 

 

 

 気がついたときにはもう遅い。

 清霜の後頭部には銃が突きつけられていた。そして――――

 

 

 

 ドォン! ドォン! ドォン! ドォン!

 

 

 

 計四発の弾が頭骨を砕き、貫通した。清霜の脳漿は形を変え飛び散った。

 普通だったら即死であるが、深海化した清霜はゆっくりと蘇生されていく。飛び散ったモノは黒い灰になるように地面に溶けて消えた。

 

 

 

 再生された清霜の身体に数発の弾丸が貫通すると深海化していた清霜の身体は元に戻って行くように見えた。

 原理は不明だが元の艦娘だった肉体に戻ったようになった。

 

 

 

 そのまま命尽きた死体と変わらないように徐々に冷たくなっていく。

 

 肉体に宿っていた熱は奪われていった。そのまま動かなくなった。

 

 

 

 

 

 =====

 

 

 

 

 

 何時間経ったか分からないけど、かつて過ごした友の叫ぶ声が聞こえた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




新キャラクター

 今回だけの登場 ジリアン・カルック(39)


 清霜の過去終わりです。
 
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