【メイクデビュー】負けウマ娘のスレ【失敗】の下書きやら何かやら   作:zaq2

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色々と書き直したり、構築しなおしたりする予定。
本当に下書きを弄っては修正してます。



短編:天災

 スターティングゲート

 

 そのスタート位置について、軽く目を瞑る。

 最終ルーティンの続きで、静かに水底からソレを引き出す様に……

 

 

 すると、周りの雑音が消え、周囲の状況がつぶさに理解できる状況におちいる。

 

 この状態になるのは久(・)し(・)ぶ(・)り(・)と懐かしく感じたが、意識をスタートへとゆり戻す。

 

 

 

 ゲートが開く気配がした。

 

 

 

 それに釣られる恰好になってはしまったが、顔を前へと向け、その先へと身体を揺り動かす。

 

 

 そうして、先頭集団の一つとして、たち入り込む。

 少しスピードを載せつつも、飛越するタイミングを合わせる歩調にしながら、だ。

 

 障害の4100mは、並大抵ではないスタミナも必要となるが、それ以上に

 

 

《最初の障害を、ステップ!ジャンプ!》

 

 

 各所に設置されている障害を飛越していかなければならず、ここ中山レース場では、さらに高低差4mの急激な坂道を下り、そして登らなければならない。

 

 そんな長丁場となるレースでは、焦ってしまったモノが脱落する。

 

 

(先手を取られてしまいましたが、大丈夫、まだ始まったばかり。)

 

 

 ここまでは想定の範囲内。

 何度もシミュレーションをした内容の一つに過ぎない。

 位置取りを修正し、インコースを取りつつコーナーを曲がる。

 

 コーナーを出たところで、先頭を行く相手の外へとラインをクロスさせては、誰もいない場所へと身体を進ませる。

 

 

 先ほどから見(・)え(・)て(・)い(・)た(・)、自分だけの世界へと。

 

 

《ステイトオブジアト、主導権を……奪いました!》

 

 

 

 眼前に広がるは、何者も存在しない空間。

 ようやくスタートラインに立てた気がした。

 ここから、スタートさせる。

 

 こ(・)こ(・)か(・)ら(・)!

 

《スタンド前、水濠(すいごう)障害を、ステップ、ジャンプ!》

《後続、水しぶきは?あがったが、大丈夫》

《その間にステイトオブジアト、リード四バ身、二つ目の障害をステップジャンプ!》

 

 

 障害と思われる物が、自身の後ろへと過ぎ去っていく。

 飛越も思い描いた通りにできている。

 

 この感触、この肌で感じる感じ、

 身体の隅々までが、自身の意思に間違わずに動かせている感覚。

 

 

 この白い世界にいる時の、自身の感覚が研ぎ澄まされた状況。

 これならば、この、さらに先へとすすませる事だって出来るはず!

 

 

《10バ身以上はなれて、2番手は──────》

《先頭はステイトオブジアト、場内がどよめく大逃げで、後続を大きく突き放しています。》

 

 

 徐々に、足音が遠ざかり、その音すらも耳に残らなくなる。

 けれど、身体はさらに前へと身体を進ませてくれる。

 

 視界に入った障害すらも、小さく見えてしまう。

 歩数もおのずと合わせていける。

 

 

 周囲には誰もいない事は感覚で分かっている。

 誰も来ていないこともわかっている。

 

 

 身体が軽い。

 久(・)し(・)ぶ(・)り(・)に自分の世界に入った。

 

 大逃げと思われるかもしれない。

 けれど、違う。

 

 これは、彼女に対抗するために、私たちが作り上げた武器(走り)。

 

 

 そして、懐かしい感覚。

 何もかもが白く、ただただ、己が進むべき道だけが記されている世界。

 

 

 大地を駆けるは、自身の脚

 聞こえる鼓動は、自身の鼓動

 

 誰もいない、誰も来ない、誰も……

 

 

 このまま、このままなら

 

 

《四コーナー手前、五号生垣をステップ、ジャンプ!》

《二番手が詰めにかかる!あとは離れた!三番手以降は大きく後ろ!!四コーナーに向かいます》

《さぁ!先頭はステイトオブジアト!その後ろから追いすがるは現王者!》

 

 

 

 不意に、今まで自分だけの世界だった中に、音(・)が聞こえた。

 

 

 自分以外の大地を蹴る音が……

 

 

 何?と耳にざわめきが

 誰?と胸がざわつく

 

 

 だけど、気にしてはいけない

 このまま、この状況のまま走(・)り(・)を続け、最後のコーナーをまれば

 

 

 

 あとは───進むだけだから

 

 

 

 

《さぁ!前王者か!現王者か!》

《二つの王者の追い比べに代わる直線!》

 

 

 

 

 

 視界の隅に入った大地に、

 

 

 

 

 

 

 影が映った。

 

 

 

 

 

 

 自分以外の影が。

 

 

 

 

 

 自分しかいなかった世界に、自分以外の影が映された。

 

 

 

 

 いったい誰?と疑念が浮かんだ。

 

 

 

 

《ステイトオブジアト三バ身リード!

 だがあっというまに並びかける、─────────!!》

 

《ここで躱すか!残り150m!》

 

 

 

 

 

 誰よりも先に、視線の先にゴール板を認識した時、

 

 

 

 ソ(・)レ(・)は突然に訪れた

 

 

 

 

 

 私の世界だったはずの空間に、

 

 

 

 

 

 暴風(STORM)が

 

 

 

 

 

 

 空色の装飾品(チークピーシーズ)を纏った、

 

 

 

 

 

 

 鹿毛色(BAY)の暴風(STORM)が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吹き荒れた───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・ ・ ・

 

 

 

 ターフから控室へ向かう通路、気が付いた時、ここを歩いていた。

 

 

 (なぜ、ここに?私は、ターフの上にいたはずなのに……)

 

 

 ふと、何かにぶつかる。

 ぶつかるまで気づかなかった。

 いや、気づけなかった。

 

 

 

「アトゥ…」

 

 

 

 声が聞こえた先には、トレーナーが優しく哀しい目をしてこちらを見つめていた。

 

 

 

 それで、理解した。

 

 

 

 理解してしまった。

 

 

 

 涙が零れた。

 

 

 

 止(と)め処(ど)もなく出てくる涙を、止める事が出来なかった。

 

 

 

「私は…私は何を間違ったのでしょうか……?」

 

 

 

「お前は、何も間違っちゃいなかった。

 

 ああ、これっぽっちも、何も間違っちゃいない。

 それだけは、オレが保証する。

 

 最高の状況、最高のバ場、最上のコンディション、

 綺麗にはまった策……、そして、今まで以上の最高の走り。

 

 どれをとっても、何一つ間違った所なんてなかった。

 

 その証拠にだ、知ってるか?アトゥ。

 レコードタイムなんだぜ?4分36秒2。

 

 25年以上も更新されなかった、

 シンボリモントルーの4分37秒2を1秒も塗り替える、

 とんでもなコースレコードを出したんだ。

 

 すごい事なんだぞ?

 たった1秒というかもしれないが、

 その1秒を縮めるってのは、とてつもない偉業なんだ。

 

 だからアトゥ、お前は何一つ間違ってはいない。

 間違っていたなんて、誰にも言わせない。

 オレが言わせない。

 

 お(・)前(・)に(・)も(・)だ」

 

 

 

「なら、なんで、何で届かないんですか!」

 

 

 

「……」

 

 

 

「ここまでして、何が足りなかったんですか!!」

 

 

 

「……」

 

 

 

「なにか、何か言ってください!」

 

 

 

「……相手が、悪かった」

 

 

 

「……えっ?」

 

 

 

「生まれた時代が、悪かった」

 

 

 

「そんなの、そんなのって「だが、それを覆す為に、トレーナーというのがいるんだ」……」

 

 

 

 

「今だけは泣いておけ。胸ぐらいは、貸してやるさ」

「……っ」

 

 

 

 

 

 

 この日、私は、静かに泣いた。

 生まれて初めて、心の底から湧き上がる感情のまま

 

 

 

 

 

 落涙した。

 

 

 

 





・メモ書き

STATE OF THE ART
固有:白き先駆者
 スタート直後の第一障害から、飛越時のスタミナ消費が抑えられ・飛越後にスピードが上がり、状態を維持・調整できる。
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