【メイクデビュー】負けウマ娘のスレ【失敗】の下書きやら何かやら 作:zaq2
アイツが、あんな事を言い出したのは、グランドジャンプが終わって、数日が立ったころだった。
「平地の舞台でも、走ってみたいな……」
そんな小さなつぶやきの様な言葉だった。
平地レース。
日本においては、平地レースの方が格式が高くみられる傾向がある。
いうなれば、平地レースが最高峰のレースであると。
本場のイギリスなんかでは、平地レースと障害レースの二種類が、それぞれの文化を育んでいった。
平地は貴族のたしなみ的に上流的な、障害は庶民たちの娯楽として。
そのため、庶民的な人気としては、障害レースの方が身近な存在という感じで人気がある。
だが、一方の日本においてはそうではない。
もともとの成り立ちが成り立ちでもあるが、平地レースの方が先に広まった。
障害レースも、同じころあいに始まっているにもかかわらず、日本ダービーに次いで二番目に歴史と格式のあるレースもあるのにもかかわらず。
それでも、その後の平地レースの旺盛は目を見張るものになっていく。
反対に、障害レースの衰退に対しても、だれの目もむけられなくなっていく。
そんな事が続きに続き、一度は無くそうという話まででてきた。
同じように、繋駕速歩(トロット)も、中山レース場で行われていたが、今はもう無い。
そんな歴史が続いてきた中、そうして、ようやく、ようやくだが、その障害レースにも、一つの光(アイドル)が生まれた。
自分が担当したウマ娘が、障害レースの歴史を塗り替える偉業をなし続けた。
今まで、障害レースなんて見向きもしていなかった人たちも、見向きをするようになった。
誰もが、気にかけなかったのに、多少なりとも気にかけるようになった。
そのウマ娘を担当する自分にも、いろいろと経験をさせてもらった。
だが、そんなウマ娘がつぶやく一つの言葉。
小さかったけれど、その言葉を聞いて悲しかったけれど、やはり平地レースを走ってみたい思いは、あるよな……と、否が応でも考えさせられてしまった。
数日間、考えに考えて考えた。
そして、決めた。
私は、十二分に夢を見させてもらった。
ならば、今度は、こちらが夢を"与えてやる"番だ。
うまくいけば、障害レースに返ってこなくなる、そのまま袂を分かつ可能性だってある。
けれど、彼女の夢をかなえるのも、トレーナーとしての責務でもある。
ならば、少なくとも最上の状況を作り出して、送り出すのが恩返しにもなるはず。
今現在で、最上ともいえる状況、それならば平地で最高の相手を選ぶしかない。
だが、直接相手の連絡先を知らない。
なら、渡りをつけてもらうしかない。
ポケットからスマートフォンを取り出し、一人のトレーナー仲間へと電話をかける。
平地レースにおいて、自分が知っている中で、最高な相手に渡りをつけてもらうために……
「ああっ、クソッ、スマホの画面がうまく見えねぇや……」
* * *
スマートフォンの電話が鳴る。
「……」
コール先の相手は、知人の一人。
トレセン学園のトレーナー。
人付き合いも、無下には出来ない。
こういった付き合いも大事である。
「はい、奈瀬です……」
「ああ、出た出た。久しぶり、調子は……よいかな?」
「ええ、特には問題になる事はありませんが」
「そっか、それなら、ちょっとお願いしたい事があるんだけど、いいかな?」
「……私で出来る事であるならば」
「あー、まぁ、その貴女だからこそやってほしい話があるんだけど」
「はぁ……それで、何を?」
「障害レースの娘を、見てもらえない?」
「…………?障害トレーナーの免許は、もっていませんが?」
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