【メイクデビュー】負けウマ娘のスレ【失敗】の下書きやら何かやら 作:zaq2
平地競走の練習用ターフ
トレーニングとしてコースを走るジャージ姿の幾人のウマ娘たちが、トレーナーの指示の元、トレーニングにいそしんでいる。
その中から"彼女"を探す。
今の私にとっても、来ることがめったに無い平地用の練習場に赴いているのは、今まで、障害競走に走っていた彼女が、平地競争に路線を変えて出走するという話を耳にしてしまったからだ。
その噂話が本当であるかどうか、それを自身で確かめたいがために、そのトレーニングコースが一望できる高台に足を運んでは、あたりを見渡していた。
今もコースの周辺では、幾人のウマ娘たちが芝を、ダートを、ウッドを、坂路をと走っている。
直線のコースでも、各ウマ娘たちが併走で競いあっている姿すら見える。
併走トレーニングであるにもかかわらず、まるで本番のレースの様に"負けたくない"という対抗心を持って、レース本番さながらに競い合っている。
対抗心を燻る相手
"ライバル"という存在──
障害レースを走る私にとって、ライバルといえる存在がいる。
最初は、気にもならなかった存在だった──
けれども、気が付いた頃には、つねに私の前へと走り抜けていく、あの印象的な空色の
このまま、ライバルとして、打倒すべき相手として、乗り越えるべき相手として、そう思っていた矢先、その相手は"障害帰り"という話を耳にした。
障害競走を走るウマ娘にとって、平地のレースは憧れでもあり、そして"挫折"の場でもある。
思い返せば、中央でデビュー戦で勝利するも、その後は勝ち切れないことが続き、一時は地方のレースにも出走してはみましたが、それでも入着するのが精一杯……
その後も中央で走り続けていましたが、下位を低迷し続けていた──
出走できるレースが少なくなっていく中、焦り始めていた。
それでも"走り続けたい"、けれど平地レースでは、自分は勝てない……
そんな苦痛ともいえる思いを吐露した時、平地ではなくもう一つの世界、"障害競走の世界"と、今の"森"トレーナーを紹介され……
"
ウマ娘の私にとって、その時が"そう"だったのでしょう。
障害競走という新たな世界に飛び込んだ私が、最初に上位に入着し、そして勝利。
上位に入着する事が出来た……そして勝利することも。
この時の私にとっては、それは得難い感触でした。
そして、年に二回だけ開催されるJ・G1、ジャンプ・グレード1という障害競走におけるG1競走を、同一年内に障害GI春秋制覇という勝利を味わうことも出来た。
そんな折り、彼女が頭角を現し……
彼女もまた、私と同じように平地レースの挫折だと思っていた。
だが、それは少し違った。
その経歴を調べれば、体の問題と出走ルールが絡み合い、平地レースをまともに走ることなく、限らた残された選択肢から"障害競走ウマ娘"として走る道しかなくなったのだと分かった。
──それならば、平地レースに未練があっても仕方が無いのかもしれません。
けれど、私が超えるべき目標となった障害競走ウマ娘とは……そう思った時、何かが心の中で、チクチクと訴えてきていた。
"わだかまり"が残ったままだったのか、集中力にかけたのか、勝てたはずの小倉の障害重賞レースで勝てなかった……
この、内に残る物を払拭するためにも、私自身の気持ちの整理のためにも、彼女に会うべきだと、会って真意を聞いてみようと、そう判断した。
そして、練習場の隅ともいえる一画に、ようやく、その空色の
今はクールダウン中なのか、ゆっくりとした動作で、コースの隅にてストレッチをしていた。
* * *
「少し、よろしいですか?オジュ─さん」
「……はい?えーっと、はい?」
ライバルといえる存在は、トレーナーへと視線を向かわせてはいたが、その視線を受けては「君は……10分ほど、休憩に入る」と言葉を発しては、少し下がっていただけました。
それよりも、あの名門トレーナーといえる
そうして、私のライバルと言える存在と二人きりという状況を作り出してくれた。
面と向かってやり取りをするのは、何回目でしょうか?
ただ、話てみたい事が、色々とあった。
「あなたは、このまま平地レースへと転向されるのでしょうか?」
……あったのだけれど、思いの本心の吐露が、直接的な言葉として放たれていた。
* * *
「んー、最初はオジュ─サマも何で平地レースに走ってんだろう?って思ってたけど……」
「けど?」
「今は、挑戦してみたいな?って思ってる……かな?無理とか無謀とか言われるかもしれないけれど、そうじゃなく、やってみたい、挑戦したい、平地レースを走ってみたいって。どこまでやれるかは分からないけれど、このオジュ─サマが納得するまでは、挑戦したいって、そう思ってる。目指すはG1レース!!……なーんて」
転向ではなく、
走るために生まれてきたウマ娘に生まれたからには、目指す頂きがあるのならば、そういう意思があっても何も不思議ではない。
彼女にとっては、平地レースという未練が燻っていたのかもしれません。
彼女は、彼女自身の想いの為に走る……
この私が"あなたと"再戦したいという願いと同じ様に……
挫折を味わった、平地レースを走るという願いをかなえるために。
ならば、私は、どうしたいのだろうか……
平地レースに、帰れるのならば帰りたい、けれど、私には平地での能力が足りないのは理解している。
なれば、自分が果たせる"走り"とは……
「……わかりました。挑戦をしてきてください」
「ほぇ?」
「私は、あなたが平地で走っている間、障害競走界を盛り上げてみせましょう。あなたが障害競走レースから離れようとも、私という存在が障害レースには顕在という証拠を」
「そうなるの……かな?」
「そして、もしも障害レースへとあなたが戻ってこようとも、私というウマ娘が立ちはだかるという事を示してみましょう」
「えっ?はぁ……」
「あなたがいないその間に、私が王者の席へと返り咲いて見せましょう。そして、その時は……」
「……?」
「いえ、まずは私の
「……えーっと、はい?」
「いえ、それでは、これで失礼しますね」
「平地競走を諦めないで下さい」と言葉が出かかったが、彼女にはそんな言葉は不要でしょう。
──あなたの願いに、手が届くことを願っておきます。
そう伝えるだけ伝えては踵を返すと、奈瀬トレーナーが此方をうかがうように視線を投げかけていた
「お時間をとっていただき、ありがとうございました」
「もう、いいのか?」
「はい。心の整理は……出来たつもりです」
「そう、それならいい」
彼女のその目は雄弁を語らず、沈黙にて"想い"を送ってきている様にも思えました。
その"想い"を受けて、練習用のコースを去る時に、季節外れの暴風が吹き荒れた気がした。
10着「あの人、なんだったんですかね?」
奈トレ「……障害競走に戻ってこないようにという、彼女なりの応援といったとこだろうな」
10着「ほへぇ、そうだったんですね~直接言ってくれればよかったのに」
奈トレ「……」