今日からはじめる 目指せデュエリスト日記   作:すずなりゆうか

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夢の記録 59日目〜

夕飯の片付けが終わった後。私は姿見の鏡の前に立ち、右手を添えて祈るように鏡を覗き込んでいた。

 

「…さて、今日は何が見えるかな」

 

時計の針が指し示すのは夜の12時を過ぎた頃。本当は夜に鏡を覗き込んではいけないけれど、なんとなく。何かが見えるような気がして興味本位で鏡を覗こうと鏡に掛けられた布を取り払っていた。

 

――チリン、と鈴が鳴ったような気がした時だった。

自室と自分しか写っていないはずの鏡の風景が揺らぎ別のどこかがだんだんと見え始めたのだ。

 

(建物…いや、街?それと人…)

 

まるで誰かの視点だった。

何人かの人が崩壊した街にいて、空を見上げている。暗雲が空を覆って雷が。紫色の雷が空に走っていた。

 

「あー…読唇術が使えればよかったんだけどなぁ」

 

鏡の向こう側の誰かたちがこの視点の主に何かを語りかけているのがわかるが読み取ることはできない。音声付きなら良かったのに…なんて、願っても叶わないことを考えながら。

 

「あれ…、美雨?」

 

なんとなく、美雨に雰囲気が似ている女性と数人が崩壊した街道を駆けてくるのを視線の主が目視した。乱れた呼気を整えながら何かを話しているのがわかる。でも、やはり何を話しているのかはわからず視線の主は美雨と似ている女性を含めた数人と何処かへ向かおうとしていた。

 

(もっと、なんか情報になりそうな情報が欲しい)

 

私は鏡の向こうに見えている風景についてもっと詳しく情報を知ろうとした。もっと、手がかりらしいものを。

 

「あっ、まって!!消えないで!」

 

たぶん、それがいけなかったんだろう。集中力が切れたのか、雑念になってしまったのか。見えていた光景は波紋となって黒く染まり、また何も映らなくなってしまった。

 

しかし…さっきのは、なんだったのか。

情報が少ないけど未来の光景なんだろうか…?そうだったら嫌だなぁ…と、思いながらもう一度同じ光景を見ようと右手を鏡に添えて祈りを捧げてみるが何も起こらない。

 

「………やっぱ、だめかぁ。」

 

なんとなく、もう今日は鏡に何も映らないような気がする。夢の世界とはいえあんまり夜ふかししても体に良くないし寝てしまおうかな…と、鏡に布を被せようとした時だった。

 

 

―――チリリリンッ!!

 

 

激しく鳴らされる鈴の音と全身を貫くような悪寒が私を襲って、咄嗟に鏡から距離を取った瞬間。

 

《ミツケタ、セイレイノミコ》

 

黒い腕のようなものが鏡の向こう側から自分に迫りきていた。

 

「――ひっ…」

 

何がなんだかわからないけど、このままじゃまずい。

私は鏡から距離を取りながらも必死に机の上にあるデッキケースに手を伸ばして―――机の上にあったカードの山を崩し、床に散らばった。

 

「ダメ…!」

 

もしかして、カードが取られてしまうかもしれない。そう思って、床に散らばったカードを拾うために裏側になったカードたちに触れていた。

 

 

 

《連れて行かせるものかッ!!》

 

バサリッと、翼が羽ばたく音が聞こえそっと黒い翼に抱き寄せられた。

 

 

《大丈夫です。守ってみせます》

 

蝶の羽が生えた青いドラゴンが黒い腕のようなものに立ち塞がるように降臨していた。

 

 

なにが起きてるのかわからなかった。だけど、『もう大丈夫だ』と安心した自分がいて…たった瞬き一つした時には何事もなかったように黒い腕のようなものも、翼も、蝶の羽のドラゴンもなにもなくなっていて…しばらく呆然としていた。

 

 

 

それからしばらく、数日程だろうか。

夢を見ることがなく今までの続いていた夢が嘘のように"普通の夢"を見ていた。でも、なんとなく違和感があって…"いつも通り"なのにどこか焦燥感があって夢の中だというのにそわそわして落ち着かなかった。

 

 

(早く、戻らなきゃいけな――あれ。どこに戻ろうとしてるんだっけ?)

 

夢の中の自分の領域にある泉にポツンと浮かぶ小さな島の神殿前で揺り椅子に揺られながら本を読んでいた私はふと、何かを忘れているような気がして栞もせず本を閉じた。

 

 

「アカさん、どうかした?」

 

神官の一人が様子のおかしい私に声をかけてくる。

 

「いや、なんでもない」

 

何かを、忘れているような気がする。

何を忘れているんだろう。

 

(落ち着け。私、数日前まで夢、見てたよな)

 

なのに夢を忘れてる?

何かがおかしい、何がおかしい?

 

「なぁ…、私は何かに最近はまってた?」

「えっ、あー…カードゲームに夢中だったかなぁ。あと、料理のレシピ。アカさん不器用なのに必死に料理しようとして何回も手を切るわ火傷するわ。見ててこっちがヒヤヒヤしたよ」

 

夢の世界、しかも自分の領域で料理の練習?食べ物は欲しければ神官たちに準備してもらえる。なんなら、泉の傍らに実る果実で満足できる私が料理―――?

 

「誰かを、ほっとけなかったのか…」

 

だとすると、今ソレを忘れてるのは事故か。それとも何かしらの影響で強く力を消耗したかのどちらかだろう。

 

 

「ライ、私。帰るわ」

「現実に?」

「いや、私が今見ている"ほっとけない人がいる夢"にかな?なんとなく、まだやらなきゃいけないことが残ってる気がするんだ」

 

ゆらゆらと揺れていた揺り椅子を止めて、私は立ち上がって水面へと歩いていく。

 

「だめだ…!!アカさん…!貴方はまた無理をする!」

「あはは…それはいつものことって諦めてよ。」

 

引き留めようとするふわふわな金髪の神官の手を振り払って泉へと一歩踏み出して

 

「―――じゃ、行ってくるわ」

 

泉に映した"一室の光景"へと私は静かに足を踏み入れた。

向こうへと渡る瞬間、神官の青空の瞳が血のような赤色に染まるのを見て怒らせたな…って、思いながら。

 

 

 

―――そして、私は美雨のいるデュエルモンスターズがある世界にもどってきたわけだけど…問題が発生した。

 

 

「アカさん、お迎えにあがりました!さぁ、共に帰りましょう!」

 

美雨とともに、訪れたカードショップでの再会としつこい遭遇。

 

「なら、いい。無理矢理にでも連れて帰る!!貴方の好きなゲームをしましょう。僕が勝ったら文句も言わず帰ってきてもらいますからね…!」

 

「―――ほら。勝ったよ。だから、文句ないよね」

 

「…なっ、ここ…カードゲームの…ッ!」

 

理不尽なゲームでの勝利と…

 

「なぁんで…よりによって、カードゲームの世界ッ!!アカさんの苦手分野じゃないか!それに負けたのかよぉ!!アカさんゲーム下手なのに!」

「いや、失礼だな。苦手でも楽しいんだよ」

 

「アカさんが…っ、家事!?」

「ゆうかさんの料理おいしいんですよ」

「なんて羨ましい…じゃない!!不敬だぞ!」

「いや、神殿じゃねーんだから楽にしろよ」

 

「大丈夫です!!ライくんさんは女の子っぽいですから同居しても違和感ありません!」

「……同じ屋根の下…」

「…女の子…扱い…。そもそもライくんさんってなんだよ…」

 

そうして私だけではなく、ライくんまでもが滞在することになった。




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