今日からはじめる 目指せデュエリスト日記   作:すずなりゆうか

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夢の記録 76日目

真夜中0時過ぎ。

私は深く、キャスケットとマスクで顔や髪を隠すようにしてからパーカーを羽織って窓辺から外へと出かけた。単なる散歩のつもりで実体化させた〈エンシェント・フェアリー・ドラゴン〉に隠蔽術を掛けてこっそりと。

一度、高いところから街を見下ろしてみたかったからこっそり精霊に頼んで連れてきてもらったのだ。普段は立ち入れないビルの上に立ち、見下ろした光景はまるで夜空に輝く色とりどりな星々のように光り輝いていてとても綺麗だった。

 

「ありがとう。エンシェント・フェアリー・ドラゴン」

 

私は〈エンシェント・フェアリー・ドラゴン〉にお礼を言うとニ枚のモンスターカードをポケットから取り出して祈りを捧げる。

 

「メルフィーラビィ、ビックリボン。おいで」

『ふぃー!』

『くりくりー!』

 

カードから実体化したモンスター。桃色のウサギと赤いリボンをつけた巨大なクリボーが飛び出して私の側に来る。同時に3体もモンスターを実体化、特にレベルの高い〈エンシェント・フェアリー・ドラゴン〉を実体化するのはキツイがそれでもこのきれいな夜景をみんなと見に来たかった。

 

『くりくり』

 

無理しちゃダメだよ。と、ビックリボンが言うので私は「これくらいなら大丈夫だよ」って彼女のことを撫でた。実際、正しい手段を用いなくてもレベル7ならば実体化させたまま攻撃したりしなければそれなりに体力は保つ。だから、ほとんど心配はしていなかった。

 

「後で美雨やライくんにもこの景色のことを教えてあげよっか」

 

パシャリとスマホで夜景を撮影しながら、すでに寝ているだろう二人に自慢することを想像してクスリと笑う。きっと羨ましがられる…いや、怒られちゃうかな。ライくんは心配性だから、なんて。

星々のように見える建物の明かりと、しばしば見かける車の明かりはまるで流れ星のようだ…なんて、しばらくの間夜景を楽しんでいた。

 

「あっ、もう帰らないと抜け出したことバレちゃいそうだね」

 

事前に設定しておいたアラームが鳴って、ハッと現実に戻る。スマホの時計が指し示す時間は午前1時。もう一時間ほどは夜景を眺めてたらしい。

 

『ふぃ…?』

「うん、でも残念がらなくても大丈夫だよ。きっとまた連れてくるからさ。さ、帰ろっか」

 

もう帰るの?と残念そうにするラビィにそう伝えるとラビィの実体化を解き、ビックリボンも…

 

『クリクリ!!』

「え?」

 

ビックリボンが何かに気がついて「あれを見て!」と小さな手で何かを指す。その方角には私がよく散歩に行く自然公園があって―――こんな時間にデュエルフィールドが展開されていた。

 

「んー…」

 

詳しいことを知りたくても暗くてよく見えない。

 

「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」

 

彼女の名前を呼び、様子を見に行っていいか問いかけると『わかりました。行きましょう』と帰ってきた。〈ビックリボン〉の実体化を解き、隠蔽術を重ね掛けし〈エンシェント・フェアリー・ドラゴン〉に跨り空を飛んだ。

 

このクリスタリアで最も高いビルの天辺からデュエルフィールドが展開される公園の上空への移動。目を凝らしてデュエルフィールドの中を覗いてみると…なんだか殺伐としていた。

 

『あれはスターダスト・ドラゴンとブラック・ローズ・ドラゴン!』

「知ってるの?」

『えぇ、彼らは私の仲間です』

 

仲間。仲間か。

それならなんであんなにも殺伐とデュエルしてるんだ?

 

それに…通常、デュエルではお互いに実際のダメージが入るはずがないのにあのデュエルは異常だ。なんで、実際にダメージが入ってるんだろうか。

 

「あれは良くないぞ、止められるか?」

 

デュエルフィールドは本来フィールド魔法ではない。内側の存在を固定、顕現させるための結界のようなものだが外部からなら。その影響を受けていないエンシェント・フェアリー・ドラゴンならフィールド魔法を破壊するように破壊できるのではないか、と思ったのだ。

 

『えぇ、可能です。しかし…』

「魔力と生命力だろ。わかってる。必要な分だけ持ってってくれ!」

 

今はとにかく、デュエルを中断させることが先決だと判断した私は〈エンシェント・フェアリー・ドラゴン〉に魔力を回しデュエルフィールドを破壊しようと試みる。

 

「いけ…ッ!エンシェント・フェアリー・ドラゴン、プレイン・バック!」

 

フィールド魔法を破壊する効果、プレインバックが効くかどうかは『可能』と言ったエンシェント・フェアリー・ドラゴンの言葉を信じるしかなかったが、プレイン・バックを受けたデュエルフィールドの青色の膜に亀裂が走り砕けていく。

 

「やった!」

 

デュエルフィールドが破壊されたことによって実体化していた2体のドラゴンが姿を消す。対峙する二人の男はデュエルフィールドを破壊した上空を眺めていた。私はエンシェント・フェアリー・ドラゴンの背から飛び降りると二人の合間に立った。

 

 

「お前ら、夜間のデュエルは禁止だったはずだ。なぜデュエルフィールドを展開した」

 

そう、低めの声を意識しながら二人に問いかけると…薔薇のドラゴンを従えて男は『興冷めだ』と言わんばかりに踵を返し、もう一方の…白いドラゴンを従えてた少年は目の前の現実が受け入れられないかのように膝から崩れ落ちた。

 

これは、止めてはいけないデュエルだったんだろうか。私は心ここにあらずな少年を連れて交番に届けた後、そのまま家に帰ったのだった。

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