今日からはじめる 目指せデュエリスト日記   作:すずなりゆうか

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【七日目】 夢の記録 

その夢はいつも見ている夢とは違う、変な夢だった。

いつも見ている夢も変だけど、いつもはかろうじて人としての姿は保っているのに今回はやけに視点が低くて、まるで小動物のような大きさに成ってどこかの住宅地のような場所にいた。

 

『ふぃー…』

 

どうなってるんだ、これは…。と、思いながら口にするがそれは言葉にならず。動物の鳴き声のような音に変換された。

 

(これは、誰かの夢?)

 

この場に留まってはいけない、早く行かなくちゃ。

そう、急かされるような思いに突き動かされて私は小さな'四足'を駆使して白壁をよじ登り鉄格子のようなものの隙間からその身を乗り出した。

 

(ここは…どこ?)

 

きょろきょろとあたりを見渡して、見えるのは黒く硬い地面と人の住む家、家、家。後ろを振り向くとやっぱりそこも人が住んでいるだろう大きな家でそれを認識した途端目が潤んで不安な気持ちにいっぱいになった。

 

『ふぃ…』

 

ここはどこなの?わたしはどこに行けばいいの?

まるで精神が体に同調するように見覚えのない住宅地を駆け回る。

 

『ふぃ!?ふぃー!!』

 

『ふぃ、ふぃぃいいい!!』

 

黒い硬い地面を走っていると4つの丸いものがついた大きな怪物が迫りくる。怪物から逃げようと思って、黒い地面から白い地面に入り込めば自分より大きな野獣が私に牙を向く。

 

(いたい、いたい…!ごめんなさい、ごめんなさい!)

 

私はただ怪物から逃げようとしただけなんです。あなたたちのテリトリーに入り込むつもりなんてなかった…!ママから森の外は怖いものだらけだって聞いてたけど本当に怖い場所だって知らなかったの…!助けてママぁ…、みんなぁ…どこなのぉ…。

 

森ではみんな仲良く遊んでいたから外がこんな怖い場所だなんて知らなかった。帰りたいよぉ…おうちに帰りたいよぉ…。そう、泣き叫んでも誰も助けてくれない。今は何も変わらない。

 

『ふぃ…ッ!!』

 

背後から強い衝撃。私のちいさな体はその強い衝撃に耐えられず石ころがたくさんある地面に転がった。

 

「あれ、なんか蹴った?いや、気のせいか」

 

いま、なにがおきたの…?

振り返ればそこにあったのは黒くて長い大きな二本の柱が一つになった怪物。怪物は私のことが見えていないみたいであたりを見渡した後、すぐにどこかへ歩き去った。

 

(たぶん、あれがママが言ってた…怖い怪物"にんげん"なんだ…)

 

痛みに蹲ったまま、にんげんが歩き去った方角を見る。そういえば、4つの丸いものがついた怪物も同じ方角に走り去っていっていたような気がする。もしかしたら、そっちにいけば何かあるのかな?

 

なんとなく、危険だとはわかってた。それでも持って生まれた過ぎた好奇心の疼きは抑えられなくて痛む体を無視して怪物たちが進んで行った方角へと私は進んで行った。

 

『ふぃ…』

 

広い、黒い地面が広がっていてその先にまた家の群れ。

黒い地面にはさっきいた場所とは違う白い線がたくさん書かれていてなんとなく、これはにんげんの文字かな?って思った。

川みたいにまっすぐ伸びる黒い地面。そして、それに沿うように、遮るように、ある白い線を川の水面から顔を出す石を飛び越えるようにぴょん、ぴょんと渡る。

 

(いっこ、にぃこ、さんこ!)

 

きっとこれはにんげんが遊ぶための目印かもしれない!たぶん、きっとそうだ!

ぴょんひょんと飛び跳ねて遊んでいると途中から、遠方でブルォオオオって音が聞こえてきた。なんの音だろう?と首を傾げていると…

 

『ふぃいいいい!!?』

 

勢いよく何かが、にんげんをのせた怪物が私の目の前を通り過ぎていった!

 

今のは何?怪物?もういっこ白い線を渡っていたら私はあの怪物に当たっちゃったかもしれないの?と、思考が駆け巡り急激に寒くなった。

 

『ふぃいい!ふぃいい!!』

 

怖いよぉ!怖いよぉ!

私は遊ぶのをやめて、白い線のたくさんある黒い地面を通り過ぎた。そして、にんげんの家だけど白い地面もない、大きな壁もない家の前に立った時…とても美味しい匂いを運ぶにんげんを見つけてつい、その後を付けて行ってしまった。

 

『ふぃ?』

 

そのにんげんは、冷たい段差をポンポンと登り大きな壁を開けて中に入っていった。

私はまさか閉じ込められるなんて思わなくて、安易にその壁の中に突入して…ガチャンと音を立てて閉ざされる壁。あった筈の外への入り口は消え失せて、そこで初めて自分が閉じ込められたのだと気がついた。

 

(あっ、え…ど、どうしよう…)

 

キョロキョロとあたりを見渡して、なんとなく温かい雰囲気のある道を進む。地面はごちゃごちゃとしていたけど森の中の落ち葉や小枝と比べたら随分と柔らかくて歩きやすくてすぐに温かい雰囲気の場所に辿り着けた。

 

(わ…っ!!にんげんだ…!)

 

そこにはにんげんが横たわって眠っていた。

にんげんは危なくて怖い存在だからきっと目が覚めたらが私はまたいじめられてしまうかもしれない…と、隠れられる隙間を見つけてにんげんから姿を隠すと同時にいい匂いを運んでいたにんげんがゆさゆさとその寝ているにんげんを揺さぶった。

 

「✕✕✕、朝だよ。遅刻しちゃうよ」

「んんん〜…」

 

やめて、起こさないで!!そう、祈っているのににんげんは残酷でその眠っているにんげんを起こしてしまった。

 

「んぅ…、今日土曜日じゃん…」

「土日でもしっかり起きなさい」

 

板のようなものをいじって何かを話すにんげんたち。私にはその言葉がわからないけど、私のことが気づかれたわけでは―――

 

「てか、お母さん。血の匂いする…。鼻血かな…いや、出てないな…怪我でもしてる?」

「えっ?してないよ」

「あれぇ…じゃあ、なんで…」

 

パチリ、とにんげんと目が合った気がした。

 

「……うち、ピンクのぬいぐるみなんてあったっけ?」

「は?何言ってるの…寝ぼけてないで早くご飯食べちゃいなさい」

 

でも、さっき私を蹴ったにんげんは私のことを気がついてなかったし、このいい匂いを運んできたにんげんも私のことが見えていないし…たぶん気のせいだと思う。だけど…いい匂いを運んできたにんげんが此処から居なくなって、ガチャンという音に気を取られた時…私に影が覆いかぶさったことに気がついた。

 

『ふぃ?』

「ん…、あぁ…やっぱりぬいぐるみじゃないな。お前」

 

にんげんが、ラビィの目の前にいた!!

 

「現実に紛れ込んでくるなんて珍しい…って、怪我してんじゃん」

 

にんげんがラビィに手を伸ばしてきてラビィはジタバタと抵抗する。

 

(やだやだやだ!!離して!!離してってばぁ!!)

 

「痛ッッ…!?てめ、噛むなつーの!!」

 

ラビィは意地悪されると思ってそのにんげんの手に強く噛み付いた。ラビィはみんなより力は弱いけど、自己防衛だけはママから褒められていたから。

 

『あーぁ、不用意に手を出すからだ。ヴァーカ』

『あちゃあ…結構深くいったねぇ…』

 

血の味が、口の中いっぱいに広がる中…ラビィにもわかる言葉がラビィの耳に入った。目を開くとそこにはラビィと似た気配を持つにんげんの姿をした誰かがと、にんげんの姿に近いけど黒い羽のある誰かがそこに佇んでいた。

 

『おい、獣。そいつに害はねぇから離しな。怖いのはわかるが…その馬鹿は馬鹿みてぇに馬鹿だから問題ない』

「ちょっとクロ、人のことバカバカ言い過ぎかッ!」

『フォローしてやってんだから感謝しろ』

 

にんげんと、黒い羽を持つ誰かが言い合いをしてる。

にんげんの言葉はわからないけど、とりあえず大丈夫。なんだかそんな気がした。

 

『ふぃ…』

 

怪我させて、ごめんなさい。

悪いことをしたらママが謝りなさいって言ってたからラビィはすぐににんげんに謝った。たぶん、ラビィと同じで言葉わかってないけど。

 

『謝ってるぞ』

「ん、大丈夫だよ。もう"治った"から」

 

そう言ってにんげんが見せる手には傷はなく、痕すら残っていない。にんげんってそんなに丈夫なの!?と、思ったけどちょっと離れたところにいるにんげんの姿をした目の前のにんげんと同じあたたかな気配をした誰かが『しぃ…内緒だよ』とラビィに伝えてきた。

 

「さ、次はお前の治療だ」

 

にんげんがラビィに手を伸ばしてきて思わず目をギュと瞑るけど、そこには痛さなんてなくて、あるのは心地良い暖かさが手から伝わってきた。この人はきっと本当に大丈夫な人なんだ…って、本能的にわかって。そうわかると自然と力が抜けた。

 

「あっ、伸びた」

『警戒が解けたんだろう』

「どこに警戒を解く要素が…?」

 

にんげんが何かを言ってるけど、ラビィにはやっぱりわからない。

 

力が抜けると段々と眠くなってきて…

それに…抗えなくて………

 

 

次に目を覚ました時にはラビィは森に帰ってきていた。

 

いつもの切り株の上でラビィは眠っていて、目を覚ますとママやみんなが心配そうにラビィを見ていた。

 

『どこにいってたの?』

 

『ずっと探してたんだよ』

 

『居なくなっちゃったのかと思った』

 

『帰ってきたんだね』

 

『おかえり』

 

 

さっきのは夢――?キョトンとするラビィにママが言う。

 

『ラビィ、にんげんに会ってきたのね。何が起きたのか、教えてくれる…?』

 

ママは怒ることもなくいつもの優しい声でラビィに言った。だから、ラビィは夢で起きたことをできる限り話した。

 

気がついたら知らない場所にいたこと。

怪物たちがいたこと。

にんげんにはラビィたちが見えなかったこと。

怪我してしまったこと。

あたたかなにんげんに出会ったこと―――。

 

『優しいにんげんに助けられたのね。じゃあ、次に会ったらお礼をしないといけないわね』

 

うん、次に会えたときはお礼をしっかり伝えるよ。

ラビィはママにそう伝えた。

 

 

 

 

そして―――これは随分先に聞こえたこと。

 

 

「ここは、どこだ?」

 

あの時の、にんげんの声が聞こえた。

 

 

「デュエル…?決闘は法律で禁止されてるんじゃ…。いや、ここは夢だしな…。って、なんだその機械!?私の知ってるデュエルじゃないぞそれぇ!?」

 

あの時より、ラビィたちに近い場所にあの時のにんげんの声が聞こえる。

 

 

「カード…ゲーム…?まて、それは完全ノータッチだ。縁のあることしか夢としてゲームにならないはずだろう!?」

 

困ってるにんげんの声。

 

 

「頼む…、縁がある者たちよ…ッ、応じてくれ…!!」

 

ラビィたちを呼ぶ声が聞こえた!

あの時のにんげんが助けを求めてる!!

 

 

「…っ、!」

 

ラビィたちだけじゃない、にんげんの声に答えてたくさんの魂が集まって一つになった。それが、一つの束になった。それがラビィの、いや…私たちの始まりの記憶。

 

 

『しっかたないなぁ!ラビィが教えてあげる!あのね、こう唱えながらカードを引くんだよ!!"ドロー"って!後はみんなが答えてくれるから大丈夫だよ!にんげんさん!』

 

 

あの時より、ずっと頼りなくて泣いてばかりでそれでも強かったにんげんさん。これはラビィの記憶、忘れないで覚えておいてね。約束だよ。

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