今日からはじめる 目指せデュエリスト日記   作:すずなりゆうか

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夢の記録 少女との会遇

私が〈古角美雨〉と出会ったのは噴水のある広い公園だった。

何処か見覚えのある自然公園で、夢から覚めるまでの時間をどう過ごそうか悩みながら何故か持っていたカードの束をベンチに腰掛け眺めていた時に声をかけてきたのが女子中学生こと〈古角美雨〉だった。

 

『あ、あの!!あなた私と会ったことありますよね!?』

『は?』

 

突然話しかけてきた現地人。黒色と青色が混じったような不思議な色合いをした髪を揺らしながら、どこか興奮して、縋るような目をしながら彼女は私に声をかけてきたのをよく覚えている。

 

『いや…、残念だけど。たぶん、会ったことはないよ』

『そ、そんなぁ…!やっと手がかりが得られると思ったのに』

 

彼女は項垂れるようにそう呟いた。

 

『何か、探してたの?』

『いえ、ただ…雰囲気が遠い記憶の誰かに似ていた気がして話しかけてしまっただけなので』

 

どうせ、一晩で終わる夢。

そう分かっていてもなぜだかその子の悲しげな目が放っておけなくて小さくお辞儀をしてそのまま立ち去ろうとする彼女の腕を掴む。

 

『待ちなよ…。声をかけてきたってことはそれだけ大切な事だったってことだろ?役に立てないけど、少し話を聞かせてよ』

 

なんで引き止めてしまったんだろう。

放っておけばよかったのに…と、引き止めてしまってから後悔する。彼女もまさか引き止められるとは思っていなくて目を真ん丸くぱちくりさせてから…小さくクスリと笑った。

 

『あなた、不思議な人ですね。普通、放って置きますよ』

『しかたないだろ。気になったんだから』

 

私が引き止めてしまうような目をしているのが悪い、と心の中で勝手に責任転換する。

 

たった一回偶然に夢見ただけで、続きがあることなんて滅多にないとわかっているのになぜ私は深入りしようと思ったのか…。なんて考えつつも女子中学生に隣に座るように促しながら眺めていたカードたちを腰に着いたケースにしまった。

 

『私、小さい頃この公園であなたによく似た雰囲気の誰かに命を救われたことがあるんです。

姿はよく覚えてないけれど、大吹雪が収まるまでずっと一緒にいてくれた…優しい人が。

 

不思議なことに私が発見されたときには誰も居なかったらしいんですけど…たしかに、居たんです。』

『……吹雪か…』

 

少なくとも私自身には吹雪の中で誰かと一緒にいた記憶なんてなかった。少なくとも私は雪は見たことはあっても、生まれてから吹雪なんて一度も体験したことないし…確実に人違いだろう。

 

『ん…?』

『どうしました?』

 

ふと、公園の光景を見渡して違和感を感じたような気がした。

 

『いや、吹雪がしのげる場所なんて見た限りないな…と、思って』

 

大吹雪というからには風も強いし、雪もかなり降っていたはずだ。それをどれくらいの時間かわからないが"ずっと一緒に"ということは…どこか屋根やら壁やらがある場所で雪と風を凌いでなければ不自然だ。長時間体が冷やされれば低体温で命の危機がある。それなのにこの公園にある目立つものといえば噴水と時計のみで遊具など一切ない広場。

 

『……言っちゃ悪いけど、もし実際に"この公園"で吹雪を凌ぎきったのならその恩人は人間とは思えない。』

『そう、なんですよね…。両親に話を聞いても"吹雪なんておきていない"そうですし…。あはは、ごめんなさい。単なる子どもの夢だったのかも…』

 

『……いや、子どもの時だからといって夢とは限らないとは私は思うけどな。夢であって、"現実である夢"なんて子供の頃にはよく迷い込んでしまいやすいらしいしな』

 

私がそういうと、彼女はポカンとした表情で固まった。

きっと、空想地味た反応が返ってきて呆れたのだとおもって私は言葉を繋げる。

 

『まぁ、オカルトとかファンタジックな話だけどな。夢物語として忘れてくれても別にいい』

 

私はそれだけ言うとベンチから腰を上げ、立ち上がる。

なんとなく、感覚的に…朝ではないけれど現実の私が目を覚ますような気がしたのだ。そろそろ帰らないといけない、と彼女に別れを告げようとすると今度は彼女が私の腕を掴む。

 

 

 

『――――あなたの、お名前を、教えて下さい!』

 

 

どうせこれは一晩の夢。

続くことは滅多にない。だから、伝えようと伝えまいと結果は同じ。だって、続きがない物語に自分の名前を残したって無駄でしょう?

 

 

 

 

『……〈すずなり〉、〈ゆうか〉。』

 

それなのにその目を見て、名乗ってしまった。

名乗れぬ名前ではなく咄嗟についた偽名を。

 

 

名前を伝えて、それで"終わり"なんて寂しい。

 

 

そんな思いを抱いたまま、私は抗うこともできないまま自分の本来の世界に帰されてすぐさまスマホを覗き込む。

 

 

「四時。」

 

早すぎる。あまりに起きるのが早すぎる時間だった。

二度寝したくても目が冴え過ぎて眠りにつけそうになくてその日は日が昇る時間までただただ布団の中に潜り込みうだうだと寝返りを打ち続けていた。

せっかく夢見させてくれるならもう少しだけ長く夢を見させてくれても良かったのに…と。

 

 

 

 

 

そして、これは―――五日目の早朝の夢。

 

 

『あ、あーーーーー!!すずなりさん!』

『な…っ!?昨日の女子中学生…!?』

『なんですかその名称!?私には〈古角美雨〉っていう名前があるんです!』

 

私は二度と会うこともないと思っていた彼女と再会する。

 

『すずなりさん!』

『あー…ゆうか、でいいよ』

『ゆうかさん!』

『はいはい』

 

二度会えたということは、これは暫く長い付き合いになるのかもしれない。と、心に秘めて感じながら私は彼女の話を聞き、カードショップに入店したのだった。

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