誰もが願うはハッピーエンド   作:すすき(仮)

12 / 21
東と西の遭遇戦・裏

「くそっ!風紀委員はまだかよ!」

「雄平。落ち着きなさい、相手も及び腰だから持ちこたえられるわ…!」

 

顔を隠した男たちの弾幕を建物の陰に隠れてやり過ごしながら『杖』を使って応戦している東と西たち。

男たちの銃撃は負傷者こそ出していないが、建物に掠るような銃撃は徐々に彼らの精神をすり減らしていた。

 

「えぇい!とりあえずみんな!持ちこたえるわよ!」

「「「Yes,ma'am!」」」

「…気が付いたら幼馴染が姐御になっていた件」

 

どこか遠い目をした東は、こんなことになった経緯を思い出していた…

 

___

 

「ねぇ、雄平。あれって絶対変じゃない?」

「何が?…確かに。」

 

学院の校門の近くを一緒に散歩していた俺たちは、こそこそと隠れているつもりなのかはわからないが、草むらからサメの背びれのように見事に飛び出たモヒカンを発見したのだ。

しかし、そんな面妖なものなのに背景と同化したような見事な擬態…全く気が付かなかった…

 

「ちょっと待て。変どころの話とは思えないんだが!?」

「魔術でも試し打ちしてみる?折角四元素説の火ぐらいは出せるようになったんだし。」

「やめとけ!先生かもしれないだろ?!」

 

東と西は新入生勧誘をしている研究室に連れ込まれたときに魔術を覚えたのだが、茉莉花は試し打ちがしたくてたまらないようだ。

余談だが、この学院の魔術の先生は授業担当の人(寝言で授業)だったり連れ込まれた研究室の人(アフロの星メガネ)を代表としてめんどくさそうな人しかいない。もしかしたらモヒカンの先生が草むらで瞑想しているのかもしれないのだ。あまりかかわるべきではないだろう。

 

「…確かにそのとおりね。」

「じゃあもうそろそろ帰るか!」

 

しかし、俺たちはモヒカンに気を取られていて気付かなかったのだ。

 

「開けろ!デトロイト市警だ!」

「ぶち破りながら言ってりゃ世話ねぇな!」

「HAHAHA!細けぇことは気にすんな!」

 

校門から入ってくる顔を隠した十数人の男たちを…

 

「いや、やけにアメリカ推しだな!?」

「おっ、そこの坊主いいところに目を付けたな!いいか、アメリカっていうのは夢と希望を意味する言葉なんだ。近所のぼけた爺さんが言ってたから間違いねぇ。」

「絶対間違ってるよ…絶対聞く相手間違ってるよ…」

「…何普通に会話してんの!?風紀委員とか教師とか呼ぶわよ!」

 

ほぼ全員がアメリカ国旗のTシャツを着てたから思わずツッコミを入れたくなってしまったが、そのおかげで茉莉花が逃げる時間は稼げたようだ。

 

「そいつは困るな…あんまり愛と平和をお届けするつもりはないんだが…」

「おいおいおい。その銃で届けられるのは超音速の弾丸だけだと思うんだ。」

「間違えちゃいけねぇ。坊主、()平和(静寂)だ。そんなんじゃ一人前の風流人にはなれねぇぞ?」

「走れっ!」

 

そう言い終わった瞬間、7人の男たちが銃をこちらに構えて乱射してくる。

ぎりぎり建物の陰に入ってやり過ごせたはいいものの、これからどうすればいいんだろうか?

 

「…私にいい考えがあるわ。」

 

茉莉花はいつもの黒い笑顔でこちらに笑いかけると、建物の陰に隠れながらひっそりと移動し始めるのだった。

 

___

 

「で?『アザミ』さんや。報酬のもう半分は適当にガキのお守りでもやってりゃもらえんだよな?」

 

とりあえず生徒を適当に追い払った後、依頼主の『アザミ』という男に依頼内容の最終確認をする。

万が一の時に責任をすべてこいつに押し付けるための保険でもあるが、地下街内での抗争ならまだしも国立の学校を襲撃する依頼を出したこいつが正気なのかの確認という意味合いもある。

 

「あぁ、オレがお前らに頼んだ仕事は()()()()()()()()()()()足止めをすることだ…いざとなったら殺してもいいが、できる限り殺さないように頼む。」

「ほぉん?ガキのお世話ばっかで甘くなったか?そいつは俺たちとしても好都合だがよ。」

 

目の前の顔を隠した大男『アザミ』…いや山寺夕輝は俺に対してうなずくと、どうやら『本来の目的』とやらをしに行くようだった。

 

「さて、てめぇら!今回の仕事はガキどものお守りだ!ガキっつっても油断はすんなよ?遠足はお家に帰るまでが遠足だ!既定の時刻になったらすぐに撤収!いいな!」

「「「Yes,Sir!」」」

 

依頼主が何を企んでいようと、俺たちは依頼を果たすだけだ。

まあ東京地下街の顔役は人のいいおっさんだ。きっと何か理由があるんだろう。

 

(そういや、山寺のプライベートは聞いたことねぇな)

 

地下街の中で理知的な山寺夕輝がなぜこんな依頼を出したのか。ガキどもの相手をしながらの暇つぶしにでもしてみるとしよう…

 

___

 

「えぇ…日本ってこんな世紀末だった?」

「地下街はこんな感じらしいですよ?暴れてるのも聞く限りは地下街の何でも屋です。」

「しかし…これはすごいな。」

 

倉崎茜が指さした先には、防衛拠点を築き上げた生徒たちの姿があった。

 

「私たちいらなくない?」

「いいえ!前線でマムが守っている第一拠点は失陥寸前です!即刻救援を求む、と!」

「…ちなみに拠点数は?」

「前線に3拠点、後方の予備拠点も含めれば37個の拠点を展開中です!増設も一応行っているので、『現在は』という言葉は付きますが。」

 

絶対第一拠点が落ちたくらいじゃビクともしないやつじゃん…

坂宮佳織は口を閉じたが、それ以外にも『マム』って誰だよとか、なんで学生がこんな軍隊じみた防衛線張ってんだよとか聞きたいことが多すぎて何も言えなかったとも言える。

 

「あっ!マムが前線からお戻りになられました!」

「やっと来たのね!今の戦況を言うわ。第一拠点は陥落したけど…」

「茉莉花さん…?えっと…西茉莉花さん?」

「茉莉花。風紀委員の人たち固まってる。最初から説明しよう…」

 

四月一日にとって理解しがたいことに、彼らが『マム』と敬礼する先にいるのは同じクラスのマドンナ的存在、西茉莉花であった。

 

「とりあえず聞きたいことはたくさんあるけど一つだけ聞くわ。これだけの生徒をどうやって動員したの?」

「新入生勧誘ってすごい団結力じゃないですか。だから新入生勧誘の人達のリーダーを脅し…じゃなくて借金をチャラにする約束…でもなくって…えーっと、そう!お願いしたんです!ほら、お願い!」

 

四月一日皐月は女子の闇をそこに垣間見、思わず同じ風紀委員の顔を見たところ『私は何も聞いていない』とスルーしている常識人しかいないようで少し安心するのであった。

 

「あ、そういえば勧誘されてた人も巻き込んで動員してますけど非常時だから別にいいですよね。」

「あー、それに関してはこの事件が終わった後にちょっと先生から注意されるだけで済むと「いいんですよね?」…いやそれは「別に、いい。」…ハイ。ベツニイイデスヨ」

「よし、録音完了!ボイスレコーダーで録音したので風紀委員からのお墨付きですね!」

 

やっぱ女の人って怖い。そう思い知った四月一日君であった。




東君と西さんスペックです。
ネタばれは入れていないのでどうぞ。

___

東 雄平(アズマ ユウヘイ)

国立第一魔術学院に今年入った新入生…なのだが、幼馴染が新入生勧誘に対して『じゃあ、賭けをしましょう』と提案した挙句勝手に自分の入部届まで賭けられた男。
ちなみに運は非常に良く、イカサマ込みのポーカーをやったとしても初手でロイヤルストレートフラッシュをたまに引くので結構やばい奴。
ちなみに幼馴染とは友達以上恋人未満。

西 茉莉花(ニシ マリカ)

東の幼馴染にしてイカサマ大好きなギャンブラー。
たぶん東関連のものは通算百回ぐらい賭けた。東の魂もかけるぜ(キリッ)
カリスマ性も一応持ち合わせているが、ろくなことに使わない。
というか自分の容姿から何から何までろくなことに使ってない。
しかし恋愛沙汰になると純真無垢な行動しかとれないため、友達以上恋人未満の関係は進展していない。お相手?だれでしょう(すっとぼけ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。