誰もが願うはハッピーエンド 作:すすき(仮)
「あぁ!アザミ君、待っていたよ!」
暗い室内、アザミと呼ばれた男はしかめ面をして『静かにしろ』とジェスチャーで伝えた。
アザミというのはもちろん偽名だが、目の前の『学院長』と役職でしか名乗らない男よりはマシだ。
アザミと『学院長』は魔術黎明期からの古い付き合いだがいまだに本名を知らない。
「じゃあ、早速だが本題に入ろう!」
そして、頷いたアザミは『静かにしろ』とジェスチャーをした。
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「それなら良さそうなやつがいるぜ?学院長様よぉ…」
目の前で笑みを浮かべた男は次の計画の駒に適役を知っているようだった。
アザミと便宜上読んでいるが、本名から過去の全てまで知っている。挙げられた『函部修一』という男が扱いづらい人間だ、ということもだ。
函部修一の経歴も頭に入っているから、わざわざ危険人物を計画に入れる必要もない。
『学院長』としてであれば、の但し書きがつくが。
「無論。いいとも!『函部修一』に連絡をしておいてくれ!『学院に来い』と。」
そして頷いた目の前にいる男は、人差し指を立てるとそっと口に当てるのだった。
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「確か…『国立第一魔術学院』かな?」
「…!ふ~ん。なんか面白そうだね!」
他愛無い世間話を隣人とこなしていた時に出てきた単語に思わず目を瞠る。
扉を閉めて、
「えへへ~!おかーさん!『学院』だよ!『学院』!」
キラキラと、目を輝かせながら虚空に話しかける少女。
その笑顔は邪気を知らぬ子供のようであるのに、目の焦点は合わず誰に話しかけているのかすらわからない。
「あっ!ごめんなさいおかーさん!ちょっとはしたなかったね!気を付ける!」
しかし、彼女はその誰かと会話が成立しているようで、緩んだ口元を引き締めると
「『学院』かぁ~…私は
そして、彼女は花のように笑うと
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「コホン!まぁ学院でも頑張れよ、少年。望むならば、また君には実験体になってもらいたかったのだが…」
『教授』と呼ばれている性別不詳の謎の人物が語りかけた時には少年はどこかへ行ってしまったようだった。
『学院』には極力行ってもらいたくはないが、『教授』が手を出せない場所である以上誰か縁のあるものに行ってもらうしかなく、適役が見つからないときに彼が行くことになったのだ。
あくまで『教授』にとって少年の優先度は高めだが一位ではない。
生贄にはしないつもりだが、『函部修一』だけが必要なら許容範囲内の犠牲として甘んじて受け入れるだろう。
「しかし、少年は私にとっても…いや、
いや、そもそも自分が『あくのひみつけっしゃ』を忘れられないだけか。
苦笑いをした『教授』は自分の研究課題へと向かっていった。
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「さて、と。坊主はそろそろ『学院』かな?」
東京地下街の悪役面をした顔役、山寺夕輝はコンクリートに囲まれた灰色の空を見上げて言った。彼は函部に期待しているのだ。
彼自身の目的のためにも函部には国立第一魔術学院で学業に励んでもらい、そして…
「山寺の親父!運び屋の兄貴もう行っちまったんですか!」
「教えてくだせぇよ親父!」
「うるせぇ!田中と山田!オレはおめぇらの親父じゃねぇ!つーかてめぇら函部と仲良いわけじゃねぇだろ!」
東京地下街の名物コンビ、モヒカンの田中とスキンヘッドの山田が思索にふける山寺を邪魔する。
山寺は地下街の職だの住居だのを斡旋しただけであって、感謝される筋合いはないといつも言っているのにこのコンビはことあるごとに『親父』と呼んでくるのだ。
「地下街を巡回してる警備隊の連中から逃げてる途中に抜け道教えてくれたんですよ!」
「しかも一言も言わずにですぜ?男は背中で語るってのはああいうやつですね!」
「お、おぅ。」
絶対抜け道で荷物運んでる坊主を見ただけだろ。そう思いながら山寺はひとりごちる。
(こいつらみてぇな奴らのためにも、地下街を見回る警備隊だのここを地下街とか呼ぶ表の連中だのに、てめぇらが『裏』でこっちこそが『表』だってことを思い知らせてやる。…まぁ、オレの自己満足だがよ。)
「さっ!てめぇらも自分の仕事をして来い!オレも忙しいんだ!散った散った!」
そして、山寺と山田と田中はめいめいの仕事場へと散っていった。
「ってかよぉ。てめぇら山田と田中って顔じゃねぇだろ?」
「ひどくないすか?!」
「そいつを言ったら親父だって夕輝なんて面じゃねぇっすよ!」
「あ”?もう一回言ってみろ。コンクリ詰めにして湾に沈めんぞ?」
「「すいませんした!」」
東京地下街の平和な日常はまだ、保たれている。
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