誰もが願うはハッピーエンド 作:すすき(仮)
ろくでもない場所に夏休みは帰省する必要がある…
なら、遊ぶしかねぇよなぁ?!
「と、いうことで俺は今学院近くのゲーセンにいます。」
「きみ、誰に向かって話してんの?」
独り言に決まっているだろう。
メダルゲームの筐体の前で私服を着ている俺は、どこからどうみても国立魔術学院とかいう大層な学校の生徒には見えない。
風紀委員さんは地下街行きの準備で忙しく、風紀委員長さんは暴走が堪えたのか自主謹慎中。四月(略)君も最近中二君になついているし風紀委員連中に会うことはないだろうが、念には念をというやつだ。
さすがに夏休み前とはいえゲーセンで遊んでるのがばれるのはまずいからね。
「あぁ~、アドレナリンがどばどば出るんじゃ~。やっぱギャンブルっていいなぁ~」
「せやなぁ。でもボク、勝てたらええんやけどいつも負けてまうねんなぁ。」
それは度胸が足りないんだ度胸が。
絶対ベットを小出しにしてるだろ?うまい人がそれで様子見するのは意味があるけど、ギャンブルは儲からないようにできてる以上どっかで勝負を仕掛けなきゃ儲かるはずがない。
ちなみに俺は絶賛負け越し中だ。前世でも賭博は弱かったから仕方ないと思おう。
「ま、賭け事で楽しむのは金儲けじゃなくてアドレナリンだから別にいいんだよ。」
「いやいや。金は大事よ?ボク、お金のためなら何でもしちゃう。」
それにしても、地下街の治安の悪さは半端じゃないことおっさんも知ってるだろうに…
あんなに急いで地下街に行く必要…あるか。
地下街の探し物が何であれ、おっさんが地下街に来いと言ってる以上は持ってこれないもの、おそらく人だろう。
ならそいつが十年ぐらい地下街に潜んでるならともかく、最近来た奴だと警備隊に屠殺されるかもしれないしな。
…っと。そんなことよりメダルゲームに集中しよう。
「おっ!僥倖っ……!なんという僥倖……!」
「ジャックポットか、ええなぁ。君ついてるやん。収支プラスやろ?」
といってもメダルゲームだから換金できないよ…
とりあえず大勝ちしたから使い切るか。
隣の席で座ってる半眼の胡散臭い人にでもちょっとあげよう。
「あの~メダル、使いますか?」
「いや、ええよ。ボクって賭け事全般弱いから他人の見るほうが好きやねん。」
ならなんでここにいるんだよ。
「…にしても面白いなぁ、この『魔法もどき』とやら。」
「なんか言ったか?」
「いや、な~んも言ってへんよ?」
___
結局やってる間にもう一回ジャックポット引き当てて、朝300円で始めたのに使い切ったの昼過ぎだよ…
途中からメダルを入れるのがつらくて腕が痛いなぁ。
「なあ、知ってる函部君?人生の運の総量って決まってるんやって。」
「縁起の悪いこと言わないでくれよ…」
もうそろそろしたらあれだぞ?地下街に行くんだぞ?
地下街行く直前に縁起の悪いこと言わないでくれ。割とマジで。
「つーか、なんで名前「あり?なぜここに?!」…へ?」
思わず間抜けな声を出してしまった俺の前にいるのは入学当初はクラスのマドンナ的存在だった東西コンビの西側だ。
今は一部の上級生も従える立派な姉御さん。地下街でも上手くやれそうな人である。
「ちょ、さすがに学校の近くじゃまずいよ…って、クラスメートの函部君?!」
「ゴホン!…おやおや~?なんでゲーセンに学院の生徒がいるのかな~?放課後にゲーセンとかで遊ぶのは禁止だよ~?」
「多分お前らも遊びに来てたよね???」
そうやってあーだこーだ言い合っている間に時は過ぎ、西は東に取ってもらったぬいぐるみを抱え、東はメダルがなかなか使い果たせないからとメダルを預けて帰っていくのだった。
ちなみに俺は余ったメダルを貸してもらってちまちま遊んでいた。
…そういや、胡散臭い話し方をしていた隣のやつはいつの間にかいなくなっていたがどっかで見覚えある気がするんだよな~
地下街で。
___
東京地下街、もともとは東京メトロという地下鉄が通っていたらしいその駅構内の一角は粗末そうなあばらやが占拠していた。
しかし、その内部の無骨なコンクリートを見ればそれはただのカモフラージュに過ぎないというのがわかるだろう。
「…送ってくれたやつ使ってみたよ。」
「どうやったってボクに感想聞くん?もしかしてモルモットにされた感じ?つらいわ~」
「あー、ま、効果としてははっきり出てたんとちゃう?あれで『魔法もどき』っていうんやから『本物』はもっとすごいんやろ~な~」
そんな建物の中で、分厚い鋼鉄製の扉を背にサバイバルナイフを研ぎながら電話をする立藤栄。
地下街に数多いる武器商の中でもそれなりに名が知れている男だ。無論、地下街で生活をしていれば名前ぐらいは絶対に聞くであろう
「わかっとるわかっとる。詮索なんてせぇへんよ。」
そうして、薄く笑みを浮かべた男は別れの言葉とともに電話を切る。
「今後ともよろしくしたいからな。