誰もが願うはハッピーエンド   作:すすき(仮)

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深淵を覗くものたちは・裏

 

「あ~!もう!阿川先生の教室遠すぎない?!」

「仕方ないよ。だってあそこ過疎ってるもん…」

 

東と西はその日、研究室のボブ先生から阿川先生の研究室にお使いを頼まれていた。

段ボール箱いっぱいに詰め込まれた書類や荷物を建物の隅まで持っていくのは苦行であり、ほかの面々と公正なじゃんけんを行った結果茉莉花は敗北。よって西を道ずれに荷物運びを行っているのだ。

 

「お邪魔しま~っす!荷物運びで来ました~!」

「…失礼しま~す」

 

部屋の扉の前で人を呼ぶが、返事はない。

誰もいないのか、と思って茉莉花が舌打ちをして扉を開けようとした瞬間だった。

 

「あっ、ごめんごめん。阿川先生がまた実験に失敗しちゃってさ。今奥で熟睡中。」

 

阿川さくらの研究室に唯一在籍するもの好きな一年生で、最近襲撃の時に何かあったのか明君になついている風紀委員兼業の優等生、四月一日皐月が扉を開け放ったのは。

 

 

___

 

 

 

「んっと…お茶は無いけど一旦休憩する?片づけたから椅子は空いてるし。」

 

部屋の隅にガラクタと思しきものが固められているが、おそらくもとは足の踏み場もなかったことが容易に推測できる部屋の中で東雄平は段ボール箱を床に置いてため息をつく。

じゃんけんでは一番最初に勝ったのだ。なのになぜこんな重労働を押し付けられたのか。

しかも茉莉花の持っていた荷物の3倍ぐらいは持たされていたはずだ。絶対におかしい。

 

「阿川先生が実験失敗って大丈夫?」

「大丈夫じゃないかな。ほら、今はもういびき掻いてるし。」

 

そういうと彼はカーテンの奥のソファを見せる。

顔を赤くしていびきをかく阿川先生は確かに大丈夫そうだ…うん?

『顔を赤くして』?

 

「うわ~!教師と生徒の禁断の関係?!四月一日君ってそういうひとだったんだ~!」

「いやいやいやいや!違うからね?!先生が魔術の実験で酩酊状態になっただけだから!」

「ちぇ~、詰まんないの~」

 

ここが校舎の隅じゃなかったら四月一日君の名誉がやばくなりそうな声で叫ばないで!

本当に四月一日君が耳打ちしてきた「西さんって…いろいろな意味でやばい人?」って質問にははいと答えるしかないよ流石に。

しかしこんなことをするということは、次は流れるように…

 

「私の口を重くしたいならアリバイ工作よろしく!ちょっとの間阿川先生の研究室居たっていってくれるだけでいいから!」

「やっぱりそうきたか…」

「え、いや、それは先生にばれる「今阿川先生は寝てるし、ここは校舎の隅だからばれっこないよ!」…でも、昇降口行くまででばれる「靴は今持ってるわ。」…でも「でもじゃない!」…いいよ。」

 

ごり押しで脅してる…というかなぜ靴を二足持ってるのかな?!

ここは一階だから窓から出ればいいって言いながら何で僕を押し出すの?!

いや、僕は普通に帰りたいんだけど!待って!

…しかし、そんな抵抗も敢え無く窓の外に落ちてしまった。頭痛い。

 

「なにすんのさ!」

「…何でもないわ。」

「何でもないわけないだろ!?」

「そうね。というわけで、ゲーセンにいこっか!」

「どうしてそうなる!」

 

ちなみにこの後一人でゲーセンのメダルゲームをしていた函部君と茉莉花が仲良く遊んでたり、普通にボブ先生にばれて『噓つきはドロシーの始まりともいいましょう?』と言われて説教されたりするのはまた別の話。

…なぜついでに東まで怒られたのかは永遠の謎である。

 

 

___

 

 

 

「ふぅん。これが、()()()()()()()ねぇ。」

 

東と西が去ったあと。

段ボール箱の中身をすべて取り出し、その中から『研究日誌』と書かれた目立たない冊子を手に取る四月一日。

その冊子をパラパラと開くと、その主に専門用語で埋め尽くされた文章を流し読んでいく。

 

「WW3のちょっと後からあるのか…ふんふん、なるほどなるほど…さっぱり分かんないな。EAoBだのラプラスだのが魔術と関係あるってのは分かったけど…」

 

しかし、あるページに書かれていた文章を目にとめると四月一日は驚愕することとなる。

 

「はははっ!これは傑作だな!『我々の最終目標たる…』っ!」

 

『ぐふふ~ばかめ!それはラプラスではな~い!』という大きな声がカーテンの奥から聞こえて彼は体を震わせる。

()()()()()()()()()()()とはいえ、突然そういうことをされると本当に心臓に悪い。

…しかし面白いことが書いてあるではないか。

 

「あぁ…いいねぇ…やっぱりここは面白かった!おばばに頼んで正解だったよ!」

 

そう笑う四月一日の姿はとても楽しげで、しかしろくでもないことを企んでいるということがはっきりと伝わってくるものだった。

 

「…でも、まだ足りないな。()()()()()()()()()()、なら本当に地下街にすべての元凶がいるんだろうなぁ。」

 

…地下街には、様々な人間たちが生活している。

その中にはきっと。

 

「もっと、もっとろくでなしが見たいな。他人をおもちゃにして使いつぶすような、そんな外道がもっとみたい!」

 

彼の大好きなひとでなしが、いっぱい紛れているはずだ。

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