誰もが願うはハッピーエンド   作:すすき(仮)

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祈念すべき初授業

 学院長に絞られた後、夜に漫画を読んでる最中に秘書の梶島さんからクラス名簿とか学院の地図とか教科書類とかの入学式でもらうはずだったものを送ってもらったのたが、梶島さんからのメッセージで『P.S.学院長が怒ってらっしゃったのは、堂岡君の護衛の件です』とか送られてきてすごく怖かった。

もしかして入学初日に狙撃でもされたん?怖いんですけど?

 

「一年A組…一年A組…ここか!」

 

まぁ、それも昨日のこと。だだっ広い校舎内を歩いて自分のクラスを探す函部は今日も能天気だ。

 

「おっはようございま~す!」

 

まぁ彼がそんなハイテンションなあいさつをしたところで朝早い教室内には誰もいない…否、一人いた。

 

「…お、おはよう。」

 

眼帯を付けた男子生徒との間に流れる気まずい沈黙。

教室に意気揚々と入ろうとした函部は凍ったように動かない。

 

「と、とりあえず…僕の名前は、堂岡明といいます。あなたの名前は何ていうんですか?」

 

ひとまず自己紹介をしようとした少年の判断は間違っていなかっただろう。

だが、

 

「…」

「いや!無言でドア閉めたら僕がいなくなるわけじゃないですからね!」

 

その名前を聞いた函部はふっと目を細めると、『なんだ夢か』とでもいうように教室のドアを静かに閉めようとした。…そして、堂岡明の手からはその後数分間痛みが引くことはなかったのだった。

 

___

 

「あ~っと…俺の名前は函部修一!よろしくな!」

「…あの、自己紹介よりも先に何かすることありません??」

 

先ほどドアに挟まれた手をさすりながら不平を言う堂岡明という少年(護衛対象)

その程度で音を上げていたら、依頼してきた鬼畜爺(学院長)にはかなわんぞ!

 

「絶対なんか失礼なこと考えてませんか?」

「いや、気のせいだ。」

 

堂岡明君のことではないよ。『腕や足の一本や二本』とかいってるやつのことだよ。

…というか、この男子生徒の顔って普通にイケメンだから学院長は身体目的…?

 

「そういえば、この眼帯って中二病に見えますか?」

「うん。すごい見える。『俺の左目が疼くぜッ…』とかすんごい言ってそう。」

 

しまった!つい本音を話したら堂岡君が頭を抱えだした!

『俺の頭が疼くぜッ…』みたいな感じになって…ぶふっ

ごめんなさい。失礼なこと考えてました…だからその拳をおろして?

 

___

 

「…では、出席番号一番の方から自己紹介を。」

 

あの後、結局殴られはしなかったが恨みがましい目で見つめられながら他の生徒を待つこと10分。

登校してきた生徒は入ってきた瞬間、授業開始時刻1時間半前に登校していた俺たちを見て『ま、負けた…?』という声を出して膝から崩れ落ちた。

 

「東雄平です…好きなものは…好きなものはっ…」

 

そう!崩れ落ちたのは今自己紹介をしている男子生徒…!東雄平君だ…!

 

「甘いものですっ・・・!...!特にシュークリームが好きで・・・!一週間に一度は食べていたっ・・・!っ・・・・!」

 

            ざわざわ

      ざわざわ

 

ざわつく室内ッ!圧倒的ッ…圧倒的アウェイ!しかし東、くじけないッ!

 

「…以上です。」

 

…はっ!昨日読んでいた漫画風に解説してしまったッ!まさに悪魔的誘惑ッ!

まぁ冗談は置いといて、そのあとも滞りなく?自己紹介は進み、

 

「堂岡明といいます。趣味でチェスをしています。よろしくお願いします。」

 

女子の黄色い声とか、

 

「西茉莉花です。好きなものは…紅茶かな?」

 

男子の黄色い声とかのすぐ後に…

 

「は、函部修一です!よろしくおねがいします!」

 

前二人とは打って変わって静まり返る室内。

ここで函部君が聞き取ったささやき声の例を挙げよう。

『テンパりすぎじゃない?』

『入学式にあんな奴いた?』

「あ!そういえば休んでたやつハコベって名前だったはず…」

 

…函部のライフが0になっても自己紹介は続いていき…

 

「四月一日皐月です。誕生日は三月で紛らわしいとよく言われますが、覚えてくれると嬉しいです。よろしくお願いします。」

 

そして生徒の自己紹介ののち、

 

「担任の梶島孝也です。社会系科目を担当しているので、ぜひ勉学に励んでください。」

 

パッとしない感じのスーツ姿の秘書さんがこのクラスの担任としてあいさつを行うのだった。

___

 

「はぁ~い。では~まず皆さんがい~ちばんたのしみに~しているであろう~魔術の授業をはじめま~す。魔術担当の~教師として~私、阿川さくら先生も~がんばっちゃうぞ~」

 

少し時間は飛んで、入学してから最初の授業。

妙に間延びした感じで教卓に突っ伏しながら話す眼鏡をかけた女性教師は、絶対頑張ってないという生徒の視線も見ずにこっくりこっくりしながら授業を行う。

多分この人ダメな人じゃ…

 

「まずそもそも~魔術とは~大体20年前ぐらいに~この学院の~もととなった~『国立神秘学研究所』という~研究所で~発見された~新しい~技術体系の~ことで~す。」

 

そんな体たらくでよく授業できるな!

…あっ寝落ちしたっぽい。ダメな人だわ。

 

「むにゃ…詳しいことはまた来年ですが~基本的に魔術は~はっ!」

 

寝言で授業し始めたと思ったら起きた。

もしかしたら今日の授業の内容を徹夜で考えてたから眠いだけという一縷の望みにかけるしか…!

 

「アリストテレスの四元素説や古代中国の陰陽五行説、中世キリスト教世界の錬金術などをベースにして、()()()()()()()()技術体系なので自由度がとても高いんですよ!ちなみに先生は古代日本における神道系呪術をベースとしているんですが、そもそもその分野が最初から整理された分野ではないので自由度がさらに高くなる分『杖』の演算を喰って燃費が悪くなってしまうんですよね。だから、皆さんにはさらに演算領域を広げる感じの『杖』の開発とか…よければ私の研究室にも来てもらいたいんですけど…」

 

すごい早口で解説をする魔術担当の先生。

教授さん方向にやばい人だった。つまりダメな人だ。

この人のスイッチ踏んだら止まらないということがひしひしと伝わってくる授業なんですけど、もうちょっとこう、いい感じに魔術を教えてくれませんかねぇ…

 

「あ、失礼しました。それで、魔術はですね基本的に『杖』と呼ばれる外部接続式演算補助具を用いて特定座標の空間を丸ごと系統だった理論に基づいて演算することで、その空間内に対して改変を行う…つまり、杖を振ったら空間を()()()()()みたいな感じのことができるわけです!…まぁ、それがなぜ起こるのかという研究をしていた研究者の方は第三次世界大戦の直後にあった事故で全滅しているのでわかんないんですが。あと、伝え忘れてたんですが『杖』無しでの演算は下手な魔術を走らせたときに脳が焼き切れるので危険ですよ~。先生も昔、朧教授の研究室でそれやっちゃって死にかけまして…」

 

結局早口じゃねぇか!

…その早口の中にも結構怖い話が混じってたのは気のせいに違いない。

学生に脳が焼き切れるとか言ってるから結構な奴の顔が真っ青になってるぞ?

…そうして、初授業は惨憺たる結果で終わるのだった。

がんばれ!さくら先生!

 

___

 

「と、いうわけで最後の時間は私が受け持つことになりました。今回は少し現代史のおさらいを…」

 

魔術は阿鼻叫喚だったが、そのあとの科目では普通に授業が進み…というか前世とほとんど変わらない授業が続き、気づけば最後の時間となっていた。強いて言うなら国語の教科書にラノベが現代文学枠で載っていたことぐらいか?

 

「まず、これは魔術の授業でも習ったかもしれませんが、西暦2028年に国立神秘学研究所が設立され、数年後の2031年に本格的に神秘学…つまり魔術の研究を始めたとされています。戦前の資料は散逸しているので時期にずれはあるかもしれませんが大体で結構です。」

 

魔術の授業は先生が熱弁をふるうだけの場所だったから聞いてないです。

 

「そして、2035年に魔術の本格的な実験使用を行い始めたそうです。魔術の発見時期はここから推測するに2034年が妥当であると言われていますね。」

 

そして、黒板に世界地図を書き出した秘書さん。

 

「この後2039年8月14日、皆さんもご存じのようにある事件、12年前に起こった『第三次世界大戦』が勃発します。この戦争では従来予測されていたような核による先制攻撃ではなく国家中枢部にたいする機械兵団の投入が行われ、世界各国の政府が開戦から一時間もせずに…といっても宣戦布告があったかどうかも資料は残っていませんが、地上から消滅しました。機械兵団が強襲したのは…」

 

ロンドン、パリ、ベルリン、モスクワ、ローマ、ニューヨーク、北京、ロサンゼルス、シドニー…そして東京。

黒板の世界地図に大量の地名とバツ印がつけ加えられていく。

規模は全世界に及び、バツ印は実に数十個。世界中で戦争をできるだけの国力を持った国の首都か一番大きい都市には例外なくバツ印がつけられている。

 

「…このように、各国の政府中枢が破壊される中アメリカやオーストラリアは首都に対する直接攻撃ではなかったのですが、この数時間後にワシントンD.C.やキャンベラも制圧されたそうです。…そして、各国は政府がない状態で他国との和平を模索した結果出来上がったのが『ホノルル国際平和条約』ということです。12年前のことなので君たちが3,4歳のころの話なので実感はわかないかもしれませんが、今も世界中に大戦の傷跡が残っているため復興作業中の都市も多く、世界各国はかなり排他的になり海外旅行も気軽に行けなくなった…といったところで今日の授業は終わりにしましょうか。」

 

おぉう…もしかして生まれた世界のジャンルはファンタジーじゃなく近未来SFだったのか?

ま、とりあえず授業も終わったことだし寮に帰るか!

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