誰もが願うはハッピーエンド   作:すすき(仮)

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祈念すべき初授業・裏

…P.S.学院長が怒ってらっしゃったのは、堂岡君の護衛の件です…

 

教科書や地図を詰めたカバンにそう書いたメッセージを差し込み男子寮に届ける。

昼の間に届けたから明日の授業には彼も間に合う…

 

(奴はひょっとしたらただのバカなんじゃなかろうか)

 

そんなことを考えながらも、()()()()()協力者に連絡を取る梶島。

『学院長』とはこれでも長い付き合いなのだ。あの老獪な男の目的は未だに分かっていないからこそ、万が一の準備をする必要がある。

…共通目的の一つである『あくのひみつけっしゃ』に関しては完膚なきまでに叩き潰すという点で一致はしているが。

 

「あぁ、わかっている。ちゃんと情報は流すさ。」

(…にしても函部修一…どこかで聞いた気がすると『学院長』も言っていたが…)

 

そんなことを考えながら梶島孝也は眠りにつく。彼の遠大な計画のためには皆川小百合のような天才であればいざ知らず、函部修一(ただのバカ)風情に費やす時間は皆無なのだから。

 

___

 

「うおぉぉぉ!」

 

全力で教室まで走る東雄平はごく普通の一般的な男子高校生である。

…幼馴染は鬼畜(東主観)だが。

 

「は?なんで…」

「やった~!私の勝ち~!」

 

昨日の話だ。

入学式が終わった後、幼馴染にいつものごとくポーカーでの勝負を挑まれた東だったが負けた時の条件が悪かった。

 

「じゃ、明日の自己紹介で『知られたくない秘密』、言っちゃおっか!」

 

初手でフラッシュを引いた東だが、幼馴染は初手からロイヤルストレートフラッシュを出してきた。

その敗北により自己紹介で『知られたくない秘密』を言わされそうだったが、決死の交渉により最初に登校すればやらなくてもいいと幼馴染は言ってくれたのだ!

…なお、東にはイカサマがわからぬ。ゆえに幼馴染がいつも初手からロイヤルストレートフラッシュを引くことを普通にしか思っていない。

…そして、東は幼馴染から『こいつイカサマなしで初手フラッシュとかフルハウスとか頭おかしいんじゃないの?』と思われていることを知ることはないだろう。合掌

 

「ま、負けた…?」

 

そして、教室の二つの人影は彼の高校生活の受難を決定したのだった。

ちなみに、

 

「西茉莉花です。好きなものは…紅茶かな?」

 

その結構モテるイカサマ大好きな幼馴染は、東と自分の家族以外にプレゼントを贈ったことがなかったりするが、東雄平は気づいたことはない。

 

___

 

「は~…やっちゃったよ~!」

 

阿川さくらは初授業が終わったのち自分の研究室で悶絶していた。

 

「ふわぁ…やっぱり演算領域食いすぎかなぁ…でも改変はこうやらないとできないしなぁ…」

 

彼女が今日気だるげだったのは、研究の際の演算領域使用過多による副作用で一時的に知能が低下していたからだ。基本的に酒に酔ったような症状なのだが、酒にはろくな思い出がないため副作用は極力避けているものの…

 

「でもぉ…やっぱりこの魔法にも手を出してみたいしなぁ…」

 

すでに魔法中毒といっても過言ではないような状態の彼女は魔法をどうしても使いたくなってしまうのだ!

…もちろん魔法に中毒効果などないが。

 

(はっ!っていうか私、朧教授の話とか口走ってないよね!)

 

朧教授…彼女の師にして、酒が苦手になった原因の甘酸っぱい思い出の人。

当時教授の教え子だった彼女は、朧教授のことを恋い慕っていたが勇気が出せず酒の力に頼ったのだ。

 

『せんせ~い!頭撫でて~!』

『さくら君…どんだけ酒飲んできたんだい?アルコールの匂いがすごいんだが…』

 

思えば、そこで伏せられていた写真立てを覗かなければよき思い出のまま終わらせられたのかもしれないが、彼女はそこで止まれなかったのだ…酒のせいで。

 

『あへ~…教授に…瑠璃ちゃん…准教授!?』

『ん?あぁ、家族写真だよ。彼女は私の妻なんだが…言っていなかったかい?』

 

彼女の初恋の人、朧教授は既婚者だったのだ。…しかも子供もいる。

 

『へ!?…瑠璃ちゃんは准教授の子供で…教授の娘?!』

『いや~、私も妻もここで働いてるだろう?娘も家で一人よりもみんなと一緒のほうがいいじゃないか。』

 

そうしてあえなく撃沈した彼女は、酔いがさめた頭に少しの罪悪感を抱え他の研究機関へ出向しWW3を迎え…

 

「うわ~ん!教授~!なんで死んじゃったんですか~!」

 

彼女が恐れているのは、生徒に教授の話をしていたら突然号泣する姿を見られたら教師の威厳にかかわる…そう思っているからだが、そうでなくともすでに手遅れということを彼女は知ることはないだろう。

 

___

 

「それにしてもだ!我ながらこんな雑な脚本を教科書に乗せてよくばれないな!そうは思わんかい?梶島君!」

「…えぇ、ですがばれないのはいいことでは?下手をすると全人類の敵認定ですよ?」

 

学院長室。毎年恒例の学院長に対する社会科の授業の報告は、やはり例年通りに進む。

 

「『第三次世界大戦』?これを考え付いた時の私は馬鹿だよ!()()()()()()()()()()()()()()!」

「学院長。トーン、ダウン。」

 

仕方がないこととはいえ学院長が国家機密レベルのことを大声で話すと心臓に悪い。

この件に関してだけは、けしてばれてはいけないのだ。

 

「大体なんだい!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とは!()()()()()()()()()()()()()()()?そんな自国の首都が宣戦と同時に落ちる戦争を!」

「その脚本を書いたのは学院長ですよ…」

 

そう、ばれてしまえば『あくのひみつけっしゃ』は地下に潜り永遠に潰す機会が来なくなるかもしれない。

…いや、人類が自ら屈服するかもしれない。

 

「まぁ、『あくのひみつけっしゃ』なんぞという子供じみた輩が全世界から権力を消した、なんぞよりはよっぽどましな脚本だがね!」

 

だからWW3が実は『あくのひみつけっしゃ』が全世界を蹂躙した一方的な虐殺(ワンサイドゲーム)だということは、知られてはならない。保身のためではなく、文明の、人類社会のために。

 

「…えぇ、よっぽどましですよ。」

 

()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということも、絶対にばれてはいけないのだ。

 

「…本当に、ましですよ。」

 

…そして、『あくのひみつけっしゃ』に対する梶島と『学院長』が見出した結論は同じではないということも『学院長』には知られてはならないのだ。

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