誰もが願うはハッピーエンド   作:すすき(仮)

9 / 21
倉崎茜の理由のない苛立ち

放課後の風紀委員詰所には4人の男女が座っていた。

二人の冷めた目をした男女が両脇の、顔を真っ赤にした女子生徒が中央のパイプ椅子に座っており部屋の真ん中の縄で縛られて正座を強いられている男子生徒は目を泳がせている…

 

というか、その目を泳がせている男子生徒はつまるところ俺である。

なぜこうなったかにはとても深くない事情が存在しているのだ。

話は一、二時間前にさかのぼる…

 

___

 

「…ですから聖書を軸とした魔術は神学も学ぶ必要があるため履修時間が恐ろしく長くなり、しかも各宗派におけるキリストの神性と人性に関する態度から演算量も変わってくるので日本で使うような人はいないのです!しかし逆に錬金術や四元素説、五行陰陽説は理論まで中世の時点でほぼ完成していることもあり研究対象とするには…」

「というわけで阿川先生、授業は終わりなので「つまり結論としては私の研究室に来てくださいね!」…」

 

いつもの恒例行事となりつつある魔術の担当教師による授業時間超過を悲しい顔で見送る秘書さん。可哀そうに。

 

「…では終礼を」

 

すぐ気を取り直して次のことに移れるのはすごいと思う(小並感)

そうして授業が終わった後は新入生勧誘を避けながら自室へ帰るというミッションがある。

クラブや委員会、研究室に至るまで総出で勧誘してくるのだ。下手を打つと連れ去られて一日拘束される恐れまである。

 

「そこの男子生徒ッ!いい筋肉じゃあないか…うちの研究室に「はい、東君!一緒に帰ろーねー」いや、ちょ「なに?もう一回麻雀打つ?イカサマなしでも私強いよ?」支払い日には賭け金絶対払いますんで…」

 

なんかクラスのマドンナ的な感じを醸し出してた女子生徒には道開けとる…

甘いもの好きの男子生徒君を引きずりながら帰ってやがらぁ…

 

「おっと!そこの…誰だっけ?新入生君!阿川先生の研究室に来ないかい?新入生が一人しか来なくて他の上級生も幽霊になりつつあって切羽詰まってるんだよ!お願い~!」

 

いや校舎玄関で出待ちすんなし。

というか自分の研究室で新入生の面倒見ろよ。部屋の中で一人寂しい思いしてんぞ?

…まぁ、かなりの隠密で校舎の外まで来ていたのに思わず突っ込んでしまったのが運の尽きだった。

 

「居たぞ!新入生だッ!」

「逃げたぞ追え!」

 

こういうときは…

 

「逃げるんだy「どこへ行こうというのかね」なん…だと…」

 

函部は知る由もないが、実験の協力者(モルモット)を探す研究室とほかの部活との抗争を繰り返すクラブは包囲網を二重三重に毎年構築しているのだ。その鍛え抜かれた包囲はネズミ一匹逃さないとすら言われるほどである。帰宅部などという存在はほとんどいないに等しく、教師は嬉々としてモルモットを探し求め、生徒会は基本的に一回総辞職し、風紀委員も目を背けるのがこの時期の勧誘合戦である。

 

「オレのそばに近寄るなああーッ…あ?」

 

しかし、その日見回りに来ていた風紀委員が目をそらしながら隣を通るが、その顔は彼のよく知る顔であった。

 

「風紀委員長?!お助けを~…いやせめてこっち向いて?」

「アー、キョウモイイテンキダナー」

「無視すんなよ!」

 

函部に慈悲はなく、このまま周りを囲んでいる

 

「いいか?取り分はこっちが7でそっちが3だ。」

「へっ。無事にここからこいつを連れて逃げ出せたら、だがな。」

 

とかいってる奴らとそれを遠巻きに牽制している他の勧誘のどちらかに連れていかれるしかないのか…

というかどうやって人間を七三分けにするんだよ。

そう思われた、その時であった。

 

「聞いて下さ~い!実は風紀委員長って~クール系に見えて~ヒデブッ」

「…潰す」

 

函部は目にも負えない速さで意識を落とされ、顔を真っ赤にした倉崎茜に引きずられていったのだった。

 

___

 

そして、冒頭に戻る。

 

「こ、こんなやつ打ち首獄門さらし首よっ!」

「あ~大体何があったか分かったけど風紀委員にそんな権限ないからね?茜。」

「?」

 

ナイスだ風紀委員さん!フォローありがとう!…そして確かクラスメートだったか?三月生まれの新入生君は強く生きて…

 

「えっとね、四月一日君。茜にも触れてほしくないことってあるの…まあ、『これ』は触れたっぽいけど」

「???えーっと、とりあえず触れないようにします…」

 

そらそうだ。俺の正座してる周りの床、魔術?の雷で黒焦げになってるもん。

だが、これからも風紀委員長のかわいらしい側面を伝え「…」よくないですよね。人の気にしてるところつつくのって。

俺の後ろの壁に雷(物理)が落ちたから意見変えたわけじゃないですよ。ほんとに。

 

「だから私にも触れてほしくない場所があるからさ~、立ち入り禁止区域の周りでチキンレースするのよくないと思うんだ~」

 

後悔はして…ないし、反省もしていない。

青筋立ててるけど知ーらない。

 

「こっのやろー…!塵も残らないよう火葬してやる…!」

「坂宮先輩!だめですよ?!風紀委員にそんな権限ないですから?!」

 

ナイスだ!三月(略)君!…いや、どちらかというなら四月(略)…?しかし五月(略)も…

 

「なんか無性に腹が立ったんですが…」

「だめよ、四月一日君。その怒りは溜めて後に取っておきなさい。」

 

風紀委員長は部屋の片隅で沈んでるし、ほかの二人は目の前でいかに俺をサンドバッグにするか滔滔と語ってるんですが…帰っていい?

 

「…!そんな馬鹿な!一体どうして?…はい。ええ。…茜、四月一日君。校門に行くわよ。」

 

そんな願いが通じたのか風紀委員の三人は装備を整えると慌ただしく詰所から駆け出して行ったのであった。

 

…いや、また俺縛られて放置?




そういえば自分の書いた作品で色がついたの初めてなんですよね。
感想・評価ありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。