魔法少女リリカルなのはVivid 漆黒の翼 作:シンタ
「じゃあ、見せて貰おうかな?“管理局の白い悪魔(エースオブエース)”の実力ってモノをさ♪」
アベルのテンションも最高潮……
飛行形態となり、深紅の魔力粒子を撒き散らしながら、なのはの脇を掠めるように飛んでいく。
『ほら、どうしたの?もっと遊ぼうよ!』
アベルはなのはをさらに挑発した。
「行くよ!レイジング・ハート!」
なのははアクセルフィンを羽ばたかせるとアベルを追跡する。
ここから、二人の音速を超えた激闘が始まるのだ。
まず、先手を取ったのはなのはだった。
アベルの後方に着けた彼女は、自身の回りに桜色のスフィアを展開する。
「アクセル・シューター!」
『アクセル・シューター……』
展開したスフィアの総数は、自身の限界の半分である16個……なのはは、長年の経験から全力を出さなくても十分に勝てると思っていた。
「シューート!!!」
なのはの放った攻撃が、アベルに向かって伸びる。
『マスター!来たですぅ!総数16……!』
「りょーかい♪子供だからって、僕のことバカにしてるね……こうなったら、なのはさんに本気を出さてあげる!」
アベルがスピードをさらに上げた。
そして、機動のみで彼女の攻撃を回避し始める。
上から、下から……
右から、左から……
縦横無尽、嵐のように襲い掛かる16個ものスフィアをまるで見えているように……否、実際には見えている。
彼の見ている視覚モニターには、弾道予測をされたアクセル・シューターの軌跡が表示されていた。
その予測をもとに避けて避けて避けまくる。
『自壊を7まで確認!8個目!残り半分ですぅ!』
「こんなのよゆうだよ!よゆう!」
アベルの機動になのはは驚きを隠せない。
本気では無いとはいえ、あの数で攻めて一発も当てらないのだ。
「す、凄い……あんな機動、見たことない……」
『まるで生き物みたいですね。』
しかし、なのはとレイジング・ハートは観察を欠かさない。
アベルの動きをじっくりと見極め、フォトンブラスターを撃つ。
桜色の速射砲が彼に迫った。
『マスター!砲撃来ます!』
「大丈夫。任せて!」
アベルは水平飛行中に進行方向と高度を変えずに機体姿勢をピッチアップし迎角を90度近くに変える。
猛烈な空気抵抗が、飛行形態のアベルを失速寸前のレベルまでスピードを落とした。
空戦機動の一種、“プガチョフ・コブラ”である。
失速したアベルが、なのはと激突しそうになった。
「あ、危ないッ!!!」
なのはから冷や汗が流れる。
一方のアベルは、水平飛行中の“コブラ”から機首を前方に戻さず、後方に一回転させ水平姿勢に戻した。
空戦機動、“プガチョフ・コブラ”から“クルビット”への連続技……彼はそのまま彼女の後方に着ける。
アベルの視覚モニターに表示されたターゲットマーカーがなのはを追跡し、マーカー内に彼女を捉えた。
飛行形態のアベルの装甲、左右のエアインテイクの上部に砲らしき物が現れる。
『ターゲットロックオン!』
「“極超音速誘導魔力弾(テンペスト)”!ファイヤー!」
アベルの言葉に反応した右舷の砲が一発の魔力弾を放った。
次の瞬間、なのはを強烈な魔力爆発が襲う。
「きゃあッ!!?」
ダメージから体勢を崩し墜ちていく彼女だったが、すぐに立て直した。
「何なのッ!!?」
『分かりません。砲撃でしょうか?とにかく気をつけて下さい。』
アベルの攻撃に流石のなのはとレイジング・ハートもお手上げのようだ。
彼の攻撃を再度受けないように、彼女は空をランダムに動き回る。
「フフフ……なのはさんも考えたね。だけど、甘いんだよなぁ~モルガン、テンペストの起爆タイミングを替えてくれる?」
『了解ですぅ。接触起爆から近接起爆に切り替えるですよ。』
「これで、エースオブエースも終わりだね♪」
再び“テンペスト”が放たれる。
それも一発ではない。
左右の砲から連続で発射された。
テンペストはなのは自身に当たらずとも、彼女の周囲まで来ると勝手に炸裂する。
『マイスター、炸裂タイミングが変わりました。これは先程とは違って近接で起爆します。』
「く!レイジング・ハート、プロテクション!」
『了解、プロテクション。』
次の瞬間、なのははテンペストの魔力爆発に飲み込まれた。
「やったね……♪」
不敵に笑うアベルは、瞬時に人型に変形するとフレアライフルを構えてその場に留まる。
しかし、巻き上がる粉塵の中からなのはの速射砲がアベルのフレアライフルの片方を撃ち抜いた。
アベルが左手に持っていたフレアライフルの片割れが、青白いスパークをあげたあとに爆発する。
「うわぁッ!!?」
粉塵が晴れると、中から息の上がっているなのはが現れた。
彼女のバリアジャケットは、あちこちが焼け焦げ、損壊し破れている。
「ハアハア……どう?エースオブエースは、伊達じゃないって分かった?」
なのはの言葉を無視して、アベルはうつむき何かブツブツと呟いている。
「よくも………よくも………」
「どうかしたのかしら?あの子、何だかおかしい……!」
『ええ、注意して下さい。』
レイジング・ハートが注意を促し、なのはがデバイスを構えた。
その時、アベルが大声で叫ぶ。
「よくも、僕のフレアライフルを壊したなぁぁぁぁッ!!!」
どうやら、フレアライフルを彼女に破壊されてキレたようだ。
「許さない……高町なのは!」
「なッ!!?呼び捨てッ!!?」
小学生に呼び捨てされたなのははアベルを注意する。
「こらぁッ!大人を呼び捨てしちゃダメじゃない!」
「うるさい!モルガン!本気で行くよ!EDI-SYSTEM起動して!」
『どうして、それをッ!!?』
「昨日、キミを調整中に弄ってたら見つけた。」
『ダメですぅ!このシステムは危険ですぅ!マスターがマスターで無くなってしまうかもですぅ!』
「構うもんか!僕はアイツを倒したい!だから、早くッ!!!」
アベルの気迫にモルガンは気圧されてしまう。
『うーーん……了解しました……縮退炉内、魔力値安定。補助機関、正常に稼働中……EDI-System起動ッ!これよりマスターの脳波に干渉するですぅ!』
しぶしぶ了承したモルガンは、素早く各機能のチェックを済ませ隠し玉である『EDI-System』を起動した。
システムが起動した瞬間、アベルの纏っているアーマージャケットの装甲色が黒から純白に変わる。
そして、複雑な魔法陣が模した呪印のような模様がジャケットの隅々まで行き届き定着した。
また通常時は、禍々しいほどに紅かった魔力光と各センサー部もシステム起動と同時に清々しいエメラルドグリーンに変化した。
※ちなみに『EDI-System』とは……理性と呼ばれる精神の箍(たが)を外し、闘争心・破壊衝動などの原始的欲求を優先させることによって使用者の戦闘力を飛躍的に上げるシステムである。
また、このシステムによりモルガン自身も情報処理能力や機動性・火力等が通常の約3倍になるのだ。
最後にスリッド状のセンサーアイにバイザーが降り、ツインアイに変わる。
「何だろう……怖い………」
なのはの体に悪寒が走った。
「これはEDI-SYSTEMって言ってね?潜在能力を解放して戦闘力を爆発的に上げるんだよ♪」
さらにアベルの頭上に一際大きな召喚魔法陣が展開、その中から赤紫の巨大な甲冑が出現する。
『マスター、これって………』
モルガンもあ然としている。
「ア、アベルくん……これは………?」
「戦術機動魔導兵装“アヴァロン”。ようやくお披露目できるよ…………」
アベルはアヴァロンと合体シーケンスに入る。
両肩のシールドはエクスブレードクローに変形し、腰のサイドスカートも変形して脚部を構成するパーツとなる。
そして、甲冑のようなアヴァロンはパーツごとに別れ、コアとなるアベルに次々と装着された。
光波高機動ウイングシステムと一つになった肩部、胸部、下半身と………アベルは最初よりも5倍近い大きさとなる。
アヴァロンと合体し、さらにEDI-SYSTEMの効果により好戦的、破壊的な性格になったアベル。
「これはアンタに勝つためのチカラ……“なのはバスター”だよ!」
両方の“エクスブレードクロー”の指先に魔力が収束し、なのはに向かって一斉に放たれる。
「レイジング・ハート!」
レーザーのように襲い掛かる10本の射撃魔法をなのはは回避しながら、フォトン・ブラスターをアベルに向けて幾度となく撃ち込んだ。
爆煙の中に消えるアベル……「やった!」となのはは確信する。
しかし、アベルは彼女が予想した行動の斜め上の行動を取った。
「そんな、攻撃で“なのはバスター”が誇る鉄壁の装甲を抜けるとでもおもってるのッ?!!」
なんとアベルは全くの無傷……
「なんて装甲なの……ッ!!?」
「また僕の番かなッ?!!」
アベルはその巨体から想像できないほどの加速力で間合いをつめると、なのは目掛けて鋭いエクスブレードクローを振り下ろす。
なのははその一撃を紙一重で避けた。
だが彼の振るった渾身の一撃が、彼女のバリアジャケットを掠めとる。
「くあッ!!?」
なのはが再びよろけた。
それに追い打ちを掛けるように胸部装甲内にある2門の火線砲から強力な砲撃が発射される。
「きゃあぁぁあーー!」
無防備のままなのはは、砲撃に飲まれた。
しかし、なのはは至近距離の砲撃に耐えてみせるが、彼女のバリアジャケットはボロボロに損壊し、クローの掠めた部分はキレイに無くなって白い柔肌が見えている。
「しぶといね〜♪でも、そんなにボロボロじゃあ流石のエースオブエースも顔なしってとこだね!どうする?降参する?」
「降参?するわけないよ!私が立ってるなら、まだ負けてない!私のかくし球を見せてあげる!」
次の瞬間、召喚された数個の魔方陣から桜色のチェーンが現れてアベルの四肢に絡みついた。
「なッ!!?バインド!!?」
「そうだよ!カウンターバインド!これが勝利への布石!レイジング・ハート!ブラスター1ッ!」
『了解、マイスター。ブラスター1……』
「スターライト………!」
なのはのレイジング・ハートに膨大な魔力が収束されていく。
『マスター!収束砲が来るですぅ!』
「フン!こんなバインド、今の僕には……ッ!」
次の瞬間、アベルの四肢に絡みつくバインドがエメラルドグリーンの『魔力噴出刃(カッター)』によって切られた。
「ブレイカーーッ!!!」
そして、なのはが収束砲を放つと同時に、アベルは防御態勢をとる。
篭手になったシールドに搭載れている『AMF発振器』がフル稼働し、彼女の必殺である『スターライトブレイカー』を真正面から防御、耐えきる。
彼女の収束砲を真正面から受け止めた装甲は、『AMF発振器』が損失、装甲表面の対魔力コーティングが融解、剥離していた。
『マスター!アンチマギリングフィールドが展開不能ですぅ……このままでは!』
「かまうもんか!コイツさえ倒せば僕の………」
その時だった。
「破アァァァァッ!!!絶招遠雷砲ッ!!!」
背後からリオの声と共に、彼女渾身の蹴撃がアベルの腰辺りに入る。
「ガハッ!!!」『きゃあ!!!』
アベルの巨体は、激しい衝撃と共に下から突き上げられる形でダメージを受ける。
彼は何とか体勢を建て直し、攻撃を受けた方を見る。
なんと建造物レイヤーの屋上で残心を取り、呼吸を整えるリオ・ウェズリーがいるではないか………
「ど、どうしてッ!!?アイツ以外は全員倒したと思ったのに!」
「リオちゃんはずっと、ティアの幻影魔法で隠れてたの。」
なのはが種明かしをする。
「モルガン!気づかなかったの?」
『ごめんなさいですぅ……でも、ティアナさんを撃墜した時点で効力も無くなってしまうんですが………』
「って事は、リオって案外、存在感がないんだね!」
アベルの言葉にリオは軽いショックを受けた。
「ガーン!!!、ち、違うもん!私が隠れるのが上手いだけだもん!」
頬を膨らせたリオが、アベルに向かって突撃をする。
「ダメ!リオちゃん!」
なのはがリオを止めようとしたが時既に遅し、リオの右拳に炎熱変換された魔力が集まっていた。
「これで決めるよ!春光拳奥義!烈火閃光拳ッ!!!」
アベルの腹部に、リオの燃え盛る拳が吸い込まれる。
「本当に詰めが甘いな。リオは……」
アベルが不敵に笑ったかと思った瞬間、彼の体はエメラルドグリーンに光る粒子なって消えた。
「えッ!!?消えたッ!!?」
リオは、初めての見た光景に混乱している。
「リオちゃん!後ろッ!!!」
なのはは声を上げたが、彼女に届くはずもなく、リオ背後にエメラルドグリーンの粒子が収束し再びアベルの姿を形成した。
「うそッ!!?いつの間にッ!!?……きゃあ!!!」
リオの背後に瞬間移動したアベルは、彼女を掴み振りかぶるとお返しと言わんばかりに、建造物の1つに投げつける。
叩き付けられたリオの衝撃で建造物に激突、そして彼女は貫通し地面に叩きつけられ気を失う。
「今のは、いったい何?粒子化したッ!!?」
『このような事例は、初めてです。』
「隙あり!」
「しまった!!?」
今の戦いに気を取られたなのはが、一瞬だけ隙を見せた。
「これで僕の勝ちだね!」
その隙を見逃さなかったアベルは、粒子化能力でなのはの背後を取り、残された必殺の魔導兵装『零距離超高出力収束魔力砲(プラズマ・ラム)』でなのはを撃墜し、この陸戦試合はアベルとモルガンの勝利で幕を降ろすのだった。
最終結果
試合時間、19分30秒。
青、赤両チーム戦闘不能。
黄色チーム、アベル、モルガン生存。
次回に続く。
後半登場したなのはバスターことアヴァロンのイメージは、食玩シリーズ FW GUNDAM CONVERGE EX31 『ノイエ・ジールII 』に足を生やした感じで良いです。