魔法少女リリカルなのはVivid 漆黒の翼 作:シンタ
ここは時空管理局地上本部、そこに置かれている中央司令センターが慌ただしかった。
その理由として、首都クラナガン上空に謎の飛行物体が現れたのだ。
その謎の飛行物体に対して精鋭である首都防空隊が対処することになった。
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「こちら、シグナム……まもなく目標と接敵する。」
彼女はミッドチルダ首都クラナガン南東部に広がる海の上を猛スピードで、北上していた。
『了解。こちらも広域スキャンでそちらを確認しています。接敵まで時間にして約3分です。シグナム二尉、お気をつけて……』
「ああ、了解した。」
地上本部の中央司令センターの担当官との通信も良好だ。
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場所は戻り、アベルとモルガンは突如として現れた管理局員に驚いていた。
「首都防空隊とか地上本部の精鋭じゃん!しかも、ここに来るのがシグナム二等空尉だなんて……」
『知っている人なんですかッ?!!』
「知っているっていうか、ママの元同僚……元機動六課ライトニング分隊副隊長だよ。どうしよう?モルガン!」
『そんなことワタシに言われても分かりませんよぉ!まずはここから逃げることを考えないと……ッ!』
二人はこの場所から逃げること決める。
しかし遅かった!次の瞬間、アベルたちを落とそうとシグナムが放った斬撃が、旋回する二人の目の前を通り過ぎる。
「まさか、もう来ちゃったの!!?」
『あわわわッ!どうしよう、どうしよう!向こうは私たちの事を本気で撃墜しようしてますぅ!』
「多分、あの人は僕たちのことを分かってないんだ!話そう!そうすれば隙ができるができるから、その隙を狙って最大出力で逃げるんだ!」
『了解したですぅ。攻撃きますぅ!』
「はあぁぁぁーーッ!!!」
シグナムは再び剣を振るった。
刀身はムチのようにしなり、鋭い切っ先がアベルに襲いかかる。
「今だ!大型防護装甲板(シールド)、展開!」
『了解ですぅ!シールド展開!』
「何だとッ!!?ガジェットが言葉をッ!!?」
しかも、その飛行型ガジェットは瞬時に人型に変形した。
「変形までッ!!?コイツはいったい……!!!」
そして、シグナムの放った連結刃はアベルの左肩部から展開したシールドによって弾かれる。
機械であるガジェットを言葉を発し変形までした。
その事実は、シグナムの動きを一瞬でも止めるのに充分過ぎるものだった。
「よし!モルガン!離脱するよ!」
『了解ですぅ!トランスフォーメーション!』
アベルは再び飛行モードに変形すると翼を翻し、首都のある内陸部の方へ向かっていく。
「く!逃がしてなるものかッ!!!」
シグナムもアベルの後を追いかける。
「ああ、もうッ!あの人しつこい!ママが言ってた通りだ!」
『エリス様はそんなことを……ただいま、ワタシたちの後方を猛スピードで追って来てますぅ!スゴいですねぇ……』
「もー感心しないでよ!しょうがない!閃光弾(フラッシュバン)で目を眩ませよう。それで振り切れるはずだ。」
『ですが、コチラの姿は広域スキャンで向こうに筒抜けですよ?』
「大丈夫♪こういう時のために、魔力欺瞞(ジャミング)と光学迷彩を併用したアクティブステルスの機能を追加しといたから♪」
『いつの間にッ!!?』
モルガンは驚いていた。
「最終調整の時にちょちょいのちょいってね♪」
『さすが、マスターですぅ!』
「じゃあ、閃光弾(フラッシュバン)射出と同時に最大加速!」
『了解ですぅ!フラッシュバン射出と同時に最大加速!広域スキャン対策にアクティブステルス機能を発動させますぅ。』
飛行モードであるアベルの腰関節部に格納してある多機能ランチャーから4発の閃光弾を後方に発射した。
射出された閃光弾はさらに小弾頭に散らばり、後方から追いかけるシグナムの目の前で眩い閃光と爆音を発しながら次々と裂する。
「うあぁぁぁッ!!?」
シグナムはあまりの眩さに、その場に立ち止まり両手で目を押さえた。
彼女が足を止めをしている間に、アベルたちは遥か彼方の空に飛び去っていく。
『いったい、どうしたのですか!!?シグナム二尉!』
彼女を心配する管制官。
「な、何でもない!……それよりもヤツは……ヤツはそっちで追えているのかッ?!!」
『え、ええ……只今、対象は首都クラナガンの方へ飛行中です。ちょ、ちょっと待って下さい!これは………魔力欺瞞(ジャミング)!!?』
「何だと?ガジェットがそんな機能を持っているなんて聞いたことがないぞッ!!?」
『ですが、本当なんです!ダメです!追跡対象は光学迷彩までも………すみません………対象の反応、完全に消失(ロスト)しました。』
「了解した。一度、本部の方へ戻る………」
しばらくして視力が回復したシグナムは本部へ戻っていった。
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一方、シグナムを振りきったアベルたちは自宅のある住宅街の上空に戻って来ていた。
「なんとか撒いたみたいだね……」
『ふう、助かったですぅ……』
二人が一息ついていた時だった。
モルガンの光学レンズが地上に見知った人を捉える。
アベルの斜向いに住む、幼なじみのヴィヴィオだった。
「あ、ヴィヴィオだ……」
『ヴィヴィオ?……ああ、高町家のご息女の……』
「そうだよ。今晩はヴィヴィオのお家にお呼ばれしてるから、モルガンもお行儀良くしてね?」
『了解ですぅ!任せて下さいー♪』
アベルは自宅に戻って来た。
庭に着地しモルガンとの融合(ユニゾン)を解除する。
「一時はどうなるか内心ヒヤヒヤしたけど、けっこう楽しめたよ♪」
「ワタシもマスターと出会ったその日に、こんなことになるなんて予想もしていませんでしたぁ~」
「僕たち、いいコンビになりそうだね?」
「はいですぅ!改めましてマスター、ヨロシクですよぉ〜♪」
二人は正式に主とデバイスの契約を行った。
「さて……そろそろ、ヴィヴィオが帰って来るころかな……?」
「ただいまーー♪♪」
アベルの言うとおり、ヴィヴィオが帰宅する。
「うん、ナイスタイミング♪………」
「さすがマスター!スゴいですぅ!」
「じゃあ、僕たちもヴィヴィオの家に行こうか?」
「はいですぅ!」
アベルとモルガンの二人も、斜向いにあるヴィヴィオの自宅に向かった。
アベルがヴィヴィオ宅のインターホンを押す。
『はーーい!』
中からヴィヴィオの声が聞こえ、すぐにドアが開いた。
「あ、アベルくん!いらっしゃい!」
「おじゃまします。」「ですぅ!」
アベルとモルガンはヴィヴィオに案内されリビングに行く。
リビングにはもう一人女性の姿がいた。
金色の綺麗な髪を腰まで伸ばした清楚な女性……
彼女は『フェイト・テスタロッサ・ハラオウン』。
時空管理局、次元航行部隊に所属するエリート執務官であり、ヴィヴィオの母親『高町なのは』の親友でもある。
また、なのはとヴィヴィオが親子になる際には、二人の後見人となっている。
彼女もなのはを通じてアベルの母親『エリス・ガーネット』と友人である。
「いらっしゃい。アベルくん、なのはから聞いているわ。今日はゆっくりしていってね?」
「はい♪今日はお招きいただいてありがとうございます。フェイトおば様♪」
「お、おば様……ッ!!?ア、アベルくん!ちょっといいかな?」
「えッ!!?ちょ!ふぇぇぇ~ッ!!?」
「あ、マスター!!?」
アベルの言った『おば様』という単語に瞬時に反応したフェイトは、速さで彼だけを連れてキッチンに向かった。
いきなりの事で置いてきぼりのヴィヴィオとモルガンの二人……
「そう言えば、アナタは?………」
ヴィヴィオが隣でふわふわと浮くモルガンに聞いた。
「あ、ワタシはアベル・ガーネット様の生体デバイス“ADF-X01モルガン・ル・フェイ”です。マスターの進級祝いのプレゼントとしてマスターのお母さまから贈られ、マスターのもとで本日からお世話になってます。」
モルガンが答えた。
「そうなんだ。私は高町ヴィヴィオ♪アベルくんのヨロシクね?」
「コチラこそ…………」
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一方、フェイトに半ば強引に連れて来られたアベルはというと……
「フェイトおば様。いったい、どうしたの?」
「ううん、別に大したことではないけど………その“おば様”ってやめてくれないかな?私まだ24(才)だし、おば様は早いって思うんだ……」
「じゃあ、なんて呼べばいいの?」
「やっぱり、私的には“フェイトさん”とか“お姉さん”って呼んでくれると嬉しいかな?」
フェイトは目線をアベルに合わせた上で、大人としてのプライドを丸投げに『おば様』と呼ぶのは止めてくれと頼み込む。
「うーん……………」
彼女の思いに答えて上げようと、アベルは十分思いめぐらして、的確な判断をしよう熟慮しとする。
「分かりました。」
「本当ッ?!!」
フェイトの瞳がキラキラと輝きを取り戻した。
「はい、次からはフェイトお姉さんと呼ばさていただきます!おば様♪」
「ガーーン!!!そ、そんな……言った傍から、おば様って言ってるし………」
しかし、癖というのは末恐ろしい。
容姿端麗、文武両道のエリート執務官を一撃でフォースの暗黒面に叩き落とす。
その後、なのはが帰って来るまで彼女は魂の抜けたように真っ白になっていた。
高町家でおいしい夕食をごちそうになったアベルとモルガン。
また、ヴィヴィオはなのはとフェイトから新しいデバイスを貰っていた。
彼女に贈られたデバイスはウサギのぬいぐるみの外装(アクセサリー)を纏っている。
ヴィヴィオは新デバイスとの契約をするために自宅の庭に出た。
それをテラスから見守るアベルたち3人……
「…………マスター認証、高町ヴィヴィオ。術式はベルカ主体のミッド混合ハイブリッド。私の愛機(デバイス)に個体名称を登録。愛称(マスコットネーム)は『クリス』……正式名称『セイクリッド・ハート』!」
成長した娘に笑顔を浮かべるなのはとフェイト。
アベルもいつもと違う雰囲気のヴィヴィオに思わずドキッとしていた。
「いくよ♪クリス!セイクリッド・ハート!セーーット・アーーーップ!!!!!」
ヴィヴィオが強い光り包まれ、次に彼女が現れた時には金色の髪をサイドポニーで纏めた、十代後半の姿に成長していたのだ。
「えッ!!!」
フェイトは自身の目を疑う。
「うん、完璧!やったよ♪ママ、ありがとうーッ!」
起動に成功して喜ぶヴィヴィオ。
「良かった、上手くいったねー♪」
「うん、決まったね♪カッコいいと思うよヴィヴィオ♪」
「本当ッ!!?」
「うん、本当♪」
「ありがとうーーッ♪」
ヴィヴィオは喜びを押さえられない。
「じゃあ、次はアベルくんの番だよ?」
「え?僕もやるの?」
「そうだよ?私、見てみたいなぁ~?アベルくんのバリアジャケット姿?……………」
「……………分かった。モルガン、やろうか?」
「了解ですぅ。」
次はアベルが庭に立った。
「モルガン、セットアップ!」
アベルが叫ぶ。
次の瞬間、彼とモルガンが眩い光りに包まれた。
「ADF-X01モルガン・ル・フェイ。システム起動……武装化(アームズアップ)。」
光りの中ではモルガンの姿が飛行型ガジェットのようなモノになり、一方でアベルの身体はエメラルドグリーンの粒子に変化する。
「「融合((ユニゾン・イン))!!!」」
そして、粒子化したアベルは飛行型ガジェットに変化したモルガンの中に吸い込まれた。
光りが次第に晴れていく。
光りの中から現れたのは少々無骨な戦闘機を模した漆黒の飛行ガジェット……
「これがアベルくんのバリアジャケット?」
ヴィヴィオが聞いた。
「まぁ、正確には空中での高機動戦に特化した飛行(ファイター)モードで……………」
アベルは説明しながら、次は人型に変形して見せた。
「へ、変形した!!?」
「す、スゴい………始めて見た……」
なのはとヴィヴィオは唖然としている。
「ふへぇぇぇ~~」
そして、フェイトはとうとう腰を抜かし、その場に座り込んでしまった。
「ど、どうしたの?!!フェイトママ!!?」
「だって、ヴィヴィオが、ヴィヴィオが……聖王モードになっちゃった〰〰ッ!!?それに、アベルくんも不良に〰〰!」
「も~、僕はフリョーじゃないよ~フェイトおば様はヒドいな~」
「また、おば様って言われた〰〰!」
完全にパニックのフェイト……
聖王モードのヴィヴィオ、融合(ユニゾン)したアベルに、再びおばさん呼ばわりの三段攻撃が彼女のパニックに拍車を掛けていた。
「ちょ、ちょっと、落ち着こうか?フェイトちゃん!これはね……」
その後、アベルとヴィヴィオ、なのはの三人はフェイトを落ち着かせるのに四苦八苦するのだった。
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ここは『陸士108隊』の隊舎……
時間は夜の8時を回っていた。
『……………連続傷害事件?』
ここの部隊員である『ギンガ・ナカジマ』は自身の自宅にいる姉妹たちと通信をしていた。
「えーっと、事件ってほどではないんだけど………」
『どーいうこと?』
「全容はこう……被害者は主に格闘系の実力者が狙われているの。そういう人に街頭試合を申し込んでは……」
『フルボッコってわけ?』
「そう、正解よノーヴェ………」
『アタシ、そう言うの知ってるッス!喧嘩師(ストリートファイター)って言うんッス!』
『もう、ウェンディ、うるさい……』
『うるさいとは、なんッスか!!!』
『ほらほら、二人ともケンカは良くないぞ?』
『ううぅ……だって、チンク姉ぇ〜ディエチ姉が~~』
『ああ、仕方ないな……ウェンディ、こっちにおいで……』
甘えるウェンディの頭を優しく撫でるチンク……
『すまない、話の節を折ってしまったな?』
「別に気にしてないわ。いつもの事だから……それでこの事件に関しては、まだ被害届が出てないから事件扱いしてないけど、みんなも襲われないように気をつけてね。」
『分かった……まぁ、アタシなら?逆にボコボコにしてやるけどな♪』
ノーヴェは鼻息荒く拳を握る。
『ノーヴェ、それは迂闊すぎだよ?』
やる気まんまんのノーヴェを半ば呆れながら、姉妹のディエチがたしなめた。
『大丈夫だっーて!』
『フム、それでこれが例の容疑者の映像か……』
「ええ……自身を“覇王イングヴァルト”と名乗っているわ。」
『確かに強いな……経験豊富な実力者を秒殺ってわけか。でも、覇王って……』
「そう古代ベルカの……それも聖王戦争時代の王様の名前よ。あともう一つ……これは全管理局員に対しての通告。今日の昼過ぎに首都クラナガン中心部上空から南東部の海上にて、謎の飛行型ガジェットが現れたわ。」
空間モニターに映っていたのは、首都防空隊のエリート魔導士シグナムの攻撃を回避する黒い飛行型ガジェットの姿。
『なんッスか?あの動き……』
『機械らしからぬ……まるで生き物みたいな機動だ。』
『生き物って、大げさだなチンク姉は……』
「でも、ノーヴェ?チンクの言っている事はある意味正解よ。接触したシグナム二尉によるとアレは言葉を発するんですって……」
『しゃべるガジェット……』
「いいえ……シグナム二尉に言わせれば、アレは特殊なバリアジャケットなんだって。しかもアレは人型に変形もする。」
空間モニターの映像はシグナムの攻撃を人型に変形し、シールドで守る映像に切り替わる。
「声からしてアレは子供……そして、あのガジェット型のバリアジャケットは“モルガン”と呼称されるそうよ。」
『モルガン……また、古代ベルカの有名人か……』
「ノーヴェ?正しくは古代ベルカのおとぎ話に登場する妖精の名前だよ?」
『別に間違っちゃいないよ。それにしてもこの期に及んで古代ベルカに関係する名前が多いなぁ。』
「ええ……“覇王イングヴァルト”に“聖王オリヴィエの複写素体(クローン)のヴィヴィオ”、今日現れた“妖精モルガン”とそれを扱う子供と聖王教会には“冥王イクスヴェリア”………」
『まさに、古代ベルカ有名人の大放出の大バーゲンだな?』
ノーヴェの言った何気ない冗談はのちに現実のものとなる事を、誰も知るよしは無かった。
次回に続く。