魔法少女リリカルなのはVivid 漆黒の翼 作:シンタ
高町家での楽しい夕食会もお開きとなり、満足顔のアベルと愛機のモルガンが自宅に帰宅した時には、すでに夜の9時を回っていた。
「ふぅ……なのはさんとフェイトおば様の晩ごはん、おいしかったね~♪」
「はいですぅ……私もついつい食べ過ぎちゃいました~♪食後のキャラメルミルクも最高でしたし、ワタシ的には星三つですぅ♪」
「そうだね~お腹いっぱいで眠くなっちゃった。」
「次の日から学校も通常授業になりますし、早くお風呂に入って寝ましょう。」
アベルはお風呂に入り、明日の準備をしてベットに潜り込む。
モルガンも専用のベッドに横になった。
「お休み、モルガン………」
「マスターもお休みなさいですぅ………」
時間は経ち、深夜の1時頃……
アベルは悪い夢に苛まれていた。
「ん〰マスター、どうしたんですか?」
モルガンは、まだ眠たい目を擦りながら主であるアベルを見る。
アベルは物凄い量の寝汗をかき苦しそうな表情を浮かべていた。
「ッ!!?マ、マスターッ!!?どうしたんですか?マスター!」
驚き焦るモルガンは、アベルを必死になって起こす。
その甲斐あって、アベルは目を覚ました。
「ハッ!………モルガン………」
「大丈夫ですか?マスター……スゴい魘されてましたよ?」
「ゴメン、心配かけたね。」
「いいえ、マスターがご無事ならそれで良いんですぅ。あと差し支えなければ、マスターが見ていた夢がどんなモノか教えてくれませんか?」
「うん………あのね…………」
アベルが見ていた夢は、戦いの夢………
それも戦っているのは、知っている人たちばかりだった。
なのはにフェイト、大人モードのヴィヴィオ………
その時アベルは、夢の登場人物の一人に憑依していた。
その憑依した人物は、この騒動を企てた張本人………
「そうでしたか……それはツラいモノでしたね。」
「ゴメン……ちょっと、水を飲んでくる……………」
そう言ってアベルは、自室を出ていった。
それを見送るモルガンは少し笑っている。
「どうやら、順調ようです……エリス様にご報告をしなければなりません……」
いつもと口調の違うモルガン……
こちらが彼女の本心というのだろうか………
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その後、アベルは何事もなく日常を送った。
そして週末になった。
今日はヴィヴィオと引率者数人で聖王教会に行く。
そこには、ヴィヴィオの友達『冥王イクスヴェリア』が眠っているという。
「この子がヴィヴィオの友達の………」
病室のベッドには10歳前後の少女が横になり、静かに眠っていた。
「そうだよ、この子がイクスヴェリアだよ。」
「ワタシが見た感じ、バイタルも正常で健康そのものですぅ。」
お見舞いを終えたアベルとヴィヴィオは、他の引率者たちと合流する。
そして聖王教会をあとにしたアベルらは、ミッドチルダ中央市街地まで戻ってきた。
そこで待っていたのは、クラスメイトのリオとコロナ………
「あ、ヴィヴィオー!アベルくーん!」
「リオ、コロナ!おまたせー!」
「そう言えば、リオは二人とは初対面だったよね?」
「うん!はじめまして!去年の学期末にヴィヴィオさんとお友達になりました、リオ・ウェズリーです!よろしくお願いします!」
リオは引率者である、ノーヴェとウェンディに元気よく挨拶をする。
「こちらこそ、私はノーヴェ・ナカジマ。そいでこっちが………」
「その妹、ウェンディっス♪」
「ウェンディさんは、ヴィヴィオのお友達で………」
「こちらのノーヴェさんはヴィヴィオやコロナに格闘技(ストライクアーツ)を教えてるんだよ。」
「そう!私たちの先生!」
「よッ!師匠!」
自分の姉をからかうウェンディ………
「なに言ってんだ!二人ともッ////ウェンディも姉貴をからかうのはやめろ!」
照れているのか、ノーヴェは顔を赤くする。
「先生だよね~♪」
「教えてもらってるもん♪」
「私も先生と二人から伺ってます!」
ヴィヴィオとコロナも口を揃えて、ノーヴェはいい先生だと言い、リオは尊敬の眼差しを彼女に向けていた。
「だって、ノーヴェ先生?」
アベルが止めを刺すようにはにかむ。
「うっせ……私は本当にそんなんじゃない……アベル、大人をからかうのもいい加減しろ。」
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場所は変わり、ここは市街地にある公民館。
ヴィヴィオとコロナは、ここでノーヴェの指導のもとストライクアーツに励んでいた。
そして、リオは発参加でワクワクが止まらない。
ウェンディはベンチスペースに座り、四人のトレーニングを見学し、アベルはウェンディの隣でモルガンと共に空間モニターを弄っていた。
「いつも思っていたけど、どうしてアベルはヴィヴィオたちと一緒にストライクアーツをしないんッスか?」
ウェンディがアベルに聞く。
「う~ん、何でだろう?別に興味がないってこともないよ?一応、ルールは頭に入ってるから………」
モニターを弄りながら、アベルが応えた。
「じゃあ、どうして………」
「だって、僕のモルガンって格闘技向きじゃないし………」
「格闘技向きじゃない?」
「そう……モルガン、ウェンディさんに分かりやすく説明して上げて?」
「はいですぅ。そもそもワタシは重装甲・高機動・高火力による一方的な魔法戦をコンセプトにしてますぅ。」
そう言って、モルガンは魔導兵装のページをウェンディに見せる。
「例えば、この“六銃身連装電動駆動式機関砲(デュヒュージョン・ブラスター)”……発射速度は全兵装の中ではダントツなんですよぉ。ヴィヴィオちゃん達が接近戦を挑もうとする前に完膚無きまでにブチノメしちゃいますからぁ……」
「まあ……撃ち始めるまでに2~3秒のタイムラグが掛かるのと、取り回しが悪いのが欠点なんだけどね。」
「なんだか、物騒なモノが多すぎッス………」
「それと今は、モルガンの新しい変形機構のシステムを構築しているんだ。空戦特化型・人型………そして、陸戦に特化した“四足歩行獣化形態(ビーストモード)”……コイツには悪路での高速かつ安定した走破能力を持たせてる。」
「いったい、アベルはそこまでして何を求めているんッスか?」
「何って……“最強”の二文字さ……」
アベルはニヤリと笑う。
「あれ?マスター?この項目、初めて見ますねぇ………」
モルガンが空間モニターに記載されているデータ欄を開いて驚愕した。
「こ、これは………ッ!!?マスター!もしかしてッ!!?」
「この前、話してくれたじゃん。次元跳躍を可能にしてくれるという外装式のオプションパーツ♪見つけちゃったんだよね?キミの“記憶の海(データバンク)”からさ……データのサルベージもしたし、今は製作中だよ♪」
空間モニターには、データとともに完成予定の画像が乗っていた。
そのオプションパーツ名は“アヴァロン”といい、赤紫色のカラーリングで合体変形式のモノとなっている。
成人の4〜5倍ほどの大きさだった。
とんでもない代物の説明をモルガンに話す無邪気なアベルに、隣で座るウェンディは少し恐怖を覚えていた。
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ヴィヴィオたちがトレーニングが終えた頃には、すでに日が落ちていた。
「今日も楽しかったねー♪」
「て、言うか、色々と驚きの連続だったー!」
余韻覚めやらぬヴィヴィオたちは楽しそうに話しており、その様子をノーヴェとウェンディが笑顔で見ていた。
一方のアベルとモルガンは、彼女たちの後ろを着いてきている。
しかし、アベルの表情は険しい。
何かに警戒しているようだ。
「ねぇ?モルガン……気付いてる?」
「ええ……性別までは分かりませんが、確実にワタシたちの後を着けているですぅ………」
モルガンの髪の毛がアンテナのようにピンっと立っている。
「誰が狙いなのか分からないし、僕たちが動いてみようか?」
「もし、相手が釣れたら捕まえて理由を聞くつもりですね?」
「うん、そのとおりだよ。」
「おい、アベル。遅れているぞ?どうかしたのか?」
急にノーヴェが振り向いた。
「あ、いえ……あ、さっきまでいた公民館にちょっと忘れ物したみたいで………」
いきなりのことでアベルは慌て話しをはぐらかす。
「なんだって?」
「本当なの?アベルくん………」
「うん……だから、今から取りに戻ってくる。」
「今からかッ!!?」
「さすがに遅いんじゃない?」
「そうッスよ。」
みんなが心配する。
「大丈夫、すぐ追いつくから……モルガン!行くよ!武装化(アームズアップ)!」
「了解ですぅ!アームズアップですぅ!」
アベルとモルガンは強い光に包まれ、光が晴れると黒いロボットのような鎧を纏った姿になった。
「これがアベルくんのバリアジャケット……」
「かっこいい!」
アベルのバリアジャケットを始めて見たコロナは唖然とし、リオは目をキラキラと輝かせている。
そして、ノーヴェとウェンディはその姿を見て直ぐに思った。
「まさか!先週、ギン姉が言っていた変形する飛行型ガジェットって………おい、アベル!お前………!」
「じゃあ、ヴィヴィオ行ってくるね♪」
アベルは新しい変形機構『四足歩行獣化形態(ビーストモード)』になると、あっという間にミッドチルダの闇夜に消えていく。
「アベルくん、行っちゃった………」
「ねぇ、ノーヴェ……いきなり、どうしちゃったの?ウェンディも顔色が悪いよ?」
「あ、イヤ………何でもねえ………」
「アタシも大丈夫ッス………」
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「どう?モルガン?……」
『はい……この形態、加速力が半端じゃないですぅ。それと例の追跡者は……どうやらワタシたちを追ってきてますね。』
「じゃあ、直ぐそこに広場があるからそこで出迎えよう。」
『了解ですぅ。』
アベルは路地を曲がり、人気のない広場まで来ると人型になった。
「さてと……ねえ!隠れてないで出てきたらーッ!」
アベルが叫ぶ。
すると広場に植えられていた木の陰から一人の女性が姿を現した。
年齢は十代半ば~後半。
髪の色は碧銀、腰ぐらいの長さをツインテールに纏めている。
そして、彼女は顔を隠す為にバイザーをしていた。
謎の女性が口を開く。
「アナタにいくつか伺いたい事と確かめさせて貰いたい事が………」
「ねぇ、質問する前にさぁ!その似合ってないバイザー取って自己紹介をしたら?」
「そうですか………(私的には似合っていると思っていたのに……)失礼しました。」
そう言って、彼女はバイザーを外した。
彼女の瞳はヴィヴィオと同じような左右で色の違う虹彩異色………
「カイザーアーツ正統…“ハイディ・E・S・イングヴァルト”……『覇王』を名乗らせて貰ってます。」
月夜を背景に凛とたたずむ自称覇王と名乗る彼女は、凄まじいオーラを醸し出していた。
次回に続く。