魔法少女リリカルなのはVivid 漆黒の翼 作:シンタ
アベルとノーヴェが激しい喧嘩をした明くる日の朝……
否、あれは喧嘩と言って良いのやら………朝日の心地よい日差しを浴びたアベルは目を覚ます。
「うーん……よく寝た……って、ここは……?ウチじゃない?知らない天井だ……」
アベルはボーッと天井をなんとなく見つめたかと思うとおもむろに横を見た。
彼の横には、可愛らしい寝顔で寝息をたてる少女が……見るかぎり自身よりも少しばかり年上のようだ。
「可愛い////………年上みたいけど。」
どうやら、アベルは眠っている少女に少しときめいてしまったようだ。
アベルがそう思いながら、眠っている少女を見ていると、その娘が不意に目を覚ます。
「「あ…………」」
二人の時間が止まる。
二人は目をパチくりとした。
そして二人の時間が急に動き出す。
先に動いたのは、少女の方………寝ていたベットから脱兎ごとき素早さで飛び起き、サッと身構えたのだ。
「え////どうして?ここはッ!!?」
自分の置かれた状況が分からず、少女は少しパニックになっているそんな時だった。
スライド式のドア開き、ノーヴェとティアナ、一緒にモルガンが部屋に入ってきた。
「よう、やっと起きたな?ねぼすけども。」
「おはよう、アベルくん……それから………」
「自称、覇王イングヴァルトさんですぅ!おはようございますよ、マスター♪」
朝から元気いっぱいのモルガン……昨夜、アベルと共にあれだけの大立ち回りをしたとは思えない。
「ねぇ、この人が本当にあの覇王さんなの?瞳は確かにあの人と同じだけど………?」
「そうですぅ。えっと本名は………」
「本名は“アインハルト・ストラトス”……」
「St.ヒルデ魔法学院中等科一年生……ごめんね。コインロッカーの荷物、出させてもらったわ……大丈夫、ちゃんと全部持ってきたから……」
「それにしても、制服と学生証を持ち歩いてっとは、ずいぶんトボケた喧嘩屋だな?」
「仕方ないでしょう。学校帰りだったんです……」
「それで?僕に喧嘩売って、戦って、負けちゃったわけ?」
「もう、余計なことは言わないで下さい……////」
アインハルトは顔を赤くした。
再びスライドドアが開き、両手に朝食を持ったスバルが現れる。
「あ、アベルにアインハルトも起きたんだ♪おはよう♪さあ!みんな♪お待ちかねの朝ごはんだよー♪」
「おおー!ベーコンエッグ!私の大好物じゃねえか!姉貴、分かってる!」
子供のようにテンション高めのノーヴェ。
「ほら、ノーヴェ……少しは落ち着きなさい。野菜スープこぼすわよ?」
そんな彼女をたしなめるティアナ。
「あ……はじめましてだね?アインハルト……アベルもこうして直接話すのは、始めてだったかな?私はスバル・ナカジマです。よろしく♪」
「はい、アインハルト・ストラトスです。はじめまして……」
「アベル・ガーネットと………」
「ADF-X01 モルガン・ル・フェイですぅ。」
アベルたちは、スバルに頭を下げた。
「お互いに事情とか色々あるとは思うけど、まずは朝ごはんでも食べながら、お話しを聞かせてくれたら嬉しいな♪」
モルガンを含めた五人は、スバル特製の朝食を食べる。
「食べながらで良い……二人とも聞いてくれ。ここはコイツ、私の姉貴……スバルの家。」
「うん、そうだよー」
「で、その姉貴の親友で本局執務官の………」
「ティアナ・ランスターです。」
「私を含めたお前たちを保護して介抱したのは、この二人なんだ。感謝しろよ………」
ノーヴェに促され、アベルとアインハルトはぺこりと頭を下げる。
「でも、ダメだよノーヴェ?いきなりの事だからって、こんなちっちゃい子にヒドイ事しちゃ……」
「何言ってるだよ、姉貴……こっちだって思いっきりヤられてまだ全身が痛いだぞ。なぁ、アインハルト?」
「ブッ!!?……ケホッ、ケホッ……い、いきなり何をッ?!!……」
ノーヴェにいきなり話題をフラれたアインハルトは、思わず吹き出した。
「………ふぅ、確かに……彼の…アベルくんのチカラには目を見張るモノがありました。実際に私の拳ではアベルくんにダメージを与える事ができませんでしたし……」
「あぁ、アベルの装甲の強度はシャレにならなかった。」
「魔法道具って言っても良いのでしょうか?……彼の使うアレは?………」
「そんなに凄いの?アベルくんのバリアジャケットって……」
「凄いってモンじゃない。めちゃくちゃなんだよ……」
ノーヴェとアインハルトの話しを聞きながら、静かに食事をしていたアベルがついに口を開く。
「知りたいの?だったら、モルガン……説明してあげなよ。キミの凄さをさ……」
「分かりましたぁ。」
モルガンが空間モニターを広げた。
「まず装甲についてですが、はっきり言いますぅ。皆さまの言うアレはバリアジャケットではありません………マスターが纏っているのは、私が変化した“武装鎧(アーマージャケット)”ですぅ。魔力転換装甲と呼ばれる装甲盤は理論上、最大火力の収束砲を一発なら防げますぅ。」
「最大火力の収束砲って……」
「スターライト・ブレイカーですよ……知ってるでしょう?スバルさんとティアナさん二人を育て上げた魔法戦のプロの一人で、僕の幼なじみヴィヴィオの母親……なのはさんが使う最強の砲撃魔法だよ……」
みんなは唖然としている。
モルガンはさらにモニターの画面を変えた。
「あと僕が使っているのは、ただの魔法道具じゃないよ。」
「正式には魔導兵装って言いますぅ。ワタシは大昔にベルカ地方の僻地に封印されていました。ある日マスターのお母さまが率いる考古学チームに発掘され、その後ワタシは研究のために覚醒させられ、研究の際にデータバンクの中にあったモノを再現、実装しました。」
「モルガンちゃんの話しって、なんだか物騒だね?」
「そうですかぁ?良く分んないですぅ。」
「アベルは何か知っているの?」
「さあ?そこについては僕も始めて聞きましたし……詳しいことは分らないですね。」
「そうか……なら、仕方ないな……じゃあ、次はアインハルトだな?」
「あなたが格闘家相手の連続襲撃犯って言うのは本当なの?」
「…………はい。否定はしません。」
「じゃあ、どうしてこんなことを繰り返して来たのか、理由を聞かせて貰えるかな?」
アインハルトが手に持っていたフォークを置き、少し俯きながら話し始める。
「私は覇王イングヴァルトの血を色濃く引いています。この碧銀の髪や虹彩異色の瞳、それに覇王の身体資質に覇王流(カイザーアーツ)……あと断片的ではありますが、彼の記憶も受け継いでいます。古代ベルカの戦乱時の話です……当時、武技において最強を誇った一人の王女がいました。名前を“オリヴィエ・ゼーゲブレヒト”……後の『最後のゆりかごの聖王』です。」
アインハルトは自身の思いの丈を、ノーヴェたちに訴えた。
「だいたい、分かったよ……お前の中では、大昔のベルカの戦争がまだ終わってないのか……」
「私は、古きベルカのどの王よりも覇王のこの身が強くあること……それを証明できればいいだけで……」
「と言うことは、聖王家や冥王家に恨みがあるわけではないんだな?」
「はい……もちろんです。」
「そう……なら、良かった。」
スバルは胸を撫で下ろし優しそうな笑みを浮かべる。
「スバルはね、その二人と仲良しなもんだから……」
「そーいうこと♪」
「はあ………」
「あとで近くの署に一緒に行きましょ?被害届は出てないって話だし、もう路上で喧嘩しないって約束してくれたらすぐに帰られるはずだから……」
「なあ、ティアナ……今回の事は私も同席するよ。私も含めてみんなが悪い……喧嘩両成敗ってやつにしてもらおう。お前らもいいな?」
「……はい、分かりました。」
「はい、ありがとうございます……」
「だけど、アベルくんに関しては別の案件で聴きたい事があるから、直ぐには帰れないわよ。」
「え、直ぐには帰れないの?別の案件って、モルガンは心当たりとかある?」
「いいえ。何もないと思いますよぉ?」
「ほら、この間……一週間ぐらい前よ。アナタたちミッドチルダの上空を許可なく勝手に飛び回ったでしょう?」
ティアナに言われて、ようやくアベルは思い出した。
「あ、その事……」
「そうよ。あの後、地上本部は大騒ぎになったんだから。アナタたちのした行為は航空法に違反するれっきとした犯罪よ。分かる?ミッドチルダの上空はたくさんの飛行機が飛んでいるの。万が一の事があったらアナタたちは責任が取れないでしょ?」
「だけど……」
「だけどじゃありません!この案件は私が受け持ちます。アナタたちには、きちんと反省してもらうからね!」
その後アベルは、こっぴどくティアナに叱られるのであった。
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ここは、“湾岸第六警防署”……
アベルとアインハルトは大人組に付き添われる形でここに来て、事後処理をしていた。
アインハルトは警防署職員から厳重に注意を受け、ティアナはアベルと別室で事情聴取を受けている。
ノーヴェは二人よりも早く処理が終わり、スバルと三人を待っていた。
「悪かったな姉貴、折角の非番だっていうのに……」
「ううん、別に気にしてないよ。」
「しかし、姉貴ってばベルカ関係のヤツとよく知り合うよな?」
「そうだねー♪ヴィヴィオにイクス、アインハルトにモルガンとその使い手アベル……なんか運命を感じるな♪あの子達、特にアインハルトは色々と抱え込んじゃってるみたいだし、このまま放ってはおけないかも……」
「そうだな。そこはアベル共々、私が責任を持って面倒を見るよ………お、アインハルトが終わったみたいだな。悪いけど、ちょっと行ってくる……」
「うん、分かった♪」
そう言って、スバルはノーヴェを見送る。
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事後処理を終えたアインハルトは通路に置かれたベンチに腰掛け考え事をしていた。
「(私は、何をやってるんだろう……やらなきゃならない事がたくさんあるのに………)」
そんな彼女に忍び寄る影が………
「よう?終わったか?」
それはノーヴェだった。
キンキンに冷えた缶ジュースを考え事するアインハルトの頬に当てる。
考え事をしていた彼女にとっては堪った物ではなかった。
「ひゃわあッ!!?」
「ハハ……隙だらけだぜ?覇王様♪」
不意を突かれ、あわあわとするアインハルトを見てノーヴェは笑っている。
ノーヴェはアインハルトの隣に座り彼女に話しかけた。
「なあ、アインハルト。ウチの姉貴やティアナは、局員の中でも結構すごいヤツらなんだ……古代ベルカ系に詳しい専門家もたくさん知っている。お前の言う“戦争”がなんなのか、アタシは分かんねぇけど、協力できる事があんなら私たちが手伝ってやる。だから……」
「聖王たちには、手を出すな……と?」
「違ェよ……あ、いや違わくねぇか?何だかワケ分からん。とにかくお前に一つだけ言いたい事がある。お前、格闘技(ストライクアーツ)が好きだろ?」
「え?いきなり何を……」
「私もまだ修行中だけど、コーチの真似事もしてっからよ。才能や気持ちを見る目だけはあるつもりだ。と言ってもお前の場合、防犯カメラの映像を見ただけだがな……違うか?好きじゃねぇのか?」
少し考えてアインハルトは口を開く。
「分かりません。そういう気持ちで考えた事がありません……覇王流(カイザーアーツ)は私の存在理由そのものですから……」
「そうか……これに関しては難しいな。まあ、ゆっくり考えていこうか……お、アベルも終わったみたいだから、そろそろ行こうか。」
「はい。」
ノーヴェとアインハルトはみんなと合流した。
「よし、二人とも無事に終わったな?これからどうする?学校に行くか?」
「もちろん行きます。」
「よし、真面目でけっこう。アベルは?」
「先輩(アインハルトさん)が行くのに、後輩の僕がサボるわけにはいかないでしょ。」
「うわぁ〜ちっとも可愛げねぇなぁ〜」
「よけいなお世話です……」
「まあ……理由はアレだけど、アベルもいい子だね♪ご褒美にこのスバルお姉さんがナデナデしてあげる♪ホレぇー!」
スバルはアベルの頭を撫でまわす。
「ちょっと、スバルさん!恥ずかしいから子供扱いしないでくださいッ////」
アベルは恥ずかしさから、スバルのもとから離れ、ティアナの後ろにサッと隠れる。
「あ、アベルのイケず……」
「フン、子供扱いするなって言われてもねぇ~」
ノーヴェはアベルのことを鼻で笑っていた。
「でも、アベルくんは制服はどうするの?」
スバルが聞く。
「あ、そうだった。僕、制服持ってなかったんだ。どうしよう?空を飛べたらなぁ〜」
アベルがティアナに目配せした。
「ダメよ。アベル………私と約束したわよね?」
「でも〜」
「大丈夫。私が送るわ。」
分署の外に出た5人とモルガンは駐車場へ……
そこでティアナの車とスバルの車に分かれる。
「さあ乗って。」
「分かりました。」
アベルとモルガンはティアナの車の後部座席に乗りみ、シートベルトを装着した。
「準備は良いわね?」
「はい、大丈夫です……」
ティアナは車のスタートボタンを押す。
電動機(モーター)が起動し、ティアナはアクセルを軽く数回踏んだ。
アクセルを踏むたびに、モーターが力強く唸る。
「さあ!行くわーよ!」
ティアナはギアをドライブに入れ、アクセルを踏み込むと爆発的な加速であっという間にスバルたちの前から去って行った。
「あの……ティアナさんの運転はいつもあんな感じなんですか?アベルくんは大丈夫でしょうか?」
アインハルトはあ然とし、同乗しているアベルを心配する。
「相変わらずだな、ティアナの走りは………」
「未だに走り屋のアニメにハマってるからねぇ〜♪酔い止めの薬、渡しとけば良かったなぁ〜」
アインハルトとは逆に冷静な二人……
そして、アインハルトとノーヴェを載せた車は、スバルの安全運転でアインハルトの学校へ向かうのだった。
次回に続く。
勝手なイメージです。
ティアナの車は NISSAN GT-R 色はオレンジ。
また、KTMのリッターバイクに乗っててほしい。
スバルの車は SUBARU ステラ 色はスカイブルーメタリックです。