魔法少女リリカルなのはVivid 漆黒の翼   作:シンタ

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第七話 すれ違う想い

アベルはノーヴェたちと別れた後、ティアナの攻めた運転で自宅に戻って来た。

 

「ほらほら〜チャッチャと降りて、サッサッと準備して戻ってくる!」

 

「うぅ……気持ち悪い………吐きそう………」

 

「ワタシもですぅ……」

 

アベルとモルガンの顔は真っ青とおり越して真っ白になっている。

 

「な~に、弱気なこと言ってんの!ほらぁ〜急いだ急いだ~!」

 

アベルはモルガンを肩に乗せ、フラフラと自宅に入っていった。

そして10分後……学校の制服に着替えたアベルが再びティアナの元に戻る。

 

「用意は出来たッ?」

 

「え?えぇ………」

 

「じゃあ、乗った乗った!」

 

ティアナはアベルとモルガンに早く車に乗るように急かせた。

しかし、アベルたちは一向に車に乗ろうとしない。

 

「どうしたの?アベル?早く………」

 

「イヤだ………」

 

ボソッとアベルが呟くように拒絶する。

 

「え?何いってんのよ?学校は?」

 

「行くけど……ティアナさんの運転は荒くてイヤなんです!」

 

彼の言葉に呼応したモルガンがデバイスとして起動、モルガンは黒い飛行ガジェットのような姿になった。

 

「よいしょっと……!」

 

飛行ガジェットに変身したモルガンの上に肩幅に足を広げて立つようにアベルが乗る。

 

「ちょっと、アベル!あなた、いったい何をッ!!?」

 

慌てた様子のティアナ。

 

「ここからは自分で行きます!」

 

そういうとアベルを乗せたモルガンが少し宙に浮く。

 

「まさか……ッ!!?」

 

「ここまでありがとね、ティアナさん。」

 

アベルはティアナに対して一応のお礼を言うと、自分の通う学校に飛んでいった。

 

「コラァーー!降りていらっしゃいー!」

 

ティアナが下から叫んでいるが、とうのアベルは気にする様子もない。

いつもは30分近く掛かる道のりも、モルガンの空中輸送能力で5分足らずで到着する。

 

学校の屋上に降りたったアベルは、自身のクラスへと向かう。

 

そして教室に入るなり、ヴィヴィオを筆頭するクラスメイトたちに色々聴かれ、アベルは昨晩から続く一連の出来事を正直に話した。

正直に話したら話したで、アベルはヴィヴィオに怒られる。

同い年の二人ではあるが、ヴィヴィオがまるでアベルのお姉さんように見える。

彼女の親友のリオやコロナ、また仲の良い他のクラスメイトもまたかと苦笑い……

それに気づいたアベルとヴィヴィオは顔を赤くしていた。

 

****************************************************************************************************

 

昼も14時を過ぎた頃。

ここは街中のとあるカフェテラス……

ノーヴェとスバル、ティアナはそこでお茶をしている。

 

「ったく……アベルったら、あれほど忠告したのに!」

 

不機嫌なティアナは、一緒のテーブル座るスバルとノーヴェにボヤキが止まらい。

 

「しかたないよー。ティアナの運転攻めすぎだし……アベルくんの気持ちも分からなくないよ?」

 

「だけど、私は執務官として……!」

 

「まあまあ、ティア。紅茶でも飲んで少し落ち着こうよ。」

 

「でも、二人ともせっかくの休暇だろ?無理にこっちに付き合わなくても良かったのに……」

 

「あははー♪」

 

「別に気にしなくてもいいわよ。それにアインハルトやアベルの事も気になるしね♪」

 

「そうそう♪何だか二人とも目を離せないないんだよねー♪」

 

「まぁ、それはありがたいけど問題はさ………」

 

そう言って、ノーヴェが別のテーブルを見る。

 

「なんで、お前らまで揃ってんのかってことだ!チンク姉だけだぞ私が呼んだのは!」

 

そこにいたのはノーヴェの姉妹たち……ウェンディは用意されたサンドイッチをこれでもかとドカ食いし、ディエチは紅茶をすすり、時代を越えた聖王と覇王の出逢いに思いを馳せている。

また、聖王教会から赴いたオットーとディードはヴィヴィオの護衛らしい。

 

「すまないなノーヴェ。一応、姉も止めたのだが……」

 

チンクが手を合わせ、ペコりと頭を下げた。

 

「うぅ……」

 

そんな姿を見たノーヴェはしぶしぶ了解するしかない。

 

「まぁ、見学自体は構わねえけど、余計なチャチャは入れんなよ?」

 

ノーヴェが姉妹たちに忠告をするが……

 

「「「「「はーーーい!!!」」」」」

 

チンク以外の姉妹たちは、子供のような元気に返事をするだけで、本当に彼女の忠告を聞いているのやら……

 

みんなが集まり、お茶をしながら待つこと30分余りが経った頃……

 

「ノーヴェ!みんなー!」

 

「「こんにちわー!」」

 

そこへ学校を済ませたヴィヴィオたちがやって来た。

ヴィヴィオたちの中にアベルを見つけたティアナがいの一番に席を立つ。

 

「アベルーッ!」

 

そしてアベルの前までに来ると、ティアナは彼のほっぺたをぎゅうぅぅッと抓った。

 

「ッ!!?いたい、いたいよ〜!」

 

ティアナに抓られた挙げ句に引っ張られて、アベルは痛そうにもがいている。

 

「あぁ〜もう、ティア?よしなよ。」

 

スバルに止められて、ティアナはようやくアベルを開放した。

 

「大丈夫?アベルくん……」

 

アベルの腫れた頬をスバルが優しく撫であげている。

 

「良いのよ、スバル!これはお仕置きよ!逮捕されないだけ、ありがたく思いなさい。」

 

「大人気ないよ。ティア……」

 

「うるさい!」

 

「あーやかましくて悪ィな……ヴィヴィオ」

 

「ううん、私は大丈夫。あ、だけど聞いたよ?~昨日のアベルくんと喧嘩したんだってね?」

 

「あ、まあ……」

 

「もう、驚いちゃった。それでどうだった?アベルくん、強かった?」

 

「ああ、けっこう強かったぞ。まあまあだった……」

 

この言葉にアベルが反応する。

 

「まあまあ?何を言っているの?ノーヴェさん……僕が敗けたみたいな言い方はやめてくださいよ。昨日の喧嘩はあくまでも引き分けでした!」

 

年上のノーヴェに強気のアベル……彼の瞳には、強い闘争心がみなぎっていた。

 

「何だとッ!!?百歩譲って引き分けだったとしても、あの引き分けはお前のデバイスの性能があって言えの引き分けだ!私もゼッテーに負けねェッ!」

 

お互いに顔を近づけいがみ合う二人。

一触即発の雰囲気に慌てて二人の間にヴィヴィオとモルガンが割って入る。

 

「ケンカはダメだよ!ノーヴェ!」

 

「そうですぅ!落ち着いてください、マスター!」

 

しかし、二人は止まらない。

困り果てるヴィヴィオとモルガン……そこに思わぬ形で助け船が入った。

 

「ISレイストーム……」

 

そう、オットーである。

アベルとノーヴェは、彼女のIS(インヒュレート・スキル)によって捕縛されたのだ。

光り輝くヒモ状の物が二人を縛り上げる。

 

「いい加減にして下さい、二人も……陛下たちが困っております。」

 

オットーに言われ、二人がヴィヴィオとモルガンを見た。

二人は涙目でおどおどしている。

 

「悪かった……ちょっと、アツくなりすぎたよ……」

 

「僕も………ごめんなさい。」

 

アベルとノーヴェは、ようやくおとなしくなった。

場も落ち着きを戻す。

 

「あ、お昼にメールで“紹介したい娘がいる”って言ってたけど……」

 

「そう言えばそうだったな……そろそろ待ち合わせの時間だ。もうすぐ来るぞ……」

 

「それで、その娘って何歳?流派は?」

 

嬉しさを抑えられないヴィヴィオは矢継ぎ早にノーヴェに聞いた。

 

「お前の学校の中等科の一年生……先輩だ。流派はまあ………旧ベルカ式の古流武術だな。」

 

「へぇー」

 

「それとあれだ……お前と同じ虹彩異色だ。」

 

それを聞いたヴィヴィオの表情が明るくなる。

 

「ほんとーッ!!?」

 

「まあ、ヴィヴィオ座ったら?」

 

「そうそう♪」

 

「あ、そうですよね!………」

 

ヴィヴィオたちがノーヴェに促されて席に着こうとしたその時、アインハルトが待ち合わせの場所にやって来た。

 

「失礼します……ノーヴェさん、皆さん、アインハルト・ストラトス参りました。」

 

彼女の凛とした姿を見たヴィヴィオは少しの間見とれてしまった。

ヴィヴィオが見とれている間、アインハルトはノーヴェたちに挨拶をしている。

そして、アインハルトはヴィヴィオの前にやって来て握手を求めて右手を差し出した。

 

「アナタが高町ヴィヴィオさん?初めましてベルカ古流武術、アインハルト・ストラトスです。」

 

「あ、すみません……私、ミッド式格闘技(ストライクアーツ)をやってます高町ヴィヴィオです!コチラこそよろしくお願いします♪」

 

ヴィヴィオとアインハルトが握手を交わす。

 

「(小さな手……脆そうな体……だけど、この紅と翠の鮮やかな瞳は、“覇王(わたし)“の記憶に焼き付いた間違うはずもない聖王女の証………)」

 

アインハルトはヴィヴィオと握手しながらそんなことを考えていた。

そんな彼女を心配したヴィヴィオは、アインハルトに声を掛ける。

 

「あの、アインハルトさん?……」

 

「………い、いえ、失礼しました。」

 

「まあ、二人とも格闘技者同士ごちゃごちゃ話すよりも、手合わせした方が良いだろう?場所は私が押さえてあるから、早速行こうぜ!」

 

ノーヴェの取り計らいにより、アインハルトとヴィヴィオ達は区民センターに移動した。

 

****************************************************************************************************

 

アインハルトとヴィヴィオは、動きやすい服装に着替えコートの真ん中に向かい合うように立ち、ウォーミングアップをしている。

 

「んじゃ、そろそろスパーリングを始めようか?」

 

「はい!」「はい………」

 

「4分1ラウンド、射砲撃や拘束(バインド)はナシの格闘オンリー……」

 

いよいよ始まる、アインハルトとヴィヴィオの記念すべき第一戦目……二人は身構えた。

外野(ギャラリー)のアベルたちも息を飲んで見守る。

 

「レディ・ゴー!」

 

ノーヴェの掛け声と共に、ヴィヴィオが先手を取った。

一気に間合いを詰め、アインハルトの懐に潜り込むと鋭い右拳打を繰り出す。

しかし、アインハルトはその一撃を正面から受け止めた。

この瞬間、ギャラリーから歓声が上がる。

ヴィヴィオの繰り出す連撃を、アインハルトはすべて防御と受け流しで受けきっていた。

 

「ヴィヴィオって、変身前でもけっこう強いッ!!?」

 

「まあね♪師匠(ノーヴェ)と一緒に練習頑張ってるからね♪」

 

ヴィヴィオを幼い頃から知っているティアナは彼女の成長っぷりに驚く。

一方、防御に徹するアインハルトは……

 

「(本当に……本当に、この娘が覇王の拳を……覇王の悲願を受け止めてくれるのだろうか?……)」

 

彼女はそんなことを考えていた。

 

「(いや、ダメだ……いくらヴィヴィオさんが聖王女のクローンでも違う!彼女ではない!だから!……)」

 

そして、アインハルトはヴィヴィオの隙を突き、掌底で突き飛ばすとヴィヴィオに背中を向ける。

一方的にスパーリングを止めたのだ。

 

「お手合わせありがとうございました。」

 

その場から去ろうとする彼女の背中からは寂しさが感じ取れる。

それにいち早く気づいたヴィヴィオは、彼女に声を掛けた。

 

「あ、あの!すみません!私、何か失礼なことを……?」

 

「いいえ………」

 

「じゃ、じゃあ……あの、私……弱すぎました?」

 

「いいえ、まっすぐな拳、まっすぐな瞳に心……充分過ぎるにお強いです。“趣味と遊びの範囲の内”でしたら………」

 

アインハルトの言った『趣味と遊びの範囲内なら充分に強い』……この言葉がヴィヴィオの心に深く突き刺さる。

 

「申し訳ありません……私の身勝手です。」

 

再び歩を進めようとしたアインハルトをヴィヴィオが呼び止めて頭を下げた。

 

「あの、すみません!今のスパーが不真面目に感じたのなら謝ります!だからッ!…………」

 

その時だった………深紅の魔力弾が、アインハルトの顔の直ぐ脇を掠めて壁に着弾する。

アインハルトは咄嗟に魔力弾の飛んで来た方に向き直った。

そこに立っていたのは、“ツインフレアライフル”の片割れを右手に持ち構えるアベル。

ライフルの銃口からは熱気が上がっていた。

ヴィヴィオを始めその場のみんなの表情が凍りつく。

 

「僕のヴィヴィオを傷つけて何様のつもり?アインハルトさん、返答しだいじゃ許さないよ?」

 

「アナタには関係ないこと……放って置いて下さい。」

 

そう言って、アインハルトは立ち去ろうとする。

だが、アベルは彼女を逃がさない……

ツインフレアライフルを再び放ったのだ。

 

「そう言って自分の心を誤魔化して全部から逃げてきたんだね?アインハルトさん……いや、“覇王イングヴァルトの亡霊”………!」

 

アベルの言葉にアインハルトが激昂する。

 

「違いますッ!私は……私は覇王の亡霊なんかではありませんッ!!!」

 

そして、アインハルトがバリアジャケットを纏い、アベルに襲い掛かった。

凄まじい突進力で間合いを詰めるアインハルト。

アベルも素早く武装化(アームズアップ)をすると彼女の打撃をフリーの左手で受け止める。

 

「おい!お前ら何を勝手に!………」

 

ノーヴェが二人を制止しようとした。

 

「うるさいッ!これは僕とアインハルトさんの問題です!ノーヴェさんは黙っていて下さい!」

 

「何だとッ!!?オットー!」

 

「ええ!分かってます。ISレイストーム!」

 

オットーが再びレイストームを発動した。

アインハルトとアベルが拘束される。

アベルは二回目だ。

しかし、今回はアベルも黙っていなかった。

 

「邪魔を………するなぁぁーーッ!!!」

 

アベルが叫ぶ。

その瞬間、彼の各間接部からカッター状の魔力エネルギーが吹き出しレイストームの拘束を切り裂いた。

オットーは自身の目を疑う。

子供相手の手加減モードで使ったとはいえ、二人を取り押さえるには充分な威力だった。

しかし、アベルはそれを瞬時に破ったのだ。

 

「外に出なよ、アインハルトさん……昨日の続きをしようか……」

 

「望むところです……ッ!」

 

二人は外に出る。

コートが入っている公民館の外には広場があった。

そこで闘争心剥き出しの二人は構える。

 

「やめて!アベルくん!アインハルトさんも!」

 

ヴィヴィオは二人を止めようとした。

 

「………ヴィヴィオも黙ってて!これはキミためにやってるんだよッ?!!分からないッ?!!」

 

「そんな……私、こんなの望んでないよッ!!!」

 

ヴィヴィオは涙を流す。

それ以降、アベルは闘いが終わるまでヴィヴィオと話さなかった。

 

「アインハルトさん、約束して下さい……僕がこの闘いに勝ったら、もう一度、ヴィヴィオと手合わせをしてやって下さい。」

 

「………分かりました。」

 

「今日は魔導兵装は使いません……正々堂々、お互いの拳のみでやり合いましょう。」

 

そう言うと、アベルは外装をパージする。

外装を外したアベルは、黒いボディスーツに深紅のコートを纏ったとてもシンプルな物だ。

 

「どちらから行きます?先手を譲って上げても…………って、わァッ!!?」

 

アベルが言葉を言い終わらない内にアインハルトはいっきに肉薄し、鋭い右ストレートを放つ。

 

「昨日は遅れを取りましたが、今回は負けませんよ!はっきり言って隙だらけです!」

 

彼女の放った渾身の打撃がアベルの顔面にクリーンヒットした。

この一撃は重たく、アベルはふき飛び数回バウンドしてそのまま地面にひれ伏す。

誰もが終わったと思ったが、アベルはおぼつかない足で立ち上がった。

 

「まだやるんですか?純粋な格闘技なら私は負けませんよ!」

 

立ち上がったアベルを再度沈めようと、アインハルトは攻撃の手を休めない。

アベルは彼女の凄まじい連撃を防御しようとするが、防御をくぐり抜けた打撃や蹴打が次々と炸裂する。

 

「もう、やめて!アインハルトさん!このままじゃ、アベルくんが………ッ!!!」

 

「アベルもさっさとギブアップするんだ!」

 

「そうだよ!アベルくん!」

 

ヴィヴィオやノーヴェを始め他のギャラリーからも声が上がるが、アベルはそれらを一切無視してアインハルトに食らいついた。

 

「なぜですッ?!!どうして諦めないのですか?ギブアップすれば楽になれるものを……ッ!」

 

アインハルトもアベルとやり合いながら、ギブアップを進める。

 

「諦めない!アインハルトさんとヴィヴィオが仲良くしてもらうためにも、僕は諦めることはできないんだァァァッ!!!」

 

アベルが思いの内を叫んだ瞬間、彼の中で何かが弾けた。

アインハルトの打撃を避けると同時に、彼のカウンター彼女の顎を穿った。

彼のカウンターが入ったアインハルトは、ふらつきながら数歩後ろに下がる。

 

「何?今の………意識を持って逝かれそうだった。」

 

アインハルトは頭を振って意識を保とうした。

アベルはここぞと言うチャンスを見逃さない。

一気に彼女との勝負に出る。

アベルは、アインハルトに対して猛烈なラッシュを繰り出した。

アベルの拳や蹴りが次々とアインハルトにヒットする。

 

「見える!アインハルトさんの動きが僕にも見えるッ!!!」

 

アベルは、何かに覚醒したかのように動きが劇的に変わった。

この瞬間を見ていたギャラリーは………

 

「何てヤツだ……」

 

「うん、動きが変わった。」

 

「すごい、アベルくん……あれはヴィヴィオの“俊足の追い足(ジェット・ステップ)”ッ!!?」

 

「次は私のスタンショットだ。」

 

「どうして?アベルくんはストライクアーツをしてないのに……」

 

「たぶん見て覚えたんだ。聞いたことがある……観とり稽古ってやつだな。」

 

「そんなことできるのノーヴェ?」

 

「スバル、それは分からない……だけど、現にアイツはアインハルトを押している!」

 

そして、お互いの勝敗が決まる時が来た。

満身創痍の二人が魔力を集中させる。

 

「モルガン!全力全開!」

 

『了解ですぅ!魔力エネルギーを両手に集中させますぅ!』

 

「こちらも行きますッ!!!」

 

一度間合いを取っていた二人が、一気に間合いを詰めた。

 

「一撃必殺!ファイル・デッド・エンド!」

「覇王流、断空拳!」

 

アベルの放つ深紅の爪と、アインハルト渾身の一撃が真正面からぶつかる。

猛烈な爆風と衝撃波が起き、ヴィヴィオたちも耐えるのに必死だった。

場も静けさを取り戻し、ヴィヴィオは目を開けて目を疑う。

アインハルトの拳がアベルの腹部にめり込んでいたのだ。

一方、アベルの魔力爪はアインハルト眼前で止まり、あと一歩のところで届かなかった。

アインハルトが拳を抜くと、アベルが力なく彼女に向かって倒れかかる。

 

「アベルくん!……」

 

ヴィヴィオは闘いを終えたアベルを支えるアインハルトのもとへ急いで駆け寄った。

 

「アベルくん!アベルくん!……」

 

アインハルトからアベルを受け取ったヴィヴィオは、心配し彼に声を掛ける。

 

「大丈夫です、ヴィヴィオさん……防護(フィールド)は抜かないように加減はしました。」

 

そう言って、アインハルトはヴィヴィオの肩に手を置いた。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「それと彼に伝えといて下さい。アナタの力はあと一歩、私に届きませんでしたが、約束は守ります。と………」

 

「分かりました。伝えときます………」

 

「では皆さん、私はこれで……」

 

アインハルトはバリアジャケットを解除すると、自宅に帰って行くのだった。

 

次回に続く。

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