takt op. 運命という名の巨人/ガンダム   作:Gfish

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2048年、9月11日。ハイネとトールは神のいたずらか、音楽のない世界のバッファローにてモビルスーツと共に目覚めた。彼らは2人のムジカートと合流し、9月13日になると4人は進路をニューヨークに向けた。しかし、ハイネの緊張がほどけることはなかった。


そしてある時、かの世界のアデレードの戦いで敗れた青年は夢の中でとある少女に出会う...。


Nervioso/緊張

「ケネス!早くしてくれ!」

 

意識は程なくしてしぼんでいった。最後に見えたのは銃を持ったまま泣き崩れる厄介な敵にして親友だったケネス大佐だった。しぼんでいく意識の中で考える、アクシズで散った青髪のツインテールの少女にまた会えるだろうかと。或いはシャアとアムロから説教でも受けるのだろうか。青年はもう生きることに疲れていた、ケネスには申し訳ないが、先に楽にさせてもらおう。走馬灯の中でケネスのある言葉が蘇る。

 

「生きるって辛いな。」

 

 

 

風の音が聞こえる。風は暖かい、そして日差しも少しばかり厳しい。鳥のさえずりに混ざるようにピアノも聞こえる。見えてはいないが、穏やかな天気の日とでもいったところだろうか、しかしピアノの音色はそれには似合わない悲しみのこもったものだった。

 

すると突然、青年の意識の中に緑色の光がよぎる。光の中心には青年の人生を狂わせた2機の忌まわしいモビルスーツがいた。片方、白を基調とし、もう片方は赤を基調としていた。2機のモビルスーツが消えたと思えば光はさらにまぶしくなっていく。

 

気が付けば青年に視界が戻っていた。スーツを着た状態で白い家の庭で横たわっていた。周りを見渡してみると住宅街にいるようだが、人の気配は感じない。しかし、光に包まれる前に聞こえていたピアノの音色はまだ聞こえる。起き上がって白い家のドア横の郵便ポストを見ると青年はアメリカらしいと察する。気が付けばピアノの音色は静かになった。

 

「ピアノ馬鹿と似たにおいがする!」

 

ドアがいきなり開くや否や最初の一言がこれである。声の主は金髪のショートヘアの少女だった。

 

「少しは言葉を改めてもらいたいな、ところでさっきのピアノは君の?」

 

「うん!でも...重いのしか弾けないけど...それはそうと、入って!」

 

気が付けば青年は少女に引っ張られるように家に入れられた。強引な感じ、青年には懐かしく感じられた。

 

 

「招いてもらったからには自己紹介しないとな、俺はハサウェイ。ハサウェイ・ノア。」

 

「私はコゼット!」

 

「コゼットか、ピアノは....」

 

「ピアノ馬鹿がいたからついつい...」

 

「今は一人か?」

 

「うん....ここには誰もいないの。」

 

ハサウェイはこれもNT能力の呪いなのかと思考を巡らせたが、一つ確信を持った。

 

「そうか、ケネスはしっかり仕留めてくれたんだな...」

 

コゼットはいかにも理解が追いついていないという顔をしていた。困惑の目である。

 

「ところで、俺以外に客はいたか?」

 

「1回、ピアノ馬鹿に会えたけど...お客さんはハサが初めてかな。」

 

(ハサ...か)

 

ハサウェイはコゼットの振る舞いにクエスやギギの姿を重ねていた。

 

「んじゃぁ、初来客記念だし、タルトタタン食べましょ!アンナ姉さんがよく作ってくれたの!」

 

(作ってくれた...か。時が満ちたらケネスも招きたいものだ...)

 

ダイニングテーブルで座らせられたハサウェイは確かに「楽になった」と感じた。

 

「お待たせ!ハサ兄さん!」

 

「随分と人懐っこいね。」

 

正しくは馴れ馴れしいとでもいったところだろうか。それにしてもテーブルに無造作に置いてあった新聞が西暦2047年になっているところが気になる。が、ハサウェイはまずはコゼットが運んでくれたタルトタタンを口にする。追手を気にしない食事はやはり美味だ。

 

 

 

9月15日。

DestinyとM01アストレイ・ラフレシアフレームの姿はニューファンドランド上空にあった。

 

「ところでハイネたん、なんで白い旗をあげたの?」

 

「白旗ってのはなぁ、降参したり投降するときに上げるもんなんだ(全く、これで何回目だろうな)」

 

「でもハイネたんのDestiny強かったよ。」

 

「そこでクイズだ、俺たちは何で投降したと思う?」

 

一連の会話はラフレシアフレームにも聞こえていたし、ハイネの意向で敢えてそのようにした。

 

「まぁ、俺がアストレイを動かせなかったからってのもありますけどね...」

 

トールは苦笑いしながらこぼすが、ワルキューレはそこに一言。

 

「我々がいなかったらどうしてたんだか、全く。」

 

通信越しにタイタンの答えは放送された。

 

「お腹すいたの?」

 

ワルキューレはあきれ果てていた。トールは自嘲気味に苦笑していたが。ともあれ、タイタンの回答は決して間違ってはいない。

 

(確かにレーションなかったからね...)

 

「いいところ突けるようになったじゃないか。いいか、どんなに優れた戦闘ができても補給がなければ戦えなくなる。俺らには食べ物も水もなかっただろ?」

 

ハイネの解説が終わるとトールは何やらにやけていた。

 

「トールといったな、何がおかしい?」

 

「そういえば俺の上官にあなたにそっくりな人がいたんですよ。ナタル・バジルール副艦長なんですけど。」

 

「そうなのか。」

 

「とても厳しい人でしたけど、それでも成り行きで避難してきた俺らを守ってくれたんです。

 

ワルキューレの表情は興味深そう、とでもいったところだろうか。

 

「今はどうしてるんだ?」

 

「俺はあの人よりも先に死にましたからね。あれだけ出撃するなと言われた理由が分かりましたよ。でも...」

 

ワルキューレは黙り込んでしまった。前世の思い出したくない記憶があるというのに何を聞いてしまったのか、己を責める。それを余所目にトールは続ける。

 

「そのナタルさん、俺が死んだ後どうなったかと思ってハイネさんのログ見たらびっくりでしたよ。だって敵になってたんですから。結局あの人も死んでしまいましたよ。」

 

ワルキューレは返す言葉に詰まっていた。それでも絞り出した。

 

「申し訳ない...悪気は...」

 

「別にいいんですよ、それにここなら人殺しはしなくていいんでしょ?」

 

トールは表情が晴れたが、ワルキューレは何かを嗅ぎつけたように表情が険しくなる。

 

「気配を感じる....」

 

「D2とかいうやつですか?」

 

「ああ...」

 

ハイネにも聞こえていた。

 

「やはり快適な空の旅にはならないようだな、トール、戦闘態勢に入るぞ!」

 

「了解です!ザフトのエースさん!」

 

「言うようになったじゃねぇか、連合の新米さんよぉ!タイタンはどう思う?」

 

「ワルキューレたんのおかげかな?」

 

通信越しでは軽快に返事したように聞こえるトールだが、実際はかなりナーバスになっていた。そんなトールの肩をワルキューレが優しくたたく。

 

「お前は一人じゃない。どこぞのコンダクターみたいに抱え込むことはないんだ。」

 

(そうだ、タクトは1人で抱え込んで今は起きることのないコールドスリープだ...)

 

一方、Destinyではこんな会話が。

 

「なぁ、タイタン。人殺しといて恐ろしいと感じないのか。」

 

「ハイネたんは優しいよ、なんで?」

 

「俺は化け物ではなく、人間を殺した。たくさんのな。」

 

「でも、ハイネたんは殺されないためにそうしたんでしょ。」

 

「こういう時に限って正論か、ま、俺もアスランに似たこと言ったがな。」

 

「割り切れ、でしょ。」

 

「ああ。でも、せめてこの世界では割り切らないでよくてあってほしい。お前さんの師匠のためにもな。」

 

「師匠」の存在についてはこれまで言及がなかったはずだが、ハイネの鋭い勘にタイタンは黙り込む。しかし、何かを嗅ぎつけたかのようにハイネに向き直る。

 

「ハイネたん、もうすぐだよ。」

 

「よし、まずは化け物どもを片付けるか。」

 

いくらムジカートでも人を殺させるわけにはいかない、4人の中で人間同士の戦争の不条理さを一番味わっているハイネの重い願いだった。




次回:大西洋上のナクバ/災厄

ハイネの願いは果たして届くのだろうか。
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