takt op. 運命という名の巨人/ガンダム   作:Gfish

15 / 15
ロングアイランド攻防戦から時間は流れ、10月になっていた。暴走していたアストレイで散々な目に遭っていたワルキューレは元の調子を戻したが、トールは一連の戦闘で昏睡状態に。アストレイの猛攻を食らったニコルはトールほど重症化しなかったが、両足を骨折して戦線離脱を余儀なくされる。その間も東海岸では散発的にD2との戦闘が続いていた...。


安らかな目覚め

「このままでは墜とされてしまいます!」

 

「僕が出ます!」

 

「スカイグラスパーを出します」

 

1人で仲間を守ってきたキラを楽にさせてあげたかった...。でも結局は足手纏いになって、イージスに貫かれ、そして今では得体のしれない機体で暴走して...。

 

ハイネさんはザフトなのに優しいし、タイタンは慣れ慣れしいし、ワルキューレに至ってはあの鬼上官そっくりで...嫌いな世界じゃないけど、やっぱり2回も生きるのは疲れちゃうな....

 

 

 

 

「イオ・フレミング、お掃除に出かけるぜ!」

 

ピクニック気分か、あるいはエレメンタリースクールの掃除当番みたいな物言いだが、しっかりフルアーマーガンダムに乗り込んでいる。モニターにはアンナと車椅子に乗ったニコルが映っていた。

 

「イオさんは相変わらず平常運転ですね(笑)」

 

「変に影響を及ぼさないといいけどね」

 

アンナの懸念、それはタイタンとイオの相性の良さなのだろうか、タイタンにイオの戦闘中にサイコパスな域にまでハイになるところが加わってしまっては...というのはもちろん杞憂。タイタンはそもそも同乗していないし、以前にアンナにこう言っていた。

 

「イオたん本当に変な人」

 

そこにダリルがとどめを刺してハイネとハサウェイに笑われていた。当時はニコルが昏睡状態だったのでその場にはいなかったが、ニコルが目覚めて最初に聞いた一言はイオの愚痴だったので大体の察しはついた。その後でアンナがつきっきりで顛末を話し込んでいた、というより長い長い2人っきりの時間になっており、これが後にハイネらに茶化される元凶となる。

 

それはそうと、今日はサウスカロライナ州南部で発生したD2を片付けに行く。シュヘンベルグ特別監査官からの要請でMSのデータもとることになっていたため、今回はフルアーマーガンダムとデスティニー(ハイネ機)が出撃、ムジカートも2人が監視員として同行した。

 

「こちらハイネ・ヴェステンフルス、発進許可を請う」

 

「こちらアンナ・シュナイダー、発進のタイミングを譲渡します」

 

「了解。ところでトールはまだ起きないか」

 

ニコルが代わる。

 

「容体は全然です。薬物投与でなんとか生きながらえてるようなものですし..」

 

「そうか...(これじゃ連合のエクステンデッドと同じ羽目をみるのか..)」

 

「そうか。それと、シュナイダーさん。」

 

「アンナで構いませんと何度も言ってるのですが(笑)」

 

「ニコルをありがとう」

 

顔が赤くなるニコルを余所目にアンナは威勢よく、まるで茶化すかのごとく返す。

 

「あの子は放っておけないですから」

 

「あの子、ね(笑)。よかったな、ニコル!」

 

「教官殿!それよりもう行かなくていいんですか!?」

 

「アンナたん、ニコルたん、これじゃハイネたん遅刻しちゃうよ!」

 

頬っぺたが膨らんでいるのはタイタン。アンナとニコルは苦笑い、ハイネは咳払いして発進シークエンスに入る。

 

「デスティニー、発進する!」

 

こうしてようやくデスティニーもようやく空に飛び立った。なお、イオの駆る機体にはくるみ割り人形が同乗していた。とても相性の合う組み合わせとは言い難く、むしろダリルが出撃を志願したほどだった。とはいえ、さすがに決定済み事項に逆らえないのは「軍人」である彼らが一番よく分かっており、ハイネの「割り切れよ、軍人なんだからさ」でとどめをさされた。

 

さて、フルアーマーガンダムのコックピット内はというと、大変にぎわっている。大音量のジャズで通信が聞こえるのかすら怪しい。いくら音楽を糧にするムジカートでもこれはさすがに逆効果なのだろうか。おまけに「くるみ割り人形」は軍人に風紀委員を掛け合わせたような性格の持ち主なので当然クレームは絶えない。

 

「マエストロ、任務中なのにだらしないですよ!」

 

「おいおい、いつからお前さんのコンダクターになったんだ?」

 

「くるみ割り人形です!これで何回目だと思ってるんですか!?」

 

「クラッシャーねぇ」

 

「だから...」

 

「チェストブレイカーもいいかもしれねぇなぁ」

 

「だーかーらー!」

 

にぎやかなコックピットもハイネからの通信で遮られる。

 

「フレミング少尉、にぎやかなのはいいが間もなく戦闘予定域に入る。」

 

「了解であります、ヴェステンフルス隊長!」

 

「だからハイネでいいって」

 

「なれば私のことはイオでお願いしますよ、ハイネ隊長殿」

 

「お互い様だな。タイタン、敵は把握できそうか」

 

「空から感じるけど...」

 

「さすがに高高度では地上の索敵は難しいか」

 

「では我々が降下します。自機はニューオーリンズの一件で身バレしていますし、多少見られても害はありません。」

 

「分かった。頼んだ。」

 

「マエストロ、索敵に集中したいのでそろそろ音量さげてもらっていいですか?」

 

「そういえばイオたんまだ流しっぱなし!」

 

「そりゃぁ、致死率100%のジャズをとめるわけにはいかないだろう?」

 

「いい趣味だが、音量を落としてもらわないと俺の獲物が横取りされてデータにならないのでな」

 

「ハイネ隊長が言うなら仕方ありませんね」

 

ハイネの鶴の一声で音量を下げるとフルアーマーガンダムは地上付近を目掛けて降下していく。くるみ割り人形は高度が下がるにつれ、D2がいるときに感じる特有の音のようなものを感じ取っていた。

 

 

 

 

その頃、任務を外れていたダリルはトールがいる医務室にいた。以前はハサウェイも来ていたが、今日は部屋から出てきた形跡がない。こういうときは夢の中でアクシズショックが再生されているか、コゼットが夢に出たか、ケネスが夢に出てきたかのどちらかだ。それはさておき、医務室にもう2人入ってきた。

 

「今日も来てるの」

 

優しい声で聞くのはロッテ。幸いにもイオのいう「ホットな関係」について同行者は知らない。

 

「他人事に思えなくてな。君も毎日来てるみたいだけど」

 

ダリルが振った相手はワルキューレだった。

 

「世話の焼ける奴だからな、どこぞの頭でっかちなコンダクターと違って」

 

(頭でっかち...確かタクト・アサヒナとかいったか...)

 

「そのコンダクターは....いや、今はいいか」

 

ロッテもワルキューレも表情が曇っていた。ダリル自身も以前に夢の中で「運命」という赤い少女にキスをされ、1人重傷のまま残されたタクトの姿をよく覚えているため、いい予感はしなかった。事実、今も起きていないのだが、ダリルにそれを知る術はまだない。

 

「どう....しよう....今度こそ...副艦長に...しばかれちゃう...」

 

「無理やり....出た...から...ど...う...いい..わけ...を...」

 

真っ先に反応したのはワルキューレだった。

 

「色んなバカを見てきたが、とびきりのバカは初めてだ(笑)」

 

「そんなこと...いわれても...って、あれ?」

 

「君のうわさは生憎有名でね、俺はダリル。ダリル・ローレンツだ。」

 

「あなたの治療は本当に大変だったのよ、ちなみに私はロッテね。」

 

トールはただひたすら、ぽかーんとし続けていた。起きてからしばらくしてD2狩りに出ていたハイネらも帰還し、医務室はMS乗りたちでごった返したそうだ。

 

シュヘンベルグのフィードバックも気になるところだが、それはまた後程。




次回:サンクスギビングとシュナイダー家の秘密
アンナの実家でサンクスギビングディナーをすることになり、タイタン、ワルキューレ、くるみ割り人形、MS乗り6人を招く。その間にシンフォニカの上層部は黒海沿岸で異常を察知していた。それはアンナの両親の耳にも入っていた...。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。