takt op. 運命という名の巨人/ガンダム   作:Gfish

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ラス・ベガス基地での戦闘後、丸一日意識を失っていたニコルが目を覚ました。アンナたちはニコルがムジカートである可能性も考えていたが、連呼される未知の用語を前にただ困惑するしかなかった。

しかし、1つだけ確かだったのは彼は音楽に通じていたことだった。


ムジカートか、或いは

「一応、血液検査するから少しチクッとするわよ。仕事だから許して」

 

慣れた手捌きでニコルの採血をしながらロッテは続ける。

 

「ところで、いくつか質問があるんだけど...もちろん、答えたくなかったら答えなくてもいいわ」

 

アンナはGAT-X207の件で本部との会議に駆り出されたため、ニコルの身体検査と並行して尋問もロッテが行うことになった。

 

ムジカートであれば以前の記憶はない、果たしてこれがニコルに当てはまるかどうかが確認できればいい。

 

が、すぐには質問に入らず、ニコルがはいと返事してから少し続ける。

 

「まずはじめに、アンナを守ってくれてありがとう。アンナだけじゃない、あなたに守られた人は大勢いるわ。」

 

「軍人として当然の責務を果たしたまでです。」

 

奇妙だ、確かにワルキューレみたいに軍人気質のムジカートはいるが、少なくとも自らを軍人だと言うムジカートは聞いたことも見たこともない。

 

ロッテはそこでニコルの最初の自己紹介でザフト軍所属と言っていたことを思い出す。

 

ザフト軍とは何かの極秘組織なのだろうか。この世の技術とは思えない代物もあることから隠密性を保つ必要があったのではないかとロッテは推察した。

 

その上で、

 

「面倒だとは思うけど、ここまでの経緯を教えてくれるかしら?」

 

「先日の戦闘ですか?」

 

「手間になるけど、生まれたところから。その時の出来事まで全部。歴史の教科書をレビューするような感じね。」

 

幼少期、或いは戦闘以前などあたりで記憶が完全に欠けていれば彼はムジカートである可能性が高い。

 

「いいですけど、長くなりますよ」

 

あっさり引き受けたニコルだが、ニコルとしてもこの世界に対して抱いていた言葉にできない違和感を何とかする必要性を感じていた。

 

そのニコルは無論、欠損している記憶はなかった。コズミックイラ、血のバレンタイン事件、ユニウスセブンへの核攻撃、ヘリオポリスでのG奪取作戦。

 

ニコルの口から出てきたのは引き返せないところまでたどり着いてしまった「ナチュラルと遺伝子改造を施されたコーディネーターによる殺すことそのものが目的となった戦争」の実態だった。

 

ロッテはニコルに対して抱いていた違和感にこれで納得した。ロッテたちの世界に存在しなかった全滅戦争の記憶がニコルには明瞭に残っていたのだ。

 

何よりロッテをショックにさせたのがオーブ沖でのストライクとの戦闘だ。結局のところ、彼はムジカートである可能性が低いばかりか、ストライクに両断されて爆散までしているので別世界の死者が生き返ったとしか言いようがなかった。

 

いつから戻ってきていたかは分からないが、ニコルの話はアンナの耳にも入っていた。

 

「やだ!いつの間にいたの!」

 

不意打ちを突かれたように驚くロッテだが、それを余所目にアンナが「音楽のない世界」と「偶然生まれた最強のタッグ、タクト&運命」の話を始める。

 

これでニコルは違和感が分かった。やはり一度死んでいて、その上で音楽に化け物が吸い付くとんでもない世界にきてしまったと。その世界でもタクトというピアノ馬鹿がいて、アンナがかなり世話を焼いたエピソードにニコルは笑いをこらえられなかった。

 

「ナチュラルとコーディネーター、人間同士が全滅戦争をしているのに比べればここはまだマシなのかもしれませんね。」

 

「ごめんなさいね、辛いことを思い出させて...」

 

声の主ロッテと共にアンナの表情も曇ったが、それを見たニコルは表情をさらに明るくした。

 

「ところであのピアノ、まだ使えるんですよね?」

 

アンナとロッテはニコルの不敵な笑みを浮かべながら放った一言に再びピアノ馬鹿を背負う羽目になったと悟った。

 

特にアンナは顔を赤くしていた。

 

詰まるところ、ニコルはムジカートでないにしても新手のピアノ馬鹿であるということが判明したのである。

 

タクトと違って社交的なところにアンナはコゼットの面影を感じていた。

 

 




第4話:GUNDAM

ニューオーリンズに死神のJAZZが響く...。
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