takt op. 運命という名の巨人/ガンダム   作:Gfish

4 / 15
ナチュラルとコーディネーターの憎しみ合いのない世界に来たことにむしろ安心感すら覚えたニコル。対するアンナたちはムジカートというより純粋に異世界から来たとしかいえない人物の登場に戸惑いを隠せなかった。しかし、ニコルがタクトと同じくピアノ馬鹿であったことに対しては親近感すら感じた。

2048年9月9日、ニコルとアンナ、ロッテは急ごしらえで整備された格納庫にいた。
そして同じころ、ニューオーリンズに嵐が吹き荒れる...。


GUNDAM

「アンナさん、ロッテさん。改めて紹介します。この子がGAT-X207、ブリッツです。」

 

ニコルの愛機は灰色に脱色した状態で立っていた。

 

「最初見たときは巨人だと本気で思ってたけど...」

 

「巨人というか、オーバーテクノロジーの塊といったところかしら」

 

アンナたちはここでようやく自分たちを守ってくれた巨人が純粋な大型機動兵器であることを目に焼き付けた。それも今の技術水準ではありえないほどの。

 

とは言え、ニコルがブリッツを指すときの主語が「It」ではなくて「この子」だったあたりに、ブリッツがムジカートでニコルがコンダクターなのではないかとも思わせる。

 

「まぁ、この世界に当てはめれば僕がコンダクターとしてブリッツを指揮しているような感じなんでしょうね(笑)」

 

ニコルは思い出したように右手で持っていた書類をアンナたちに差し出す。

 

「あ、これマニュアルです。連合もザフトもないし、あなた達なら信頼できるから共有します。」

 

アンナは一応手にとるが困惑を隠せない。

 

「いいの?だって...」

 

「僕意外にも分かる人がいないとこの子の世話がまわりませんから。でも、コピーとったら返してくださいよ。」

 

「分かったわ。でも持つのは私とロッテだけね。シンフォニカはなかなか複雑なところだから」

 

「ニコル君も聞いたと思うけど、過去に色々あったから。」

 

シンフォニカとして市民を守る立場にありながら黒夜隕鉄を集めて市民を生贄にしようとしたザーガンやシントラーのようなシンパがいた過去があるので根本からは信用していない。

 

この事情はニコルも聞かされていたが、それでも渡す決断をした。彼にとって愛する音楽を守るための戦いであれば躊躇することはなかった。

 

(クルーゼ隊には正直心からついていけなかったな...でもここなら...)

 

そしてアンナに通信が入る。その内容はアンナの口を通してニコルに伝えられた。

 

「出撃要請だわ。大型D2が北西40㎞に4個体、やれる?」

 

「ザフトレッドをなめてもらっては困りますよぉ(笑)」

 

表向きはニコルはムジカートという扱いにしているので、区別できるようにザフトの赤服を引き続き着用している。

 

「エースだからといって無理は禁物よ」

 

アンナの一言にニコルはコックピットにあがりながら一言。

 

「無傷で帰ってきます!それと、終わったらまたピアノ借りますね!」

 

ニコルの返事を最後にコックピットハッチは閉鎖した。

 

「よかったわね。せっかくだからニコル君にピアノ教えてもらったら?」

 

ロッテの一言にアンナの表情は真っ赤だった。そのアンナを見てロッテは何かを察したようにニヤニヤしだした。

 

そんな2人を余所目にブリッツは機体を黒色に変化させながら歩きだし、格納庫の外に出るや否や飛翔した。

 

 

 

「ジャズの聖地だってのに静かになりやがって...」

 

ニューオーリンズの一画でぼやく青年。見慣れない格好にムジカートではないかという噂が町中に流れていた。

 

「ムジカートだがなんだか知らねぇけどよぉ、ドラムスティックよこしてくれりゃセッションやるぜ?」

 

(はぁ、ここにいても埒が明かねぇ。あまり人のいないところにいるのが得策か。)

 

ふてくされたように歩き出した青年の名前はイオ・フレミング。好きな音楽はJAZZ。

 

歩き出して1時間後、アジトにしようと思っていた飛行場跡地の格納庫から見つかったのはかつての愛機だった。

 

「おいおい、1年戦争でスクラップになったやつじゃねぇか」

 

イオは軽々とコックピットに乗り移る。内部にはドラムスティックもあった。

 

「それにしても、重力下での運用が想定されていないのによく地球に降りてきたもんだ。まずは関節をブロックしてる紫色の結晶をどうにかせにゃならんが。」

 

手は自由に動かせたのでビームサーベルで足の関節部分を妨げていた紫色の結晶、黒夜隕鉄を排除する。

 

「ふぅ、面倒くせぇなぁ、おまけにさっきからサイレンがうるせぇな」

 

イオにとってこの手のサイレンは初めてではなかった。

 

「どうせあいつらだろう、なんなら俺の好きなジャズを大音量で流しながら復帰を祝おうじゃねねぇか!」

 

そういうと、イオはコックピットハッチを閉め、スラスターを思い切りふかした。

 

(まさかとは思ったが、本当に飛びやがったぜ!誰のおかげか知らんが感謝だな)

 

 

街中ではサイレンを遮るように上空の巨人からジャズが大音量で流れていた。そこには主人の声もあった。

 

「D2さんよぉ、俺のガンダムから流れるジャズは致死率100%だぜ!」

 

巨人の左肩にはFA-78、右肩にはGUNDAMとあった。

 

空はまもなくイオの駆るフルアーマーガンダムのミサイルとビームの雨で飛行型D2の処刑場と化した。

 

「やっぱ最高だなぁ!ガンダムって機体はよぉ!」

 

フルアーマーガンダムは重力下では本来あり得なかった空中戦闘を宇宙にいるような要領でこなしていく。ガンダムから流れているジャズとリズムを合わせるようでもあった。

 

ジャズが1曲終わったころにはD2は全滅していた。最後のD2はビームサーベルで仕留めた。

 

「イオ・フレミングだ。俺のJAZZが聞こえたら死神が来たと思いな!それとベガスのガンダムさん、セッションを楽しみにしてるぜ!」

 

戦闘が終わったフルアーマーガンダムはバーボンストリートに着地。すると人だかりができて、何やら一斉に掛け声をあげだした。

 

「GUNDAM!GUNDAM!GUNDAM!」

 

ニューオーリンズは往年のマルディグラを彷彿とさせるような賑わいになっていた。




第5話:忌まわしいコンサート

ニューオーリンズでのガンダム出現はさらなる嵐を呼ぶ。最悪な再会によって。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。