ソレスタルビーイングの武力介入から4年後、共通の敵を前に団結したかと思われた世界だったが、地球連邦政府が発足しても団結とは程遠かった。
連日入ってくるのは反連邦勢力の武力鎮圧のニュースばかり。
「この世界にティターンズはいてもエウーゴが機能していないんじゃな」
ぼやく青年の名前はハサウェイ・ノア。
テロリストとして手を血で汚した彼には死ぬ権利すら剥奪されたのか、この世界で再び生きる羽目になっていた。
「今ならわかるよ、ケネス。生きるって辛いな」
ハサウェイの独り言はそこで止まった。ハサウェイのタブレットには伝言があった。
「クライアントの採掘場にアロウズのガサ入れが入る、か。」
クライアントとは反政府組織カタロンの構成員が収容されている連邦政府管轄の採掘所で、労働収容所といっても差し支えない。
しかし、連邦政府も一枚岩ではなく、クライアントに至っては収益を独り占めするほどに腐りきっていた。
収容所で採掘されたレアメタルはハサウェイの「組合」が高く買い取っているおかげで関係はずぶずぶだ。
しかも、そのレアメタルをカタロンなどの反政府組織に売り飛ばしても表向きは友好国への販売なのだから分かるはずもない。
いや、実際には薄々気付いていることだが、利益が出ているので文句は言われない。
しかし、販売先が連邦の非加盟国であるところに目がつけられてしまったらしく、クライアントも火消しに躍起になっている。
そしてハサウェイもあるものを回収しなければならなくなった。
クライアントの強制労働に口を突っ込まず、かつ汚職も暴露しない条件としてあるものを隠してもらっていたからだ。
ハサウェイの乗っていた貨物船がクライアントに接岸すると、ハサウェイは手早く降りる。
「アロウズには見つかりたくない。そのままダゲスタンまで下りてくれ。」
「了解した。だが万が一アロウズが武力行使したら...」
「わかってる。その時は目を逸らしてほしい」
「では」
もう1人の声の主はマリーダ・クルス、元袖付きのメンバーだ。
ハサウェイが採掘場に入ると中はあわただしかった。
「ハサウェイさん、悪いことは言わない。早くここから出るんだ」
そうハサウェイに声をかけたのは採掘場の所長だった。
「アロウズが新兵器をテストするんだ。だから...」
「言いたいことはよくわかりました。お互いの安全のためにも契約は今日付けで打ち切りにしましょう。」
ハサウェイは採掘場内の要員が退避している方向とは反対側に向かった。
人がいなくなったところでハサウェイはプレッシャーを感じていた。
「言っておくが俺は連邦の人間じゃない」
ハサウェイが切り出すと物陰から紺色のノーマルスーツの男が現れた。
「事情は敢えて聞かないけど、これからアロウズのガサ入れが入るからね」
サイレンこそ鳴っていなかったが、外では既にアロウズとカタロンの戦闘が始まっていた。
その様子は貨物船からも見えていた。
「このままでは勘付かれるな...。不本意だがクシャトリアを出す。時間を稼げればいい。」
ブリッジから指令を出していたのはヘンケン艦長だった。
「任務了解。マリーダ・クルス、クシャトリア、出る!」